ありふれた転生で世界救済   作:妄創

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 今回はオリキャラが混じったクラスメイトの話です。

 忘れないであげてほしい、彼の事を。
 そう彼の名は──な、なんだっけ?

 


英雄達の不在

 

 

 

 時を遡り、ハジメが精神の再構築を、レンジが肉体を再構築していた頃の話だ。

 

 奈落へ落ちたハジメの件で、錯乱状態へ陥り意識を奪われていた白崎香織が、五日ぶりに目覚めた。

 

 その事はクラスメイトにすぐに伝わり、皆が香織のところへお見舞いに行く少し前、いち早くその情報を手に入れた庄司愛美(しょうじまなみ)

 

 手ぶらで香織のお見舞いへ行くのは気が引けたので、王宮の厨房を借りて胃に優しいお粥を作る。

 

 ……良い匂いだ。正直、自分でも上々の出来だと思う。しかし、色が緑色なのは何故だろう?

 

 普通のお米(タイ米に似た穀物)を使い、ハイリヒ王国の高級地鶏(孔雀擬き)をベースに出汁を取り作った鶏粥。同じく高級地鶏を煮込み柔らかくなったむね肉と、滋養強壮に良いと聞いたハーブを少々加えてあるが、真緑になるような量は入れていない。

 

 この鶏粥、大丈夫だろうか?

 

 少し、ほんの少しだけ心配なった愛美は、出来上がった緑の鶏粥を小皿に少量盛り付ける。試食用のスプーンを持って一旦厨房から離れる。

 

 ……無いとは思うが、間違って盗み食いでもされないようにトラップを仕掛けておく。庄司愛美の天職は、狩猟師。罠を仕掛けたりするのは、得意分野だ。

 

 厨房を出ると、檜山大介が丁度よく厨房前を通り過ぎる所だった。どうやら、彼も香織の所へ行くらしい。

 

 しかし、檜山を今の香織に会わせるのはよろしくない。両者ともに。何せ、ハジメが奈落へと落下する間接的な原因は彼にあるのだから。

 

「ちょっと、檜山」

「……ん? あぁ、庄司か。今から香織の──」

「あ~、それなんだけどさぁ、やめといた方が良いよ。少なくとも今は」

 

 一応、クラスの仲間だ。お節介くらいは焼いてやろう、と愛美は檜山に忠告してやる。

 

 やめておけっと言われた檜山は一瞬、ムッとした顔をしたがすぐに顰めっ面になった。

 

「別に、会うなっとは言わないけど、最後の方が良いと思う」

「……そ、そうだな」

「大好きな香織ちゃんに会えなくて悲しいねー」

「な、なっ、バ、馬鹿! うるっせぇよ!!」

 

 図星だったのか、赤面する檜山。忙しい奴である。

 

 うるさいのは、お前だよ。その言葉は飲み込んでおく愛美。代わりに、緑の鶏粥を檜山に渡す。

 

「な、なんだよ。この魔界の食べも──」

「あ?」

「あ、何でもないです」

 

 言っては言えない事を口にしかけた檜山は、とても女の子とは思えないドスの聞いた声で、萎縮した。

 

「トータスの食材で作った鶏粥。香織にって思ったんだけど、ちょいと食べてみてよ」

「実験台かよ」

「香織の為だよ? ほら、ズズっと」

「か、香織の為か……、良しっ」

 

 檜山大介、チョロい男である。

 

 緑の鶏粥を本当にズズズと掻き込むように食べる檜山。

 

「……う、美味い…!」

「そ。問題ないみたいね」

 

 空になった器をヒョイと檜山から奪う愛美。「頃合いが良くなったら、呼びに言ってあげるから部屋で待ってなよー」と言い残して、そのまま厨房へ戻る。

 

 さて、香織に鶏粥を……。と思った時、仕掛けたトラップが発動している事に気が付いた。

 

「──ッ! 一体誰が!?」

 

 抜かった! まさか、王宮で盗み食いをする不届き者が本当に居るとは。

 

 発動したトラップ(鶏粥の半径六十センチ以内に入ると、大量のフォークが飛んでくるワイヤートラップ) の残骸(フォーク)が、キッチンカウンター(金属製)に突き刺さっている。

 

 しかし、不思議な事に引っ掛かったと思われる人物は見当たらないし(厨房には愛美一人(・・)だけ)、鶏粥も手が付けられた痕跡はない。

 

 薬や何かの混入物が入れられた訳でもないようだ。では、一体何が……、いやよく見ればフォークが少し不自然な形に刺さっている?

 

「た、助けてぇ~」

「……この声ッ、遠藤君!?」

 

 お わ か り い た だ け た だ ろ う か ? という台詞が非常によく似合う、遠藤浩介(えんどうこうすけ)がフォークによってキッチンカウンターに張り付けられていた。

 

 世界一影が薄い男、浩介だ。結構な頻度で自動ドアが反応しない、浩介君だ。もはや、電子光学の分野でさえ存在があやふやなら浩介さんだ。

 

 そして、庄司愛美が極秘裏に所属する、とある組織の監視対象でもある。いや、存在薄すぎて監視どころではないのだが。

 

 と言っても、異世界トータスに来てしまったので、その監視もする意味も無くなってしまった。

 

「なにしてんの、遠藤君。まさかとは思いますけど、盗み食い?」

「イデデっ、ちげぇーよ!」

「じゃあ、どういう訳よ。言っておきますけど、盗み食いは例え、お母さんの作る家庭料理でも彼女の作る手料理でも奥さんの作る愛妻弁当だろうと、万死に値するのよ? もし、仮に貴方が、“香織”の為に私が作った鶏粥を盗み食いしようとしたのなら、舌と歯を抜き取ってその口に舌を歯で縫い止めてあげるわ」

「こわっ、めっちゃ怖っ!? 盗み食いの罪の重さ、あまく見てた!!」

 

 取り合えず、脅してみてから事情聴衆をする愛美だったが、どうにも盗み食いではないらしい。

 

 浩介も香織が目覚めたと聞き、見舞いに行こうとしていたらしい。しかし、愛美と同じく、見舞い品がないのはどうかと思い、五日ぶりに目覚めた香織の為に口にしやすい食べ物を探しに厨房へ来たらしい。

 

 そこで、何やら物珍しい緑の鶏粥があったので近付いたら……

 

「……私のトラップに引っ掛かった、と?」

「そうです! 盗み食いなんてしません! しようとも思いません!」

「そ。ならいいわ」

 

 罪が晴れたので、浩介を張り付けにしているフォークを抜いてやる。

 

「……酷い目にあった…」

「好奇心は猫をも殺す、よ」

 

 早く香織にお粥を持っていってあげようと、お皿を持ち上げた時、それは起きた。

 

「あれ? 浩介??」

 

 突然、浩介の気配が消えた。いや、突然という浩介から目を離してお粥の方を向いてから、浩介が居なくなった。

 

 もう、香織のところへ向かったのだろ──

 

「……目の前にいるんだけど」

「あっ。ごめん」

 

 これが浩介が生まれ持った能力。一旦目を離せば、もう見付ける事は出来ない!

 

 とある組織では彼の事を書類で、

 

===============================

 アブノーマルティ No.171 [存在しない男]

 カテゴリー【人型超常】 警戒レベル【グリーン】

 

 概要

 

 絶対、ヤツを見失うな!

 

===============================

 

 と記録している。

 

 しかし、組織のほとんどの構成員がこの書類の存在を忘れている。

 

 彼女、庄司愛美は覚えているが、勿論この情報は外部に漏らしていない。

 

 若くして優秀なエージェントである彼女は、機密保持はしっかりと守るのだ。……観察対象をしょっちゅう見失うが。

 

 

 

 緑の鶏粥を持って愛美は一人で、香織の部屋へと向かった。……正確には一人ではないのだが。

 

 トレーを持っているため、両手が塞がっているので、一緒に来ていた浩介がドアを開けてくれるのだが、彼の存在は無意識の中へと追いやられ、ドアが自然に開くことに疑問すら感じない

 

 予測はしていたが、彼女の部屋にはすでに先客がいた。

 

 学校の五大ビックネームこと、ビックファイブのメンバーである天之河光輝と八重樫雫に坂上龍太郎だ。香織もビックファイブのメンバーであるし、基本的にこの四人でいる事が多いので、予測するのは難しくない。

 

 次に、ロリ元気っ子のこと、谷口鈴。クラスのムードメイカーでマスコットキャラ的な人気があるし、香織達とも仲が良い。

 そして、その鈴と親友であるメガネっ娘の中村恵里。少し控えめで自閉気味な気もする図書室に居そうな女の子だ。

 

「こんにちはー。そこのお寝坊娘さんや、お粥をお一つ、いかが?」

「あ、愛美ちゃん。ありがとう」

「まなっち、さっすがー! 気が利くねー、オカンだねー」

「ちょ、ちょっと、鈴!」

「やめてよ、スズりん。オカンは雫だけで十分でしょ?」

「……どういう意味かしら、庄司さん?」

 

 軽い挨拶と共に皆の輪に入っていく愛美だが、何故か雫に対しては少し刺があった。

 

 雫と愛美がニコリと笑顔で睨み合う。

 

(((女子、こわぁぁぁ)))

 

 光輝、龍太郎、浩介の三人は思わず口を閉じたままだった。ちなみに、浩介も挨拶はしたのだが……、察してあげてほしい。

 

 色の事は全く気にせずに、パクパクと鶏粥を食べていく香織。やはり、睡眠中だったとはいえ五日間ご飯を食べていなかったので、腹ペコのようだ。

 

 しかし、その横で「アンタ、これ何入れたのよ?」「は? 別に特別なものは入れてませんけどぉ?」「何言っているのかしら? 何かおかしなもの入れなきゃこんな色にならないでしょ?」「入れてねぇーよ。んな事思うのはテメェの心が汚れてっからだろ?」「何ですって!? この阿婆擦れっ!」「誰が阿婆擦れかっ! この清楚系ビッチ!!」という旨の会話をしている雫と愛美。

 

 二人の仲が大変よろしいのは、ある一人の男の存在に起因する。

 

 その人物とは、雫とは剣術を共に習う古馴染みである浮世離れした少年だ。

 

 光輝達四人組と合わせて、ビックファイブと呼ばれる件の少年は、光輝と同等あるいはそれ以上にモテる。活発に行動を起こす光輝を太陽と言うなれば、物静かだが確かな包容力を持つその人は月と称されるほどだ。

 

 学校の二大王子、対なる二つの片割れ。そして今はここには居ないその少年は、蓮ヶ谷レンジである。

 

 光輝かレンジかのどちらか、あるいは両方に恋心を抱く女子はクラスの中にも多い。いや、大半がそうだ。

 

 その女子の内一人が、庄司愛美だ。

 

 とある組織から渡されている、対“存在しない男”観測器材なんかを横領して、レンジの隠し撮り写真集なんか自作してしまうくらいには、夢中になっている。

 

 もし、組織の物品を横領している事の言い訳をするなら、「こんなんで“存在しない男”が観測できるかっ! でも、性能は良いので改良の余地があると思い、試験使用しました」と言ったところか。

 

 そんなストーカーチックな彼女は、レンジと古馴染みである雫に敵意を向けている。

 

 まず、共通の事をしているのが気に入らない。

 次に、気安く下の名前で呼んでいるのが気に入らない。

 更に、彼と長々と会話をしているのが、すこぶる気に入らない。

 

 組織の力を使って存在を消してやろうかっ! と冗談混じりに思うくらいには、気に入らない。

 

 対する雫も、愛美の事を毛嫌いしている。レンジに恋心を抱き、彼と仲の良い自分にちょっかいを掛けてくるのが気に入らないのは勿論だが、何よりレンジの前で猫を被っている彼女を見ると、心がむしゃくしゃするのだ。

 

 そして、察しが良いレンジがそんな事気にせずに、優しげな美笑を彼女に向けている事が、すこぶるむしゃくしゃする。

 

 ……なんだか、似た者同士のよう気がする。

 

 香織は鶏粥を掻き込みながら、雫と愛美の平常運行の喧嘩(?)姿を見て、そんな事を思っていた。……でも、君もそのうち、そういう恋敵(ライバル)が出来るんやで?

 

 久々の食事を終えて、「ご馳走さま!」と両手を合わせる香織。そして、少し前に雫と話した事を皆にも話す。

 

「みんな、私のお話を聞いて下さい。私ね、ハジメくんを探しに行こうと思うの」

 

 光輝が口を開こうとしたが、雫から肘打ちの脇腹に受けて、黙っ……悶絶した。

 

「うん。わかってる。あそこに落ちて生きていると思う方がおかしいって言うのは。……でもね、確認したわけじゃない。可能性は一パーセントより低いけど、確認していないならゼロじゃない。……私、そう信じたいの」

「カオリン……」

「香織さん……」

「私、もっと強くなるよ。それで、あんな状況でも今度は守れるくらい強くなって、自分の目で確かめる。南雲くんのことを。……だから、みんな」

 

 香織はその場で皆に深く頭を下げる。

 

「お願いです。力を貸してください」

 

 雫は元より、他の皆も、そこには異を唱える者は居なかった。

 

「……俺も行くぜ」

「「「「「あ、遠藤くん……」」」」」

 

 少年は心が折れた。

 

「……というか、レンジ君の事知ってる?」

 

 何故、ハジメを助けに自主的飛び込んだレンジの事が含まれていなかったので、念のため確認してみる愛美。

 

「え? 蓮ヶ谷くんがどうかしたの?」

 

 眠っている最中も、起きた時も、ほとんど香織から離れなかった雫を、愛美がジト目で睨みつける。

 

 今回は流石の雫でも分が悪い。何せ、自分が伝えるべき事だったのだ。彼女は逃れるようなそっぽを向いた。

 

「香織ちゃん、気絶させられちゃったから知らないだろうけどね。“……俺、行ってくるよ。必ず、ハジメを助けて戻ってくる”ってレンジ君も飛び込んで行ったんだよね」

「えええええ!?」

 

 友達のまさかの行為に、大変驚く香織。まあ、クラス最強のステータスを誇る男が、まさか飛び込んでいったとは夢にも思うまい。

 

「だから、ハジメ君は生きてると思うよ、レンジ君と一緒に。……貴女とそう思うでしょ、雫?」

「……ええ。貴女と同じ考えなのは癪だけれど、レンジ君はそんな弱い男じゃないわ。必ず、ハジメ君と戻ってくるわ」

 

 それは香織にとって、嬉しい朗報だった。

 

 彼は最強と共に居る。生きている。絶対に。

 きっと、二人で這い上がってくるのだろう。

 

「なら早く迎えにいって、“お帰りなさい”って言ってあげなくちゃ……」

 

 少年少女達は、決意する。二人を必ず迎えにいくと。

 

 それは真逆の立場になって叶うのだが、まだ少し先の話だ。

 

 

 




 
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 まぁ、無理に書いて頂く必要はありません。ちょっと気が向いたら、「仕方ない。アドバイスしてやるか」程度のお気持ちで十分ですので。

 もし、遠慮して躊躇っている方が居りましたら、ぜひ気にせずに書いてください。

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