翔が更衣室で着替え終わり、試験会場に向かうとそこには数十メートルの外壁があった。
大きな門にはEと書かれており、Eグループの試験会場ということがわかる。
門の下には多くの受験生が集まっていた。
それぞれの個性を生かすためであろう、それぞれ個性豊かな運動着を着て集まっている。
ちなみにかけるが選んだ服は、至ってシンプルだ。
父から借りている伸縮、防刃がとても優れているズボン。
それのみである。
翔はもともとこの試験では竜人にまではなるつもりでいるため、上着は着ていなかった。
流石に上半身裸は目立つのか周りの受験生がチラチラと見ている。
翔はしっかりと鍛えているため、男はその肉体を見て警戒を強め、
女は、翔のかっこいい顔、鍛えられた腹筋を交互にチラチラと見て顔を赤らめていた。
そうしていると、
巨大なEと書かれた門が開いた。
中を見た受験生たちは驚きの声を漏らしていた。
「お、おい、すげー!見てみろよ!町があるぜ!」
「試験のためにここまで準備する雄英すげーー!財力すげー!」
「マジでゲーム見たい!サバゲーっぽいな!!」
それもそうであろう、門を開くと目の前には町が広がっていたのだから。
翔も本当に驚いている。
「本当にすごいな、これがあと何個もあるのかぁ。雄英の敷地面積どれくらいなんだろ?」
そんな意味もないことを苦笑いしながらつぶやいた。
そのようにガヤガヤしているといきなり声が聞こえた。
『はい、スタート!』
「....え?」
翔は一瞬何が起きたのか理解できず体が固まってしまった。
周りの受験生たちも同じであろう、戸惑いの声があふれていた。
しかし、言葉の意味を理解すると慌てたように、走り出して言った。
「や、やばい!じゅ、準備しなきゃ!」
翔も相当慌てており、急いで竜人形態に移行した。
全身を鱗で、覆い被さり、強靭な尻尾と翼が生える。
それを見たまだ残っていた受験者が驚きの声を漏らしていたが翔は気にしない。
急いで前に走り出し、羽を一気に羽ばたかせて空高く飛び立った。
「へぇ、まさか。あいつが、ウェルシュさんとこの子供か。随分と今年は面白いの多そうじゃねぇーか。」
プレゼント・マイクは自身がスタートとの合図をする、Bグループの仕事を終えると、別のグループの試験用のモニターを見ていた。
それは偶然であったが、ちょうどEグループの合図が始まったところであった。
その少年は、いきなり始まったことに戸惑っていたのだろう、最初は動くことはなかったが、言葉の意味に気がつくと即座に個性を使って変化した。
プレゼント・マイクはその個性を知っていたので驚いた。
彼が個性を理解すると、以前にその個性を持つ、ヒーロー、ウェルシュ・ドラゴンに会ったことを思い出した。
その時彼は言っていた。
「来年うちの息子雄英受けるらしいんだよねー。いやぁ、あいつ受かるかなぁ?」
とすこし息子が自慢なのであろう、鼻高々に言っていたの思い出し、プレゼントマイクは苦笑した。
「そっかそっか、今年か。エンデヴァーさんの息子といい、ウェルシュさんの息子といい。今年はちょっと面白そうじゃないか。体育祭がたのしみだな!」
プレゼント・マイクは楽しそうに笑って自分のグループの監視に戻った。
翔は慌てて飛び出したものの、前には受験生がいるので今から向かっても無駄だと思い、全体がよく俯瞰できる位置まで飛び上がり、周りを眺めていた。
「うーん。近くの敵はすでに他の人たちが倒し始めちゃってるし、どうしよ。やっぱ機動力を生かして誰もいない奥の方から倒して回ろうか。」
会場は直径1キロはある。
それを10分で回ろうなんて機動力が高くない個性の人たちには厳しいであろう。
翔は入り口から遠く敵が密集しているところを見つけると羽を動かし、一気に加速した。
数秒で、数百メートルを移動した翔は、3ポイントが3体、2ポイントが1体、1ポイントが4体と密集しているところに向かって拳の爪を振りかぶって上空から勢いをつけ一気に降り立つ。
すれ違いざまに3ポイントヴィランと、2ポイントのヴィランを切り裂いた。
切り裂いた拍子に爆発した爆風を翼で吹き飛ばしながら楽しそうに笑っていた。
「これで、5ポイントだな!」
ここは試験管たちが集まる一室。
試験中の受験生を監視に何かあった際に駆けつけるところだ。
暗い部屋の中で無数のモニターが起動していた。
すべて受験生を映していた。
「いやぁ、今年は豊作じゃない?この金髪爆発頭のヤンキーなんてずっと駆け回ってるし、すごいタフネスね。」
「うむ、こっちも見てみろ、まさか、こいつは彼の息子か?全く同じ個性だな!この圧倒的な機動力に破壊力。本当におもしろいのがおおいな!」
画面の中では、すこし暗めの金髪で爆発した髪を持つ目つきが鋭い少年がいた。
彼は誰よりも早く飛び出し、すれ違いざまに個性の爆破を使い次々と撃破している。
ずっと走っているにもかかわらず息が切れた様子もなく、走りつづけている。
違う画面には、体を銀の鱗で覆い、羽を使った機動力を生かし、空からのヒット&アウェーで次々とヴィラン達を撃破していく少年が映っていた。
どちらも共通して言えるのはとても楽しそう、ということであろう。
よく笑っている。
「いやこれからだよ。本番は。さぁ、君たちの本気を見せてくれ!」
男の人はカバーガラスで覆われていた赤いボタンに触り、スイッチを押した。
「ふぅ、ある程度倒し尽くしたし、これで大丈夫かな?あれ何ポイントだっけ?4、50くらいかな?」
翔は自分が倒したポイントを忘れていたことにすこし恥ずかしがっていた。
自分でも驚いていた。
この試験をすごく楽しんでいたからだ。
彼は今まで訓練では組手以外ほとんどしたことはない。
それゆえ、これだけ暴れたことはなかった。
翔は自分が此処まで好戦的なことにすこし戸惑っていたが、今の気分は最高に高かった。
「周りの人達より圧倒的に倒しているし、大丈夫だとは思うけど。前考えてた追加ポイントがあるか知りたいんだよなぁ」
翔は羽を動かし空に浮かびながら、追加ポイントのことを考えていた。以前考えた通り、翔は、救援活動、援護活動、にポイントが入るのではないかと睨んでいる。
『残り5分を切ったぜー!受験生リスナー頑張れよー!』
プレゼント・マイクの声が聞こえてきた。
「考えても仕方ないか、どうせポイントは十分稼いだし、そっち方面をやってみるか。」
翔はそう呟くと、受験生が多い密集したところへ飛んで行った。
翔がやることは変わらない。危なそうな受験生がいると空から、急降下し、一気に倒すことである。
「ちょ、ちょっと二体はずるいんじゃないかしら」
ケロケロと台詞の後に続けて言っていた女の子は、絶賛ピンチ中である。
カエル型の異形系の個性なのであろうか、すこしカエルっぽい顔をしている。
カエルっぽい顔と言っても不細工なわけではない。
とても可愛い顔立ちをしている。
丸みを帯びてはいるが、可愛らしい範疇に収まる大きさで、目はぱっちりと大きく、カエル型の個性ゆえか、驚くほど肌がみずみずしく潤っている。女の子ならすごく羨むであろう。
それに動きやすさを重視したのであろう、体に張り付くようなピチピチの服を着ていたためスタイルがダイレクトにわかってしまう。
平均以上の胸は、締め付けられることにより、上方向に盛り上がっており、大きく谷間を作っている。
全くたるんだ様子の見えないお腹に、曲線がすごく美しいくびれ。
そんな女の子は、前後に3、1ポイントのヴィランに囲まれていた。
周りも自分の対峙するヴィランに必死なのであろう、助けに入る様子はない。
カエルの女の子はどうやって切り抜けようかと考えていると、風を切るような音が上から聞こえたと思うと、目の前の3ポイントとヴィランは爆発した。
翔はピンチに陥っている女の子を見つけると片方のヴィランめがけて一気に降り立ち、すれ違いざまに切り裂いた。
爆発による煙を羽で吹き飛ばしつつ女の子に声をかけた。
「君、大丈夫?怪我はない?もう片方は一人で行ける?」
「だ、大丈夫!後は自分で行けるわ!」
かけるの心配そうな表情に、一瞬目を奪われながらも気丈に答えた。
そんな女の子の反応を見て翔はもう大丈夫かと次の標的を探そうかと飛び立とうとした時、地響きが響いてきた。
「きゃっ!」
目の前の体制を崩した女の子を抱きかかえながらも、何があったのか周りを見渡した。
するとすこし遠くの方で、数十メートルはある0ポイントの巨大ヴィランが暴れていた。
ここからでも受験生の悲鳴がちらほらと聞こえてきて、逃げて来る生徒が目立つ。
翔はそんな状況を見て援護に行こうと決め、抱きかかえている女の子を離すと飛び立って言った。
「あ、行っちゃった...。人のお尻触ったといて表情変えないのはなんか悔しいわ。」
女の子はすこし頬を赤くしながらそう呟いた。
翔はとっさに抱きかかえたため自分が何処を鷲掴みしているか気がついていなかった。
もちろん普通の男だったらそいつの頬に拳が飛んでいただろう。
しかし、幸か不幸か、翔は側から見たら美形であったため、彼女はとっさに反応することなく、彼は飛び去ってしまったのだ。
「もし、一緒に学校受かってたら、一言文句言ってやるわ。」
彼女をそう言葉を残して彼とは逆方向に走っていった。
翔が駆けつけると、まだ逃げ惑う受験生が多くいた。
しかし巨大ヴィランの足は止まることなく、受験生を追いかけている。
翔はこれは危険と判断したため、足止めをしようと決めた。
「僕がこいつの足止めをする!今のうちに逃げて!怪我してる人がいたら近くの人が抱えて走るんだ!」
翔は大きく声を張り上げると、そのまま羽を大きく動かし巨大ヴィランの顔面へと向かう。
そして、大きく右手を振りかぶり、うちにある力を極限まで練り接近と同時にヴィランの顔面に拳を打ち込んだ。
ーーーどごぉーーーーん!!
何かを破壊するような大きな音を聞き、逃げ惑っていた生徒は一様に振り返った。
そこには驚くべき光景があった。
巨大ヴィランの顔面が深く陥没していて、そのまま後ろに倒れたからだ。
そのままヴィランの顔面は爆発した。
生徒たちはヴィランが倒れた時に響いた地響きを気にすることなく、目を見張っていた。
2メートルほどの鱗で覆われた龍人が腕を振り抜いた状態で空を飛んでいたからだ。
「お、おい、まさか、倒したって言うのか?!あの巨大ヴィランを...?!」
「そ、それにあの個性ってまさか!ウェルシュ・ドラゴンと一緒じゃねーか!!!!!!」」
「同じ個性?、いやまさか、息子か?ウェルシュに息子がいるって噂では聞いたことはあったが...。まさか、同期とはな。」
彼らはまだ試験中ということを一瞬忘れ、思い思いに驚いていた。
『タイムアーーーーープ!!!!』
そんな声が、試験会場中に広まった。
「ふぅ、いってぇ....。やっぱ流石に、無茶だったか。拳の鱗が数枚剥がれちゃったか。倒せたなら十分か。」
翔は鱗が剥がれた方の腕を振りながら、自分ができた結果に満足していた。
それから翔は、受験生がそれぞれな表情を浮かべて着替えている中、カバンに入れていた携帯が震えるのを感じた。
一佳からだった。
内容は自分がいつも以上に力が出て45ポイントも取ることができたそうで、翔に早く知らせたくてメールしたそうだ。
翔はそれに苦笑いを浮かべながらも着替えを済ませた。
試験が終わり、翔は一佳と待ち合わせをしていたところで待っていた。
「かけるー!」
そんな声に振り返ると満面の笑みを浮かべた一佳がいた。
「翔どうだった?!私は手応えは十分あるよ!」
「僕もバッチリだ。」
翔は一佳と同様に満面の笑みを浮かべながら答えた。
「そうかそうか!!」
一佳はよほど嬉しかったのかいつもはしないであろう、翔の腕を胸に抱き寄せて腕を組みながら駅に向かって歩き出した。
これで試験は終わりです。