今翔がいるところは、住宅街に存在する幼稚園である。
翔の父こと、翼はヒーローとして日々活躍しているため、日中に自宅にいることは少ない。
翔の母こと、飛鳥は専業主婦で日中は家事があるため忙しい。
それに、翼や飛鳥は翔に元気に遊んで欲しく、友達を作って欲しいと思っているため、日中は幼稚園に通わせている。
「かける君、あっちで砂のお家つくろー!」
翔はそれまで、友達の男の子たちと仲良くサッカーで遊んでいて疲れたので、花壇の脇の大きな木に背を預けなら休憩していた。
そこに声をかけてきたのはオレンジがかった、ロングの髪をサイドに、一つにまとめて縛っている女の子だ。
名前は拳藤一佳(けんどう いつか)。
身長は翔と同じくらいの100センチ前後。
子供特有の白く、きめ細やかな肌。
しっかりと筋の通った高めの鼻。
つり目がかった目はまだ子供であるため可愛らしさが残っているが、少し気の強そうであり、意志の強そうな印象を与えている。
控えめに言ってとても可愛らしい容貌であった。
「うん、いいよ!いつかちゃん!」
さっきまで遊んでいて疲れているであろうに、即座に笑顔を向けて返事をするその姿は父の翼の影響を少しずつ受け、紳士然としていた。
それから翔と一佳は砂浜で仲良く遊んでいる。
「かける君はそっちから腕伸ばしてー。私はこっちからやるね!」
彼らが今行なっているのは、なんてこともない砂で作った山に、トンネルを掘る作業。
砂場で遊ぶと言って、はじめに作るものと言ったら大抵はこれであろう。
二人とも両腕の裾をまくってはいるが、穴を掘るため手を伸ばしているため顔や服が所々砂で汚れていた。
「いつかちゃん!こっちは、もう腕が届かないよ。そっちは届きそう?」
そう翔が尋ねると一佳は腕を一生懸命伸ばしながら答える。
「ちょっとまってー!んっ〜〜!届いた!やったー!」
一佳が砂を崩しながら手を伸ばし、ついに砂壁を崩しもう一方の翔が作っていたトンネルと繋がった。
それがよほど嬉しかったのかトンネルの中で二人は手をつないだ。
「いつかちゃん、とどいたね!手、つないじゃった。ははっ。」
翔は純粋な笑顔で照れる様子もなくそう答える。
幼稚園児、4、5歳の男の子が女の子と遊ぶことはあるだろうが、男の子がここまで純粋に女の子と向き合うのは少し珍しい。
この年頃の男の子は好きな子にイタズラしたり、からかったりすることが多いのだろう。
とくにいつかは見た目どうり、少し?気が強い。
見た目も他の子と比べても可愛らしい表情をしているため、男の子が一佳を女の子扱いすることは少ない。
きっと照れているのだろう。
翔は父の母に対する紳士然とした態度から学び、女の子の扱いがうまい。
父から女の子に優しくするよう教育されているからだろう。
それに、父母ともに、優しめな風貌の美形なため翔も例に漏れず優しい風貌の美形に育ってきている。
翔は女の子にも優しくかっこいいため、絵本の中に出てくるような小さな王子様と言っても過言ではないだろう。
そんな翔が一佳に笑いかけているのを見て照れるのは仕方がないだろう。一佳もまだ女の子なんだ。
翔と過ごしていく中で好きになるのは当然言ってもいいだろう。
「そ、そうだね!あ、次は何して遊ぶ?あ、そうだ!かける君の個性見せてー!」
一佳照れた様子でそう答えた。
「んー。まだお父さんからせいぎょできないから使っちゃダメーって言われたから...。」
翔はすごく申し訳なさそうにそう言った。
かけるにとっては本当は一佳に自分の個性を見せたかったのだろう。
しかし、翔は父に言われたため見せることができなかった。
一佳はかけるの個性を見れなく残念がっているが、翔の申し訳なさそうな表情を見て話を変えた。
「じゃぁどんな個性か教えてよ!私の個性はね、手がおっきくなる個性なの!」
一佳はそう言って、左手を大きくしながらそう答えた。
一佳の個性は「大拳(たいけん)」
拳を大きくする個性。
翔は自分の個性に誇りを持っているのか、嬉しそうに自分の個性について答える。
「僕の個性はねー、お父さんとお母さんと同じなんだ!
僕はまだうまく使えないけどドラゴンになるんだよー!」
そう、翔の個性は父と母と同じ個性である。
翔の個性「竜化(りゅうか)」とは分類すると、変身系である。
文字通りドラゴンになることができる個性である。
翔が体の所々に銀色の小さな鱗が生えているのはまだ個性がうまく制御できていないためである。
これがうまく制御できるようになると見た目が人と変わらない姿を維持することができる。
人の姿をうまく維持できないと、竜の鱗は鋭く怪我や、服の破損につながるため翔は生傷が絶えず、服の破損が多い。
しかし初めて個性が発動した時よりはマシになってきている。
発動したての頃は制御ができなく服が破損しないように基本家の中は全裸で過ごしていた。
前、かけるたちが買い物しに行ってたのは翔が服を破きまくったための補充である。
竜化の個性にに伴い副作用として身体強化に補正がかかるので翔の個性の特訓は力加減から始まる。
竜化の真価が発揮するのはかけるにはまだまだ先のことになるが、竜化の真価を発揮できることができたら、とても強力な個性となる。
なんといってもドラゴンである。
ファンタジーの代名詞とまで言われ、最強の生物といわれているあのドラゴンである。
翼を動かすだけで木を吹き飛ばし、前足を薙ぎ払うだけで当たった生物は、簡単に絶命する。
それだけ強力ゆえに、翔の父は完全制御ができるのでトップヒーローと肩を並べられるのだが。
協力がゆえに制御を誤ると簡単に人を傷つけることができるためあの優しそうな翼でさえ、個性の訓練の時は真剣に取り組んでいる。
「すごーい!かっこいー!かける君のお父さんのドラゴンかっこいいもんね!」
翔がそう答えると一佳は目をキラキラさせながら興奮しながらも、声を抑えていた。
基本的にヒーローは職務中以外で自分の身分を明かすことは少ない。
完全隠蔽とまではいかないが個人情報を公開することはほぼない。あるとすればテレビ出演を頻繁にしており、アイドル系でヒーロー活動を行うくらいであろう。
ヒーローは犯罪者を直接逮捕するゆえに、犯人に怨みを買うことは少なくない。
ヒーローとて家族がいる。
家族を危険に晒すわけにはいけない。
しかし一佳と仲良くなる過程で翔が口を滑らせてしまったのだが、一佳にお願いして秘密にしてもらっている。
「こらー!一佳ちゃん!個性使っちゃダメでしょー!」
そこで現れたのは幼稚園の保育士の女性。
子供の4、5歳のこの時期は個性が発揮する時期である。個性が発揮すると大抵の場合は暴走して周りに被害が出る。
そして、子供は制御が稚拙なため、個性の使用は禁止されているのではあるが、子供に個性の使用を禁止しても簡単に話を聞くことは難しいだろう。
なんていったって個性と言ったらヒーローになれる可能性であるのだから、使うなという方が難しい。
それ故に、保育士は子供の世話以上に個性の使用に敏感になっている。
子供が意図せずとも個性によっては簡単に怪我をしてしまうのだから。
「先生来ちゃった!」
一佳慌てて個性を止めて手を元の大きさに戻した。
「まったくもう。一佳ちゃん、個性は使っちゃダメでしょ?」
先生は怒りながらも、子供が個性を使用するのはよくあるのだろう、慣れた感じで叱っていた。
「はーい。ごめんなさーい。」
そんな先生と一佳の会話を聞きながら翔は苦笑いを浮かべていた。
先生はそんな時折見せる年に似合わない表情におかしくなり、笑ってしまったが、光に反射して綺麗に輝く銀髪を撫でながら注意した。
「ふふっ。かける君も個性を使ったらダメって言わなきゃダメでしょ。」
「だって、一佳ちゃん楽しそうで可愛かったら注意するの忘れちゃった!」
翔はどこまでいっても純粋である。
そのセリフを聞いて先生は翔君の将来を少しばかり心配するが、自分の子供の頃にこんなこと言われたことなかったと思い出し、少しばかり、一佳を羨ましがっていた。
そんな一佳はそのセリフを聞いて顔を赤らめている。
それから翔はお昼を過ぎるまで一佳と遊び、他のことも交流しながら過ごしていく。
次回から一気に飛びます。
具体的には中学生3年の秋頃まで