今日のヒーロー基礎学の時間となり、教室に入ってきた相澤は生徒達に今日の内容を告げる。
「じゃあ今日のヒーロー基礎学だが俺とオールマイト、それともう一人の三人体制で見ることになった。授業内容は、レスキュー訓練だ。」
レスキュー訓練と聞き、それぞれが感想を述べていく。
レスキューはヒーローらしい、今回も大変だな、どんなことするのかな?
など、生徒達は楽しそうに話している。
翔もレスキュー訓練の内容を予想しながらも、今日も面白そうだ、と声には出さず笑っていた。
「おーい静かに、訓練場は少し離れた場所にあるからバスで向かう。それぞれコスチュームに着替えてバスへ乗り込め。」
相澤はそう話し終えると、自身も準備があるのか教室から出て行った。
翔達が更衣室で着替え終わるとみんなでバスがある駐車場に向かっていた。
駐車場に着くと、早速自分の仕事を全うしようとしたのか、飯田がバスに乗る順番を決めて2列に並ぶように指示をしていた。
翔は本当に真面目なんだなと、思い苦笑いを浮かべていた。
しかしバスは、遠足などで使うようなバスではなく、市営バスのような壁際に長く座れるようになっているため無駄に終わったが。
着くまでの間、バスの中では誰が派手で強い個性かが話題に上がっていた。
「やっぱ爆豪に、轟、それに天野は強い個性に、かっこよかったな!」
昨日の訓練を思い出したのか、切島がそういった。
周りも異論はないのかそれぞれが同意の言葉を返す。
「俺が1番だ!!こんな腐れツートン、上半身裸野郎に負けるわけねーだろ!!!」
爆豪は席から立ち上がりながら自分が1番と主張している。
「今日は上着着ているんだけどな。」
翔は爆豪のその言葉に訂正した。
翔は訓練の内容がわからなかったため、今はペンダントにしまっていた上着を着ている。
下の黒のスーツのようなものにマッチした、同じく黒状のジャケットに、白のTシャツを着て、その上からペンダントをかけていた。
「爆豪ちゃんは切れてばっかだから人気出なさそう。」
蛙吹梅雨は爆豪を見ながらそう呟いた。
「あぁ?!出すわ!人気!!!」
爆豪は自分の人気が出る将来像を疑っていないのか、梅雨にそう言い返した。
「この付き合いの浅さで、糞を下水で煮込んだような性格って認識されてるってすげーよ。」
と上鳴は言外にお前では無理と笑いながら告げた。
「はぁ!?なんだお前のそのボキャブラリーは?!殺すぞ?!」
爆豪はまた自分がバカにされていると気づいたのか、周りに怒鳴り散らしていた。
一方緑谷は周りにいじられるような、爆豪は見たことがなかったのか、頭を抱えていた。
「く、くふふははは!
あぁ、本当入学してよかった。楽しいや。」
翔はこの光景を見て入学を間違ってはいなかったと窓の外を見る眺め、声を上げて笑いながらそう呟いた。
「そうだね!!」
隣に座っていた一佳はこんなに笑う翔が珍しいのか嬉しそうにそう答えた。
「何そこで笑ってんだ!!!クソががああああああ!!!」
爆豪はまだいじられていた。
それからバスは十数分走らせ、森の中の舗装された道を進んでいくと、東京ドームのような、ドーム状の大きな建物が見えてきた。
バスがドーム状の建物の入り口に止まると生徒達は降りていく。
『みなさん待ってましたよ。』
ドーム状の建物の入り口で彼らを迎えたのは、130センチほどの身長で、宇宙服を身にまとったヒーローであった。
ヒーローネーム「スペースヒーロー13号」
災害救助で目覚ましい活躍をしている人気ヒーローだ。
お茶子はスペースヒーローのファンであったのかジャンプしながら喜びの声を上げている。
早速中へ入ろうと13号はみんなを中へ連れていく。
横幅5メートルほどの白い階段を登って、横幅3メートル、縦5メートルはある大きな扉をあけて、中に入った。
「スッゲェ!USJかよ!!!」
切島が興奮した様子でそう感想を述べた。
中に入ると、まるで某遊園地のようなアトラクション風な光景が広がっていた。
『水難事故、土砂災害、火災、暴風、エトセトラ。
あらゆる事故や災害を想定して僕が作った演習場です。
その名もUSJ(嘘の災害や事故ルーム)!!!』
13号が両手を広げながらこちらに向き直しそう説明した。
(((本当にUSJだった!!!)))
「仕方ない始めるか。」
オールマイトには何かが起こったのか、相澤は仕方ないと、ため息をついてそういった。
『始める前にお小言を、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ....。と。
皆さんご存知とは思いますが、僕の個性はブラックホールでなんでもチリにしてしまいます。
しかし、これは簡単に人を殺せる力です。みんなの中にも、そういう個性を持つものもいるでしょう。今の社会は個性を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているように見えますが、しかしそれぞれが人を容易に殺せる個性を持っていると忘れないでください。』
彼の言葉に誰もが真剣な表情で耳を傾けていた。
「よし、んじゃあ、まずは....」
相澤が訓練を始めようと彼らに指示をし出すと、突然異変が襲ってきた。
空中に一瞬電気が走ったこと思うと、
階段を降りて少しいったところにある噴水のところが、まるで空間が歪んでいるように蠢き出した。
それが異常事態とわかったのか、相澤と13号はとっさに生徒達を後ろにかばいながら警戒を露わにした。
「一塊になって動くな!!13号、生徒を守れ!!!」
歪んだ空間から突然闇が広がったと思うと、空間移動の個性によるものか、そこから個性を発動させた状態の人が大量に出てきた。
奇しくも、命を救うための訓練の時に翔達の前に現れたのはヴィランであった。
切島がもう入試の時同様に、始まっているパターンかと口を漏らすが、それが聞こえた相澤は首にかけていた黄色い大きめのゴーグルをつけて、鋭く生徒達に告げた。
「あれは、ヴィランだ!!」
そのセリフを聞いた翔は瞬時に上着を脱ぎ捨て、竜人形態に移行した。
そしてそのまま、前にいた、一佳、梅雨を守ろうと、彼女らの前に出て警戒を露わにする。
「一佳、梅雨!下がって!!!」
黒い闇の中からぞくぞくとヴィラン達が出てくる中闇をだし、闇で人型を形成しているヴィランが口を開く。
「イレイザーヘッドに、13号。おかしいですね、先日いただいた教師側の名簿ではオールマイトがいるはずなのですが...。」
「やはり先日のマスコミ事件の隙にやられたか...!」
それを聞いた相澤は大きく舌打ちをし、相手を睨みつけながらそう言葉を発した。
噴水の周りに展開された闇からぞくぞくとヴィランが出てくる。
既に数十人。
「どこだよ....?これだけ大量に引き連れてきたのに....。オールマイト...。平和の象徴....。子供を殺せばくるかな...?うひゃははは!!」
彼らのリーダーなのであろうか、1番真ん中から出てきた手袋を顔や腕などそこら中につけているため容姿はよくわからないが、20代半ばくらいであろうその男性は、オールマイトがいないのを確認すると、不気味そうな声を上げて笑い出した。
プロヒーローが何と戦っているのか。
ヴィランとはどのような存在なのか。
彼らはまだ入学して間もないであろうに、出会ってしまった。
ヴィランに、途方も無い悪意に。
相澤はリーダーらしき男のセリフを聞くと、特殊な物質でできたマフラーを起動し、器用に操り出し、戦闘態勢に入った。
彼らと、ヴィランまでの距離は数百メートル。
しかし、ヒーロー、ヴィランにとっては関係ない。
鍛え抜かれた肉体に、一般人にとっての数百メートルなどあってないようなものだ。
「....。これがヴィランか。ちょっと多いかな....。完全体になるか....?」
流石にこの人数はまずいと思ったのだろうか、翔は冷や汗をかきながらそう言った。
翔は、わざわざオールマイトを殺すと言っているくらいだ、全員では無いだろうが、ほとんどがプロヒーロー並みの戦闘能力を持っていると思っている。
普通のプロヒーロー並みに戦闘能力だと、翔が第三形態、完全体になると何十人が相手であろうが渡り歩ける。
ただし、相手の生死を問わずではあるが。
元々、翔の竜人形態は完全体のチカラを人に止めるため、半分以下の能力に落としている。
翔や、彼の父、翼の個性は完全体が完成系のために、中途半端な竜人形態にでは力を抑えるしかなかったのだ。
当たり前であろう、竜の肉体を人にとどめるなど、出来るわけがない。
「はぁ?!雄英高校に侵入とか馬鹿だろ?!」
切島が驚きの声を漏らす。
「先生!侵入者用センサーは?!」
八百万が焦った様子で13号にそう尋ねるが、あるはずだが....。と芳しい答えが帰ってこない。
「まさか、ヴィランが現れる前にドーム一体に走った電気か?」
翔はヴィランが現れる前の出来事を思い出し、そう口にした。
「現れたのがここだけか、学校全体か。なんにせよセンサーが反応しないってことは、そういう個性も持つ奴がいるってことだ。この時間に俺らがくるって知っていたこと、教師の把握。馬鹿だが阿呆じゃねぇ。これはなんらかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ。」
轟が相手を見て現状を冷静に分析した。
「先生、通信が不可能なら、誰かを学校にやるべきです。僕は空を飛べるので自分が向かいましょうか?」
翔は流石にこのヴィランの人数相手にプロヒーローが二人だけでは勝てると思っていないので、応援を呼ぶべきと先生に主張した。
「いや、天野お前は残れ。俺が知ってる限り、俺前は爆豪、轟に続いてクラスでトップクラスの戦闘力を持っている。しかも空を飛べるなら万が一があった場合お前がみんなを連れて逃げられる。
まぁその万が一を考えたくはないが....。」
相澤はヴィランを睨みつけながらも翔にそう答えた。
「そう、ですか...。」
翔は相澤先生も自分達だけでは対処ができないと思っていると感づいたのか、再び不安が頭をよぎる。
自分が怪我をするのは別に構わないが、クラスメイト、一佳などが怪我、もしくは取り返しがつかない事になるのではないかと危惧していた。