天翔ける竜   作:アルアール

7 / 28
ヒーローへの憧れ

一人称-翔-

 

僕が、ヒーローへの憧れを抱いたのはいつだろうか?

 

 

もし、いつ?と聞かれたら、多分4歳の頃にヒーローについて母に聞き、その時にヒーローになりたいと思った、と答えるだろう。

 

しかしその答えは本当に正しいのだろうか?

 

あの時ヒーローになりたいとは思ったが、あれはきっかけに過ぎない。

 

周りから少し驚かれほど、自分はヒーローへの憧れが強くはないと思われていると思う。

日陰先生にもそう言われたし。

僕は、自分の見た目を自覚している。

自覚しているし、その見た目を最大限活かせるよう努力している。

女性の喜ぶ扱い方、好きな話し方。

自分の元からの性質よるものか、争いごとが苦手そうと言われることが多い。

 

 

僕は、ヴィランを直接間近で見たことがあまりない。

それもそうであろう。

僕の住む地域は、閑静な住宅街、学校は、都会から外れ、緑豊かな森に面している。

よって、ヴィランが好き好んでここら辺で犯罪を犯すことは少ない。

まぁ、閑静な住宅街であるので、コソ泥が侵入なんてことがあるが、もともと住宅街に侵入するような人たちは凶暴な人が少なかったため、個性を使って暴れることがなく、本物の、個性を使って暴れる「敵(ヴィラン)」をあまり見たことがない。

 

そんな僕だが、一度だけ、間近で見たことがある。

 

多分その時であろう。

 

僕が本当にヒーローになりたいと思ったのは。

 

 

この感情が、深く、強く、僕の心に居座るようになったのは。

 

 

今日はその時のことについて話そうか。

 

僕は部屋の隅に置いてある大きなぬいぐるみをちらっと見た後、机に座り、置いてあった日記を開いた。

 

 

 

 

 

 

翔が小学校3年生の頃、翔の父、翼が珍しくヒーロー業の休暇を取っていたらしく、家に居た。

翔と翼は仲がいい。

翔に反抗期が来ないせいかもしれないが。

そんな翔と翼はリビングでレンタルショップで借りた海外映画を見ていた。

 

「かけるー、今日は父さん休みなんだ。良かったら買い物に行くか?」

 

彼も普段日中に家にいなくて、翔と出かけられていないことに申し訳ない気持ちを抱いているんであろう、翔に翼はそう話しかけた。

 

今は土曜日のお昼前。

彼の母、飛鳥は学生時代の友人と買い物へ行った。

4歳の風香は、母に連れられて一緒に行った。

多分服を買いに行くのであろう。

服の補充である。

彼女にも来たのだ個性の発揮が。

個性が発動すると調整が難しくなるため、鱗が生え、それで服を破いてしまい使い物にならなくなってしまう。

よって服の破損数が半端ないのだ。

今日はそれを買うために、友人と会うのをついでに、買い物しに行った。

 

今リビングにいるのは翔と翼のみ。

 

 

「うん!いいよ!どこへ行くー?」

 

翔は、父の翼と出かけられるのが嬉しいのだろう、目をキラキラさせ、少しソファーから身を乗り出しながら答えた。

 

「よし!じゃぁ、うーん。とりあえず、東京駅まで行って着いたらお昼を食べようか。そのあとはかけるの好きなものかってやるぞー!」

 

翼も翔のそんな姿に嬉しくなったのか、ソファーから立ち上がりながらそう答えた。

 

 

<12:30>

所変わって、今彼らがいるところは、東京駅改札前。

 

 

「ついたね!」

「あぁ、そうだな!じゃぁお昼は何にする?翔は好き嫌いがないから迷うんだよなぁー。」

 

翔は翼と出かけられることも嬉しいのであるが、翔は少し出不精であるため、珍しく来た都会にテンションが上がっているのだろう。

 

翔は、外出が嫌いではない。ならなぜ、出不精なのか、彼には妹の世話があったからである。

それも、親から強制されたわけではない。

彼は妹がの世話が好きであったのだろう、よほどのことがない限り帰ったら妹の世話をしていたのである。

 

 

「うーん。今日はね、ラーメンかな!ラーメン行こうよ!」

 

特別好きではないが、何に刺激されたのか、そう答えた。

 

「そうか、じゃぁ父さんがオススメするとこに行くかな!」

 

そう翼は答えると、翔の小さな右手を掴んで歩き出した。

 

 

 

<1:30>

翼の案内により、行ったラーメン屋で昼食を済ませると、翼と翔は公園のベンチで一服していた。

 

「かけるどうする?なんか欲しいのある?僕はなんでも買ってあげるけど。」

「じゃぁね、お父さんのヒーローグッズが欲しい!ドラゴンの大きな人形!」

翼が今後の予定について聞くと翔は楽しそうにそう答えた。

 

「っ。そっか!そうかそうかー!翔は僕のグッズが欲しいのかー!いいよ!おっきなぬいぐるみを買おうか!」

 

翼も自分の息子が自分のグッズを買う事に少しばかりの恥ずかしさはありながらも、やはり息子にすかれていることが嬉しいのであろう。

 

 

彼の父、翼はヒーローである。

ヒーロネーム「赤い竜(ウェルシュ・ドラゴン)」通称ウェルシュと呼ばれている。No.3のヒーローであるウェルシュは、自身が経営する、ヒーロー事務所、ドラゴニックソウルに勤めている。

 

彼のヒーローコスチュームはいたってシンプルだ、バリバリの肉体戦闘派ということもあるが、ゴテゴテした装飾品がついてると変身する際に邪魔なのである。

第2形態になると身長が210ほどになり、体を覆う筋肉も盛り上がり、全身を鱗で覆うため生半可な素材だとすぐさま自分の鱗によってボロボロになってしまう。

彼はそれをなんとかするために、伸縮、防刃に特化された、パンツと黒い少しダボついたズボンを特注してそれを着ている。これは第三形態の本物ドラゴンになる際は、ズボン脇に設置してあるボタンを押すと、そこに収納されているハイテク仕様である。

上は、すでに諦めているのであろう、破れてもいい安物の服。

 

さすがに、上まで揃えるほどの金がなかったのだ。

いやあるにはあるが、自分の肉体にある鱗でさえ、彼に取っては武器なのである。

それを覆うのはいささかもったいなかったっていうのが本心だ。

強靭な鱗で覆われたの肉体、拳を当てるだけでも、腕はボロボロ、生半可な威力じゃ全く刃物を通さない強靭さ。

 

そんな彼ではあるが、やはりドラゴン。ファンタジーの代名詞。強さだけではなく、見た目も彼の人気に繋がった要因である。

子供の人気度で行ったら、驚く事に、あの平和の象徴オールマイト、と並ぶ程である。

それゆえ、グッズ、二次創作、などから莫大な利益を得ており、すでにヒーローとして働かなくてもいいくらいに稼いでいるという、大人の事情もあるが、翼にとってヒーローとただ金を稼ぐ職業ではない。

彼にとってヒーローは憧れのままであり、息子が憧れている対象なのだ。お金が貯まったからと行って簡単には辞められない。

 

彼らが向かった先は、駅前にある大きなビルの中にあるヒーローショップ。

今や、ヒーローショップは一駅一駅探せばすぐそばにあるくらい多い。

その中でも、一番大きいと言われているショップへ来ていた。

 

ヒーロー人気がすごいのか、あちこちで、目を輝かせた子供たちが、それぞれ親に買って欲しいものをねだっている。

床で転がっている子もいて、親が困り果てていた。

 

そのショップの中で大きなスペースを締めるのが、我らが平和の象徴オールマイトスペース、もう片方が翔の父、翼のウェルシュスペースである。

翔と翼はそのスペースに来ていた。

翔が一番に駆け寄ったのは150センチほどのサイズの龍人形態のぬいぐるみのあるとこである。

150センチであるものの他はほとんど再現されていた。

それに大きな槍も持っている。

 

翼は、格闘技全般で戦うが、大きなヴィランの場合は殺さないよう、刃を落とした、大きな槍で戦うため、それが印象に残る場合も多い。

 

 

翔が欲しているのがわかったのだろう。

それからはトントン拍子て買い物が終わり、今大きなビルを出たところである。

 

 

<3:20>

この時間が翔の運命の歯車が動き出す、彼の将来を決めた決定的瞬間である。

 

 

 

 

 

一人称-翔-

僕とお父さんは今ビルを出た。

僕は今日はお父さんと映画を見て過ごすと思っていたが、お父さんから買い物に行く事を言われて嬉しかった。

お父さんは、僕が欲しがっていたぬいぐるみを見たらすぐに僕の気持ちがわかったのであろう、それをショップ店員に言って、買う事にした。

150センチでは持てなくはなく、電車に乗るときに邪魔になるけれど、僕はこの人形が買えたことが嬉しくて、どうしても自分で持って帰りたかった。

お父さんは苦笑いをしていたけど許してくれた。

 

それから、僕たちがビルを出て、駅に向かっている頃、それは聞こえた。

 

人々の悲鳴である。

父さんは即座に悲鳴の内容を確認するために、僕とぬいぐるみを抱えて走り出した。

僕はこんな切迫した人の悲鳴を間近で聞いたことがなくただ、唖然と少しばかりの恐怖で固まっていた。

 

僕らがついた頃は、日中の駅前にもかかわらず人気がなく、いるのは、2メートルほどの、二足歩行っぽいワニの形をした人だった。

あとは、所々にいる、怪我した人であろう。うめき声をあげて少しでもヴィランから離れようと体を引きずりながら後ずさってある。

 

翼はそんな光景を見て毎度のことながらも、怒りに震えたが、見たところ死者が出ていない事に安堵していた。

 

僕は、その光景にただ震えて見ていただけだった。

僕は今まで血を見たことがない。

いや自分の血は、生傷が絶えなかった頃によく見ていたが、こんな怖いと感じる血を見たのは初めてだった。

 

そこからお父さんの対応は早かった。

僕を近くまで来ていた警察官に預けて、懐に忍ばせていた、ヒーローマスクをつけて、直ぐに竜人形態へと変化した。

 

お父さんは怪我人へと注意が向かないように、ヴィランを挑発しながら、距離を詰めて行く。

ヴィランの目は少しおかしかった。充血しており、視線がぶれぶれで、口からよだれが垂れていた。

 

後から聞いた話だけど、ヴィランは薬物の使用により精神異常をきたし、とっさに駅前で暴れてしまったとのこと。

 

お父さんは、今までの訓練で見たことがないくらい、早く鋭い一歩で距離を詰めて、相手の懐に拳を打ち込み、気絶させた。

 

それからは警察の出番である。

警察に特殊な機械で体を拘束されて連れられて行く。

お父さんは周りにいた人たちから賞賛されていた。

 

僕はただこの心に渦巻く気持ちを、なぜこんなにも心臓がばくばくと動くのかを、なんで父が賞賛されてすごく嬉しくなっているのかを理解するのに必死だった。

 

それからお父さんは、警察の事情聴取をそこそこで切り上げて、僕たちは家に帰った。

 

家に帰ってからは、お父さんたちによると、僕は生返事しかしなかったらしく、父がやっぱりあの現場を見せた事に後悔をしていたらしいが、そうではない。

僕は考えることに必死だったのだ。

 

僕はその日は寝れなかった、この心臓のときめきをずっと感じていたかったのだ。

 

その日の僕は驚く事に10ページに渡り延々とその日のことを事細かく日記に記した。

 

 

 

決してその時の気持ちを忘れないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、あの時だ。

僕が本当にヒーローに憧れるようになったのは、みんなからしたらなんてことはない。戦闘を近くで見ただけだろうと思うだろう。

 

でも僕にとっては違ったのだ、あれが僕の人生を変えたのは疑う余地はない。

 

 

僕はあの時の気持ちを再び思い出し、気持ちが高揚していた。

それから僕は、日記を閉じて、部屋着から運動着へと着替えると、そのまま庭へ出て、妹に夕食だと告げられるまで訓練をし続けた。

 

 

妹によるといつもとは違って凄く笑顔が怖かったらしい。

少し獣っぽかったそうだ。

これも本能ゆえか、個性ゆえか。

 

風香は怖かったとは言っていたが、しっかりビデオ撮影を済ませて、兄の珍しい表情に満足してから声をかけていた。

 

 




どうでしょうか?

今まで三人称だったせいで、主人公が淡白に見えないかな?って思ったので一人称を交えてヒーローを志した理由を書いて見たのですがどうでしょう。

それと誠に申し訳ないのですが、自分はナンバー9ヒーローのリューキュウについて知らなかったのです。
ですが自分の中で竜化できるヒーローは翼だけって設定でしたので、大変、大変リューキュウ好きな方には申し訳ないのですが、主人公の父親のポジションをそっくりそのまま入れさせていただき、順位を3まであげさせていただきます...。それに伴いそれ以下の順位を下げたという認識でお願いします。
ごめんなさい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。