天翔ける竜   作:アルアール

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もう一つの物語 ②

「くそが!!!!!!」

金髪が逆立ち、不良の出で立ちの少年、爆豪勝己はイライラした感情を、道路に落ちていたペットボトルを蹴り飛ばした。

 

ペットボトルはそのまま壁に激突し、中身が漏れて行く。

 

爆豪の機嫌はそれでも治らなかったらしく、手に持っていた飲み干した空き缶を彼の個性で燃やし尽くした。

 

彼の個性は、「爆破」

手から出る汗が、ニトロのようなもので出来ており、それを自在に着火し、爆発させることができる。

 

それが彼の個性だ。

 

「勝己、そんな機嫌が治んねーなら、近くのゲーセンいこぜ。」

 

彼の友人の一人がそういうと、もう一人の男も同意して、彼に続いた。

 

「じゃぁ駅前のにしよう。あそこならカツアゲ楽にできるぜ。」

 

 

「はぁ?!ふざけたこと言ってんじゃねーぞ!バレたら俺の内申に響くじゃねーか!!」

爆豪は友人のその台詞に、本人は雄英に行きたいがため、そんな内申に響くことは出来ないと、言い返す。

 

 

そう仲間内で話していると突然、爆豪以外の男たちが爆豪の後ろを指差しながら慌て出した。

 

爆豪は振り返ると避ける間も無く、液体に拘束された。

 

 

 

そう、ペットボトルである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり緑谷とオールマイト。

 

 

緑谷の一世一代のセリフをオールマイトが耳にするがそれどころではない。

 

彼はある事情によりタイムリミットが迫っている。

それが今来てしまった。

 

緑谷が、緊張のためか目を強く瞑っていたため、目を開けると、そこには口から血を吐きながら、身長170前後のガリガリの男が立っていた。

 

そう、彼こそはオールマイトの本当の姿である。

 

「え、えぇぇーーーー!お、オールマイトは?!ど、どこ行ったの?!」

緑谷は突然の状況の変化に慌てるしかなかった。

 

そこでオールマイトは見られてしまったことに諦めたのか、何故自分が、このような姿なのか、色々と他言無用と言って、事情を緑谷に教えた。

 

彼によると、オールマイトの本来の姿は、あれであってるらしい。

では何故筋肉隆々の姿なのかというと、あれは力んでいるからとのこと。

筋肉を強調するときに力んで筋肉を浮かび上がらせると同様に、同じ原理であの姿になっているからだそうだ。

 

そのほかに何故オールマイトは血を吐き出したのだろうか。

 

それは怪我による後遺症らしい。

 

オールマイトは自分の服を捲り上げて怪我の跡を見せた。

 

「ひぃっ!」

緑谷は怪我の痛みを想像してか、ヴィランの恐怖におののいたのか悲鳴をあげた。

 

左わき腹に大きく手術痕が残っていた。

 

彼によると、5年前のヴィランとの戦闘により負った傷らしい。

 

 

「呼吸器官半壊、胃袋全摘出。私のヒーローとしての活動限界時間は一日のおよそ3時間程なのさ。」

オールマイトは悲しさ、悔しさを表情で表しながらそう言った。

 

「プロはいつだって命懸けだよ。力がなくとも成り立つとは、口が裂けても到底言えないね。」

 

残酷にもこのセリフは、緑谷の心を抉った。

 

わかっていたはずだ、

 

これが現実だって。

 

 

「人を助けることに憧れがあるなら警察官っていう手もある。警察官だって、あれも立派な仕事だ。」

オールマイトはそう言い放ち、屋上の扉をあけて出て行った。

 

緑谷にそのセリフは届いていない。

彼は現実を受け止めるので精一杯であった。

 

 

 

彼が、それからしばらくして、家に向かって帰宅していると、人が騒いでいるのが聞こえた。

彼はそれを聞いてとっさに駆けつけた。

彼はいつもヒーローが現れるところには向かっていた。

それは憧れであるからだ。ヒーロの活躍をその目に収めたいからだ。

 

 

しかし今回は、心では向かいたくはないと思っていた。

オールマイトのセリフで沈んだ心がより沈み、折れそうな気がしたからだ。

 

 

現場に着くとそこは商店街であった。

そこらじゅうから火の手が上がり、煙が立ち込めている。

商店街の入り口にはすでに警察官の手によって、出入り口が塞がれていた。

野次馬の隙を縫うように前に出ると、彼は見た。

 

そう、オールマイトが捕まえたはずのヴィランである。

ヴィランが商店街の道の真ん中で暴れていたのだ。

 

それをヒーロー達は、ヴィランの対処のため、一人は、消化活動、また一人は避難活動、また一人はヴィランと対峙していた。

 

そこで考えが至った。

 

ーーーそうだ、あのとき、僕がつかんだから....?!

 

彼がオールマイトが空へジャンプするときに脚につかんだせいでオールマイトがポケットへ入れていた、ペットボトルが落ちてしまったのだ。

 

彼はそのことに気がつくと、後悔、悔しさ、の念で押しつぶされそうになっていた。

 

ーーー僕は....!オールマイトの、ヒーローの邪魔をしていたのか....!

 

彼にとってヒーローになれないとオールマイトに言われたことよりも、自分でせいで、ヒーローの邪魔をし、こんな被害を及ぼすことになった自分の行いが、とても許せるものではなかった。

 

しかし彼は、ヒーローではない。

個性すら持っていない。

彼は野次馬の一人となって、ただただ、眺めていることしかできない。

悔しさのあまり、唇を噛みしめる。

口が切れたのか血が出てくる。

 

 

そこで野次馬の声が彼に届いた。

 

「なぁ、あれ、なんでヒーローは動けないでいるんだ?」

 

そう、ヒーローは迂闊には手が出せないでいた。

それは何故か。

 

「ほら見ろ、ヴィランに学生が拘束されてるんだよ。学生の方は、パニックのためか個性が暴走してるし。あれはつえーな、火の個性なのかさっきから爆発がすげーよ。」

 

そう、人質だ。学生がヴィランに拘束されている上に、学生の個性が強力すぎて迂闊に近づけないでいた。

 

ーーー火?爆発の個性?

 

彼の心に浮かんだのは金髪つり目の彼の姿。

 

 

「くそがぁああああ!こんな所で!俺が!!くそくそくそクソ!!!!!!」

 

緑谷が顔を上げてヴィランに拘束されている学生を探した。

そして、緑谷は、ヴィランに拘束されていた、金髪に鋭い目つきの少年と目があった。

 

そこからは気持ちなんて関係がなかった。

緑谷はとっさに警察の腕をかいくぐって前へ駆け出した。

 

「お、おい!止まれ!」

「君!危ない!止まりなさい!」

 

警察官、ヒーローの制止の言葉はすでに彼に届かない。

 

ーーーなんで、僕は駆け出したんだ....?!無個性の僕が何かできるわけないじゃないか!!

 

それでも彼の足が止まることがない。

 

彼は今までヒーローに憧れる過程で研究していたヒーローノートを思い出した。

 

今まで背負っていたカバンを、ヴィランの前に来ると思いっきり投げた。

 

「かっちゃん!!!!!!い、今解くから!!」

 

ヴィランがカバンから出たものを払っている隙に、流動体の液体で拘束されているにもかかわらず必死に拘束を解こうと手を動かす。

 

「く、くそが!デク!!!なんでテメェがここにいるんだ!!」

爆豪も自分が誰に助けらているか気がついて、そう言った。

 

 

ーーー色々理由はあるんだと思う。なんで動いたのか。でも、でも僕は....!

 

「き、君が!助けを求めているから!!!!!!」

緑谷は両目に涙をいっぱい溜めながらも、精一杯の笑みでそう言った。

 

それの言葉は爆豪の心に響いた。

 

そのセリフは、まさしくヒーローのセリフだ。

 

自分が憧れた、

自分が言うはずの、

自分がなるはずの、

そんなヒーローのセリフだ。

 

その言葉に爆豪の心が動かないはずがない。

 

今までバカにしていた相手に助けられそうになって、

自分が何もできずに、

助けられるなんて、

そんなの爆豪勝己ではない。

断じて違う。

 

その言葉に心を動かされたのは爆豪だけではない。

 

 

 

すでに、タイムリミットは過ぎている。

 

応援が来れば解決するはずだ。

 

同じヒーローを信じて入ればいい。

 

そう自分に言い聞かせていた男だ。

 

彼は、それで良いのか、

自分がしてきた行いに、

信念に、気持ちに、

反してはいないのだろうか?

 

いいや、そんなことあって良いはずがない。

タイムリミットが過ぎているからって、

ヒーローが、自分が、諦めて良いわけがない。

 

自分はヒーローだ、平和の象徴なのだ。

 

自分が....、彼を....。

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫だ!!私がきた!!!!!!」

 

 

 

 

オールマイトが彼を助ける。

 

 

 

突然のオールマイトの登場に野次馬が湧いた。

それもそのはず、なんて言ったって、彼こそは、

この国を代表する、ヒーローを代表する、我らがトップヒーローなのであるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィランは緑谷の抵抗に気がつき、吹き飛ばそうと腕を動かし、薙ぎ払う動作に入った。

それを目で見た爆豪は渾身の力を入れ、腕にニトロをため爆発させた。

それにより、若干拘束が解けたうちに、緑谷を突き飛ばした。

 

「クソが!俺を助けるなんてオメーにできるわけねーだろ!黙って下がってろ、ボケ!!」

彼のプライドが許さなかったのである。

 

しかし、今までの拘束により体力を消耗していたので、もう力が残っていない。

 

ヴィランも爆豪の抵抗にイラつき、拘束をより強める。

 

ヴィランは、イラついた感情を緑谷にぶつけようと、またもや腕を振りかぶる。

 

そんな時だ。

 

 

「もう大丈夫だ!!私がきた!!!!!!」

 

 

そうオールマイト。

 

 

オールマイトは瞬時にヴィランに近づき、左腕で、爆豪を捕まえる。

 

 

「プロはいつだって命がけだ!!」

 

彼は血反吐を吐きながらもそう言い放った。

 

そしてもう一つの腕を大きく振りかぶって、振り抜いた。

 

 

 

 

「デトロイト、スマッシュ!!!!!!」

 

 

 

 

爆豪を除き、ヴィランのすべてが、その衝撃で跡形もなく吹き飛ぶ。

その衝撃により、爆豪を中心に驚くほどの上昇気流が巻き上がった。

 

 

ヒーロー、警察、野次馬、ともに、風圧で吹き飛ばされないよう、体を抱えることに必死だった。

 

 

それからすぐに

ーーーポツポツ。

 

そう、雨が降ってきたのだ。

 

観客たちは唖然とするしかない。

 

「ま、まさか、今風圧で?」

「上昇気流が発生して、雨が降ってるとでも言うのか!!!!!!」

そう、オールマイトの放った一撃により、上昇気流を発生させ、

それによって雲ができる。

雲ができた、ことにより雨が降り出してくる。

その雨が、今まで燃え盛っていた火の手を消し始めた。

 

 

 

この空間を支配していたのは驚きの感情のみだ。

誰もが、今見た光景を疑っていた。

 

 

 

「おいおいおいおいおい、まさかまさか、肩腕一本で天気を変えたって言うのかよぉ!!!!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!」

 

観客がわかないわけがない。

 

これほどの偉業を目にしながら興奮しないわけがなかった。

 

 

彼らは目にしたのだ、これが我らがヒーロー、オールマイトだと。

 

 

 

 

それから数時間してやっと事件は収束した。

彼、緑谷はため息をつきながら帰路についている。

 

「デク!」

 

緑谷に声がかかる。

彼が振り返ると、そこには走ってきた爆豪がいた。

 

「俺は、テメェに助けを求めてなんかいねーぞ!助けられてもねぇ!!おい、なぁ!一人でできたんだ...!無個性の出来損ないが見下すんじゃねーぞ!オンを売ろうって言うのか?!見下すんじゃねぇーーぞ!!くそが!」

 

爆豪は震える声で、自分に言い聞かせるように、そう言った。

爆豪は緑谷の返事を待たず去っていく。

 

緑谷はただ苦笑することしかできなかった。

緑谷は帰ろうと足を踏み出すと、また声がかかった。

 

「私がきた!!」

オールマイトだ。

 

緑谷が混乱していると、彼は話を進めた。

 

曰く、君に感謝している。

それと提案があると。

 

 

 

 

 

 

 

そう、やっと始まるのだ、

 

 

彼の物語が、

 

 

運命の歯車が大きく動き出す。

 

 

彼と、彼の物語が交差するのはこれで必然となるだろう。

 

 

二人が出会うのはもう少し。

 

 

 

 

 

 




やっと緑谷編は終わった...。
所々違うかもしれないけど勘弁してw

原作未読の方はこれが一応原作のはじめでっす。

次から原作開始。
入学試験が始まります。
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