彼のカルデアでの日常   作:トマト嫌い8マン

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なんかこの前エミヤ由来のアイテムを購入しまして、
んでその日のうちにガチャリましたん
そしたらなんと……

エミヤが2人も来ちゃった(これで宝具レベルが5に)
後、金フォウ君食べさせてたらATKもHPもマックス大変身して……
パーフェクトエミヤ(レベル、聖杯、スキル、絆もMAX)
が降臨したのでそのエミヤの話を投稿しますね


小さき少年の背中

立香も頼光も、目の前の少年が告げた名前に戸惑いを隠せない。

 

衛宮……えみや……

 

衛宮と、そう彼は自分の名字を告げた。

 

この感じだと、日本人なのは間違いない。だが問題はそこではない。

 

そんな名前の英霊は、このカルデアには1人しかいない。

 

抑止の守護者と彼は言う。

 

英霊として末端と彼は言う。

 

事実その名はどんな叙事詩にも伝説にも残されていない。

 

『エミヤ、という名に意味はないよ。私はもうその名を、その名を持っていたはずの誰か(自分)を、もう殆ど覚えていないのだから』

 

果たして彼がどのようにして英霊となったのか、聞いたところで彼は教えてくれなかった。彼と関わりのある英霊はいるが、みんながみんな同時期に聖杯戦争に呼ばれたと言う縁があるだけ。時代も神秘も異なる彼の生前について知っている筈もないだろう。

 

故に、まさかこんな形でその生前の姿を拝むことになるとは、まるで思わなかった。

 

「あらあらまぁまぁ……え〜と、エミヤさん」

「士郎でいいぞ。衛宮さん、って呼ばれ方はなんか慣れないから」

「そうですか。では士郎くん?」

「なんだ?」

「あなたは朝目が覚める前の事、何か覚えていますか?どうしてここにいたのか、とか」

「それが、全然思い出せなくて……靄がかかっているというか」

「まぁ、それは大変ですわね」

 

心底心配そうな頼光。立香とてそれは同じだ。前からエミヤは記憶が摩耗していると話していたが、その影響が子供の姿にも影響しているのだろうか。

 

「それで、俺はどうすればいいんだ?」

「へ?」

「よくわかんないけど、このカルデア?からは当分帰れないんだろ?なら、ここで何をしたらいいのかなって」

 

あまりにもあっけらかんと言う彼の姿に、立香は驚く。普通突然こんな場所に来て、知らない人に囲まれて、不安に思わないのだろうか。それどころか彼はここ(カルデア)のために動こうとしている。

 

「えっと……何って言われてもなぁ。士郎くんは、ここのことどこまで聞いてる?」

「難しいことはわからなかったけど、世界を救うための場所なんだろ?かっこいいな。マスターは正義の味方ってやつなんだろ?」

「えっ、そう、なのかな?」

「なら俺も何か手伝うよ。俺の爺さんも、正義の味方だからさ。俺も何かしたいんだ」

 

なんてことのないことのように、彼はそう言う。いや、確かにエミヤはどんな相手にも基本は動じない、強い精神力の持ち主であり、いつも誰かのために行動していた。けれどもまさかこの歳から?

 

本来ならまだ親に甘え、守られ、生活を支えられる立場なはず。家族から離れたというのに動じず、自分から何かしたいと提案する。この歳の子供らしい、とは正直思えなかった。

 

「えっと……気にしなくてもいいのに。むしろ戻れるまでは俺たちに頼ってくれていいんだよ?」

「そうはいかないだろ。俺のために色々と迷惑かけることになるんだから。ちゃんとその分の手伝いはしないと」

 

どうやら意外と頑ならしい。説得できそうにない立香は助けを請うべく、頼光をちらりと見る。バーサーカーであれど、理性的な彼女は、それだけで立香の考えを正しく読み取ったらしい。小さく頷いてから、頼光が士郎の前に屈み込む。

 

「でしたら、食堂へ行きましょう。私は今日のお昼から食事当番なのですが、手伝ってもらえますか?」

「わかった」

「では、参りましょうか」

 

そう言って頼光は士郎の手を引き、立香の部屋の外へと向かう。最後に振り返ると、立香が口パクで「ありがとう」と言っているのが見え、頼光は笑みを返した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「士郎くんは、料理をしたことがありますか?」

 

食堂への道のりを歩きながら、頼光が士郎に問いかける。時折すれ違う職員に不思議そうな目を向けられるも、カルデアでそういうことはもはや日常茶飯事であるためか、特に不審がられることはなかった。

 

幸か不幸か、食堂の営業時間以外ではこの辺りはそこまでサーヴァントの出入りは多くなく、エミヤ(衛宮士郎)と面識のあるサーヴァントに遭遇することもなかった。

 

「あるぞ。うちは保護者がそういうとこだらしないからな。俺がしっかりしないと」

「まぁ、偉いのですね」

 

頼光が士郎の言葉に笑顔で褒める。どうやら彼は親の手伝いを良くするいい子らしい。こんなに小さい時から料理に触れる経験があったのならば、将来の彼の腕にも納得がいく。

 

ガランとしている食堂に、2人で入る。頼光がエプロンを二つ取り出し、一つを士郎に渡す。

 

「カルデアは本当に多くの人がいますから、みんなの分用意するのは大変ですよ」

「そうなのか。やれるだけやってみるよ」

「はい。お願いしますね」

 

 

 

いつもより早い時間から準備を始めた頼光は、予想していたよりも士郎の手際がいいことに驚いていた。確かに料理長(エミヤ)が作っていた食堂マニュアルやレシピがあるとはいえ、この年の子供にしては異様に手慣れている。果たして親の手伝いをしただけでこうなるだろうか。

 

「本当に上手ですね。お母さんに教えてもらっていたのですか?」

「違うぞ。俺に母さんはいないしな」

「……えっ?」

 

世間話でもする感じで、サラリと言われた言葉に、頼光は思わず手を止めてしまう。言った本人は何でもないかのように下準備を進めている。

 

「士郎くん……今のは?」

「俺、少し前に大きな事故に巻き込まれたことがあって。その時に産みの親を無くしたんだ。今はその時助けてくれた人が父親代わりでさ。全然家事とかできないから、自然と身についたんだ」

「親を……母親の代わりの人は」

「いないぞ。爺さんは俺が知る限りじゃ結婚してなかったし」

「お母様のことは覚えているのですか?」

「いや、覚えてない。あの事故の衝撃が大きすぎたのか、それより前のことは全然思い出せないんだよな」

 

普通に聞くとかなり重い話なのだが、それを普通のことのように目の前の少年は語り、なおかつ料理の手を止めない。この器用なところはエミヤ(彼の将来)を彷彿とさせるが、そんなことは頼光にはどうでもよかった。

 

「あなたは、寂しくなかったのですか?」

「寂しい……うーん、どうだろうな。爺さんも家にいないことが多かったし、偶に家に知り合いのお姉さんが遊びに来ることはあったけど、基本的には1人だったからなぁ。最初の頃はともかく、今はそうでもないかな」

 

 

以前、エミヤは立香の世話を焼く彼女のことを見ながら、感心したように呟いた。

 

『母親……ふむ。まぁ確かにそういうものなのかもしれん。結局のところ、子が最後に甘えられ、弱みを見せられるのは、母親なのかもしれないな』

 

その時は僅かに違和感を感じただけだった。まるで母親がどんなものなのか、知識として知っているかのような話し方をしていたのだから。でも、それはあくまで本人が言うように、記憶の磨耗が原因だと、その時はそう結論づけていた。

 

でも違ったのだ。

 

そうではなかったのだ。

 

彼は本当に知っているだけなのだ。

 

知っていて、識っていて。

 

でもその身には、残されていない。

 

『母親』という、存在が。

 

 

 

「よしっ、これでいいかな。頼光さん、次はっ、!?」

 

振り返ろうとした士郎の言葉が止まる。

 

ふわり、そんな風にも感じる優しさで、何かが彼の身体を包んだ。

 

自分のと異なる体温に、自分のと異なる鼓動。

 

慈しむように、愛おしむように、髪がそっと撫でられる。

 

真後ろにいるため、その表情は伺えず、士郎は困惑する。

 

頼光は、まるで包み込むように、士郎の身体を抱きしめていた。

 




ちょっと有り得ないキャラと絡ませようかと思いこんな形に
あ、彼女だけではなく、他にも何人か登場しますからね

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