彼のカルデアでの日常   作:トマト嫌い8マン

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|д゚)

こっちも、かな?


槍兵の話

「若返りの霊薬……あの小さい金ピカとか、黒いサンタの嬢ちゃんの時と同じってわけか」

「その様ですね」

「ケッ。まためんどくせぇことになってやがるな。こりゃ連中が知ったら下手したらパニックだぞ」

 

ウゲェ、という表情を隠そうともせずクー・フーリンがボヤく。視線の先にはせっせとお昼時の準備を進める少年。

 

その様子に疑問を持った頼光は、そのことについて尋ねることにした。

 

「あの、クー・フーリンさん」

「ん?なんだ?」

「先程の口ぶりから察するに、あなたはエミヤさんの幼少の頃を知っているようでした。貴方とエミヤさんでは生まれた時代も国も違うはずですが……」

「あー……そりゃそうなるよな」

 

どーしたもんかね、と独りごちりながらクー・フーリンが髪をガシガシかく。何やら答えにくいことなのだろうか、と頼光が首を傾げる。

 

「まぁ、他言無用で頼むわ」

「?ええ、承知致しました」

「俺が何回か聖杯戦争に参加したことがあるって話は聞いてるか?」

「ええ。貴方や青いセイバーのアルトリアさん、それにエミヤさんもそうだと聞いています」

「まぁ俺らも同じ聖杯戦争で出会った訳だしな。まぁその聖杯戦争に呼ばれた舞台で会ってるんだよ、あいつの若い頃にな」

「会ってる、ですか?」

「ああ。相手の出自については聞いてるか?」

 

いいえと頼光が首を横に振る。本人に聞いたことはある、でも本人からは、

 

『私の出自など、貴方にお話できるようなものでもないよ。伝承も何も無い名もなき正義の味方の体現者なのだから、私は』

 

と自嘲気味に笑みを浮かべながらはぐらかされた覚えしかない。

 

けれども今回、彼が縮んだことにより彼が自分よりもあとの時代の日本人であるということ、それだけは分かった。

 

「あいつの伝承なんざ聞いたことないだろ?」

「ええ。それらしき資料もありませんでしたし、聖杯からの知識も全く。ルーラーのジャンヌさんも詳しくはわからなかったと言っていましたし」

「まぁそりゃ当然だ。あいつはこの時代、この時点ではまだ英霊に、もっと言えば守護者にはなっていねぇからな」

「え?」

「まぁ、平行世界っつーか、別の世界線での話にゃなるが、あいつ──アーチャーの野郎は、未来に現れる英霊だ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「とある世界線で、俺は今から数年前に行われた聖杯戦争に呼ばれた。そこで俺は生前のあいつと会ったんだわ。まぁ生前っつっても今くらい幼かったわけじゃねぇ。そうだな、ちょうど今のマスターくらいの年だったな」

「今くらい、いわゆる高校生の頃ということですね。でも、どうしてお会いすることになったのですか?」

「あぁ。まぁ、あいつはその聖杯戦争の参加者だったんだよ」

「参加者……ということは」

「ああ。アーチャーの野郎は、元マスターだ」

 

元マスター。

 

不思議とその事実はストンと腑に落ちた。

 

彼に限った話ではなかったものの、元一般人であるマスターは度々サーヴァントからマスターのあり方について教わっている姿を見かけたことがある。

 

しかし中でもエミヤのそれは異なっていた。

 

『いいかね、マスター。君は確かに魔術師としては未熟だ。だが戦闘において君が要であることは肝に銘じておけ』

『共に戦いたい、か。君の気持ちはよくわかるとも』

 

『君は優しいからな。我々だけに戦わせていることを心苦しく思うだろうし、礼装の力を借りて戦闘に加わろうとするだろう』

 

『無論君の支援には大いに感謝する。だがあくまで支援にとどめることを忘れるな』

 

我々(サーヴァント)の役割は戦闘を行うことで、マスターである君の役割は戦況を俯瞰し指示を出すことだ。君の指示がなければ我々の戦いは困難を極めることとなるだろう』

 

『自分が未熟であることを責めるな。未熟な自分はまだ直せるのだから。もっとも、未熟な思想を持つようであれば全力で君を止める必要があるのだろうけどね。あ、いや。こちらの話だよ、マスター』

 

マスターがどういうものか、そういった視点からというよりもまるでそれを経験してきたかのような、そんな話が多く感じられた。

 

「マスターとは言ったが、あの頃のあいつは魔術はからっきしだったらしいからな。半人前の魔術師もいいところだったみたいだぜ。そういう意味じゃ、一番マスターのことをわかってやれるのはあいつなのかもしれねぇ」

「半人前……ではおそらく、意図的に聖杯戦争に参加したわけではないのですね」

「まぁそうだな。半ば巻き込まれるような形ではあったな。というか俺が巻き込んじまったような節もあるが」

 

まぁともかく、なんていいながらガシガシと頭をかくクー・フーリン。

 

「そんなわけで俺と同じ聖杯戦争に参加した連中も、あいつのことは知っているってわけだ」

「そうでしたか。では今の彼は」

「まぁ少なくとも俺らと出会うよりずっと前の姿になっちまってるしな。聖杯戦争のことも、俺たちのことも何一つ覚えちゃいねぇんだろ。けど――」

 

言葉を少し区切り顔をしかめるクー・フーリン。その続きの言葉を聞いたとき、頼光は己の抱いた感想が間違っていなかったことを確信した。

 

「――その経験よりもずっと前からあれだっていうなら、ありゃ相当壊れてやがる。痛々しいほどにな」

 




久方ぶりに( ^ω^)・・・

短いですけどね(笑)

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