新たな霊衣となったエミヤさんが出てくれた、ただそれだけで私は幸せだ!!!
何よりもまず最初にそれだけは確保しに行きましたね笑
というか今回のおかげでまた新しい組み合わせの可能性が(式部さん呼び最高)
いや、まぁそれはさておき。
じゃあそんなエミヤがイベントに本格登場というわけで!
少しだけ、更新しま~す。
壊れている。
破綻している。
衛宮士郎という少年を見ているうちに、どうしようもなくそんな感想を抱かざるを得なかったとあの槍兵は言う。
「はい。ハンバーグの追加分完成っと。頼光さん、次は?」
「あ、はい。では――」
指示を出しながらも頼光の頭の中はグルグル回っているような感じだった。
先ほどのクー・フーリンとの会話がどうにも気になってしまっているのだ。
「頼光さん、お疲れ様……何かあったの?」
「あっ、ブーディカさん」
流石に彼を大勢の前に出すわけにもいかず、配膳を担当している時に声を掛けられる。心配そうな表情をしている赤髪の女性は、調理場の常連でもあるブーディカだった。
「何か悩んでいるようだけど、何かあったの?」
「あ、いえ。その、大したことではないのですが」
「そう?なんだかすごく難しい顔をしてる……子供のこと、かな?」
「えっ」
「ほら、あたしも母親だったことあるからね。何となくそんな気がしたんだ。頼光さんが金時君やマスターのことを我が子のように大事にしているのも見てきたわけだし」
そう言いながらやさしく微笑むブーディカは、カルデア食堂の先輩として、同じく子を想う母として、とても純粋な好意によるものであることが頼光にはよくわかった。
一瞬考えたもののこの件は自分一人の手におえるものでもなく、マスターにずっと対応してもらうわけにもいかない。どの道誰かに協力を仰ぐ必要はあるのだ。
そういった面でいうのであれば、カルデアではエミヤとの付き合いが長く、信頼されているブーディカであれば力になってもらったほうがいいのかもしれない。丁度食堂のピークも過ぎ去っていて、そろそろ片付け組との交代になる時間になっていたから移動しなければならない。
「あの、ブーディカさん。このあと少しお時間よろしいでしょうか?」
「いいよ。今日は予定もないしね」
「では、この後私の部屋に来ていただけますでしょうか?」
そんなわけで、既に片付け体制に入っている少年の午後の予定も決まったのだった。
―――――――――――――――――――――
「えっと……」
「まぁ、そういう状況のようでして」
「なぁ、なんで俺は頼光さんの膝の上にのせられてるんだ?」
ところ変わって頼光の部屋。日本に出自を置くほとんどのサーヴァントと同じように、彼女の部屋も和風の作りになっている。畳の上に敷かれた座布団、その上に頼光と約束を取り付け招待したブーディカが座っている。
そしてつい先ほど、士郎ことエミヤの陥っているについての状況を説明し終えたところである。
「なんというか、若返りのケースはもう見たことがあったけど、まさかあのエミヤ君がね」
「ええ。それに、他にも気になることがありまして……」
「あ、ちょっ、頼光さん。頭撫でるのは、ちょっと……」
「まぁまぁシロウ君、でいいんだよね?私はブーディカ。気軽にブーディカさんって呼んでくれていいからね」
「あ、うん。俺は衛宮士郎。よろしくって、ちょっ、何でブーディカさんまで」
「う~ん、これがあのエミヤ君の幼い頃かぁ。なんだか不思議な感じだね」
「ええ。それから、彼とランサーのクー・フーリンから聞いた話ですが――」
と、女性人二人が至極真面目な話をしているはずなのだが、当事者であるはずの衛宮士郎としてはそれどころではなかった。
(なんだこれ?頭、というか髪を撫でられるのって、こんなだったか?)
養父が撫でてくれることはあった。所々に傷のある手ではあったし、あまり回数は多くなかったけれども、自分の頭をしっかりと包み込むような、どこか安心感を与えてくれるものだった。
姉のような人も自分を撫でてくれることがあった。いや、あれは撫でるという表現で正しいのかはわからないけれども、彼女はとても元気よく、わしゃわしゃ~っと髪をかき混ぜるようにすることが多かった。
でも、この二人がしているそれは、そのどちらとも違うように思えた。
(くすぐったいようで、でもどこか心地よくて――安心する、穏やかな気持ちになる――身を、委ねてしまいたくなる――もう忘れてしまったけれども、もしかしたら、これが――)
「ん?」
「あらあら?」
話し込みながらも士郎の頭を撫で続けていた二人ではあったが、ふと会話が途切れる。その理由は、彼女たちの手にそっと添えられた、小さな少年の手。
不思議そうにする二人に反応するでもなく、何かをかみしめるかのように、その少年は瞳を閉じ、頭に添えられている手の存在を確かめるかのように自身の手で触れる。
「シロウ君、どうかした?」
「士郎?」
二人の声も聞こえているのかもわからない、それくらい彼は反応を示さなかった。思わず顔を見合わせてしまう頼光とブーディカ。肩を揺らしてみようかと頼光が手を伸ばした時、
「――母さん」
少年が無意識に――無自覚に――漏らした言葉が耳をうった。
二人が思わず見つめる中、少年の頬を一筋の水滴が伝い、静かに畳の上に落ちた。
―――――――――――――――――――――
『アーチャーの野郎が大変な目に合った』
それを聞いたセイバーことアルトリアは、後ろから声をかけてくるランサーのクー・フーリンの言葉に意識を向ける余裕もないほどの勢いで、思わず駆け出していた。
(シロウに一体何が?もしかして、レイシフトで大きな傷を?いや、ランサーのあの様子。戦闘でのことだとしたら、あの調子で話すことはまずない。ということは、何かトラブルに巻き込まれた?)
食堂、キッチン、彼の部屋、トレーニングルーム。取りあえず思いつく場所を巡ってみても、目当ての相手の姿はどこにも見当たらなかった。そこでマスターに心当たりを聞いてみたところ、
「あ、もしかしたら頼光さんの部屋にいるかも。実は、「源頼光の部屋ですね。ありがとうございます、マスター」あっ、ちょっ」
と、何かマスターが言いかけていたようにも思えたが、それさえも振り払うように走り出していた。
そんなに心配するようなことか?なんて思うものもいるだろう。彼とてサーヴァントであり、話を聞く限りではこと霊体となった後は自分よりも多くの戦闘を、そして多くの修羅場を経験しているはず。ただ、それでも、
(彼はいつも無茶をし過ぎる傾向があります。また一人で負担を抱え込もうとしていたとしたら)
生前の彼を知っているからこそ、つい不安になる。はやる気持ちを何とか抑えながら頼光の部屋の前にたどり着く。息を吐き出し、気持ちを整えてからノックをする。
「どうぞ」
その返事を聞くや否や、扉を開け、アルトリアは部屋に入り込む。
「失礼します、頼光殿。アーチャーを、見なかっ……た、で」
最後の方の言葉が途切れてしまう。いや、しかしそれは無理もないだろう。何故って、
「あら、アルトリアさん。どうかしましたか?」
「やっ、アルトリア。頼光さん、そろそろ交代してくれる?」
「あぁはい、承知いたしました。では、」
「いやいや、待って待って。二人とも待って。頼光さんへのお客さんだろ?」
「士郎、先ほども言いましたように、私のことは母と呼んでください」
「あたしのことも母親として扱ってくれてもいいんだよ?」
「いや、だからっ!」
見覚えのある赤銅色の髪に琥珀色の瞳。自分が知っているものよりもずっと幼く、小さい体躯ではあるけれども、その顔立ちを見間違えることなんて、自分にとってはありえないことだった。
「シロウ、なのですか?」
思わずつぶやいた名前に反応する少年。それだけで自分が間違えていないことが確信できる。
「えっ、何で俺の名前?」
「おや?アルトリアは何か知ってる感じ?」
「まぁ、そういえばそうですわね。アルトリアさんも、クー・フーリンさんと一緒ですものね」
ブーディカに抱かれながらキョトンとする少年。首をかしげるブーディカに、訳知り顔の頼光。
そんな中、入り口に立ったままのアルトリアは――どこか泣きそうな表情をしていた。
ってなわけで!
皆様お待ちかね!
母親属性組の暴走とセイバーとの邂逅でございます笑
ここからがまた楽しいことになりそうなのですが……まぁ、まずは書けよってことですね、はい、頑張ります。
ではでは~