彼のカルデアでの日常   作:トマト嫌い8マン

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さていよいよ5次組登場だ!(長らく間空いてすんまそん)




少年を見つめる少女は――

和風の部屋作りとなっている頼光の部屋。

 

そこで向かい合わせに座る頼光・ブーディカと今しがた部屋に入ってきたばかりのアルトリア。

 

湯飲みに入れられたお茶を少し飲み、一息ついたところで、二人からアルトリアに現状の説明が行われていた。

 

「なるほど……そういうことになっているのですか」

「そうみたいなんだ。だから、アルトリアごめんね。今日はエミヤのご飯はお預けになっちゃうや」

「あ、いえ。それは理解していますし、状況が状況なので構いませんが……その……」

 

背筋を伸ばし、足を崩さず、綺麗な姿勢でしかれた座布団の上に座るアルトリアだったが、その様子はどこか落ち着かない。ちらちらと視線がブーディカに――より正確に言うならば、ブーディカの膝の上に座る少年に向けられていた。

 

「なぜ、シロウはブーディカの上に座っているのでしょうか?」

 

むぎゅっ、なんて音が聞こえてくるんじゃないかと思わず錯覚してしまいそうになる。それほどにしっかりと、ブーディカは少年衛宮士郎の身体を抱きかかえ、その膝の上に乗せながら説明をしていたのだ。何ならそのすぐ隣で頼光が士郎の頭を撫でている。

 

「ん~?なんでだろ?なんかこうしてあげたくなっちゃうんだよね」

「ええ、わかります。つい、そうしてしまいたくなりますね」

「いや、あの……二人とも放してくれないか?」

「あの、ブーディカも頼光殿も、シロウに近くないですか?」

「そうかな?」

「母が子とともにいたいと思うことは普通ではないでしょうか?」

「いえ、それを否定するつもりはありませんが、そもそもの問題として、「え?頼光さんいつから俺のかあさんになったんだ?」って、あぁまた話が進まない」

 

完全に母性本能が働いている頼光とブーディカ。オロオロするアルトリア。そして何が何だか分からなくなってきている衛宮士郎。

 

――はっきり言って中々にカオスだった。

 

――――――――――

 

と、いうわけで場所を移動し、カルデア施設の一つ会議室。

そこに頼光、ブーディカ、士郎と他にも数名が集められていた。

 

「シロウと面識のある私たちも、シロウを見守る手助けをしましょう」

 

アルトリアにより招集された面々は、約二名を除き、驚きの表情を浮かべていた。

 

「この少年が……シロウ?あの頃もまだ少し可愛らしかったですが……これはまた随分と」

「坊やが本当に坊やになっちゃったわけね。本当にあの英雄王の薬は面倒ごとを引き起こしてくれるわね……それにしても何かしら。こう、今の坊やを見ているとつい創作意欲が(服)」

「ほどほどにしておけよ、キャスター。ガキになったとはいえこいつはあの坊主だからな。頼まれたら断らないだろうから、お前が疲労困憊になるまで着せ替えをするところが目に浮かぶぜ」

「うむ。しかし、聖杯戦争を経て奇妙な経験には慣れたものだとばかり思っていたが、いざこうして見知った顔が幼子にされた……さらに話を聞く限りでは、ただの幼子とも呼べないものになっているのを見れば、驚かざるを得んな」

 

既に状況を知っていたランサーのクー・フーリンと表情を変えずにいるヘラクレス他、並行世界において衛宮士郎が参加していた第5次聖杯戦争にしたサーヴァントたちが集められていた。

 

「ところで、あの二人は呼ばねえのか?金ぴかと呪腕の野郎?」

「ええ、今回は集まってもらいませんでした。英雄王の方はそもそも声をかけませんでしたが、もう一人のアサシンの方は「私は他の者ほどあの少年ともアーチャーとも関係が深くはない。敵対したことこそあれ、こちらに来てからもあまり共闘したこともない。故に私の出る幕はないだろう」と言っていましたので」

「あぁ、言われてみればそうでしたね。彼はそういった意味でもイレギュラーといえる気がしますね」

 

「……なぁ、ここにいる人たちは、みんな俺を知っているのか?」

 

ついつい話が盛り上がりかけていた第五次勢を止めたのは、まさにその話題の中心にいた少年士郎だった。不思議そうに、一人ずつのことを見る士郎は、最後にヘラクレスを見て怪訝そうな顔になる。

 

「ごめん。でも俺にこんなでかい人の知り合いなんていないと思うんだけど……」

「いえ、それは……シロウ、これから私たちのする話は嘘偽りない事実です。信じてもらえますか?」

「セイバー、話すのか?」

「それは少し、シロウも困惑してしまうのではないでしょうか?」

「ランサー、ライダー。貴殿らの言うこともわかるが……」

 

セイバーのしようとしていることを察し、ライダーのメドゥーサとクー・フーリンが待ったをかける。無理もない。そもそも気がついたらこんなわけのわからないところにいて、そんな中で実はここが彼の知っている世界ではないことや、本来の彼のことを話したところで混乱するだけである。ただの一般人だったとしてもややこしいことになりかねない事態に加え、彼が――衛宮士郎が――エミヤが相手であること。そのことがより危うさを増長してしまう。

 

彼がもし、もし既に自分たちの見たあの頃の彼と同じだとしたら――果たして動かずにいられるのだろうか。

 

今の彼はまだサーヴァントのことも、人理の修復のことも正確には理解していない。そもそも彼がこれから経験することになる聖杯戦争のことも知らないのだ。そんな彼に、現状を打破するための手掛かりを得るためとはいえ、その経験の事実を告げることは、果たして正しいのだろうか。

 

「?よくわからないけど、あんたは嘘をつくような人に見えないし……信じるよ」

「そう、ですか。ありがとうございます、シロウ。えっと……そうですね」

「ねぇ。だったらあの繰り返しの4日間のことを説明してあげたらいいんじゃない?今の状況や第5次のことを話すよりは、坊やにとっては親しみやすいと思うのだけど?」

「あぁ、確かにそうですね。その記憶はここにいる全員に共通していますし」

「まっ、確かにそれなら俺らのこともある程度説明はつくか……」

「なるほど。確かに、キャスターの言う通りですね。今はそれがいいかもしれません」

 

頼光とブーディカ、そして当事者の士郎は彼らの話し合っている様子に首をかしげる。

 

「シロウ。私たちは皆、あなたのことを知っている。正確には、あなたが少し成長したころのことを知っているのです」

 

―――――――――

 

「つまり俺の爺さんが言っていたような魔法使い――えっと、魔術師が町にたくさんいて、その人たちに呼ばれたのが、あんたたちサーヴァントってことでいいのか?」

「ま、大体あってるな」

「サーヴァントは過去の英霊で、大きな魔術を行うため魔術師のマスターに呼ばれた」

「そういうことになるわね」

「時々戦うことも協力し合うこともあって、その繰り返されていた時間を抜け出すことができた」

「ええ。あの時間はあの時間で悪くはなかったですが」

「時々言っていたセイバーとかランサーとかはサーヴァントとしてのクラス、つまり役割のこと」

「左様。呑み込みが早くてなによりだ」

「そしてその時、成長した俺がマスターとして呼び出していたのが、ここにいるセイバー」

「はい。そういうことですシロウ」

 

一つ一つ理解しているような、していないような。

 

どことなく難しい表情をしながら一つ一つ確認している士郎を、サーヴァントたちは見つめる。

 

「シロウ、わかりましたか?」

「ん、あぁ。全部分かったわけじゃないかもしれないけれど、なんとなくは、かな。そういえば頼光さんも昔の人と同じ名前だけど、もしかしてサーヴァントなのか?」

「ええ」

「じゃあブーディカさんも?」

「うん、そうだよ」

「じゃあさっきのマスターさんっていうのは、みんなのマスターなのか?」

「そうだね。私たちみんな、あの子の力になるためにここにいるんだ。ここでみんな一緒に戦ってる」

「マスターさんは、一人しかいないのか?」

「はい。本来であればもっと多くのマスターがいる予定だったと聞いております。でも、今動くことができるのは、あの子だけです」

「……なぁ、俺にもできないのか?その、マスターっていうの」

「え?」

 

至極真面目な顔でそう言った士郎に、思わずその場にいた全員が――それこそここまで一切の表情の変化を見せなかったヘラクレスでさえも、あっけにとられた。特にセイバーははっとした表情を浮かべたかと思うと、俯いてしまった。ギリィ、と小さく彼女の口から洩れた音に、士郎は気づくことがなかった。

 

「ええと、士郎?それはどういう」

「俺は未来にはマスターになっていた。ということは、マスターになる素質はあったってことなんだろ?なのにあの人だけに戦わせるわけにはいかない。俺にだってできることがあるはずだ」

「シロウ君。マスターっていうのは簡単な物じゃないよ。さっきのアルトリアたちの説明からじゃわからないかもしれないけど、あの子も何度も傷ついたし、何度もつらい思いをしてきてる。シロウ君より年上のあの子がだよ。それを」

「年は関係ないさ。それに俺がマスターさんの力になれたら、傷つかないで済むかもしれないだろ。何で急にこんなところに来たのかわからなかったけど、もしかしたらそのために俺は「シロウ!」っ!……セイバー、さん?」

 

宥めるような口調だった頼光とブーディカに対し、強い意志を示している少年士郎の様子に、思わずセイバーは声を荒げてしまう――荒げずにはいられなかった。

 

その頑固なまでな姿勢と、危険を承知でそれでも飛び込もうとせずにはいられない意志。あぁ全くどうして……このころから既にそうだったというのだろうか。聖杯戦争(あの戦い)を共に駆け抜けたころと、今目の前にいる少年がやはり同一人物であることを再認識するとともに、どうしようもないその事実に心が叫びだしそうになる。

 

けれども言えない――何を言えるというのだろうか。

 

かつてのマスター(切嗣)はずっと向き合ってきたのだろうか。あの時自分たちの迎えた結末が――結果としては間違いではなかったとわかったとしても、それでも――こんなに深く、重く、痛々しいほどの傷跡を刻んでしまっていたことと。

 

彼を壊してしまったのはあの火災。

 

あの火災を引き起こしたのは破壊された聖杯。

 

では誰がその聖杯を破壊した?

 

誰が破壊するように命じた?

 

誰が、その剣を振り下ろした?

 

誰が――

 

声を荒げた後黙り込んでしまったセイバーを士郎が戸惑いながら見つめる。どこか一触即発な空気の中、同じくセイバーを見ていた頼光は、ふと士郎の方に向き直る。

 

「……士郎。皆さんにも少し整理する時間が必要かもしれません。やはりあなたの未来の姿を知っているからこそ、驚きと戸惑いもあるかと。それにあなたもです」

「頼光さん?」

「隠しているつもりでも、母にはわかります。身体が疲れていますね」

「いや、このくらい別に」

「ダメです。母がいる限り、子供に無茶をさせるわけにはいきません。一度私の部屋で休息をとりましょう。いいですね?」

「でも、「士郎?」……うん。わかった。その、セイバーさんは大丈夫なのか?」

 

心配そうな視線をセイバーに向ける士郎。

 

「大丈夫だよ。あたしもついてるし、他のみんなもいる。ちゃんと整理をつけてからまた話そう?」

「ええ。シロウはゆっくりと休んでいてください」

 

心配げな士郎を安心させるようにブーディカとメドゥーサ。セイバーも言葉を発することはなかったが、小さく士郎に向けて頷いた。

 

「わかった。じゃあ、また後で」

「うん。それじゃあ頼光さん、シロウ君のことよろしくね」

「はい。承りました」

 

最後に頼光とブーディカとが言葉を交わし、士郎は頼光に手を引かれるように部屋を後にした。

 

 

「すみません、取り乱してしまい」

「ううん。でも、ちょっと驚いちゃったかな。アルトリアにも、シロウ君にも。エミヤ君の時からどこか危ういと思っていたけど、あんな幼い頃からなんだね」

「ええ……彼は幼い頃にある災害に見舞われ、実の家族を亡くしています……そしてその災害は、ある意味私のせい、とも言えるのです」

「アルトリアのせい?」

「彼が家族を失った災害の原因は、聖杯。ある汚染された聖杯を私が破壊した際に零れ落ちた中身が、彼をゆがめてしまったのです」

 




コメディチックな展開を期待したか?
或いはラブコメ展開か?

残念だったな!
今回、及び続きはまぁシリアスです、はい。

あ~、早く村正君に会いたいよぉぉぉぉぉお!!
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