彼のカルデアでの日常   作:トマト嫌い8マン

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まぁ、第1話?はやっぱり彼女からですよね〜

というわけで、ゆるーく続きまーす


彼と彼の騎士王

エミヤと仲の良いサーヴァントといえば、カルデアにいる人たちに聞いてみると、必ず上がる名前がある。

 

アルトリア・ペンドラゴン

 

ブリテンに君臨した騎士の中の王、かのアーサー王その人である。

 

かつて聖杯戦争で出会ったことのある二人は、戦友でもあり、敵同士でもあったと言う。何とも複雑過ぎるその関係は、一言で言い表すことができない上に、明らかにエミヤとアルトリアの間にはそれ以上の何かがあることは、誰の目から見ても明白である。

 

さて、今日も今日とてエミヤは食堂で料理を作っているわけだが、その1番の消費者、もとい団体は、

 

「おかわりです、アーチャー」

「ハンバーガーだ。早くしろ」

「あの、私もお願いします」

「ターキーはまだか?」

「そら、こちらに寄越すがいい」

「いつもながら美味ですね」

「アイスクリームありますか?できればバニラで」

「私はソーダ味だ。ありったけ持ってこい」

「アルトリア顔がこんなに沢山……ですが、今は食べる時です」

「……お手製和菓子美味しい」

 

仲良く、というわけでもないかもしれないけど一緒のテーブルで食事をとる10人。ただ一つおかしなところがあるとしたら、これが全員同じ人物がベースになっているということだろう。

 

青いドレスのアルトリア・ペンドラゴン。

エミヤは彼女のことだけはセイバーと呼ぶ。

 

黒いドレスのアルトリア・オルタ。

通称オルタ。

 

白いドレスのアルトリア・リリィ。

通称リリィ。

 

黒いサンタのサンタ・オルタ。

 

黒い槍を持つアルトリア・ランサー・オルタ。

 

聖槍の担い手アルトリア・ランサー。

通称獅子王。

 

水鉄砲を持つアルトリア・アーチャー。

 

黒いメイドのメイド・オルタ。

 

正体バレバレ謎のヒロインX。

 

眼鏡属性持ち謎のヒロインX・オルタ。

通称えっちゃん。

 

総勢10名のアルトリアズ、大集合である。起源は同じであるものの、別側面やら別世界やら、様々な違いが生じたことで生まれた、独立した意思を持つ彼女たち。

 

初めてこの光景を目撃したのであれば、訳がわからなくて開いた口も塞がらなくなるというものではあるが、これももはや日常。そしてそんな彼女たちに溜息をつきながらエミヤが料理を運ぶのももはや見慣れた光景である。

 

「まったく、君たちは本当によく食べるな。俵藤太がいてくれなければ、我々はとうに餓死していただろうな」

「む、別に良いではないですか。私達だけが大食らいというわけでもないのですから」

 

青いアルトリアが言ったように、カルデアにいるサーヴァントには健啖家は他にもいる。が、

 

「それにしてもだよ、セイバー。作るこちらの身にもなってみてくれたまえ」

「す、すみません。その、エミヤさんたちの作る料理が本当に美味しいので、つい」

 

一人だけ申し訳なさそうに頭を下げるリリィ。そうやって謝られてしまうと、エミヤとしてもそれ以上注意するのも難しい。そもそもリリィの純真さには、エミヤもどう接したものかと悩まされることも多く、結果エミヤが折れるしか無くなるのである。

 

「はぁ。程々に頼むぞ」

「溜息ですか?疲れですか?もしやアルトリア顔ばかりにうんざりしているのでしょうか?なら私が速やかに、「ほぅ。では食事はもう終わりでいいのだな?」と思いましたが、腹が減ってはなんとやらなのでやめます」

「……エミヤも、一緒にどう?」

 

剣を取り出しかけたヒロインXをエミヤが言葉だけで止めると、大福を片手に、謎のヒロインX・オルタがエミヤを誘う。返事をしようとエミヤが口を開くと、

 

「ちょっとアチャ男さん!そろそろ戻ってきてもらえませんか?まだまだ食事の時間は終わってませんよ!」

 

厨房から聞こえる今回のパートナー、玉藻の前の声。すぐ戻ると告げたエミヤが最後にアルトリアズを見る。

 

「私は失礼するよ。まだ仕事があるのでね」

 

そう言って去っていくエミヤを、アルトリア達の視線が追っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁぁ〜、やっと終わりました」

「お疲れ様、玉藻の前」

 

食堂の後片付けを終え、キッチンの机に思わず突っ伏してしまう玉藻の前。淑女としてはどうなのだと思いもするが仕方ない、それだけ疲れる作業なのだ。

 

そんな彼女の前に、湯気が立ち込める湯呑みが置かれる。馴染みある緑茶の香りに顔を上げる玉藻。湯呑みの中を覗いてみると、茶柱が立っている。

 

「みこっ!これはこれはなんと運のいい。先ほどまでの疲れも忘れ、玉藻は気分が良くなるのでした」

 

優雅な所作で緑茶を飲む玉藻。ほぅ、と思わず息が漏れる。

 

「相変わらず美味しいですね、アチャ男さんの淹れるお茶は。紅茶もですが、他の人ではこうはいきませんね。私もまだまだ精進が必要です」

「君にそう言ってもらえるのは光栄だな。だが、基本的には良い茶葉を使っているからだと思うが」

「もちろんそれもありますけど、その素材の良さをさらに引き出していると言いますか……料理の時も思っていましたが、アチャ男さんの女子力おかしくありません?」

「そうでもないさ。それに君もかなり高いと思うが。それよりも、そのアチャ男という呼び方はどうにかならないのか?私にはエミヤという真名があるのだが」

「すみません。でも、正直エミヤより、アチャ男さんの方が呼び慣れていると言いますか、もはや習慣みたいなものでして」

 

ここではないどこか、月で行われた聖杯戦争にて、この二人は出会ったことがある。もっとも、エミヤ曰く、

 

『あれは私であって私ではない。その戦争の記録は確かに私の中にある。だが、あくまで同一人物の別個体だよ』

 

とのことらしいが、なんだかんだお人好しな彼は、玉藻やネロ等の月での顔見知りに対しても何かと世話を焼いている。

 

 

「それにしてもあの騎士王様達、いつもいつもすごいですね〜」

「そうだな。健啖家なのは知っていたが、あぁも数が増えると、本格的に手に負えないな」

「ほんとですね〜。ところでアチャ男さん、ちょっとお聞きしたいことが」

「何かね?」

 

空になった湯呑みにお茶を注ぎながら返事をするエミヤ。出されたお茶を一口飲んでから、玉藻がずいっと身を乗り出す。露出多めの格好でそんなことをしたら色々と目のやり場に困るものだが、全く動じないあたり、流石はエミヤである。が、その質問内容には動揺を隠せなかった。

 

「ズバリ、あの騎士王様とはどんな関係なのです?」

 

突然の質問に思わずエミヤが目をパチクリさせる。

 

「……また唐突な質問だな。何故また急に?」

「いえ、お二人は仲が良いようですし〜?」

「彼女とはかつて同じ聖杯戦争に呼ばれたことがある。クー・フーリンやヘラクレスのように、面識があるからだろう」

「それにしては今日もあのテーブルに誘われていましたでしょう?アチャ男さんはオリジナルの騎士王様だけ、セイバーと呼んでいますし。以前聖杯戦争で会っただけなら、ネロさんやアルテラさんもそうですし。そ・れ・に、この前見てしまいましたよ」

「何をだ?」

「この前、二人きりでお話ししていた時のことを」

「この前?……まさか」

「はい。あれは、数日前のことでした……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日、ネロの部屋で岸波白野(月のマスター)について話し込んだ帰り道で、玉藻はシミュレーターのあるトレーニングルームの側を通っていた。

 

と、聞こえてくるのは幾度も続く剣戟。どうやら誰かが模擬戦を行なっている模様。このカルデアにはサーヴァントが何人も召喚されているため、別段珍しいことではないが、なんとなしに玉藻は中を覗いてみることにした。

 

「はあっ」

「ふっ!」

 

激突する青と赤。黄金の剣と白黒の双剣。

 

アルトリアとエミヤの二人が、互いに全力を尽くした戦いを繰り広げていた。

 

アルトリアは最優とまで言われるセイバーのサーヴァント。加えて直感による危機察知能力、セイバーの中でも高いステータスに知名度、そして誰もが知っている最強クラスの聖剣等、セイバーの中でも優れた部類にいる。

 

一方エミヤは未来の英霊ということもあり、知名度の補正はゼロに等しい。ステータスも三騎士クラスの英霊の中では低い方であり、本来であればアルトリアに瞬殺されていてもおかしくない。

 

だと言うのに、エミヤはアルトリアに対して、全く引けを取っていない。仮にも英霊となったのだから、以前からそれなりの実力の持ち主ではあるのだろうとは思っていた。月でネロの副官をしていた時は、参謀として前線に立つことがなかったこともあり、直接戦闘はどちらかといえば不得手なのだとばかり思っていた。

 

けれども違った。過小評価だったと言わざるを得ない。

 

双剣と弓を巧みに切り替え、あのアルトリアを後退させることにも成功している。更にはまるでアルトリアの剣の動きを完全に見切っているかのような防御。生半可な英霊では、到底不可能なことであり、彼の戦闘能力が一級品であることを裏付ける。

 

 

剣戟が終わりを告げる。アルトリアの首筋に突きつけられる黒い切っ先、エミヤの首元に突きつけられる黄金の切っ先。相討ち、それが二人の戦闘の結果となった。

 

エミヤの戦闘能力の意外な高さに感心していた玉藻だったが、アルトリアが笑顔でエミヤに話しかけるのに思わず聞き耳をたてる。

 

「まさか相討ちになるとは思いませんでした。流石ですね」

「光栄だな。だが、毎回こう上手くいくわけではないさ。今回見せた手の内は、二度と君には通用しないだろうからね」

「ご謙遜を。貴方の実力は本物です。それとも、私の言葉は信用できませんか?」

「っ、その聞き方は反則ではないかね、セイバー」

 

何やら親密そうな二人に、玉藻が興味津々に聞き耳をたてる。完全に不審者チックな行動で、傾国の美姫とまで言われた彼女にふさわしくない姿ではあるが、それはそれ、恋愛に関しては玉藻ちゃんも黙っていられないのです。

 

「すみません。でも、貴方が強くなったのは本当ですよ。昔はすぐに一本取れたものでしたが、一本どころか、一撃も入れられないとは」

「……君の太刀筋を忘れたことはなかったからな。あの頃の私は、君と共に戦いたくて必死だった。そしてあの後も、ずっとその背中を追いかけていた」

「そう、でしたか」

「どうやら、肩を並べられるに値する者には、なれたらしいな」

「ええ。貴方がいてくれれば、もう何も恐れるものはありません」

「それは流石に言い過ぎではないか?」

「いいえ。あの時からずっと、貴方がいてくれるだけで、私は何も恐れずにいたのです。またこうして、貴方と一緒に戦えて、嬉しく思っています」

「セイバー……」

 

二人の間に流れている空気をどう表現すべきなのだろうか。甘酸っぱいわけでもなく、かといって気まずいわけでもない。

 

けれども、エミヤを見上げるアルトリアの笑顔は、玉藻にとって見覚えのあるものだった。

 

たった一人、岸波白野(ご主人様)にだけ自分が見せる表情に、とても良く似ていたから。

 

「今のマスターは立香ですが、私は貴方の剣であり続けます。だから、」

 

「これからも共に戦いましょう、シロウ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「しろう……これはエミヤさんのことですよね?と言うことはもしや本名はエミヤシロウ……日本の方ですか?」

 

小首を傾げている玉藻には答えず、エミヤは片手で顔を覆っている。

 

「みこ?どうしました?」

「いや……まさか見られていたとは思っていなかった。できればこのことについては他言無用で頼みたいのだが」

「構いませんよ。た・だ・し、ちゃんと説明してくださいな♪」

 

 

溜息をつきながら、頭をガジガジとかくエミヤを見て、楽しげに笑う玉藻。月ではどうも完璧すぎるほどに仕事ができる姿しか見ていなかったが、こんな表情もできるのかと、どこか幼さを感じさせる仕草になんだか微笑ましくなる。

 

結局、エミヤは洗いざらい玉藻に話すことになった。

 

かつて少年の自分が聖杯戦争に参加して、その時のサーヴァントがセイバー、アルトリアだったこと。彼女と共に聖杯戦争を勝ち抜き、互いの夢を尊重し別れたこと。

 

その後、夢のために戦い続けた日々のこと。世界と契約し、守護者となったこと。そして続いた戦い、否、殺人の日々のこと。理想に裏切られ、磨耗していく日々のこと。

 

そして自身がアーチャーとして呼ばれた、聖杯戦争のこと。そこで再会したセイバーが、アルトリアだったこと。その聖杯戦争に参加した理由が、自分を殺すためだったということ。その過去の自分に敗れたこと。

 

 

「前に聞いた戦友でもあり、敵同士でもあったというのは、」

「あぁ。彼女の方は私のことを知らなかったし、私も生前の記憶をほとんど無くしていたこともあって、彼女とも戦った。結局私たちのマスター同士が同盟を結んだがな」

「もしや、その時のアルトリアさんのマスターは、」

「御察しの通りだ。まだ未熟者だった頃の私だ」

 

なんだか気まずそうな表情の玉藻。未来に英霊となる者、エミヤ。その経歴は、とても現代の人間とは思えないほどに血に濡れたものだった。

 

そしてアルトリアとの関係もまた、想像以上に複雑なものだった。

 

「アルトリアさんは、貴方をシロウと呼んでましたよね。では思い出したということなのでは?」

「いや、それは違うよ。そもそも私は厳密に言えば、彼女の知る衛宮士郎ではない。その証拠が、君達との記録だ」

「私達との?」

「そこにいた私は、セイバーと別れた私とは全く異なる経歴を経て英霊となった。その記録が私の中にあるということは、私の中に複数の平行世界にいた私の記録が混ざっているということだ。そういう意味では君たちと共にいた私に近い。エミヤという一個人ではなく、正義の味方の体現者の集合体。無銘とは、よく言ったものだな」

 

「私は彼女の求める衛宮士郎ではないし、彼女も私の知るセイバーではない、互いに全くの別人同士ということだ」

 

自嘲気味な笑みを浮かべるエミヤに、玉藻はかける言葉が見つからなかった。

 

「そんな顔をするな。君には岸波白野(ご主人様)に向けているような笑顔の方が似合っている。それに、私は大丈夫だ」

「でも、」

「言っただろう。私は確かに後悔し、一度は自分自身を殺そうとまで思った。けれども、俺は間違っていなかったんだよ。だから、もう迷いはない」

「エミヤさん……」

 

その時の笑みはマスターに見せる見守るようなものではなく、また時折見せる皮肉げなものでもない。普段上げている前髪が顔にかかり、幼い印象が出るものの、玉藻が思わず見とれてしまうほど、綺麗で素直な笑みだった。

 

ガタリ、と食堂の方に誰かが来る音がする。二人がそちらを向くと、キョロキョロとしながら、アルトリアが入って来ている。

 

「シロウ?いないのですか?」

 

「では、約束通り、他言無用だぞ」

 

立ち上がりながら玉藻に告げ、エミヤがアルトリアの元へと向かう。

 

「何か用かな、セイバー?」

「はい。宜しければ、また模擬戦をしませんか?あの頃は毎日のようにしていたのですし、日課として続けて見るのはどうでしょう?」

「とても魅力的な提案だが、毎日は流石に無理だな。他のサーヴァントに頼まれている用事もある」

「そうでしたか」

「だが、時間が空いているときは是非とも頼みたいものだな。今も作業が終わったところだ。付き合おう」

「ええ。貴方の成長を感じ取れて、とても嬉しく思います。ですが、勝つつもりでいかせてもらいますから、覚悟してくださいね、シロウ」

 

エミヤを見上げながら微笑むアルトリア。よく知っている皇帝と、割と似た顔立ちだが、どこか幼い言動のネロと違い、彼女は常に凛とした空気を纏っていた。でも、今の彼女はまるで、どこにでもいる少女のような、そんな美しい笑顔だった。

 

(同一人物だとか、同一個体だとか、関係ありませんよ。だってお二人とも、互いに求めあっているではありませんか……魂の半身、とでもいうのでしょうか。それ程までに、強い繋がり……)

 

 

 

この後に、玉藻が『エミヤとアルトリアを応援し隊』を密かに作ることになるのは、また別のお話。

 




はいはい、そんなこんなで、エミヤとアルトリアを第三者、
今回は玉藻の前から見た様子を描いて見ました〜

今後も多分、似たような感じになるかと思いますので、
誰がくるか、お楽しみに〜
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