彼のカルデアでの日常   作:トマト嫌い8マン

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うーむ、これでいいのだろうか……

今回の登場人物は色々と悩みました、はい
CCCの記憶が薄くて、どうにか思い出し思い出しで書いてみたのですが……

まぁ、なんか間違ってたらすみませんでした


彼と白と黒の踊り姫

燃えるような恋、なんて言葉があるらしい。

 

激しく、熱く、身を焦がすほどの想い。

 

例え比喩であったとしても、きっとその想いを抱いた本人にとっては、それほどの情熱を、苦しみを、内に持っているように感じられるのだろう。

 

人間のそういった詩的な表現は、決して嫌いではない。自分も、そうだったからわかる。

 

自分の想いを例えるならそう、きっとそれは蕩けるような恋、とでも言うべきなのだろうか。

 

でも蕩けるのは自分ではなく、その相手。

 

ただ自分の(エゴ)を流し込み、蹂躙する。

 

応えてくれる必要はなかった。ただ自分が愛を注ぎ、溶かし、侵食(おか)すだけ。それで良かったと思っていた頃の、幼稚すぎて目も当てられない想い。

 

でも、確かに言えることはある。

 

それは間違いなく恋だったのだと。

 

結局受け入れられず、彼には負けてしまったけれども、その時に感じたものは、確かに恋だったのだと、そう言える。

 

もう二度と出会うこともないだろうけれども……

 

ああ……それでも願ってしまったことが一つ

 

あの時叶わなかった、最後の決意……

 

今度は……彼のために……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

深海電脳楽土SE.RA.PH。自身も同行するはずだったその特異点での戦いでは、かつて月の裏側で行われた戦い、それを彷彿させるサーヴァントが数多く現れたらしい。その中には新宿でも現れた自分のありえたかもしれない可能性(磨耗し尽くした成れの果て)までもいたというのだから、エミヤがマスターの身を案じたのは言うまでもない。

 

激しい戦いの末、マスターは帰還することに成功した……かつて敵として戦うことになったアルターエゴたちの力を借りて。

 

 

 

 

自室の扉を開けたエミヤは、中の様子を見て思わず額に手を当てた。

 

「あら、来たわね」

 

ごく自然に、それこそ当たり前のように自分のベッドの上で横になっている侵入者に対して、もはや驚きも呆れも通り越した気持ちを抱くエミヤは、しかし溜息を一つ吐いてから、紅茶の用意をし始める。

 

「また来たのか。君も飽きないな」

「ええ、飽きないわ。私がそう簡単に飽きるはずないでしょ?」

「そう思うなら持って帰ってもいいと言ったはずだぞ。君の部屋なら、存分に愛でることもできるだろうに」

 

相手の腕の中に抱えられているものを指差しながら、エミヤが紅茶を部屋に備え付けのテーブルに置く。腕に人形やぬいぐるみを抱えたまま、彼女はゆっくりと態勢を立て直し、ベッドに座り込む。

 

「いやよ。だって面倒だもの」

「必要なら私が運ぶが?」

「いやよ。だってそうしたら、貴方の困った顔が見られないじゃない」

 

口元にぬいぐるみを近づけながら、彼女が悪戯げに微笑む。その表情からも、この状況を楽しんでいることが見て取れるが、当事者側であるエミヤとしては、勘弁してもらいたいものである。

 

「全く……君のその加虐的な行動はどうにかならないものかね」

「それは無理よ。知っているでしょ、アーチャー?私はこうすることで、ようやく周りのものを感じ取ることができるのだもの」

「……そうだな」

 

足を組み替えながらエミヤを見つめる少女。かつて彼のそばにいた日常の象徴たる少女と、よく似た顔立ちをしているが、より少女らしく、またより感情表現が豊か。

 

アルターエゴ、メルトリリスはクスリと微笑む。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カルデアに新しいサーヴァントが召喚されたことは聞いていた。マスターが歓迎会を開くと言っていたため、エミヤはブーディカやタマモキャットと共に料理を作ることに精を出していた。

 

準備もひと段落し、飾り付けをするとマスターとマシュたちが食堂を閉め切ったため、エミヤたち料理担当は最後のメニュー、デザートをどうするか話しながら廊下を歩いていた。

 

「うーん、あたしはデザートに関してはあまり詳しくないから、二人に任せることになりそうでごめんね」

「ニャハハ、アタシはチーフレッドの意見に従うのだワン!」

「ふむ……今回召喚されたのは、確か全員が女性だったかな?」

「そうだね。女の子が4人、だったかな。でも、そのうち一人は極端に刺激に弱くて、逆に一人は極端に刺激が好きって話だったけど」

「あっち行ってこっち行ってのてんてこ舞いだな!キャットも二兎を追うのはやめた方がいいと思うゾ」

「成る程……であるならば、味を好みによって変えられるものだな。ふむ……」

 

エミヤがお手製のレシピ本のページをめくる。その手元を覗き込むように見るブーディカとタマモキャット。エミヤの腕に掴まるようにしているため、必然、距離がかなり近くなる3人。二人に挟まれる形になっていて、柔らかい感触が両側から感じられるが、そこはエミヤ、強く意識することもなく、レシピを吟味する。

 

「ふむ……自分で何かを乗せるものもいいな。そうだな、例えばこの、っ!」

 

咄嗟にエミヤが二人を背中にかばうようにしながら、剣を投影する。白と黒の双剣を交差させるように防御の構えを取るエミヤめがけて、剣とも棘とも見える鋭い切っ先が迫る。

 

驚いている2人の女性を背に、エミヤは鍔迫り合いの体勢のまま、襲撃者の顔を見る。

 

「あら、流石ね。召喚されたばかりでレベルの差もあるでしょうけど、こうもあっさり受け止めるなんて」

「隠す気もなかっただろう。殺気がダダ漏れだ」

 

至近距離で顔を付き合わせる2人。エミヤが笑みを浮かべながらも内心強い警戒を抱いているのに対し、少女は実に楽しげで、嬉しそうな笑顔を見せる。

 

「相変わらず女の子を弄んでいるの?その辺りは変わらないわね」

「人聞きの悪いことを言わないでもらおうか?私はそんなことをした覚えは一切ないのだが」

「今回も自覚なし……と。驚きを通り越して呆れさえするわ」

 

エミヤが腕を振り抜き攻撃を弾くと、少女はあっさり殺気を収める。どうやら本気で殺すつもりではなく、エミヤなら受け止められるという信頼から来た行動らしいことを、ブーディカはなんとなく察した。黒い騎士王とか、黒い聖女とか、時折似たような行動を見せる少女のことを知っているからだ。

 

「えっと、君が新しく来たサーヴァント、でいいのかな?」

「ええ。自己紹介が遅れたわね。快楽のアルターエゴ、メルトリリスよ。そっちの狐っぽいのは、なんだか見覚えあるわね」

「ニャハハ!キャットもボヤーンとながら朧げな覚えがある気がするゾ」

「あたしはブーディカだよ。気軽にブーディカさんって呼んでね」

 

なんだか奇妙な緊張感を漂わせる2人の仲裁も兼ねて自己紹介するブーディカ。そ、とあっさりとした返事を返すメルトリリス。その視線はいまだにエミヤに固定されている。

 

「メルトリリスは、ここのエミヤとは知り合いなのかな?」

「エミヤ?……あなた、名前があったの?」

「一応ある、ということだ。まぁ、しかし君と出会った私のように、一個人ではなく正義の味方の概念の集合体と考えれば、さして意味など持たぬよ」

「そう……だから無銘(アーチャー)というわけなのね。エミヤ、ね……ええ。悪くないわ」

 

微笑みながらエミヤの名を繰り返して呟くメルトリリス。月の頃の経験や、今回の特異点のことが影響しているのか、あの頃のような狂気よりも、大人びた落ち着きを持った彼女の姿に、内心驚いているエミヤだった。

 

「その感じだと、前にも会ったことがあるのかな?」

「む?あ、ああ。会ったことがあるといえばあるし、ないと言えばない。彼女に限らず、私のことを知る者全てがそうなのだがね」

「あら、その言い方は無いんじゃないの?私は忘れたことはなかったわよ、あなたのこと。忘れられるはずないもの」

 

口元を袖で隠すようにしながら頬を染めるメルトリリス。側から見れば恥じらっている乙女、に見えるのだが、エミヤのところからは彼女が笑っているのが見える。あ、これは楽しんでるな……なんて思ったのもつかの間、

 

「おやおや、その反応……もしかして何かあったの?」

「ええ。とても情熱的で、溶けちゃいそうだったわ」

「むむっ!キャットのセンサーが反応しているぞ。何やら乙女な物語が!」

「バカなことを言うな。そんなことは断じてなかった。そもそもあの時は敵同士だっただろう」

 

何やら嫌な予感がする。取り敢えず彼女が色々とややこしくする前に正しい情報を伝えるべくエミヤが口を開くと、

 

「ええ……そして初対面で、私の大切なものを奪われちゃったわ……あんなの、初めてだったのよ」

 

メルトリリスが爆弾を投下した。

 

それはもう、特大レベルの。

 

ご丁寧に恥じらうようにエミヤから目を背ける仕草までつけて。

 

「ええぇぇぇっ!?」

 

廊下に響き渡るブーディカの驚きの声。それを聞きつけ集まり始めるサーヴァントや職員が見たのは、

 

「君は何を言っている!?」

「あら、私は嘘は言ってないわよ。本当のことじゃない。あの時だって言ったでしょ?奪われちゃった、って」

「もっと言い方があるだろう!そもそも、あれは君が一方的に始めたものであって、私は応える気はないと」

「そうね……あれはもう終わったもの……今の私とあなたには関係のないこと……そう、よね」

「いや待て。何故急にしおらしくなる、何故目をそらす?」

「いいのよ。その時のことはもう気にしなくても。今ここにいるあなたも、私も、厳密には違うのだから」

 

驚きに動けないブーディカと、彼女を支えるタマモキャット、そしてどこか寂しげに話すメルトリリスと、額に手を当てるエミヤ。

 

取り敢えずこの光景を見たマスターが一言。

 

「……修羅場?」

「なんでさ!」

 

こうして、メルトリリスはエミヤの元カノとして認識されるようになったとかなんとか……

 

そしてエミヤはというと、

 

「シロウ……もしやと思っていましたが、まだ他にも」

「これは教育が必要ですね」

「全くだな。一度しっかりわからせなければならないようだ」

「ふんっ。別に私はどーでもいいですけど、なんか腹が立ったので」

 

聖剣やら聖槍やらが荒れ狂うように迫る中、必死に逃げ回ることになったのは言うまでもない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その時のことを思い出し、思わず溜息をつくエミヤ。

 

「何溜息をついているのよ。そういう行動は、幸せが逃げる、とか言われてるんでしょ?」

「確かにそういう話もあるな。が、まぁ気にしないでくれたまえ。ちょっと君が来たばかりの頃を思い出してね」

「大変そうだったわね。ふふっ」

「全く、誰のせいだと思っているのかね?」

「私よ。だからこそいいんじゃない。私、加虐体質だもの。あなたが苦労している姿を見るのもなかなか良かったわ」

「……頭が痛いな」

 

思わず顔を手で覆うエミヤ。その様子に、メルトリリスの笑みがさらに深まる。

 

「それより、アーチャー。何か言うべきことがあるんじゃない?」

 

立ち上がり、エミヤの前まで来るメルトリリス。両手を広げ、踊るように回る。

 

「ああ。本来なら最初に言うべきだったかもしれないな。その再臨した姿も、とてもよく似合っているよ」

 

かつての黒のコートではなく、身を包むのは純白のドレス。彼女の具足も宝石の如く、光を反射しきらめく。

 

少しだけ驚いたような表情を浮かべてから、メルトリリスが再びベッドに腰を下ろす。

 

「……さらっと言ってくれるわね。まぁ、そういうところがあなたらしいのかもしれないけど。言い慣れてるのかしら?」

「そうでもないさ。ただ、本心から思ったことを言ったまでだよ、私は」

「そ……完璧な私に変化は不要、そう思っていたのだけど……こう言うのも悪くないわね」

「そうだな」

 

かつての黒を纏う彼女と、今の白を纏う彼女。

 

それはまるで、白鳥の湖のようだ、とエミヤは思う。

 

彼女の戦闘スタイルにも現れるクラシックバレエ。その中で代表的な作品、白鳥の湖。その主役(プリマ)は一人二役を演じる。黒鳥をイメージしたオディールと、白鳥となるオデット。

 

物語の終わりは当初魔法は解けず姫も王子も死んでしまう悲劇。だが、時が経つにつれ、違う結末の物語も現れ始めた。

 

あの時、結局彼女を見逃したことは、彼女を救うことにはならなかった。あまりにも悲しい最後(フィナーレ)。けど、今こうしてここにいる彼女には……

 

「何よ?そんなにじっと見つめて」

「いや……今度は君を幸せにしてあげたいと思っていただけさ」

「なっ」

 

カァァァ、なんて効果音が聞こえて来そうな勢いで、メルトリリスの頬が赤く染まる。

 

その時エミヤが見せた表情は、月では決して見せてはくれなかったもの。苦悩もなく、怒りもなく、警戒もない。初めて見る、偽りのないその微笑みに、胸が温かくなるのをメルトリリスは感じる。

 

「?顔が赤いが、熱でもあるのかね?」

「あっ、ちょっと」

 

メルトリリスが止める間もなく、エミヤが彼女に近づく。さらりと髪を撫で、額に触れる手。感触なんて、自分にはほとんどないはずなのに、何故か触れられた部分が暖かく感じる。

 

「だ、大丈夫よ!」

「いや、念のために体を休めたほうがいい。君さえ良ければ部屋に連れて行くが?」

 

なんだというのだろうか。

 

かつてはあれほどまでに明確な拒絶と敵意を向けて来ていたというのに。

 

そんな顔で、そんな声で、そんな仕草で───

 

 

 

───自分(メルトリリス)を心配してくれている。

 

 

「……終わらせたつもりだったのだけれどね」

「?どうかしたのか?」

「なんでもないわ。そうね、休むことにするわ。でも、このベッドを借りていいかしら?」

「私のベッドをか?」

「ええ。この人形たちと一緒の方が落ち着くもの」

 

せめて最後くらい困らせてやろうと思い、思わずそんなことを言ってみる。きっと彼のことだ。困った顔をして、溜息をついて、そして自室で休むように促して来る。それを聞いてから帰ろう。そう決めていたのに、

 

「わかった。暫く横になっていろ」

 

優しい手つきでメルトリリスをベッドに横たえさせるエミヤ。キョトンとしている彼女をよそに、丁寧に布団までかける。

 

「何か食べるものを用意しよう。少しは魔力の足しにはなるだろうし、回復を手助けしてくれるだろうさ」

 

そう言って、エミヤが部屋を出て行く。ベッドの中にいながら、思わず惚けていたメルトリリスだったが、

 

「……ほんと、ドンファンの癖に……」

 

呟かれた言葉には怒りはなく、むしろどこか嬉しそうな響き。

 

相手の愛情なんていらない、そうかつては思っていた。

 

でも、ぬいぐるみを抱きしめ、頬を染める今の彼女は、

 

(こういうのも、いいわね、アーチャー……)

 

純粋に、優しさを嬉しく思う、1人の少女のような気持ちを、抱いていた。

 




コラボイベントではぐだのヒロインしていたメルトですが、
私はやっぱり彼女はアーチャーを想っていて欲しい……

だってエミヤだもの!笑
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