ラーメン大好きヴァーリさん   作:nasigorenn

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上手くまとめられたかわからない4話目


その4 奢りですよヴァーリさん

 前にも語ったであろうが敢えてもう一度言おう。

 

『ラーメン屋とは人情に厚く熱い』ものなのであると。

 

それなくしてはラーメン屋は語れない。

そしてまた、新たに言葉を重ねるのならばこの言葉こそがふさわしい。

 

『ラーメン屋は時に無償であれ』

 

利益のみを追求し営業の効率化を図る。確かに素晴らしいことだ。資金なくして研究は行えないのだし、材料費などの事も考えれば当然稼ぐ方が良い。

だが…………それしか考えてないのならばその者は例えラーメンに関わる仕事をしていようとも絶対に『ラーメン屋』ではない。

ラーメン屋とは義理人情に厚く熱い。そしてそれは時として損得勘定を抜きに相手にラーメンを出すときがあるのだ。

これはそんなときのヴァーリ(馬鹿)の話。

 

 

 

 下級堕天使の一件なぞ脳内の奥底ですら残らないほどすっかり忘れ去っていたヴァーリはというと、この日は珍しく外出していた。

ラーメン屋『白龍皇』の定休日は週2日あり、今日はその日の一日目。何故定休日があるのか? 悪魔の血を引くヴァーリなら人間とは体力の差は歴然の差があるので休まなくても平気なはずである。それなのに何故休むのか? それはヴァーリの出身を知っているものならば誰しもが思うはずであろう。だが、そう言うことを言う者にヴァーリは呆れながらこう答えるのだ。

 

「休む暇があるならラーメンの研究をするに決まってるだろう! その為の定休日だ」

 

そう、彼はその休みの日に重点的にラーメンの研究を行うのだ。それは時に試作品作りだったり時に他の有名店のラーメンを食べに行ったり、または市場や物産展などで物珍しい食材を買いに行ったり等様々である。

 だからこの日、彼は少し離れた市場にて物珍しい食材などを物色しにいっていたのだ。

その日は天気が悪く外は雨が降っていたが、天気が悪い程度で彼の気分は害されない。

 

「今日は面白そうな出汁材が手に入ったぞ! 早速店で試してみたい」

 

彼の顔は普段の大人びたものではなく年頃の子供のようにウキウキと浮かれていた。如何にも上機嫌な様子は格好いい男に可愛らしさを加え、時たま見かける女性の心を鷲掴みにしている。まぁ、そんなことなどこの男が気付いているわけもなく、彼は実に楽しそうであった。

そんな彼は傘を差しながら若干早足で店に向っているのだが、その途中であるものが目に入った。

 

「あれは………」

 

それは一人の男だった。

着ているのは学生服であることから学生であることが窺え、それがこの町にある最近共学化した『駒王学園』の制服であることがその学園の生徒であることを証明する。

その男子学生は雨が降っているのに傘を差しておらず身体を引き摺るかのようにゆっくりと不安定に歩いていた。最初は怪我でもしているのかと思ったが、その身体には怪我らしいものは一切見当たらない。そして顔を見れば何故そうなっているのかが直ぐに分かった。

彼の顔は真っ青であり、その瞳に光はない。絶望と後悔に飲み込まれた虚無がそこにはあった。

それを見た瞬間にヴァーリは理解した。何せ彼も一時期は同じ瞳をしていたのだから。

だからこそ、ヴァーリはその男に声をかけた。

 

「おい、大丈夫か?」

 

そう声をかけられ、その男は力ない動作でゆっくりと顔を上げた。

 

「?」

 

何故声をかけられたのか分からないのだろう。男は何の表情も浮かべず力ない瞳でヴァーリを見た。

ヴァーリはそんな彼の視線を受けつつ男に話しかけた。

 

「こんな雨が降っている中で傘も差してないからな。びしょ濡れじゃないか」

「…………放っといてくれ………俺なんて………」

 

ヴァーリの言葉にその男は俯き小さくそう答える。その言葉から分かるのは、彼が打ち拉がれているということだ。

だからこそ、ヴァーリはその男の手を掴むと無理矢理にでも引っ張り始めた。

 

「ともかく来い」

「なっ!? ちょっと!」

 

無理矢理連れて行かされそうになっていることに流石の男も抗議の声を出す。

だがヴァーリはそれに返さない。ぐいぐいと男を引っ張っていき、男は次第に抵抗するのを止めてヴァーリの成すままにされている。

そんな訳でヴァーリはその男を自分の城である店へと連れてきた。

 

「………ここは?」

 

連れてこられた先がラーメン屋であることに驚きを見せた男。そんな彼にヴァーリはタオルを投げつつ答える。

 

「ここは俺の店だ。まずはそいつで身体を拭いておけ」

 

そう言ってヴァーリは厨房に姿を消す。

そしてヴァーリが戻ってくるまでの間、彼は店内を軽く見回す。

別に何かあるわけではない。ただ気まずさからそのような行動を取っていたのだ。

それが終わると共にヴァーリはお盆片手に男の方へと戻っていた。そのお盆に載っているのはこの店自慢の醤油ラーメンである。

ヴァーリは男の前にそれを持って行くとそれを男の前に置いた。

 

「まずは食え。それからだ」

 

その言葉に男は断ろうとしたのだが、ヴァーリの真剣な眼差しに何も言えなくなり取り敢えずラーメンを一口含んだ。

 

「!?!?」

 

その時その男に電流走る!!

その美味さに言葉がでない。だからその男は言葉の代わりに出されたラーメンを必死に啜り始めた。

そしてあっという間にどんぶりを空にした男。その食べっぷりを見てヴァーリは男にゆっくりと話しかける。

 

「君が何故そんな悲壮めいているのかは知らないし、知ったところで俺がどうこうできる物でもない。だから俺は君に何も聞かない。だがな………ラーメンだけは揺るがない。ラーメンは人の心を満たしてくれる」

 

その言葉に男の目から涙がこぼれ落ちる。それを見ないようにしながらヴァーリは静かに言った。

 

「ラーメンは常に進化する。だから場合によっては俺も後悔することだって多々ある。だが…………それでも俺は突き進む。だってラーメンが大好きだから」

 

その言葉を聞いて尚泣き始める男。どうやら色々と溜め込んでいたようだ。

そして男は少しだけ落ち着き始めるとヴァーリにお代を払おうとした。だがヴァーリはそれを受け取らない。

 

「これは俺の奢りだ。ラーメンは全てを癒やす。何も聞けないし俺ではどうしようもない。俺が出来るのはただラーメンを作ることだけだ。だからそれを食って…………元気だしな。君の『大好き』はまだ終わっていないだろう。ならそれを食って空元気でもいいから出して見ろ。それだけで世界が変わる。ラーメンは世界を変えるのだから」

 

その言葉に男は感謝し、それまで死んでいたような顔から粋がった顔で感謝を言いながら店を出て行った。

その背中にヴァーリは男に聞こえないように、それでいて男の中に眠る『赤』に小さく話しかける。

 

「赤き龍よ。今は無粋な事を言うなよ。彼にはただ、ラーメンの余韻を楽しんでもらいたいからな」

 

そして男がいなくなったのを見届けたヴァーリは手に入れた出汁材を試すのであった。

 

 

らーめん、大好き、ヴァ~リさん♪

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