ラーメン屋は『人格者』になる。
これは別におかしなことでも何でもない。彼等はラーメンを通して様々な事を学んでいく。その結果、公平でありつつも懐深く情に厚い人格というものが成形されるのだ。故に優れたラーメン屋は皆人格者になる。ならば政治家など皆ラーメン屋がなれば良いのではないかと思う物だが残念かな、彼等はその能力をラーメンでしか活かさない。
だって彼等は………『ラーメン屋』なのだから。
いつもと通り己のラーメン道を突き進む馬鹿二人(ヴァーリ、オーフィス)。そんな彼等にこの話がやってきたのはある意味必然だったのかも知れない。
『三大勢力による会談』
当初この話を聞いたヴァーリは当然知るかと蹴っ飛ばそうとした。何せこの日、彼とオーフィスはこの町にある有名店『天城屋』にお呼ばれ(勉強会)していたのだから。このラーメン屋はこの町で一番の古強者であり、それ故にその味の正当性は他の追随を許さない。まさに最強の正統派醤油ラーメンの老舗である。そこにお呼ばれしたのはある意味ラーメン屋にとって名誉なことであり、その実力を認められたに等しい。つまりラーメン屋としてヴァーリの腕が認められているということになる。そんな大御所にお呼ばれとあっては行かないなんて事はあり得ない。
だからラーメン屋であるヴァーリがそんな会談なぞ勝手にやってろと言うのは当然であり、勿論無視であった。だがここは身内に甘い故なのか、アザゼルからの泣き落としという頼み込みに呆れつつも渋々話を飲むことになってしまった。
その結果、本当に仕方なくヴァーリとオーフィスの二人は会談に参加することになってしまった。尚、天城屋に『身内の諸事情で午前中は行けそうにない』ということを伝えこの話を泣く泣く断念しようとしたヴァーリであったが、先方からは
『なら午後で大丈夫ですよ。ラーメン屋は何事も寛容であれ。身内の方が大変な時に手伝ってあげられないのはラーメン屋として名折れになってしまいますからね。何、ラーメンは逃げませんよ』
と答えられ勉強会は午後からとなった。
そのお言葉にラーメン馬鹿(ヴァーリ)は男泣き。挙げ句は某バスケット部のふっくらとした監督に泣いて詫びる3点シューターのようであった。
まぁ、よくよく考えれば今回の議題である『コカビエルの反乱』を解決したヴァーリが行かなければいけない。尚、オーフィスのことをアザゼルは知らない。弟子を連れて行くとしか言っていないので、アザゼルからしたら更に胃痛の原因でしかない。馬鹿に教え込まれた新たな馬鹿がどんなものなのかという興味もあるのだが、それがまさか猫どころか神すら殺しかねないことを今現在知らなかったのは幸いだろう。すぐ知ることになるのだが…………。
そんなわけでやってきました駒王学園、その理事長室。
室内の雰囲気は今から始まる会談に対し皆緊張しピリピリとしていた。それもそのはずだ。現在、この部屋には悪魔、堕天使、天使の三大勢力のトップが集結しているのだから。魔界の王たる魔王二人、それに聖書に名を残す程に有名な堕天使と天使。そんな者達が集まっているのだから当然雰囲気が張り詰めているのだが…………この馬鹿達はまったく気取られない。
「アザゼル、早くしろ。こちらは先方に無理を言って来ているんだ」
「そーだ、そーだ」
この場に間違いな格好……いつものねじり鉢巻きに汚れた調理服のヴァーリ、そして給食の割烹着のような姿のオーフィスの二人はアザゼルにさっさとしろ急かしていた。
そんなふうに急かされているアザゼルは当然のように声を上げた。
「お前等、もうちょっと空気読めよ! これから始まるのは歴史に名を残すかも知れない程の会談なんだぞ。それをお前……どっちが大切なんだよ。それにそのちみっこいの誰だよ」
怒ればいいのやら呆れれば良いのやら、若干疲れた様子でそう言うアザゼルにヴァーリとオーフィスはドヤ顔で当然のように答える。
「そんなもの、天城屋のお呼ばれの方が大切に決まってるだろ。会談なんぞこっちからしたら勝手にやってろとしか言い様がないもの。今回来たのはお前が泣きついてきたからだろ。来てやったんだから早く終わらせろ。俺は忙しい」
「我、ラーメン屋見習い。ヴァーリの弟子、目指せ、無限大のラーメン」
その言葉に項垂れるアザゼル。必要だったとはいえやはり連れてくるんじゃなかったと内心思う。彼だって好きで泣きついた訳ではない。今回の当事者であるヴァーリを呼ばざる得なかったから仕方なかったのだ。誰だって好き好んでこんな『ラーメン狂』をこのような場に呼びたくはない。
そんなラーメン馬鹿二人に急かされアザゼルはうんざりしながらも会談を始めるよう悪魔側のトップであるサーゼクスに促した。
そして始まった会談。その中に参加者の自己紹介があり、悪魔側からは魔王の身内でありこの地の管理を任せられている『リアス・グレモリー』と『ソーナ・シトリー』それに彼女達の眷属達の紹介が行われ、そこから今回の議題である『コカビエル』の件を報告していく。そしてそれらが終わるとコカビエルの上司でもあったアザゼル、そして堕天使勢として参加しているヴァーリ達も自己紹介するのだが…………。
「ラーメン屋『白龍皇』店主、ヴァーリだ」
「そしてヴァーリの弟子、オーフィス」
堕天使勢とは一切名乗らない。何せ彼等はラーメン屋だから。
悪魔勢や天界勢はそんな二人に驚きを隠せない。何せ二人ともビックネームだからだ。白龍皇と言えば二天龍の一角でありその能力は凄まじいと聞いている。当然オーフィスの名にアザゼルも驚きを隠せず騒ぎ出す。
「何でここに無限の龍神がいるんだよ!? お前、『禍の団』の首領だろ!」
今回三大勢力の和平と共に話しておこうとした脅威について、その集団の首領が目の前にいるとは考えつかなかったからなのか、その驚き具合が凄まじい。それはオーフィスの名を知っている魔王二人と天使勢のトップであるミカエルも同じく驚愕し警戒を露わにする。
だがそれをぶち壊すのもラーメン屋であった。
「我、『禍の団』辞めた。我、ラーメン屋で無限大のラーメン、目指す」
「こいつは俺の弟子で共にラーメンの高みを目指す同志だ」
そう答えるとヴァーリとオーフィスはリアス達の方を向くとサッと彼女達の前に手を出した。そこに乗っているのは『白龍皇』の割引券。
「向こうが何やら五月蠅いが気にしないでくれ。俺は確かに『白龍皇』だがそれ以前にラーメン屋だ。そして君達は駒王町の住人だろう。なら是非一度ウチに遊びに来てくれ。賄賂というと聞こえが悪いからな、これはまぁ、お近づきのプレゼントというやつだ」
「師匠のラーメンは美味しい。味は保証する。我、まだまだ適わない」
その言葉と共に向けられた笑顔にそれまで警戒していたのが馬鹿馬鹿しくなり辞めるリアス達。そして上層部がショックで石になっている間に下は意外と和気藹々と話に興じる。特に二天龍の二人は面識があるだけにそれなりに会話が盛り上がっていた。
「いや、あの時は本当にありがとうございました。あ、あの時のラーメンのお代、払いますよ」
「いや、気にしないでくれ。あれは俺が君に奢ったのだから」
そんなふうに話し合う二天龍の二人。そこに敵意など一切無く学生とラーメン屋の店主というきやすい関係が出来上がっていた。
そこに水を差すように語り出す二頭の龍。
『はぁ、貴様の方の主はまだ悪魔として戦う気があるだけいいじゃないか。こちらの主は………もはやラーメン屋だ』
『そう言うが、こちらは色欲に出すぎている。もう少しそちらのような節制を』
互いに宿り主の愚痴を言い合う。その言葉の端から漂う哀愁に何故だか可哀想に感じさせ、そして今回は絶対に戦いにならないということを悟った二頭であった。
そんな感じで雰囲気が重苦しいものから至って普通な雰囲気にかわり何とか持ち直したアザゼル達が何とか話を元に戻す。そして和平も確定したところでそれは起こった。
突如として空間が停止し力ある者以外は皆停止させられてしまう。
その事に当然周りは驚き困惑する。そしてこの事態の原因であろう要因がリアスの眷属の一人であることがわかり、そしてこれがテロによるものだとアザゼルが説明する。
これは『禍の団』の仕業だというのだが、その首領がラーメンに染まりきってしまって首領辞めているだけにどうにも説明に力が入ってなかった。アザゼルがいうのはまたラーメンのせいなんだとか。
そんな感じでテロを起こした『禍の団』。空を覆う程に展開された魔方陣からはローブ姿の魔法使い達が現れる。
そして彼等は声高々に声明を発表した。
「我々は偽りの魔法少女を絶対に許しはしない! 我ら魔法使いの本来あるべき姿とは、あのような痛いものでは断じてないのだ。それを彼の魔王の所為で誤解される日々。この屈辱を決して許してはならない。故にその間違いを正すべく、偽りの魔法少女『セラフォルー・レヴィアタン』を粛正する!!」
その声明を聞いてテロリストにも色々と考えることがあるんだなぁとヴァーリは感じた。
故に彼は…………『ラーメン屋』はこういう。
「まずは彼等の話を聞いてみようじゃないか。俺達(ラーメン屋)は偏見を持たない。相手の話を聞き、そして時に諫めまた助言し支える、それもまたラーメン屋だ」
こうしてラーメン屋によるネゴシエイトが始まった。
「あぁ、またラーメンの所為で世界が破壊される……………」
アザゼルの疲れ切った声がその場で囁かれた。
らーめん、大好き、ヴァ~リさん♪