俺は一方通行《Accelerator》   作:とあるゴリラ

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第10話 タノシイオシゴト

 一方通行(アクセラレータ)は自身のマンションから移動し、比較的に有名なホテルの一室へと身を移していた。当然、数時間前に保護した少女も一緒だ。

 部屋はそれなりに広く、片隅にシングルベッドが一つ。窓側には大きな机と椅子が二つセットしてあり、夜景が見渡せるようになっていた。

 このホテルはそれなりに身分の高い者が止まる事も多いため、プロのヒーロー達が辺りの警備を強めている。ここなら心配ないだろう、と一方通行(アクセラレータ)は少女をここに連れてきた訳だが。

 

「オイ、何さっきから辛気臭ェツラしてやがる」

「……、」

 

 少女はここへ来るまでの一度も表情を変えず、ただずっと下に俯いている。常に曇った様な表情。きっと今まで酷い実験をされてきて、感情というものが壊れかけているのだろう。まあ、常に仏頂面決め込んでいる一方通行(アクセラレータ)と一緒では、笑う事が出来なくても不思議ではない。一緒に居ても楽しくないだろうし。まあ、たまには以前通っていたレストランのウェイトレスや、引っ越し屋の作業員の様に、笑顔を絶やさず話しかけてくる奴等もいるが、ああいうのは例外だ。きっと普段から人見知りせず、誰にでも気軽に接する事が出来るのだろう。それに対して一方通行(アクセラレータ)はコミュ力なんてモノは持ち合わせていない。THEコミュ障の称号をもらってもおかしくない男だ。

 そんなコミュ障な一方通行(アクセラレータ)は、言葉に詰まり大きな溜息を吐く。

 それなりに高級なホテルなだけあって、設備も充実している。

 ベットの近くの受話器を使い、ルームサービスを使えば直ぐにでも、ホテルマンが飛んでくるだろう。

 一方通行(アクセラレータ)は部屋の窓側にある一つの椅子に腰をかけ、マグカップに入った黒く苦い液体を口の中へと、一口含む。

 

「まァイイ。で、本題だ。先ず、オマエが囚われてた組織の名前を教えろ。名前くらいならわかンだろ?」

死穢八斎會(しえはっさいかい)ってところ……」

「──あァ? また、随分と古くせェ名前が出てきたな。そこンとこの若頭……ァーなンつったか? 確か治崎───」

 

 そこまで言いかけた所で、少女はブルブルと震え出した。

 一方通行(アクセラレータ)はついつい、あ? と、声をこぼしつつも、状況を即座に理解する。

 

(ガキの肌切り裂いてケタケタ笑う変態野郎が若頭ってのは確定だな)

 

 そう、死穢八斎會という組織──ヤクザ、または極道の若頭が今回大きく絡んでいるという事だ。

 その名も治崎迴(ちさきかい)。昔一度だけオール・フォー・ワンに写真を見せてもらった事がある。しかし、何故目の前の少女が囚われていたのか、一方通行(アクセラレータ)には見当もつかない。

 まだハッキリとしてはいないが血縁──つまり、彼女と血の繋がりがあるという事。同じ能力でも持っているのだろうか。

 

「クソガキ、オマエの能力──"個性"は何だ? まさかベクトル変換って訳じゃねェだろォな?」

「よく、わかんない」

「……そォかよ」

 

 ダメだ、やはり会話になンねェか、とボソリと呟きつつ、一方通行(アクセラレータ)は席を立ち部屋の扉の方へと歩いていく。

 

「どこいくの……」

「……決まってンだろ。寝ンだよ」

「一緒に寝ないの?」

「ハッ! 何想像してやがンですかァ? たくっマセガキかっての。隣にも部屋借りてンだよ。一緒に寝るとかどンだけ愉快な脳味噌してンだ」

「……別にそういうんじゃなくて」

 

 チッと、舌打ちをして一方通行(アクセラレータ)は部屋を出て行った。

 少女は一方通行(アクセラレータ)が消えていった後、彼の出ていった扉をジッと見つめながらボソリと呟いた。

 

「また名前言いそびれちゃった……」

 

 ◇

 ◇

 ◇

 

 

 部屋を出ていった一方通行(アクセラレータ)は当然の事ながら自分が借りたもう一室の部屋へ戻る事はなかった。

 ホテルの非常階段をカツカツと降り、ホテルの外へでて夜の街へ。

 少女を捉えていた組織がヤクザ、つまり極道の類ならそういった怪しい店の奴らに聞けばいい。そう判断したのだ。

 "個性"を使用するのには免許がいる。まあ、引っ越し屋とか建築または土木関連の仕事。何にしても許可証みたいな物が必要な訳で、人に"個性"を使用するなど、言語道断である。しかし、そんな事はお構いなしに、夜の街には法に背いた店が少なからず存在する。例えば人に精神系の'個性"を使用して性欲を満たしたり、地下格闘場など、"個性"を使用して人と人を戦わせたり、だ。

 大体そういった類の場所には大物──VIPと呼ばれる裏社会に通じた奴がいる。大抵はヴィランの類だが、少なからず極道物もいるだろう。

 今現社会は超人社会と呼ばれている。超人社会は極道にとって最悪なモノと言えるであろう。"個性"がなかった頃は抑止として上手く立ち回っていた極道。警察などにもつてがあり、大きな事柄で無ければ上の方で揉み消せたりしたかもしれない。だが、ヒーローばかりの超人社会となった今。極道という抑止力などは必要ではなくなり、極道の連中はヒーロー達にとって良いカモになった。

 ちょっとやそっとの事でヒーロー達に捕まえられるようになったのだ。そこに警察のつてなど、通用するはずも無く、名声欲しさのヒーロー達にドンドン食いつぶされていったヤクザは衰退の一途を辿った。

 

(で、そンな化石共が何考えてやがンだ?)

 

 ヒーロー共への逆襲か、それとも裏社会の王──オール・フォー・ワンが何か裏で根回しをしているのか。そのどちらでも無く、自分達が裏社会の王になろうとしているのか、だ。

 そんな事を考えつつ、チンピラ共がはびこる夜の街を闊歩する。

 ふと、目に付いたのは如何にも、な感じのバーである。大通りを外れて裏路地を進み、5階建てのビルの三階だ。

 深夜な事もあって、容姿が子供の一方通行(アクセラレータ)はチラチラと通行人やらに見られているのが気になり、路地裏に入った事がキッカケで、()()()()見つけたのだ。

 店内は様々な種類の酒が並べられており、カウンター越しにバーテンダーが一人。テーブル席も存在し、客もそれなりに入っている。

 しかし、入っている客の机の上には堂々と薬物などが並べられており、一方通行(アクセラレータ)は思わず、ビンゴ、と呟いてしまった。

 タバコの煙、又は葉っぱの煙が充満する店内をマジマジと見つめ、中にいる客を一人一人値踏みしていく。

 

「何さっきから見てんだ坊主。ここはテメェみたいなションベン小僧のくる所じゃねぇぞ」

 

 両腕に女を抱きながら、下品に笑う男。

 夜だというのにサングラスを着用しており、腕時計、ネックレス、指輪、付けているアイテムは全て金ピカで格好も派手過ぎる。

 

「……まっ、コイツでイイか」

 

 一方通行(アクセラレータ)はツカツカとその男の目の前まで歩いて行き。

 

「オマエ極道か? 違ェなら別に用はねェンだが」

「ほぉ、俺様が極道なら?」

「質問に答えれば何もしねェ……答えねェなら、分かってンだろ?」

「良い度胸だクソガキ」

 

 次の瞬間、全ての席の客、またはバーテンダーすらも一方通行(アクセラレータ)に対して拳銃を向ける。

 

「残念やったな? ビビって声もだせんか?」

 

 それに対して一方通行(アクセラレータ)は口元に手を当てて大きなアクビをした。

 

「───ふァあ、あ」

 

 一方通行(アクセラレータ)は穏便に済ませる為に言葉を濁したつもりだったが、それを目の前の男達は無駄にした事に呆れたのだろうか。

 

「坊主、お前さんはそんなに死にたいのか?」

「馬鹿言ってンじゃねェよ。そンな気はサラサラねェっつーの。大体よォ、そンな拳銃(オモチャ)でどうすンだァ? ホラよォ、こうして撃ってくれンの待ってやってンだぜ? とっとと撃てよ、三下」

 

 銃口からは今にも小さな鉄の塊が飛び出しそうな雰囲気の中、一方通行(アクセラレータ)は息一つ乱さず、冷静であった。そして相変わらずの態度の悪さ。本来ならここで躊躇なく殺されても仕方ないのが。

 

「ふ、フハハハ! 坊主、気に入った。俺はお前さんが探してる極道──つまり、ヤクザで違ぇねぇ。聞きたい事があるなら言ってみな」

 

 最初に話しかけた男は何かを悟ったように笑い、拳銃を下げた。

 それは決して自分が負けた、と認識させたからでは無く。ただ純粋に目の前の少年が裏の世界の事を知っており、どっぷりと闇に浸かりきっていると悟ったからである。

 

「旦那ッ! こんな坊主に舐められていいんですかい!?」

 

 他の男達は未だに拳銃を下げようとはせず、照準を一方通行(アクセラレータ)へと向けている。

 

「馬鹿野郎、俺がいいっつってんだ。早くチャカ下げろや。それに、この坊主は中々見所あるぜ? 恐らくトンデモな"個性"もってんだろうよ。なんせ、この状況で瞬き一つしやしねぇ。それどころか、瞳孔開きっぱなしでヤル気満々ときた」

「へ、へい。旦那がそうおっしゃるなら……」

 

 一人の男が納得すると、他の男達も拳銃を懐へとしまい始める。

 

「話はすンだみてェだな、なら本題だ。死穢八斎會(しえはっさいかい)。聞いた事ぐれェはあンな? 奴らの拠点が知りてェ。別に本拠地じゃ無くても構わねェ……いくつか支部を作ってる筈だ。一番近い場所を教えろ」

「───死穢八斎會(しえはっさいかい)……またトンデモねぇ名前がでたな」

 

 男達はその名を聞いてギョッとした。

 それ程、ヤクザの中でも死穢八斎會(しえはっさいかい)という組織は名の知れた組織という事だ。

 

「この近くにも確か支部はあるな……となりの街の龍神通りに構えている筈だが、そんな事でいいのか?」

「ああ、構わねェ」

 

 そう言って、一方通行(アクセラレータ)は振り返り、酒場の出口へと足を進める。

 

「おい坊主ッ!」

「あン?」

 

 出口に手をかけた所で、呼び止められた。

 

「悪い事は言わねぇ、奴らに関わるのはやめとけ」

「ご忠告どォも」

 

 一方通行(アクセラレータ)は男の忠告を無視してそのまま歩いていった。

 その後ろ姿を見ていた男は軽く間を置いた後、誰にも聞こえないように呟いた。

 

「──全く、肝の据わったガキだぜ」

 

 

 ◇

 ◇

 ◇

 

 

 一人ホテルに取り残された白い紅眼の少女──壊理(エリ)一方通行(アクセラレータ)が隣の部屋を借りて寝ていると思い込み、小さく体を丸めてベッドと毛布の間に挟まれていた。

 電気は消えているので部屋は窓から差し込んでくる月の光のみ。チョコンと毛布から顔を出し、今日あった事を振り返る。

 いきなり外へ連れ出されたと思えば、目の前が真っ白になり、空高くに放り出され、そして彼と出会った。

 

(もうあの人寝ちゃったかな……)

 

 上空から落下している時、エリは死ぬかと思った。いや、これで死ねる、とも思ったかもしれない。

 死穢八斎會(しえはっさいかい)に引き取られてからは、常に辛い実験ばかり。何度も皮膚を剥がされ、()()()()の男の"個性"により直され、何度も何度も何度も何度も繰り返される拷問の様な日々。

 

(だけど、あの人は私を助けてくれた。天使みたいだった。空から私の手を掴んで引っ張ってくれる、そんな優しい手………)

 

 エリはあの時、掴んでくれた手をそっと自分の顔に近づける。

 

(それに───何故か分からないけど、懐かしい感じがする)

 

 ◇

 ◇

 ◇

 

 

 一方通行(アクセラレータ)は情報を得ると、すぐに動き、隣町の龍神通りまで来ていた。

 何としても、夜明けまでには死穢八斎會(しえはっさいかい)の支部へと潜伏し、何を企んでいるかなどを調べあげたいのだ。

 

「ここか? 想像と違ェな、まあイイか」

 

 死穢八斎會(しえはっさいかい)の支部は一つのビルであった。それも9階建。

 これを見ると本拠地はどれだけデカイのか、と変な想像をしてしまう。しかし、これだけの立派な支部だ。間違いなく白い少女の情報を持っているだろう。

 

「一人も殺さず、ねェ……」

 

 そう呟きながら一方通行(アクセラレータ)は自身の能力をチェックし始める。

 彼は無意識で自分に害のあるモノへの反射を発動する事が出来る。その反射するモノも無意識で構築されたフィルタ。それに基づいて反射されるが、この一方通行(アクセラレータ)の場合は無意識で構築されたフィルタを使わず、自身で考えフィルタを構築している。そして危険かもしれない行動を起こす前は必ず自身が構築したフィルタを念入りに確認し、アップデートしてから行動するのだ。

 それは彼がこの反射が絶対では無い事を知っており、この世界では物理法則など無視したトンデモない"個性"があると知っているからである。

 故に今の彼には慢心が無く、正しく"最強"と言えるであろう。

 

「ン、こンなもンか?」

 

 フゥと息を吐き、自身の反射物理演算のフィルタもアップデートし終わった。

 一方通行(アクセラレータ)は口を歪め、悪魔の様な笑みで呟く。

 

「さァて、情報収集(タノシイオシゴト)だ。10分で終わらせてやる」

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