一話前で後書きと前書きが長いと言われたので、今回は短めで、誤字報告、または評価いれてくださった方々の名前は載せません。
ですが、評価を入れてくださった方々には感謝の気持ちでいっぱいいっぱいです。
では、どーぞ。(誤字脱字、あったらごめんね)
その岩のような塊に向かって、拳を振り下ろす。
「ギャハッ!!」
瞳孔を開き、不敵な笑い声と共に、大量のアスファルトの破片がまるで拡散弾───ショットガンの様にヴィランの軍勢に突き刺さる。
その破片が目に突き刺さり視力を失う者、その破片が胸に突き刺さり絶命する者、その破片が足などに刺さり身動きが取れない者。
全てのヴィラン達は、襲う側である筈の彼等はその場から逃げる事に必死だった。
「アァ? 何逃げようとしてンだァ?」
「た、たひゅけ───」
「よかったなァ、オマエ等。ヒーローに殺られるより、悪党にやられた方が、100倍は本望だろォ? なァ?──ギャハヒャハハハハ」
悪魔は笑う、その『化け物』は嗤う。
「オマエ等"個性"の力持て余して
一方通行は棒立ちの状態からダンっと、地面を一蹴り、凄まじい勢いで走って逃げるヴィランに追いつき、男を背中から地面へ叩き伏せる。
「ま、待て! 話を……」
「オイ、オマエ弔の野郎が何処にいるか吐け」
「は、はいッ!」
男は慌てた様子で懐から無線機を取り出す。
それを地面に叩き伏せられている状態で、
ザーッ
と、ノイズ音が響き渡る。
「オイ、誰か聞いてねェのか?」
無線を操作し、応答を試みるが中々返答が返ってこない。
これは期待できそうに無い、と
《こちら、黒霧。誰です》
「よォ、久しぶりじゃねェか。影野郎」
《なっ、
「ハッ! どンだけ愉快な脳味噌してンだァオマエ? 弔に代われ」
《暫く待っていてくださいね》
最後、黒霧の言葉で再び汚いノイズ音に戻る。
そして10秒程がたち、ノイズ音が消える。それと同時に彼は声を高らかに上げた。
「とォォォォむゥゥゥゥゥゥゥらァァァァァァァァァァクゥゥゥゥン?」
《───はぁ?》
あまりの大声、そして挑発したその態度に無線越しに聞こえてくる弔の声はとても間抜けな声であった。
その間抜けな声に、腹を抱えて笑いそうになる。
黒霧の奴が、無線の相手が
「雑魚相手にして随分調子乗ってるみてェじゃねェか? ギャハハ!『化け物』は『化け物』同士で遊ぼォぜ? 今そっち行くから覚悟しろォ……」
言葉を言い終えると、先ほどの踏みつけていたヴィランを思い切り踏みつけた。
自分の蹴りが相手に当たると同時に、自分の方へ返ってくる運動量を相手に向け、実質二倍の威力がある力で、だ。
男の悲鳴は、きっと無線機越しに聞こえているだろう。
そしてここで派手な行動へと
全ての災害を想定した施設───USJだからこそ、辺り構わず、全開で能力を使えるのだ。
こんな事は、もう中々ないだろう。せっかくなので、その場の勢いで能力を駆使して様々な災害に近い現象を引き起こした。
地面を蹴り、その振動をベクトル変換させ、大量の水───海水で大波を作る。その波は当然、こちらへと向かってくるだろう。要するに津波を簡単に引き起こしたのだ。
その水が設置された機械などに染み込みショートする。
そして、再び水流を操作し、海水を元の場所へと戻していく。周りから見れば何をしているんだ?と思うかもしれないが。
次の瞬間、放置されていた車や電子機器から炎が生まれる。
海水に一度晒され、それが乾けば電子機器もエンジンも燃え始めるのだ。
その火を今度は利用して、ガスの通ってそうな場所へと目星をつけて炎の車を蹴り上げる。
───大爆発。
映画で見る様な大爆発がおこり、辺りは黒い煙で覆われた。
「さァて、ゴミ掃除だ。
最後、
「まっ、そンじゃまァいきますか───チッ。場所聞き忘れちまった」
学園都市一番の頭脳を持っているにもかかわらず、場所を特定しないで無線機を握りつぶしてしまったのだ。
(馬鹿過ぎンだろォが、クソ)
ひとまず、近くのヴィラン達は一掃した。
やはり、ヴィランの数が多い方へ向かえばいいのか、色々考え、結論を絞り出す。
(オールマイトを殺すねェ……)
その時、ある生物兵器を思い出した。
人間を改造してまるで別の生き物にした、兵器と呼ばれた生物───『脳無』。
(まだあンなクソ兵器作ってやがンのかァ? いや、元は人間か……)
そんな浅い考えを流し、すぐに場所を絞り出す。
オールマイト、脳無。
(広い場所───いや、そンだけじゃ駄目だ。アイツが行きそうな場所……正面?)
今回のヴィラン達は襲撃、正々堂々と奇襲を仕掛けた訳だ。なら、奴は正面にいる可能性が高い。
(チッ…裏かいて、コソコソ侵入したのが馬鹿みてェじゃねェか)
◇
◇
◇
死柄木弔は自分の腕を異様にちらつかせ、ワナワナと情緒不安定な様子だ。それはイカレタ犯罪者のそれと同じで、見ているだけで吐き気が起こりそうな悪意。
「ああ、どうすんだよ。プロのヒーロー大人数相手じゃ敵わない。一方通行は殺したいけど。マジでムカつく。粉々にしたい───あーあ、今回はゲームオーバーだ。ゲームオーバー」
その時、ピタリと弔は動きを止めた。
「帰ろっか」
まるで公園に遊びに行き、飽きたから帰ると言わんばかりの、まるで
だが、そんな一言に
これで助かる、と。
「助かるよ! 俺たち助かるんだ!」
「ええ、でも……緑谷ちゃん。アイツら気味が悪いわ」
騒ぎに動じてさり気なく胸を触った峰田を水の中にしずめながら、蛙吹は警戒する。
「うん……これだけの事をしておいて、あっさり引き下がるなんて」
緑谷は考える。コイツらが何をしたいのかを……。
目的は最初に言っていた。オールマイトを殺したいと。多少のイレギュラーが起きたくらいで計画の範囲内に収まるはず。それに、ここで引き下がれば、雄英の警戒度が上がるだけだ。
色々と、緑谷がヴィラン共の考えを予想するが、わからない。
そんな時、弔がとうとう動きに出る。チラリと緑谷達を横目で見ながら。
「けどまあ、その前に平和の象徴の矜持を少しでも───」
一直線。手を伸ばしながら緑谷達の方へ急加速し、
「へし折っておこうかな?」
その右手が伸びてくる。
緑谷は思い出していた。その手が触った者を崩すという事を───コンマ送りで世界の景色が飛び込んでくる。蛙吹の顔に徐々にその手が近づいていった時、空気が一瞬ざわついた。
◇
◇
◇
バチンッと、弔の手を何かが弾き、誰もがそのナニカを飛ばした人物の方へと目を向ける。
「オイオイ、格下イビリなら他所でやれよ。じゃねェと─────俺みたいな悪党が来ちまうだろォが!」
片手を前に軽く突き出し、何かをつかむ様な動作を見せるその男。
目を見ただけでわかる、裏の世界を知り尽くし、どんな者よりも冷たい目。本当の悪党とは、その風貌だけで危険性を悟らせるものなのだろうか。
「アクセラレータァァァァァァァァア!」
「何だァ? 随分と荒れちまってるみてェじゃねェか? ビビムラクゥン?」
「黒霧ッ! イイからアレだせ。奴にぶつけろ、この脳無じゃ力不足だ───物理攻撃じゃあの野郎を相手に出来ないのは知ってんだろ」
「は、はぁ。仕方ありません」
弔の掛け声と共に、黒霧の背後にはとてつもない黒い霧が現れる。
そしてその中から何やら異様な音が聞こえてくる。
ギチギチギチギチ
徐々に徐々にその音は大きくなっていく。
ギチギチギチギチギチギチ
そして、中から出て来たのは、巨大な生物の様なナニカ。
頭には剥き出しの脳味噌。しかし、その脳味噌に何本もの管が刺さっており、体の殆どが機械でできている様にみえる。
顔などは殆ど見えず、何かで覆われている、巨大な兵器。
「何だァ? 新しいオモチャでも開発したかよ。あの
「対
「随分と暇なンだなァ……オマエ等───胸糞悪ィもン作りやがって」
「───1秒でぶっ殺す」
大地は切り裂かれ、下に落ちれば地球の裏側まで行けるのでは無いかと思うほどの、深さ。
「やっぱ『化け物』だわ、お前───でも、それじゃあの脳無は倒せねーよ」
「はァ?」
弔のその声と同時、凄まじい叫び声が人工でできた谷底から響き渡る。
「お前のベクトル変換は
「ハッ! なら試してみるかァ……アァッ!?」
一方通行が近くにある鉄骨に手をかける。すると鉄骨は念動力で操られたかの様に、
超スピードで飛んでくる鉄骨の雨。だが、
「ククッ…ヒャハ、ギャハハ! イイねェ最ッ高ォにイイねェ! なら直接ぶっ潰してやンよ、三下ァ!」
ダンッと地面を踏みつけ、凄まじい速度で加速し、正面から突っ込んでいく。だが、その脳無を守るかの様に、辺りに散らばる瓦礫がその進路を妨害する。
(コレは、念動力!? しかもこの威力……間違いねェ、
(クソが、何勝ったつもりになってやがンだ、アイツ)
とても不愉快であった。弔に笑われるという事が。
(念動力ってのは、厄介だな。原作でも苦戦してたじゃねェか、クソッタレ───あ?)
「もう大丈夫! 私が来た!」
「オイオイ、ヒーローは遅れて登場かァ? どんな主人公補正だ」
「ああ、コンティニューだ。二人同時は無理だろ」
ヒーロー界No.1の登場に場の雰囲気は一気に変わった。
◇
◇
◇
緑谷達は現状を理解できないでいた。同じヴィラン同士で仲間割れ?と頭を捻らせる。
「なにかしら、アイツ」
「なんでもいいだろ? 助かったんだぜ!」
「あれは……」
わからない、確証は持てなかったが緑谷はその正体に少し心当たりがあった。
そして、弔の言った言葉がそれを確信にかえる。アクセラレータと、そう言ったのだ。
「強いっ!」
目の前のレベルの違う戦いに呆気に取られる。オールマイトもパンチ一つで天気を変えた事はあった。しかし、彼は軽く地面を右足で踏みつけただけで、向いてる方向を災害クラスの地割れで真っ二つに切り開いたのだ。
そして、黒い霧から出てきたヴィランも、それに負けじと争っている。
そんな時、弔が一言。
「オイ、脳無。そいつら片付けろ」
もう一匹の脳無。イレイザーヘッドを軽々しく屠ったパワー型の奴に弔が指示をだす。
それと同時に、緑谷は早く動かなくては、と体が勝手に動き。
───
先に脳無へと先制攻撃を成功させる。そして、自らの"力の調整"も上手くいき、攻撃は大成功に思えたが。
効いていない。まるで何ごとも無かったかのように、その場にたたずんでいる。
「いい動きするよなぁ……スマッシュって、オールマイトのフォロワーか?───まぁいいや、君……」
弔の声を遮り、聞こえてくる。
「もう、大丈夫───」
その時だ、場の雰囲気を変える、ヒーローが現れたのは。
平和の象徴。
「私が来た!」
オールマイト。No.1ヒーローである。
◇
◇
◇
オールマイトは腹立っていた。
一体どれだけの者が苦しみ、どれだけ後輩が頑張ってきたのか、と。
そして、イレイザーヘッドの近くへ歩み寄り、そっと優しく抱き抱える。
「相澤くん。すまない」
腕は両方ともへし折られ、顔もボコボコになっている。本来正面戦闘に向かないイレイザーヘッドが多数のヴィランを相手取った結果起こした惨劇。
そっと安全な場所へ運び。
───一瞬で緑谷達を救い出し、通り過ぎざまに弔を殴り飛ばした。
「ぁぁぁああ、ごめんなさいお父さん」
顔から落ちた手をそっと拾い上げながら、不気味な言動。
「通り過ぎざまに殴られた……あはは国家公認の暴力だ───流石に目で追えないや、でも思ったほどじゃない」
そして、顔に張り付いた手の隙間からその不気味な瞳を現す。
「弱ってるって話……本当だったんだ」
緑谷達は背筋がゾクっと震える。
しかし、その眼光に臆する事なく、オールマイトは立ちはだかった。
「だ、ダメです! オールマイト、あの脳ミソヴィランは僕のワンって、……腕の折れない力だったけど、ビクともしなくて……それに、あの
「大丈夫だ、緑谷少年。それに勘違いしているかも知れないが、
「!?」
緑谷はオールマイトが彼を昔から知っている様な口ぶりに、一瞬驚く。そして、
「チッ! 厄介だなクソッタレがァ!」
正面から突っ込もうと試みる彼の姿。見えない壁のような何かにその行動は一瞬防がれるが、物凄い轟音とともに、そのナニカをかき消している。
◇
◇
◇
遠距離攻撃は、念動力能力で出来た斥力で防がれてしまう。
そして、念動力を利用したアクロバティックな高速移動。図体が巨大な癖にもかかわらず、その動きは繊細で無駄がない。
逆に
(クソが、現実じゃ思ったよりハードじゃねェか。これじゃ負ける事はねェが……まて、何でアイツは俺の動きがこんなにも予測出来る?)
(いや、ありえねェ。木原一族みてェな外道だったが、アイツ等程、天才じゃねェ筈だ……俺の
次々と飛んでくる大量の瓦礫、だが、それを利用して
脳無の視界が塞がっている時がチャンス。近くの小石を蹴りとばし、その威力を衝撃波に変えて脳無に浴びせた。が、これといったダメージは見られない。
(耐久力も頭一つ抜けてんのかよ、タクッやっぱ)
───正面からぶっ潰さねェと。
「無敵なンざァ程遠ォいじゃねェか!」
膨大な演算量を捌ききり、かつて
その、超スピードを出した
「アッハァ! やり方は知ってたンだけどよォ! 試した事ねェ技があンだわ! イイよなァ? 試しても───つーゥか試すンだけどなァ!」
「ク、カ、キ……」
逆算を含め、掌握したのはこの星───地球自体の自転だ。この地球の自転を使い、腕に突き刺さっている脳無を完膚なきまでに潰すと決めたのだ。
「俺を苦戦させた褒美だ。喜んで受け取れよォ?」
先程までは手首程までしか入っていなかった腕が、みるみる内に脳無の中へと吸い込まれるように入っていく。
「ォォォォァァァァァァアアアアアアア───ッ!」
脳無はまるでぶん投げられた様に、USJ内、遥か天井目掛け飛んでいく。
そのドーム状の天井を突き破り、遥か空───大気圏へ、その先、宇宙へと消えていった。
(クソッ……思ったよりキツイじゃねェか)
対
特別に改良された脳無でさえも、『
その、強大な"力"故に『最強』と称された能力なのだから。
(つくづく思わされるぜ───『化け物』ってなァ)
◇
◇
◇
オールマイトも、同じく対平和の象徴殲滅兵器『脳無』と交戦していた。
その『脳無』の力はオールマイトと同等に加え、物理的な衝撃を吸収する特性を持っており、若干だが押され気味にある。
「アイタッ!」
そこに黒霧が横槍を入れ、オールマイトは危機的状況まで陥れられた。
緑谷は目に涙を浮かべる。負けて欲しく無い、まだまだ教えて欲しいことが山ほどある、と。
「オールマイトォォっ!」
緑谷は思わず駆け出していた。目に涙を浮かべ、勝てないと思っている敵に。
しかし、
「どっ───」
聞き覚えのある声がした。
「けッ! 邪魔だ───デクッ!!」
「カッちゃん!?」
その姿はどんな強敵と戦ったのか、ボロボロで、立ち上がる事でも精一杯の様な、そんな彼が黒霧を爆炎で抑え込んだ。
「
「爆豪おめぇ、目的ちげぇーからな?」
もう一人、聞き覚えのある声。
切島鋭児郎だ。彼もまたボロボロで、きっと大量のヴィランと戦って来たんだろう。
そして、最後。とてつもない冷気が脳無を襲う。
「平和の象徴は、てめぇら如きにやられねぇよ」
その少年、
あの、エンデヴァーの実の息子である。
◇
◇
◇
オールマイトは『脳無』と黒霧に苦戦を強いられていたが、ヒーローの卵達の手によって、反撃の機会を得た。
(この氷……轟少年か! 縛りが緩んだ)
オールマイトは『脳無』の凍った腕を拳で粉砕。
右腕を失った脳無はそのまま身動きを止め、その場に取り残され、オールマイトは一度軽快な動きで距離を取る。
「あー、やば。出入り口抑えられた。すごいなー、最近の子供達は。
弔が脳無に指示を出す。
すると、腕を失っている筈の脳無は動き出し、みるみるうちに腕が復活し始める。
「何驚いてるんだ? 別にショック吸収だけが脳無の能力じゃないよ」
脳無は体の再生を終えると、そっと前屈みになり、地面を踏みしめ加速する。
踏み込んだ地面は余波で衝撃波がおこり、直ぐに最高速度へと到達。そのスピードは凄まじく、とてもでは無いが、卵達は目で追えないであろう。
脳無はそんなスピードの中、拳を握りしめて爆豪へと拳を一振り。
凄まじい轟音と破壊の嵐が辺りを襲い、直撃していれば木っ端微塵になってしまうだろう。直撃していれば、だが。
「か、かっちゃん? 避けたの!? すごい!」
「違ェよカス」
先程まで、黒霧を押さえ込んでいた筈の爆豪は何故か緑谷の隣におり、怪訝な表情を浮かべている。
では、吹き飛ばされたのは誰か。壁に激突した
「グッフッ……加減ってモノを知らないのか、君は」
「こっちだって仲間を助ける為だ。仕方ないだろ?」
口から血を吐き、爆豪の代わりに攻撃を肩代わりしたオールマイト。
「ホラ、さっきだってソコの地味そうな奴。アイツが本気で俺に殴りかかって来たぜ? 他を救う為の暴力は、美談になるんだな───ヒーローは」
弔は続ける、両手を広げ。人の手で隠されている顔からは見ないでもその表情、そして感情が伝わってくる。
「俺はな、怒ってるんだオールマイト。同じ暴力でヒーローとヴィランにカテゴライズされ、善し悪しが決まる──この世界に……」
髪の毛と手の間から、弔の目が僅かだが見える。その目は、まるで無邪気な子供の様な目。
そんな弔の持論はまだ続く。
「なにが平和の象徴? この暴力装置め。暴力は暴力でしか生まれないのだと、俺はお前を殺して世に知らしめるのさ!」
「めちゃくちゃだな。そういう奴の目は静かに燃えるもの。私はそんな男を───そんな少年を
「ちっ、アイツもオマエもムカつく野郎だな! 本当イライラするよ」
弔は
今にも襲いかかりそうな、弔に対して卵達も身構え、決意を固める。
「5対3か……」
「モヤの正体はかっちゃんが暴いたし」
「とんでもねえ奴らだ、だが俺と爆豪の覚悟は一味違えぞ!」
「……、」
轟、緑谷、切島、爆豪はそれぞれに構え、臨戦態勢に入る、が。
「ダメだ、君達は逃げなさい」
オールマイトの一言により、動きを止める。先程、轟のサポートが無ければピンチだった、他の全員もオールマイトを心配する。
だが、オールマイトは親指をグイっとあげ、「大丈夫! プロの本気を見てなさい」と構えをとる。
現在、オールマイトの活動出来る時間は1分も無い。
あと、1分以内に"個性"は使えなくなる。だが、オールマイトは笑う。体が衰えようが、力を失われようが、敵に立ち向かう。
何故なら、
───私は平和の象徴なのだから!!
敵との激突。
同格の力を持つ『脳無』と激しい打ち合いをする。その一発一発はオールマイト自身の100%以上の力。
脳無がオールマイトの顔を殴ろうが、腹を殴ろうが、御構い無しにオールマイトは打ち続ける。
脳無は物理攻撃吸収に凄まじい超再生を持っている。だが、オールマイトの攻撃はその力の遥か上をいった。
「ヒーローとは、常にピンチをぶち壊して行くもの!───
凄まじいオールマイトの打撃に追い込まれ、『脳無』に一瞬の隙が生まれる。
オールマイトは拳を先程の何倍も強く握りしめ、全ての力を一発に込める。
「
その大きく振りかぶられた拳が顔面を捉える。
「───
最後の一撃を受けた『脳無』は、高く飛び上がり、天井を突き破り、空へ空へと消えていく。
その時───
『ォォォォァァァァァァアアアアアアア───ッ!』
凄まじい叫び声とともに、巨大な『脳無』がドームの天井を先程の様に突き破り、空へ消えていく。
そのありえない光景を見た弔は頭を再びガシガシと掻き毟る。
「なんだよ、全然弱ってねえじゃねえか。それに何が対
◇
◇
◇
「よォ、弔クゥン? お気に入りのオモチャが壊れて、目的も達成出来なくて、こりゃゲームオーバーだな?」
一方通行は物凄い煙の中を潜り抜け、コツコツと弔の元へ向かっている。
しかし、ある事に緑谷達は気が付いた。
「あっちって、皆が戦ってるんじゃ……」
最初の地割れ、高速で移動した衝撃波と惑星の自転を利用した攻撃は余りにも凄まじく、その爪痕を大きくUSJに残していた。
「オールマイトは潰せなかった、でも殆どの子供達は死んだな。お前のお陰だよ
弔は
どうみても、負け惜しみの様にしか聞こえないが、弔の手伝いをした、それだけで一方通行にとっては負けを意味する。が、
「三下だな。美学が足りねェからそンな台詞しか出てこねェンだよ、オマエは」
「は?」
「そもそも、何で
「オマエじゃ心配なンだよ。
死柄木弔の頭が沸騰しかけるが、そこで彼は気が付いた。
周囲の状況に。
明らかに不自然な壊れ方をしている建物。それはまるで、あらかじめ
「ま、まさか……」
生きている。そう感じた。卵達は生きていると。彼にそう実感させる。それも寄せ集めのヴィラン達だけを潰す様に想定して。
「だから、
「ははっ、何だよヒーローにでもジョブチェンジしたか? テメェに酔ってんじゃねぇ!」
「これが
「〜〜〜〜〜ッ!?」
生徒を助けてもなお、悪党。
彼の理想のヒーロー像とは、どんな人間なのだろうか、どんな偉大な人間なのだろうか。そう考えさせられる一言。
見た所、苦戦を強いられている様に見えた。そんな状況でも、彼は戦いに関係の無い者を守り抜いた。
一方通行の攻撃に巻き込まれるのが、ヒーローなら助けなかったであろう。だが、助けた者はまだヒーローではない。卵だ。学校から出れば一般人だ。
そんな一般人を裏の世界には巻き込まない。表の世界の人間を裏の世界へは決して巻き込もうとしない。自分から足を踏み入れない限り。
それがこの世界の
そして、それが彼の
評価、誤字報告、お気に入り登録してくださった皆様。
感謝、感謝です。
作者的にも、驚きでいっぱいです。ランキング自体のること何て無いと思ってたのに……流石学園都市のNo1。
これからもよろしくねお願いします。