物語が急展開過ぎるかな……
10月2日。
地底では今日が中秋の名月だと騒いでおり、地上に出る者も多かった。もちろん、私達は地上には行きたくないし、地底からでも月は見える。私たちにとって別に特別な日でもなし、何か大切な日でもない。本当に普通の平日って感じ。まぁ、一応団子は作るけどね。
私はごみ捨てとついでに外の空気を吸いに、さとりとこいしの3人で散歩していた。こいしが無意識を使ってどこかへ行ってしまったので、実質さとりと2人で夜道を歩いている。
「あ、姉さん。うさぎだ」
「え?」
「うさぎがいるわ」
さとりが唐突にそんなことを言うので私は首を傾げる。そもそもうさぎがこんな所に………最初はてっきり鈴仙さんかと思っていたが、玄関の方に行くと、本当に白いうさぎがそこに居た。
「か、かわいい!」
「ちょっ、姉さん?!」
そう、私はかわいいものに目がない。まぁ、女の子だったら当然だよね?みんなそうだよね?私は警戒すらしないうさぎを撫で回しながらにやける。
「……ねぇ、さとり。この子飼っていい?」
「ダメ」
「答えるの早いよ……」
食い気味に答えるさとり。私はモフモフの毛を堪能する。すると、背後からこいしの声が聞こえた。
「あ、しんりねぇ!その子と一緒にお月見しようよ!」
「え?この子こいしが拾ってきたの?」
「そうだよ!道の端っこで悲しそうな目してたから耐えられなくて持ってきちゃった♪」
「『持ってきちゃった♪』じゃないわよ!餌もないのにこの子飼うなんて出来ないわよ?」
さとりはお母さんのような口調でこいしを叱る。長女の私よりも次女の方が賢いってどうなの……私はこいしの意見に賛成するように首を縦に振った。さとりは「はぁ…」と、大きな溜息をつき、額に手を当てながらこう言った。
「仕方ないわね………見た感じ野良じゃなさそうだし、飼い主が見つかるまでよ」
「や、やったぁー!ありがとうさとりねぇ!!」
こいしの小さい体がぴょんぴょんと跳ねる。私はそのウサギを抱きながら、2人に言う。
「ね、この子の名前決めようよ」
「確かに…じゃあ私達と似たような名前にしない?」
さとりが少しだけ言いにくそうに口を開いた。その意見に私とこいしは「おおー」と感嘆の声を漏らす。
「……さとりも実は乗り気だった?」
「な、そんなことないわよ!」
「この子ってメスかな?」
「…見た感じ女の子っぽい」
「じゃあ、チョロQ!」
こいし、それは流石にまずいよ………と、心の中でこいしのネーミングセンスを否定する。悪気なしで言っているのでそこがまた無意識に嫌なところだ。私は切り替えて新たな案を考える。何かいい名前は無いものか…………と、私はここで一つの案を思い出す。お母さんの友人で昔いつも遊んでいたお姉さん。今はもう死んじゃったけど、優しい人で、いつも私の憧れだった人。
「
「………いいわね…すこし人間っぽいけど」
「私はそれがいい!」
「よし、じゃあこの子は今日から瑞乃だ」
私は瑞乃を抱き、撫でる。毛並みも綺麗でモフモフだ。ずっと触っていたくなるほど。
するとこいしがぴょんぴょんと跳ねながら、私に迫ってきた。
「ね、さっそくお月見しよーよ!」
「そうだね。じゃあこいし。瑞乃をお願い。お団子取ってくるよ」
「はーい!」
「屋上で待ってるわ。一昨日に勇儀さんが開けた大穴から月が見えるらしいから」
「………また開けたのかあの鬼は…」
そう言って、私は地霊殿の扉を開け、歩いて台所へ向かう。少し薄暗く、誰もいないため、恐怖を煽られるが自分の家でなおかつ私達も妖怪なので、恐れるものは全くない。
数十メートル歩くと、香ばしい匂いを未だに放出している台所にたどり着いた。まな板のすぐ近くに、色とりどりな丸い団子が山積みになっていた。こいしの好きな三色団子。さとりの好きなみたらし団子の両方を重ねてる。みたらし団子は少しネバネバしちゃうけどね……。
私はそれを両手で運ぶ。なかなかの重量に足が少しだけふらつく。体勢を立て直しゆっくりと運んだ。屋上なので階段もゆっくりと歩き、途中からさとりに手伝ってもらったりしながら、私は屋上にたどり着いた。
そこにはもう敷物を敷いて、座って待っている準備万端のこいしと瑞乃がいた。私は少し早足でそこへ向かった。
「ねね、早く食べよ?お腹空いちゃった」
「私もお腹が空いたわ。もう食べていいの?」
「いいよ。結構多めに作ったから沢山食べてね」
「いただきます」
「いっただっきまぁーす!」
「私もー!」
「じゃあ瑞乃もー!」
「あれ?」
私達はお月見など関係なく、団子を次々と頬張っていた。私とこいし、さとりと瑞乃。あっという間に50個ほどあった団子はもう20個程しか余っていなかった。それでも口と手を止めようとはせず、どんどんと口に入れていく。さっき晩御飯をたらふく食べたのに、まるで別の胃があるかのようにポンポンと入れられるものだ。私は感嘆の息を漏らしながら団子を少しずつ食べていく。すると、さとりとこいしが口に団子を頬張り頬を膨らませながら顎を動かしていた。私も少しだけ食べすぎてしまい、手を止めた。しかし、団子は"減っていた"。
そこで私が一番最初に異変に気づいた。
「っ?!」
「ん?」
一瞬、団子が喉に詰まりそうになったが、何とか飲み込んで大きく息を吸う。それと同時に私の顔もどんどん青ざめていく。
満月の夜。うさぎが月から降りてきた。
「え、えええええええ?!」
「どーしたの?しんりねぇ?」
「あ、あ、あ、あなた誰?!」
「へ?」
私が指さした方向には元々瑞乃がいた。可愛い白いモフモフの"うさぎ"がいたはずだったのに。
瑞乃がいた場所には、鈴仙さんと同じようなうさ耳。腰まで伸びている銀色の真っ直ぐな髪の毛。黒いセーラー服にミニスカート。今まで見たことのないような美少女がそこで鎮座して団子を食べていた。
「え、ちょ、ちょっと姉さん!!不審者よ!」
「へぇあ?!ちょっと待ってよ!私だよ私!!」
「『ワタシワタシ詐欺』か?!誰か警備隊呼んできて!こいし!」
「わ、分かった!」
「だ、だから、瑞乃だって……」
「瑞乃はうさぎだ!こんなにおっぱいの大きいうさぎなんか見たことないぞ!」
「私の話を聞けぇぇぇぇぇぇ!!」
銀髪美少女の声が地底いっぱいに反響する。ここは岩の壁が近いので声は反響しやすい。エコーがきいたかのように瑞乃モドキの声が大きく聞こえた。
私達は静まり返り、瑞乃モドキを凝視する。
「いい?私は玉兎なの。ただのうさぎじゃなくて、月から来たうさぎの妖怪なの」
「あ、そうなの?」
「まぁ、月から追放されてここに来たんだけどね……ちょうど中秋の名月だから出口が大きかったよ」
「そうなのね……どうりであんなモフモフな白うさぎになっていたのね………でも、永遠亭には行かなかったの?あそこも元月人よ?」
「最初は八意様のところに行こうと思ったよ?でも、降りた所から永遠亭に行くまでの道のりが分からなくて、フラフラ歩いてたらここに着いたってこと」
「着いたっていうか拾われた。だよね」
「そこはどうでもいいの。まぁ、名前は無いし、瑞乃っていう名前も好きだから瑞乃って呼んでね」
瑞乃が淡々とここに来た経緯を話す。要は瑞乃は月のうさぎで何らかの理由で地上に追放された。そして、同じ月のうさぎがいる永遠亭に行こうと思ったが、道に迷って、フラフラしていたら地霊殿前に到着。とゆーか、玉兎って兎に変身できるんだね。
「じゃあ、よろしく。瑞乃」
「え、もうここに住む気なのね……」
「あら、ダメかしら?」
「私はおっぱい大きい人嫌!」
「え、ええ?!理不尽すぎるわよ!」
「こいしはいつから胸に嫉妬を抱くようになったの……」
最近、こいしは様々な物事に興味を持ち、最近は大人の女性の体に特に興味を持っている。毎朝、『私はきょにゅーになる!』と騒いでいて全く迷惑極まりない妹だ。
瑞乃は言わばナイスバディ。ボンキュッボンの三拍子全てがパーフェクトと言わんばかりのわがままボディなので、私達は古明地姉妹の嫉妬の対象になりそうだ。特にこいしは敵視しているだろう。
「まぁ、とりあえず、よろしく。瑞乃」
「よろしくね!」
「うん、よろしく、こいし、しんり」
なんかしんりって呼び捨てで呼ばれたの久しぶりだな……まぁ、長女だから仕方ないかもだけど。
「お、月が大きいし、綺麗!」
「あ、ホントだ。綺麗だね」
こいしが手を広げて夜空に浮かぶ地球の衛星、月を見上げていた。いつもよりも大きく、クレーターも目立つぐらいの輝かしく巨大な月が私たちを覗いていた。
私達はずっとそれに見とれていたが、さとりがいつの間にか、団子を平らげていて、私は目を見開くしかなかった。
「じゃあ、仕方ない。瑞乃は姉さんの部屋で寝て」
「りょーかーい。じゃあ、おやすみ、みんな」
「はーい、おやすみ、しんりねぇ。さとりねぇ。瑞乃」
ふぁぁ〜〜と大きく口を開けて欠伸をしながら自室へと消えていくこいしを横目に、私は瑞乃を連れて自室へと入る。
2人でいるからか、いつも一人でいたこの部屋がいつもよりも狭く感じた。
「瑞乃。私は床に布団敷いて寝るから、眠かったらベッドで寝ていいよ」
「うん、ありがと……」
「じゃあ私は風呂入ってくる」
「はーい!」
元気のいい返事をした瑞乃は自室から消えた私も確認して、こう呟いた。その声には、安堵と安心がこもっている。
「私も……ここなら×××の罪を一生背負わなくていいんだ。また、八意様にも会いたいな………」
瑞乃の小さな声は反響せず、ゆっくりとベッドに横になる。瞼が少しずつ落ちていき、全身に力が入らなくなった瞬間、瑞乃は無意識に視界が暗黒に染まっていた。
瑞乃可愛いかな?
瑞乃は三姉妹の親友ポジにしたいと思ってます。