ハートだよ!覚り三姉妹!   作:かくてる

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日常編だよ!覚り三姉妹!
ハロウィンの準備、高級甘味処


 お空が家族の一員として迎えられ、私達は退屈な日々を過ごしていた。お空は料理がとてつもなく美味しい。私が作るのよりも調味料の使い方や、隠し味のタイミングなど、全て知り尽くしていた。こうして、私たちのペットはお母さん的存在となった。馬鹿だけど。

 

「へっくしょん!!」

「姉さんくしゃみがおっさん」

「うるさい。寒いから仕方ないでしょ」

 

 今日は地底で唯一の雑貨屋に来ていた。今日は10月28日。何でもない日に、私達はある行事の準備をしていた。そう、10月といったらハロウィンだろう。ジャック・オ・ランタンやその他もろもろをここで買い揃えるつもりできたのだ。

 

「さとり様、しんり様。これ可愛くありません?」

「ちょっ、お空?!」

 

 お空が持ってきたのは、リアルな蜘蛛の模型。さとりは虫が大の苦手である。その蜘蛛を見た瞬間、目にも留まらぬ速さで私の後ろに回り込んで、ガタガタと震えていた。

 

「お、おおおおおおお空!!早くしまってきなさい!!」

「うにゅ?どーしましたさとり様?」

「何でもないから!それを元の場所に返しなさい!」

「?分かりましたー」

 

 首をかしげ、小走りでお空は消えていった。するとさとりは長いため息をついて

 

「全く………」

「さとりの虫嫌いも克服した方がいいよ?」

「仕方ないの!気持ち悪いものは気持ち悪いんだから……」

「しんりねぇ!さとりねぇ!これ見て!」

 

 次はこいしが何か持ってきた。なんか嫌な予感がするのは私だけなのだろうか?

 

「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 さとりの悲痛な叫びが私の耳元で響く。慌てて耳を塞ぐ。

 

「ちょ、さとりうるさい!」

「だ、だだだだだって!」

 

 プルプルと震える指でこいしが持ってきたものを指す。こいしがもってきたのはさっきお空が持ってきた模型の数倍はある大きさの蜘蛛。そのスケールには私も少し驚いた。さとりはもう涙目で私に抱きついていた。正直きつい……

 

「こいし!!しまってきなさい!」

「あれ?さとりねぇどーしたの?」

 

 心配そうな顔でこいしが蜘蛛を持ったままさとりに近づく。それによりさとりは更に私にきつく抱きしめる。

 

「い、いや!こいしこっちに来ないでぇぇ!!」

「いたたたたた!!さ、さとり!痛い痛い!こいし、早くそれしまってきて!」

「え?あぁ、うん。分かった」

「はぁ………はぁ…」

 

 こいしはそれをトテトテと歩きながら「変なの」と最後に言ってそれをしまいに出た。全く、お空といいこいしといい…とんでもないものを持ってくるな……ハロウィンなんだから仕方ないだろうけど。もっと魔女帽とかあるでしょ………………魔女………うっ頭が……

 

「あれ、姉さんどうしたの?」

「いや………嫌なこと思い出した…………」

「しんり様!これ買っていいですか?」

「ん?どれどれ?」

 

 お空がさっきよりもワクワクした顔で持ってきたのは骸骨のお面。これさとりが怖がってたホラー小説の奴じゃん……………でもまぁ、さとりもこれなら大丈夫でしょ。

 

「ひっ………」

「え?これも怖いの?」

「い、いや、大丈夫よ?いいわよお空。お金あげるから買ってらっしゃい………」

「はーい!ありがとうございます!」

 

 そう言って、お空はそれを大事そうに抱きながらレジの方へと向かっていった。それもスキップで………ねぇやっぱりあのおっぱいはずるいよ。揺れすぎだってば………………私はお空のを見てから自分の胸に視線を移す。あぁ………悲しいな……

 

「ねぇ、姉さん……」

「ん?どしたの?」

「私当分お空と関わらないことにするわ。ハロウィンが終わるまで」

「どれだけあのお面が怖いの……」

 

 そう言えば、さとりは確かこの小説の表紙を見せただけで心臓が飛び跳ねそうなほど驚いていたし、そのままその日は寝れなかったらしく、仕方なく一緒に寝てあげたのを覚えてる。それがトラウマになってしまったのだろう………

 

「しんりねぇ!これ買っていい?」

「お、いいよ。それは可愛いじゃん。おしゃれだね」

「う、うん。いいと思うわよ」

 

 こいしが買おうとしてるのは黒が主体で黄色いリボンがついた帽子。まぁ、私達三人ともおしゃれなんてしないし、帽子なんか被ってなかったしね。

 

「やったー!ありがとう!しんりねぇ、さとりねぇ!」

 

 私は財布からお金を差し出す。が、その前に

 

「それっていくら?」

「………えーと………5000円!」

「たっか………」

 

 私は少しだけ後ずさるが、こいしの為だ。これくらい出してやらないとお姉ちゃんとしての威厳というものが立てられないだろう。私は渋々財布から5000円札を出してこいしに渡す。

 

「はい、買ってきな」

「やったー!」

 

 こいしもお空と同じようにスキップしながらレジに向かった。でも、妹のおっぱいが揺れないからって安心しちゃ行けないよね。

 お空とこいしがレジから帰ってきて、私達は地底に出た。

 

「さて、姉さん。まだ時間あるけど、どうする?」

「そうだね、どこか甘味処とか寄ろうか」

「私三色団子食べたーい!」

「じ、じゃあ私はプリンが食べたいです」

 

 少し遠慮気味にお空が言う。どうやら、さとりも何か食べたいようだ。

 

「じゃあ、「甘武」に行こうか」

 

 甘武とは、地底で有名な甘味処。あそこの店主がとても美味しいものを作れるんだとか。行ったことがないので、期待はしないでおこう。ここからあまり距離もないので、約数分で甘武に着いた。

 

「いらっしゃいませ、4名様ですか?」

「はい」

「では、こちらに」

 

 店員さんの丁寧な対応に私は少しだけ感嘆の息をついた。期待はしないって言ったけど、どうしても期待しちゃうな。

 

「では、ご注文が決まりましたら、そちらのベルをお鳴らし下さい」

「ありがとう」

 

 そう言って、店員さんは厨房の方に消えていった。丁度四冊ある薄いメニュー表を見て、何があるかを物色する。みたらしもあるしプリンもある………アイスクリームもあるじゃん………色々あるな…

 

「じゃあ決まった?」

「決まったよー」

 

 全員決まったらしく、私は左手でベルをチーンと鳴らす。この音とまた高貴で聞いていて飽きない。

 

「はい、ご注文をどうぞ」

「みたらし団子と三色団子、プリンと抹茶アイスクリームをひとつずつお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

 また店員さんは厨房に消えた。背もたれに体重を預け、私は店を見渡す。

 

「いい店だね。雰囲気も好きだな」

「んね!可愛いしおしゃれ!」

 

 さっきの帽子をさっそく被っているこいし。いつもとは違くて何か雰囲気が大人っぽくなった。さとりもお空もどうやら落ち着けているみたいだ。この店の評判はかなり良いし、来て正解だったかな。

 

「お待たせ致しました。抹茶アイスクリームとプリン、みたらし団子と三色団子でございます」

「ありがとう」

 

 一気に全部来た。とゆーか、頼んでから5分ほどで出来るものなのかな………でもいい匂いはする。私はスプーンを取ってアイスクリームを掬う。そしてゆっくりと口の中に入れる。

 

「うま………!」

 

 思わずほっぺたが落ちそうなほど甘く、口の中に一気に広がっていった。

 

「んぅ〜!!」

 

 パタパタと足を上下させるこいしとさとり。ものすごく笑顔で食べていた。しかしそれとは裏腹に、お空はスプーンを口に入れたまま、固まっていた。

 

「あれ?どうしたの?お空」

「………あ、しんり様……このプリン…」

 

 お空は一呼吸おいて形容しがたい顔で相談してきた。

 

「持って帰っちゃダメですか?」

「………何で?」

「美味しすぎて今全部食べられません」

 

 どうやら本心で言ってるみたいだ………

 

「ダーメ、ここで食べなきゃ腐っちゃうよ」

「うにゅぅ………」

 

 凄く悔しそうにプリンを食べていくお空。しかしプリンを口に入れた途端、お空の大きな黒い翼がバタバタと動く。お空自身も凄く嬉しそうだ。

 

「ちょ、お空!羽が飛んでるって!」

「うにゅ?あ、ごめんなさい、さとり様」

「まぁ、みんな美味しそうで何よりだね。ここならいつでも行けるし」

「毎日行こう!」

「それは飽きるよこいし絶対に」

 

 そんな会話をしながら、4人はそれを完食し、甘武を出た。

 

「ここ美味しかったね。噂通りの店だよ」

「まぁ、ちょっと高いけどね………」

 

 私は財布を見て少しだけ肩を落とす。まぁ、高級甘味処ならこれくらいが妥当なのだろう。これを毎日となれば近いうちに地霊殿自体がお釈迦様になっちゃうよ…………

 

「じゃあ、帰りますか」

「はーい!」

 

 私達4人はハロウィン前に贅沢な時間を過ごした。それはとてもいい経験でまさか近所にこんな美味しい甘味処があるなんて知らなかったよ…………

 余談だけど、ハロウィン用のお菓子を買うの忘れて、こいしが「仕方ないから私の手作りクッキーでいいよね!」と甘味処に憧れて自分でクッキーを焼いてた。私とさとりは当分食べ物に手をつけられなかった。

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