ハートだよ!覚り三姉妹!   作:かくてる

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お空の能力

「核融合を操る程度」ではなく、「灼熱を操る程度」でございます。諏訪と八坂の神様によって能力が上書きされた。という設定ですので。

まだ神様に出会ってないですもんね。


妖怪の山、弱すぎるジャンケン

 お燐と出会い、私達は妖怪の山のてっぺんを目指し、山道を歩いていた。

 

「そう言えば、お燐はどこから来たの?」

「え、住むところはなかったよ。お空と同じ」

「狩り…………ね」

 

 さとりは呆れるように言う。お燐は「ご名答」と言ってさとりに指を指す。誇れることじゃないんだけどね………

 

「あれ、そういやお弁当ないの?」

「今更ね、こいし」

「こいしが急に言うからお弁当なんて作れてないよ、ねぇお空?」

「はい、作れてないですよ」

「じゃあ、行って何するの?」

「決めてない!」

「即答だねこいし」

 

 弁当も何も持っていない私達は一体何をしにてっぺんまで行くのだろうか……つくづく不安に思いながらも私達は長い坂道を歩く。

 

「ねぇ、こいし」

「んー?」

「飛んでいい?」

「ダメ!タダでさえ体力ないんだから!」

「ええー……」

 

 なぜこいしに飛ぶ許可をもらおうとしたかというと、私達は今こいしの能力によって周りから認識されないでいる。その範囲外になってしまうからだ。別にここら辺には人間はいないけど、ここは天狗の領域、無断で入ると怒られたり攻撃されたりするから見つからないようにしているのだ。こいしから離れたら無意識が解除されちゃうんだよね……

 

「あぁ〜疲れたし寒い……」

「本当に………何であの三人はあんなに元気なのよ……」

 

 マフラーをしていてもカタカタと震える私たちに反して、こいし、お空、お燐は何も防寒せずに元気に歩いている。私もあんな感じに寒くても普通でいられる体が欲しい。

 

「ねぇ、何でそんなに元気なの?寒くないの?」

 

 さとりの質問に、お空が手を挙げながら元気よく発した。

 

「はいはーい!私の能力であたためてまーす!」

「え、私達も欲しい!」

「うーん……能力が使えるのは4人までだから……さとり様かしんり様どちらかが降りてくれるのなら出来ますよ」

「さとり、ここは姉に譲るべきだよ」

「いいえ姉さん。ここは可愛い妹に楽な思いをさせて上げるべきよ」

 

 私とさとりの双眸がぶつかる。まるでバチバチと火花が散っているかのように睨み合った。これはどちらが暖かいお空の能力をもらうかの争奪戦である。

 

「さて、どうやって決めようか?」

「じゃあ、無難にジャンケンにしましょう」

「………いいのかいさとり?私、ジャンケンで負けたことないよ?」

「………姉さんは私を見くびりすぎなのよ。私の能力を忘れたの?」

「私は人の調子をコントロール出来るんだ。さとりの能力の調子を操って心を読めなくすることも出来るんだよ?」

「しんりってそんなに凄い能力なんだね」

「そ、しんりねぇはサードアイが特別なんだって永琳が言ってた!」

 

 お燐とこいしの会話を横目に、私達はまた睨み合う。これはお互い能力を使わない正真正銘の真剣勝負という事だ。ニヤッと笑い、大きな声で叫ぶ。

 

「最初はグー!」

 

 私のその言葉と同時に私とさとりの右手が振り上げられる。

 

「ジャンケン!」

 

 そして右手が振り下ろされた。

 

「ポンッ!」

 

 私はグー、さとりもグーだった。私は一瞬だけ集中を切らす。そしてまた、掛け声を同時に言う。

 

「あいこで………しょっ!」

 

 私はパー、さとりもパー。これは長期戦になるのだろうか………

 

「ふふっ…さとりも強くなったね………姉さん嬉しいよ?」

「姉さんこそ………次で勝つわよ…」

 

 これはいつまでも決まりそうにない。そう思った私は強行手段に出る。

 

「さとり、私はチョキを出す」

「…………………なるほどね。じゃあ、私はグーを出すわ」

「じゃあ行くよ……最初はグー!」

 

 三度目の正直、右手ではなく「神の左(自称)」を使って私は思い切り振り上げる。そしてさとりも同じように手を振りあげる。その瞬間、私の目線とさとりの目線がぶつかる。

 

「ジャンケン………………ポンッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あったかぁ〜い!」

「うぐぐっ………」

 

 さとりは笑顔で体をブンブンと動かす。大して私はその隣で小さくまとまって凍えていた。そう、私はジャンケンに負けた。私がパー、さとりがチョキ。さっきの心理戦はどこへやら………

 

「おや、そうこうしているうちに着いたみたいだよ」

「ほんとだー!」

「……綺麗ね……」

 

 お燐とこいしは走って頂上まで向かい、その場ではしゃいでいた。お空とさとりは鮮やかな赤色の紅葉に見とれており、私は凍えながらも下に落ちた葉を拾った。本当に綺麗だ。地底にある紅葉とはまた別の雰囲気を醸し出している。

 

「で、ここで何するんですか?しんり様」

「私に聞かないでお空、どうするのさとり?」

「姉さん考えて」

「よし寒いから帰ろう」

「それはダメ、せっかくお燐がいるんだから」

「えー……」

 

 私はもう寒いから帰りたい、地霊殿で遊べばいいじゃないか………こんなこと聞くのは野暮だって分かってはいるけどどうしても思っちゃう。

 

「あ、そう言えば、さっき人里に饅頭が売っててね。4人分だけあるんだけど…………」

「た、食べたい!」

 

 全員一致で、その饅頭に手を伸ばした。しかし、この場は5人。どうしてこうも一人分足りなくなるんだろうか………するとこいしが楽しそうにこう言った。

 

「またジャンケンで決めよーよ!」

「お、いいね」

 

 私は少しだけ嫌な予感がする。一人だけ寒い思いをしている私、なんかこのジャンケンも負けそうだ。

 

「行くよー!ジャンケン…………」

「ポンッ!」

 

 お燐グー、お空グー、さとりグー、こいしグー………………私チョキ………

 

「もう嫌だぁぁぁぁぁ!!」

 

 どうしてだ!私が何をしたというのだ!と、心の中で悲痛な叫びをあげる。ピクニックに来てまで凍え、腹すらも満たせない私の心はもうズタズタだった。それを見たお燐やさとりは少しだけ苦笑いしている。こいしとお空はお腹を抱えて大爆笑。

 

「まぁ、仕方ないわね。さっきジャンケンで負けたことないとか調子乗ってたから天罰が下ったのよ、姉さん」

「ぐっ、それを言うな……」

「あはははは!しんり様かわいそー!」

「可哀想に思うなら饅頭をください……」

「負けたしんりねぇが悪いんだよー!」

「こればっかりは…………ねぇ…」

 

 頼みの綱であるお燐でさえ苦笑いをして饅頭を食べてしまった。するとさとりが私の前に来て

 

「仕方ないわね。半分だけあげるわよ」

 

 珍しいさとりの慈悲に私は涙を流す。

 

「さとりぃ〜!」

「ね、姉さんくっつかないで!」

 

 私はさとりから受け取った饅頭をちまちまと食べていく。せっかく貰った貴重な饅頭だ。しっかりと時間をかけて味わわないと損だろう。

 

 

 

 

 

「誰です?」

「?」

 

 私達は一斉に背後を振り返る。そこには長い下駄を履いた白いスーツのようなものを身にまとった………天狗だろうか……カメラを持ってそこに立っていた。

 

「やばい……天狗だ……こいし、能力使って……!」

「わ、分かった」

 

 そう言って私達は姿を消そうとすると、天狗は慌ててそれを止めた。

 

「ま、待ってください!別にあなた達を追放しようとか思っていませんから、ただ……ここら辺じゃ見ない妖怪ですね……」

「私達は地底の覚り妖怪よ。地上には滅多に出ないからね……」

「ほほう………私は鴉天狗の射命丸文と申します。あなた方は?」

「私は古明地しんり………それでこっちが………」

 

 一通り自己紹介を終え、私達は文の質問攻めにあっていた。良くもまぁこんなに質問が思いつくものだ。

 

「それでそれで、しんりさんはどんな能力なんですか?」

「私は人の調子をコントロールする。狂わせたり、気持ち悪くさせたり、色々出来るんだ」

「それは………少しだけ鈴仙さんと似てますね……」

「まぁ、確かにそうだね…」

「妹さん方は……」

「私は心を読む程度、こいしは無意識を操る程度。そんな大したものじゃないわよ」

 

 すると文は少しだけ目を見張ってさとりをマジマジと見る。

 

「あなたが……噂の覚り妖怪でしたか………」

「何よ、地上じゃ有名なの?」

「ええ」

「そうなのね………」

 

 さとりの顔は少しだけ曇る。まぁ、悪い意味で有名になってしまったのなら、ますます地上に顔を出しにくくなってしまったからね………仕方ないことではあるけど。

 

「あ、もうこんな時間……大天狗様に怒られる。では、これでお暇いたします!」

 

 シュビッと敬礼をし、文は背中に付いている黒い翼をバサバサと動かしたが、浮いたところで止まり、こちらに振り返った。

 

「最後に言っておきますが、現在人間の間で覚り妖怪を悪く思う人はほとんどいませんよ。むしろ「会ってみたい」と思う方が多いかと……」

「え?」

「それではっ!」

 

 次こそ文は目にも留まらぬ速さで妖怪の山を飛び抜けていく。文が過ぎ去った後、風によって紅葉がパラパラと散っていった。覚り妖怪を悪く思ってない…………か…。

 

「なんか……面白い妖怪に会ったわね……」

「んね……元気な人だったな…………」

「ねぇ、2人とも」

「ん?」

 

 今まで口を塞いでいたお燐が唐突に私たちの会話に割り込んできて、一つの提案をした。

 

「一度無意識を解除して人里に向かってみない?本当に何も言われないかもしれないし………」

「………そうだね、一度行ってみようか?」

 

 そう言って私達は来た道を戻り、妖怪の山を降り始めた。

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