ハートだよ!覚り三姉妹!   作:かくてる

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地底パーティ、久しい友人との話

 私は大きな欠伸をして、洗面台に向かっていた。少々寝癖が目立つ髪の毛をポリポリ掻きながら廊下をスタスタ歩く。欠伸が全く止まらない。

 

「姉さ〜ん……」

 

 眠そうなさとりがこちらに歩いてくる。そのフラフラした足取りが今にも転げ落ちそうだ。

 

「ど、どーしたのさとり?寝てないの?」

「……んぅ…………眠い…」

「何してたの?昨日何も無いよね?」

「今日の地底パーティの参加費の計算をしてたのよ」

「あ、あ〜そっか、今日か……お疲れさん。パーティは夜だし、寝てたら?」

「うん、そうさせてもらうわぁ……」

 

 いつも人前ではキチッとしているさとりだが、大きなあくびをしながら、来た道を戻っていった。姉ながら、仕事を妹に任せるのは少々気が引けるものだ。

 

「しんりねぇ〜」

「ん、こいし?」

 

 寝癖でボサボサのこいし、いつもの整った銀色のセミロングではなく、本当にサボテンのような爆発度。思わず吹いてしまうところだった。私のポニーテールがゆらゆらと揺れる。今では自分で結くことを出来る。

 

「こいしはぐっすり寝たみたいだね」

「でも、9時間くらいしか寝てないの……」

「恨みたくなる睡眠時間だな……」

 

 私も途中までさとりの手伝いをしていたのだ。夜中の12時くらいまで、だが、いわゆる「寝落ち」してしまい結局半分以上さとりにやらせてしまった次第である。

 阿求さんに無償で貰った「生きた亡霊」。さとりから昨日返して貰った。昼間はそれを読もうと思っている。

 今日の夜は地底の鬼や妖怪が集まってパーティをする。場所は地霊殿、勇儀さんが数年前に考案したものだ。

 

「さて、部屋に戻ろ」

 

「生きた亡霊」を右手に私は西側にある自室へと足を運んだ。

 

 

 ーーーー夜。

 私達地霊殿組は台所に集合していた。お空と私とが料理を作り、お燐が盛り付け、さとりとこいしは出来上がった料理を会場へと運んでいた。少し時間が押しているため、全員が素早い行動をとっている。

 

「お空!胡椒とって!」

「今私が使ってまーす!」

「だぁぁ、早くして!」

 

 お空は食材にパラパラとふりかけた後、私に手渡した。私はそれを奪い取るように受け取り、早速かける。鶏肉に少しだけ黒い粒が点々と付く。

 

「お燐、油!」

「はーい」

 

 ペットの手を借りて、私は次々と料理を作っていく。私が料理をするのも久しぶりだし、台所に来るのももう数週間ぶりだ。そのため、腕が訛っていると言ったらいいのか、あまりサクサクと事が進まない。

 

「よし出来た。あとは何?お空」

「え、えーと………巨大ケーキですね」

 

 お空は地底のみんなから貰ったアンケート用紙を確認し、メニューを口にした。地底の妖怪達にはしっかりと好きなものがあるように、あらかじめアンケートをとり、結果から好きな食べ物を料理することにしたのだ。

 

「これは………頑張るしかないのか…」

 

 予想以上の規模設計に、私は一歩二歩後ずさる。全力で作っても二時間はかかるだろう。まぁ、まだ数時間あるし、余裕が無い訳では無いが、手を抜いているとあっという間に過ぎるだろう。

 

「よしっ……」

 

 袖をまくり、生クリームを鼻につけながらも短時間で丁寧に仕上げていった。

 

 

 

 

 

 

「終わったぁ……」

 

 私は出来上がった大きなショートケーキの前で痛くなってきていた腰を手の甲でトントンと叩く。実際に要した時間はほんの一時間半。さとりとこいしも協力してくれたからか、思いのほか上手く出来た。

 

「あとは味だけ………か」

 

 味見をしてみたいところだが、先に食べるのも良くない、そろそろ時間だしね。

 

「あ、あたいが案内してきますね」

「うん、お願い」

 

 お燐が台所を出て、地霊殿の玄関へと向かう。もう外ではガヤガヤと賑わっているようだ。

 

「はい、皆さんお待たせいたしました。順番にお入りくださーい」

 

 お燐の慣れた声が外にいるであろう妖怪達をまとめる。しばらくすると、そのガヤガヤした声が段々と近づいてくる。そして、その扉が開かれた。

 

「古明地ぃー!」

「おわ、勇儀さん?!」

 

 顔を赤くした長身の鬼、星熊勇儀が私にどーんと乗っかってきた。私は受け身が取れず、そのまま床に倒れ込んでしまう。馬乗りになった勇儀さんはガブガブとお酒を飲んで笑い飛ばす。

 

「はっはっはっ!まだまだちいせぇな!古明地姉、えーと……」

「しんりです!古明地 しんり!忘れないでください!」

「おっと、そうだったな、しんり。今日は飲もうぜぇー!」

「勇儀、あまり遊んじゃダメよ」

 

 勇儀の後ろに顔を出したのは金髪のセミロング。緑眼の双瞳を持つ少女、水橋パルスィがいた。彼女とは勇儀さん繋がりで仲良くなることが出来た。その他にも地底の妖怪達は勇儀さんのおかげで友達が沢山できた。

 

「おー、わりぃわりぃ、そういや、さとりとこいしは?」

「あ〜、もうすぐ来ると思いますよ」

 

 と、私が放った途端、タイミングよく、疲れ果てていたさとりとこいしが扉を開けて部屋に入ってきた。勇儀さんはそれを見たや否や、物凄いスピードでそちらに向かっていった。

 

「ひっさしぶりだなぁ!お前ら!勇儀姐さんは会えて嬉しいぞ!」

 

 その大声に二人は驚きとビビリの表情になっていた。私とパルスィさんはそんな勇儀さんを見て、後ろで話す。

 

「あんな感じなんですか?いつも」

「ええ、友人に会う度にいつもああやって飛びついているわ」

「苦労してますね……」

 

 パルスィさんと勇儀さんは昔からの友人で、いつも橋で酒を交わしているらしい。私達にとっては憧れの関係と言っていいだろう。

 

「うにゅ、もう集まってたの?私も入れてー!」

 

 台所から出たお空が元気よく話の輪に入っていった。というか、この後、乾杯の音頭を取ってもらうことになっている。すると勇儀さんが手作りのステージの上に上がり、耳を塞ぎたくなるほどの大声量で叫んだ。

 

「えー、皆様!酒をお持ちください!」

 

 勇儀さんの声が部屋を反響し、キイイインという音となり跳ね返る。それでも、私達は机にあったお酒を持ち、今一度勇儀さんに顔を向ける。私の目線の先にはキスメさんやヤマメさん、他にも永遠亭の瑞乃や鈴仙さんがいた。

 

「では、今年も地底パーティ、出来ました!かんぱーい!」

『乾杯!』

 

 全員の声が初めて被る。大人数のため、勇儀さん一人の声よりも大きかったが、私達は他の妖怪達とコップを合わせていたので、あまり気にならなかった。

 

「あ、瑞乃!」

「ん、しんり。久しぶり!」

「元気してた?」

「うん!そっちは?」

「妹二人が私に辛辣になってきたよ。反抗期かなぁ……」

「それは姉さんもでしょ」

 

 私も瑞乃の会話にさとりが隣から割り込む。さとりはまだお酒を全く飲んでいないみたいだ。酒豪の瑞乃にとってはそれを見過ごせなかったらしい。

 

「さとり?お酒は?」

「飲まない」

「なんでぇ?」

 

 瑞乃はさとりを挑発して、お酒を無理にでも飲ませようという魂胆だったらしいが、さとりにはどんな挑発にも乗らないというのは、私の実体験の元、立証済みだ。

 

「あなた達みたいにベロベロに酔っ払って二日酔いになんかなりたくないからよ」

「うぐっ……」

 

 痛いところを突かれたのか、瑞乃は口を塞いで唸る。それを見た私は不覚にもクスクスと笑ってしまっていた。

 

「な、なによぅ……」

 

 顔を赤らめて頬を膨らませる瑞乃。ちょっと可愛くて私は思わず目をそらしてしまう。私よりも身長が高く、美しい顔立ちなので、魅了される人も多いと鈴仙さんが以前に言っていたのを思い出す。最初は信じていなかったのだが、今なら魅了される気持ちをわからなくもない。

 

「まぁ、そういう事よ。じゃあ、私はお空達と飲んでくるわね」

「はいよ」

「ね、しんり。久しぶりに二人だけで飲まない?」

「どこで?」

「ここの屋上。誰もいないでしょ?」

 

 そうだ。瑞乃(人間状態)と初めて出会ったのはここの屋上だった。兎のままこいしが連れてきて、いつの間にか人間に変身していた。今や数年前のお話だが、鮮明に覚えている。

 

「ね、兎になってみてよ」

「あれ体力使うからあまりなりたくないんだけど」

 

 進んでやろうとはしていなかったが、素直に兎に変身した。モフモフの体毛。思わず顔を埋めたくなる。

 

「やっぱ可愛いなぁ……」

 

 ホッコリする可愛さに私はほのぼのしていた。しかし、瑞乃はすぐに人型に戻ってしまう。私は名残惜しそうに見ていたが、瑞乃は何やら恥ずかしそうにモジモジしていた。

 

「あのね………兎の姿で撫でられると………なんと言いますか……」

「どったの?言いたいことがあるなら言いなよ」

「体の撫でられるのは……変な気分になるというか…………お…………おっ……お……」

「ど、どうしたの?おって何?」

 

 瑞乃が今までにないくらい恥ずかしそうになっていたので私は少しだけ好奇心が湧いていた。瑞乃は一度深呼吸をした後、思い切って放った。

 

「おっぱいを触られてる感覚になるの!」

「………」

 

 一瞬の静寂。それを切り離すかのように、私の冷めた声が瑞乃に届く。

 

「そんなの兎状態でもおっぱいがあるってこと?私なんか男と間違わられてもおかしくないくらい小さいのに。てか、一々おっぱいで例えなくても良くない?何それ、嫌味?」

「い、いやいや、普通に困ってるって言いたかっただけだよ…………もう……」

 

 まさか………瑞乃ってそっち系の話嫌いなのかな。前にも思ったけど、あまり興味を示さないというか、敢えて遠ざけてる気がする。私は瑞乃のセーラー服を見る。そして、私の目線の前にある嫌味ったらしいこの柔らかそうな二つの山を見て、私は軽く舌打ちをした。嫌ならおっぱいなんか言わなかったらいいのに。

 

「世の中、不公平って言葉が似合いすぎるね」

「ど、どこ見て言ってるのよ!」

 

 瑞乃は両腕を抱き、自分の豊満な胸を隠す。その仕草がまた私の心臓を跳ね上がらせる。私はそれを悟られないように、一つ咳払いをして、気を取り直す。

 

「まぁ、久しぶりに二人になった訳だし、飲もっか」

「そ、そうね。前は永琳様に麻酔打たれたもんね。程々にしておかないと怒られる」

「私も。さとりに殴られる」

「あなた、いつの間にかオシャレに目覚めたのかしら?ポニーテール可愛いじゃない」

「でしょ?お燐が結ってくれたんだ。」

 

 ポニーテールをフワフワ揺らしながら自慢する。これを言うのも悪い気分ではない。

 お互いがお互いのコップに酒を注ぐ。少し濁った薄緑の液体が、月明かりに照らされて反射する。甘くてピリッとした匂いが鼻腔をくすぐり、心地が良くなる。

 

「じゃあ、乾杯」

「ん、乾杯」

 

 久しぶりの友と、優しく乾杯をし、お互いが同時にその酒を飲む。飲んだ後、またしても同時に「ぷはぁ!」という声が漏れる。

 

「やっぱ酒はこれじゃないとな」

「ね、しんりが酔っぱらった姿また見たいなぁ……」

「もうあれは懲り懲りだよ………頭痛がひどかったんだから………」

「そう?酔ったしんり可愛かったわよ?」

「お世辞はいいよ」

「お世辞じゃないんだけどな……まぁ、謙遜するのはいい事ね」

「上からも少しだけムカつくな……」

 

 お互い、皮肉っているのか褒めあっているのかわからなくなってきているが、瑞乃との会話が何よりも嬉しかった。久しぶりにお互いの仕事場の話をしたり、身内の話をしたり。有意義な時間を過ごせたと思っている。

 私たちが話し終わる頃にも、下の会場は勇儀さんの大声とこいしの笑い声がここまで聞こえてきていた。結局終わったのは午前3時。全員が目にクマを作って解散した。

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