私は陰からお空が博麗の巫女と対峙するのを見守っていた。それはお空がちゃんと私がさっき言ったことを博麗の巫女に言えるか、お空が迫力を出せるか、それだけが不安だった。
「お空……頑張れ!」
親指をぐっと立てて、お空を応援する。お空の顔は珍しく緊張気味で、口元が強く引き締められていた。そんなお空を見るのも、私的には悪くなかった。
そして、お空の目の前に博麗の巫女は現れた。その時にはもう、お空の顔は真剣で冷静な顔になっていた。
「(さぁ、お空!あのセリフを言うんだ!)」
私は前のめりになりながらそのセリフを待っていたがお空は私の方を向いて、謝る仕草を見せた。そしてまた博麗の巫女に向き直り
「まずはここまで来てご苦労ね」
「そう思うのなら今すぐ間欠泉を止めてちょうだい、怨霊が湧いて迷惑してるのよ」
「なるほどね。しかし、それはもう手遅れよ。私は神の力、究極のエネルギー、「核融合」を手に入れた」
「核……融合?」
私はお空のセリフを聞いて唖然としていた。
か、かっこいい!私が考えたのなんかよりもよっぽどかっこいいセリフを考えていたのだ。あの緊張顔は何だったんだろ……
「(……霊夢。あなたならわかる筈よ。彼女は何の神様を取り入れたのかしら?)」
「……間欠泉だからお湯を沸かす神様?何にせよ、あいつを倒せば異変も解決する。なら、必要までにボコボコにするまでよ!」
「そう来なくてはね。八咫烏様、我に力を与えてくださり、感謝しております。太陽の力、是非とも私に貸してくださいませ。博麗の巫女、お前は究極のエネルギーで身も心もフュージョンし尽くすがいい!」
お空らしくない感謝の言葉と博麗の巫女に対する宣言、私はそれを見て、息を飲んだ。お空の信念と強さがわかる瞬間をこの目でしっかりと捉えた気がした。私がそう思っているうちに、戦闘は始まっていた。
お空の弾幕が縦に放たれる。
「おお、さっきの奴らとは桁違いね」
「今のだけでそれを見極めるのね。さすが博麗の巫女。じゃあこれはどうかなっ!」
お空は胸から一枚のスペルカードを取り出し、上に掲げる。そしてそこからは灼熱の熱気が辺りを襲う。それに対して私は手で体を隠し暑さに耐えている。
「あっつ……」
「核熱「ニュークリアフュージョン」!」
巨大な恒星が360度全方位に出現し、壁にあたっては消え、新たな恒星が生まれる。それを博麗の巫女は躱していくが、私がこの暑さに耐えられなくなった頃、お空の左手からは渦巻き状に進む青い弾幕が放たれるようになった。
「くっ!」
博麗の巫女も少し避けるのが疲れたのか、青弾が所々を掠めていた。これはもしかしたら、お空に勝機があるかもしれない。私はそう期待していた。
しかし、さすが博麗の巫女。それくらいでは大きな焦りを見せずに、すぐに攻撃態勢へと入る。
「やるねぇ、博麗の巫女」
「はんっ!これくらい出来ないと博麗の巫女は務まらないっての!」
嘲笑するようにお空を挑発するが、お空自身もそれを全く気にせずに、弾幕を放ち、弾幕を避けるを繰り返していた。
私はお空のこの実力に心底驚いていた。普段から彼女とは弾幕ごっこを繰り広げていはいるが、今日のこの戦いを見てわかる。お空の全力は私は一度も見たことがないだろう。この弾幕の密度、聞いたことのないスペルカード。これら全ては恐らく、「八咫烏」、核融合の力を手に入れ、潜在的能力が蘇ったのだろう。
「爆符「メガフレア」!」
無数に出現する恒星。しかし、それは空気に触れれば触れるほど小さくなるという欠点を持つが、弾速は速い方。そして発生した恒星からはニュークリアフュージョンと同様に、青弾が放たれる。
「霊符「夢想封印」!」
七色の弾幕がお空の周りを囲む。それが危険と判断したお空は、右手に付けてある第三の足の銃口を一つの弾に向けた。
そこからは一つの小さな御霊が飛んでいた。
「?」
「吹っ飛べー!」
お空がそういった途端、首をかしげていた博麗の巫女の前の弾と御霊が接触し、大爆発が起こった。衝撃波と熱気、同時に私の体に襲いかかる。これは下手したら肌が溶けそうなほど。スカートの裾が少しだけ焦げていた熱い。これはさすがの博麗の巫女も息ができずに死に至るのではないかと私は予想していたが、それは裏切られる形となった。
「夢符「二重結界」」
結界によって爆発の衝撃波が反転させられ、熱気もその場で滞っていた。そのスペルカードに対しては私もお空も驚きを隠せないでいた。
「嘘……でしょ……」
「まさか、こんな所で奥の手を使うことになるなんてね。褒めてあげるわよ。紫、もう倒していいのかしら?」
「(ええ、構わないわ)」
「させないよ!「地獄極楽メルトダウン」!」
最初、小さな恒星が博麗の巫女とお空の後ろに飛ぶ、そしてお空と博麗の巫女の背後にさっきまで小さかった恒星が壁に当たることで巨大に広がった。
そして二つの恒星の間は約3メートル。 その恒星からは小さな弾幕が放たれ、隙間はさらに狭まる。
「また奇抜なスペルね」
「へへっ、これはまだ序の口だよ!」
ここで初めて、私は博麗の巫女の焦りを感じ取った気がする。さっきまでは動きが大雑把で攻撃が主体だったが、このスペルカードに入ってから、自分が弾に当たらないように防御主体で動いていた。こういった切り替えも天才の強みだろう。
「霊符「夢想封印 集」!」
「………っ!」
札と弾幕が同時に放たれ、それは一直線にお空を襲った。お空はそれをまた第三の足の御霊で全てを爆発させる。するとお空の体力はほぼ底を尽きていた。そして最後のスペルカードを取り出し、精一杯に叫んだ。
「地獄の人工太陽!」
お空自身が恒星となり、その周りには弾幕が張られ、それは恒星から引力が働き、引き寄せられていた。それは弾幕だけでなく、博麗の巫女も私も引き寄せられて、私は岩にしがみついて耐えられていたが博麗の巫女は後ろに下がりながら遠ざけていくが、弾幕が邪魔で思うように進めないみたいだった。
「や、やばいっ!」
「(霊夢!引力はいいわ!弾幕に集中して!)」
「わ、分かってるわ!しかもそれだけじゃない!」
そう、それだけではない。熱だ。とてつもなく熱い。もう全てを溶かすことが出来るのではないかと思えるくらいの熱量。服も溶けてきている。
「このまま全てを溶かしてみせるっ!」
「くっそ!調子に乗るなぁ!」
必死になった博麗の巫女は札を無数に投げるが、お空は動じずに引力を働かせ続ける。
しかし、最後に博麗の巫女はにやっと笑い、スペルカードを取り出した。
「っ!?」
私は息を飲んで、そのスペルカードの内容を能力の気を使って読む。博麗の巫女の調子から、どんなスペルカードかすぐに理解出来た。
「嘘……これは…」
「霊符「夢想天生」!」
「無敵だよ……これ」
博麗の巫女はそのスペルカードを唱えると、白く発光した。そして弾幕が博麗の巫女に当たると、弾幕が弾け、博麗の巫女自身は無傷だった。
「な!?どういうこと!?」
「残念、こちとら無敵の修行していたのよ」
そう言うと、お空はフッと微笑みを浮かべて、さらに力を強め、引力も最大限まで強めていた。
「ならっ!最後まで足掻いてみせる!」
「………王手」
無数の札がお空の全方位から襲う。そして物凄いスピードで札が飛び、大爆発を起こして、お空は地上に落ちた。
「うう、しんり様……ごめんなさぁい……」
私は岩陰からその光景を見て呆然としていた。口も半開き、手を震えていた。
「お空が…………負けた……そんなに強いのか……」
感嘆のため息を漏らし、目を丸くしながら、私は地霊殿に続く道へと歩いた。この戦いで分かった。今の博麗の巫女は「無敵」なんだ。最後に唱えた「夢想天生」は弾幕の攻撃を無視していた。札の量もおぞましく、避けられる訳がなかった。
しかし、私の予想はあのスペルカードは一枚しかない。そう確信づいていた。
私は帰る道中、ずっと口元が緩んでいた。
「ああ、楽しみだなぁ……」