いいな、私は部活ですよ。
いーなーいーなー
ホントは行けたのにさ、どうして予定ずらすんだろうね。
お空が博麗の巫女に退治され、間欠泉も止まり、地上に怨霊が飛び出すことはなく、平穏を迎えた。お空は博麗の巫女に負けた後、厳しく叱咤され。もう地上の支配や核融合の暴走などはしないと誓った。
「あ〜あ、暇だなぁ…」
結局、博麗の巫女は地上に帰り、地底はもういつも通りの静けさを取り戻し、私とこいしのみ戦闘はなかった。
晩御飯を食べ、もう後は寝るだけになった時、私は「真実の歯車」を読み終わり、暇を持て余していた。
「こんな話だったんだなぁ……」
「真実の歯車」は、序盤内容が浅いかなって思ったけど、終盤に近づくにつれ、犯人の動機とその行動についての真相などがこと細かく説明されており、目をキラキラさせてしまっていた。
その時、ドアがコンコンと二回叩かれ、向かいからお燐の声が聞こえる。
「しんり様ー、博麗の巫女から手紙です」
「は?」
扉を開けたお燐。灼熱地獄で博麗の巫女と戦闘したお燐の顔傷はまだ癒えていなかった。頬には絆創膏、右手には包帯が巻かれていた。唯一、地霊殿の中で出血したのがお燐なので、治療はお燐が一番苦労したとか。
私はお燐から大きめの封筒を取り出し、内容を読む。
『拝啓 地霊殿当主へ
私が退治した八咫烏の妖怪の裏で働いている者がいるのは知っているのかしら?私は今からそれを退治しに行くつもりだ。私はあなたから事情が聞きたい。明日の昼、妖怪の山麓付近で待ち合わせしましょう』
「……なるほどなぁ……」
裏に働いている者。恐らく、土着神の諏訪子さんと天津神の神奈子さんの事だろう。あの二人はよっぽど彼女を恐れていたみたいだった。まぁ、あの圧倒的な強さは神様でも驚きだろう。
「だるいから行きたくないなぁ…」
「そう仰らずに、もしかしたら、博麗の巫女と戦えるかも知れませんよ?」
「……そう……だね」
今では戦いたいなんて思ってはいないが、本当に暇だったので、私は寝ることにした。お燐を部屋から出し、電気を消す。久しぶりの弾幕ごっこに私はほんの少しだけ心を踊らせていた。
翌日の昼。私は一足早く妖怪の山に来ていた。セリカナちゃんに会えるかなと思ったが、知り合いとは一度も会わずに来てしまった。
「あら、あなたが古明地しんり?」
「……ええ」
「私は博麗霊夢。よろしくね」
右手を差し出し、握手を要求してきた博麗の巫女。私は少し後ずさりながらもその手を握り握手をした。随分とフレンドリーになっていたことに私は驚きを隠せなかった。
「今更焼いて食ってやろうなんて思ってもないし、異変が終わったのなら、元黒幕を倒そうなんて考えないわ。まぁ、あなたが戦いたいなら容赦はしないけど……」
その言葉を待っていた。私は口元を緩め、にやっと不敵に笑う。その顔はまるで極悪の殺人者の様なものだった。
「ああ、是非お願いしたいな。博麗の巫女がどれだけ強いのか」
「そんなもの、地底の時に見てたでしょう?あのお空とやらの戦いを」
「気づいてたんだ」
「当たり前ね。あんな前のめりになって見てたらそりゃ分かるわよ」
私は今更になって少し安堵する。あの時にもし博麗の巫女に攻撃されていたら私は今頃ボコボコにされていたのだろう。
「じゃあ行きましょう。しんり」
「うん、えっと……」
「霊夢でいいわ」
「う、うん。霊夢」
そう言って、まだぎこちない会話の中、妖怪の山の奥の方へと入っていった。そこは紅葉が綺麗で、和を彷彿とさせるものだった。
「ほら、もうすぐよ」
そこはコンクリート詰めされた何らかの道。そして暫く飛んでいると大きな赤色の鳥居が姿を現す。これを見て、私はここが神社なのだと、理解出来た。
「ああ、長ったらしいわね」
「こんくらい我慢できるでしょうよ、霊夢……」
「私は同じ景色が嫌いなの」
「あら、ここは景色がよろしくて?」
前方から声が聞こえる。私と霊夢はその場でブレーキをかけて眼前の敵を見据える。
「早苗?なんでここに?」
早苗さん……という名前なのだろうか。霊夢と同じ巫女服にしか見えない。腋を出すのが流行なのだろうか?
「この先には神様がいます。最低限の抵抗はしないとねってことです。霊夢さんとしんりさん」
「ど、どうして私の名を……」
「諏訪子様から聞きました。よろしくお願いします」
可愛い笑顔を浮かべた早苗さん。しかし、すぐに顔を切り替えて、風祝を構える。その風貌はまるで神を奉る神聖な巫女のよう。
「会って早々で申し訳ありませんが、絶対に常識に囚われない勝負です!」
「しんり、よろしく頼むわよ」
「え、ええ!?」
私は唐突に霊夢に押し付けられ、その場でたじろいでしまう。しかし、早苗さんはその隙を見逃さず、間髪入れずに弾幕を放った。
「秘法「九字刺し」」
円状に回る小さな弾幕と、縦と横。網状に進むビーム弾幕が同時に私を襲う。私は弾幕のスピードと小さな弾幕の進行方向を瞬時に判断し、それを避けた。
「は、速いですね…」
「これが強みですから」
これには流石の早苗さんもビックリしてくれたみたいだ。私は満面の笑みでそれを返した。次は私がスペルカードを唱え、弾幕を射出した。
「スペルカード!岩符「ブロックレイン!」」
岩が雨のように降り注ぐ。真下から速い岩が飛んでくるのは誰だって恐怖心がある。もちろん早苗さんはその私の術中にまんまとはまってくれた。これはいわゆるハッタリだ。幻覚を見せることだって容易いのだ。
調子をコントロールする程度の能力。気を操る程度の能力。これがまた便利でもある不便利ともいえる私の能力だ。
「わわっ!私のこと殺さないでくださいよー!」
「殺すつもりはありませんよ!」
私は必死に弁解をし、誤解を解く。そして早苗さんはにやっと笑い、スペルカードを取り出した。表情からして、これが今のラストスペルだろう。
「スペルカード!神徳「五穀豊穣ライズシャワー」!」
米粒弾がサイドの壁に当たってはシャワーのように黄色、緑、青の色をした弾幕となって不規則に降り注ぐ。規則的に落ちてこない弾幕は軌道が全く読めないため、私は弾幕の隙間を狙って移動していた。
「はぁ……はぁ……まずい…」
「まだまだ行けますよー!」
「仕方ない!終わらせる!」
焦りを感じた私は胸ポケットから一枚スペルカードを取り出し、詠唱を始めた。
「スペルカード!神界「バレットオブハーブ」!」
出現した巨大なハーブから奏でられた音は高速な弾丸となって早苗さんへと向かっていく。この弾丸のスピードは今まで私がみた弾幕の中でもトップクラスの自信があるほど。
「は、速っ!」
「まだまだー!」
立場逆転。私が今度は早苗さんを追い詰める番だった。常識的にこんな速い弾幕は生み出せない。しかし、調子をコントロールする私なら弾幕の調子を上げることなど容易い。
常識に囚われてないね。
そしてようやく、数十発目の弾丸が早苗さんの胸と腹と太ももに直撃し、爆発を起こして、早苗さんは下に降下していった。
「ふぅ……」と息をつき、大きく背伸びをした。そして後ろから霊夢が驚きの顔と声を上げた。
「お、驚きね……あんなに苦もなく早苗を倒すなんて……」
「は、はぁ……」
良かった。まだ私の力は通用しているみたい。そこにひとまず安堵し、私は霊夢を促した。
「さて、霊夢。黒幕は早苗さんじゃないよ。早く神様のところに行こう」
「ええ、分かってるわ」
私達はもう一度神社に向かって飛ぶ。
その途中、私は自分の手のひらを見た。確かに力はある。しかし、これが霊夢に勝てるかどうかはまだ分からない。もしかしたら、力量は圧倒的に霊夢の方が上だということも考えられる。
しかし、私にとってはそれくらいが上等だ。手のひらを握り、私はもう一度前を見据えた。