名前が思い出せないものや表現しずらいものは描写していません。
ご了承下さい。
早苗さんを倒し、私達はさらに前進していく。少し肌寒いが先ほどの弾幕ごっこで体はポカポカだ。それに、何もしていない霊夢さえも平気な顔をしているのだ。今更「寒い」なんて言えない。
「はぁ、ここってこんなに長いの?」
「私も嫌よ。黙ってついてきなさいってば」
私は正直、さっきの早苗さんとの戦いで満足だ。別にもう霊夢とやらなくてもいいし、ちゃっちゃと片付けてココアが飲みたい。それでも霊夢を怒らせたくないので付いていく。
「あ、もうすぐよ」
「やっとか…」
最後に大きな鳥居をくぐり、大きな建物が見え始める。鳥居に彫ってあった文字が目に入る。
「守矢神社」ここが諏訪子さんと神奈子さんが奉られている神社なのだろう。そしてここが本殿。二人はここにいるのだろうか。
「ありゃ?しんりねぇ?」
「………え?」
背後からか、私の名が小さく呼ばれた気がした。疲れているから幻聴だと言い聞かせ、歩を進めようとした瞬間。
「もー!聞こえてるんでしょ!」
「あだっ!」
肩を両手で掴まれて私は重力に従って前に進んでいく。ある程度のバランスが取れた後、後ろを振り返り、声の主を見据える。
「こ、こいしっ!?」
「やっほー」
そこに居たのは私とさとりの妹であるこいしがそこで笑顔で手を振っていた。予想の斜め上をいく人物の登場に私は驚きを隠せずにいた。
「な、なんでこいしがここに……?」
「んー?ああ、ここの神様にね。地霊殿の周りをふらついてた時に『ここは危ないからうちに来な…』って言われて」
「それは神奈子さんの真似してるの?」
こいしが神奈子さんの全く似てないモノマネにため息を付く。すると隣にいた霊夢が話に割り込んでくる。
「ねぇ、その神様とやらはどこなの?」
「んぅ?知らないよ」
「しらばっくれなくてもいいわよ。あなたに危害は加えないわ」
「ほんとにしらないってばぁ!」
明らかに知っているだろう素振りを見せ、霊夢を挑発するこいし。私はあたふたしながらそれを止めようとする。
「ちょっ、やめ、こいし!?」
「あらぁ……知らないのねぇ…」
霊夢の後ろにはゆらゆらと漆黒のオーラが漂っている。それを見た私はビクッと体を強ばらせるが、こいしはそれでも恐れずに霊夢を挑発する。
「あっれぇ?博麗の巫女って……あなたなのぉ?」
「……ええ私よ。悪かったわね……」
ビキビキ……と霊夢から聞こえそうなほどキレているのがわかった。怖いもの知らずのこいしはこうやって人をいじるのも好きになったのだろう。
嗚呼、妹が悪い方向に進んでいくよ。母さん。
「なら、力ずくで吐かせるまでね!」
「いいね!それを待ってたんだよ!」
オレンジ色の魔法陣を展開させたこいしは独特のポーズを取りながら円状に米粒弾を大量に射出する。しかし、霊夢はそれをいとも簡単に避け、自分の札を発射していく。
「表象「弾幕パラノイア」!」
霊夢の周りにピンク色のクナイ弾幕が円を描きながら霊夢を囲む。そして密度はもう逃げられないくらいのもの。霊夢はクナイ弾幕の円の中で滞る。そしてこいしからは規則的な青い大玉弾幕が等間隔に発した。弾幕ごっこのルールとして、絶対に避けられない弾幕は放ってはいけないというルールがあり、この密度が限界なのだろう。
しかし、霊夢はその狭い空間の中でも僅かなズレによって迫り来る大玉弾幕をスレスレで避けていく。私はその霊夢の技術に「おお……」という感嘆の声を漏らしてしまう。
「むっ、なかなかだね!しんりねぇと同じくらい!」
「それはなにより………だわ!」
「本能「イドの解放」!」
こいしを中心に弾幕ごっこでは珍しいハート型の弾幕が円を作り交差しあっているため、単純だが避けにくい仕様になっている。密度も人一人分程しかないため、避けるのにも高度な技術が必要とされる。
しかし、霊夢はそれを横移動のみで交わしていく。それを見た私は息を飲んだ。
「もー!全然当たらない!」
「それは残念ね。しんりの方が強かったなぁ……」
霊夢は先ほどのこいしと同じように嘘話を作ってこいしを挑発する。こいしは「弾幕ごっこではお姉ちゃん達には負けたくない!」と、よく意地を張っていて、三姉妹の中で一番の負けず嫌いだ。もうすぐで人間の寿命を超える時期だというのにやんちゃなところが沢山ある。まぁ、個人的には可愛げがあっていいんだけどね。
「むきー!しんりねぇなんかアウトオブ眼中だもん!私の方が強いもん!」
「そんな言葉どこで覚えたの!?」
「はんっ!今の戦いだけならまだしんりの方が強いわね!」
「ふんっ!戦いで負けてもおっぱいの大きさは私の勝ちだもん!」
こいしの最後の一言で私の中で何かが切れた気がした。
「こいしコラぁぁぁぁ!!誰が貧乳だぁぁ!」
私は自分の白い魔法陣を展開し、大量の弾幕を放とうとするが、それは霊夢の左手によって制される。
「あなたのコンプレックスを知れて嬉しいわよ。さて、こいし………と言ったかしら?そろそろ終わりましょう?」
「……ええ!」
そう言って、こいしはまたスペルカードを取り出す。霊夢はお祓い棒を強く握り高く飛んだ。私は頬を膨らませながらも下でその戦いを見届けようとした。
「抑制「スーパーエゴ」!」
次はイドの解放とは逆にこいしを中心にハート型の弾幕が集まってきて、渦潮のように回りながらこいしに近づいては消えていっていた。霊夢は歯を食いしばり、スペルカードを出した。
「霊符「夢想封印」!」
私は霊夢のこのスペルをもう数回聞いたがいつ見ても迫力もあって力もあるスペルカードだ。流石のこいしもこれには少しだけ押される。そしてしまいにはそれに力負けし、遠くに吹っ飛ぶ!
「きゃあ!」
「こ、こいし!」
「まだまだ!」
こいしはまたスペルカードを取り出す。一体何枚あるのだろうか……
「復燃「恋の埋火」!」
一つのハート型が、弾幕のブーストによって結界の中を跳ね返りながら霊夢を襲う。しかしそれを霊夢は一瞬の弾幕で全てを消し飛ばした。
「二重結界……」
「な、それ反則だよ……」
結界の狭間に連れていかれたこいしの弾幕は闇の中へと消えた。負けを確信したのか、こいしは涙目になりながらも最後のスペルカードを取り出した。
「まだ負けない!「サブタレイニアンローズ」!」
円状に広がる弾幕がレールとなり、大きな薔薇の弾幕が回転しながら徐々に広がっていく。それは時間が経つにつれ、薔薇の弾幕のスピードや大きさなどが変化していった。
「当たれ当たれ当たれぇ!」
「……くっ!」
薔薇の弾幕が霊夢の服を掠め、所々に弾幕を当てているが、未だに霊夢にモロ当たるものは見たことがなかった。
「スペルカード!「夢想天生」!」
私はこのスペルを聞いて、霊夢の勝利を確信した。負けを認めたくなくて、我を失ったこいしとこのスペルカードによって無敵になった霊夢。結果は誰でも分かるだろう。
「これで………終わり………よっ!」
「当たるもんか!そんな札!」
超速の札がこいしを狙うが、こいしはそれを軽々と避ける。しかし、こいしのその油断が命取りとなった。
「残念、跳ね返るわよ」
「へ?」
背後から来たさっきの札がこいしの背中に当たる。すると大きな爆発が起こり、こいしはプスプスと焦げた匂いを発し、気を失いながら下に落下する。霊夢は両手をパンパンとはたく。
「ほい、これで良しと……」
「あれ、諏訪子さんと神奈子さんは追わなくていいの?」
「なんだか、この陰陽玉からね。二人は今地霊殿の方で復興作業をしているらしい。反省してるみたいだし許してあげてってね」
「そう言えばそれ、なんか細工があるの?」
「紫と繋がってるいるのよ。まぁ、詳しいことはまた教えるわ」
そう言って、霊夢は私の方に向き、申し訳なさそうな顔で私に謝罪をした。
「ごめんなさいね。結局あなたを誘う必要は無かったみたい。お詫びと言っちゃなんだけど、今度の異変解決の宴会、あなた達も来なさい。拒否権は無いわよ」
「え、あ、うん。ありがとう?」
疑問形になりながらも霊夢にお礼を言う。そして私は下に落ちたこいしをお姫様抱っこで持ち上げる。
「地霊殿の奴らで来なさいね。場所は恐らくここって魔理沙が言ってたわね……」
「うん、じゃあまた手紙送ってね」
「ええ」
私は霊夢に軽く手を振った後、地霊殿の方向へと飛んでいった。霊夢と戦えなかったのは仕方なかったけど、私は疲れていたし、こいしが成長していること、霊夢の強さを見極めることが出来て、大きな収穫になったかもしれない。
私はこの異変に満足していた。