地霊殿内は大勢の敵がいた。未だ正体が分からないこの集団は少し気味が悪かった。
レミリアと私、こいしの三人で地霊殿内部を歩き回る。
「………多いね」
「そうね、この量だと、三人じゃ相手するのは大変かも」
「…さとりねぇは?」
「多分、どこかにいると思うけど」
「しんり」
レミリアに名を呼ばれ、私はそちらに意識を向けた。すると地霊殿のホールには、倍以上の集団がさっきの銃を持って入ってきた。今ここにいるのは、ざっと五百。頭が痛くなる人数だ。しかし、相手に出来ないことは無かった。
「私一人でやるよ」
「ちょっと、本気なの?しんり」
「うん、こいしとレミリアはここにいて、地霊殿にいる妖怪は私しかいないという認識をあいつらに植え付けておいた方が後が楽でしょ?」
「でも……」
「大丈夫だよレミリアお姉ちゃん。しんりの強さは霊夢や神奈子、諏訪子なんかよりも全然強いから」
「そ、だから安心して」
何故か、この戦いには絶対的自信があった。こいつらなら倒せる。勝てるとそういった自信。これは余裕ではなく、自分の実力を見極めた上での……だ。
「だから、レミリアとこいしはここに」
「……ええ」
地霊殿のメンバーは人数が少ないため、占領されるのは人数の比率からして仕方ない。
なら、同じ人数に合わせればいいだけ、実に簡単な作業である。
私は角から姿を現し、敵に自分を認識させた。すると一斉に黒い武装服をきた男達は銃口をこちらに向けた。私はそれに少しだけビビってしまう。
「……誰だ?」
「ようこそ地霊殿へ。私はこの地霊殿の主、古明地しんりと申します。今日はどう言ったご要件で?」
「…幻想郷のパワーバランスの破壊ですよ」
「っ!」
男達の間から出てきたのは、真っ赤なロングヘアーの美女。凛とした佇まいに、露出の激しい着物。この場にいるのは、どう見たって場違いだろうと思った。
「……あなたは?」
「私は赤城、ステナミア連合第一軍隊、総合指揮官です」
「……そこまで情報を漏らしていいの?」
「ええ、今から死にゆく者がいくら情報を持っていても、すぐに消去されますしね」
「……そっか」
完全にやる気だ。私は少し距離をとり、スペルカードを一つ取り出す。
しかし私の中には一つ引っ掛かりがあった。ステナミア連合軍。どこかで聞いたことのなる名前に私は少しだけ考え込んでしまっていた。
「さて、今からここを支配いたします。第一軍隊!位置につけ!」
訓練でもしたのか、統率された男達の動きに少しだけ感心してしまう。するとあっという間に私は男達に囲まれており、逃げ場がない程にぎっちりと包囲された。
「本当に殺す気なんだ。なら、こっちもそれ相応の対応をさせてもらうよ」
「……「あのお方」からあなたと博麗の巫女、雅の兎、核融合の鴉は要注意とお告げになったのでね。先に排除しておくことに越したことはないのです」
「そう……」
にやっと笑う赤城。その顔は極悪の顔、私はそんな顔をする人を見たことがないので、少しだけたじろいでしまう。
赤城は右手を天井に向かって上げる。男達は引き金に指をかけた。
「……………始め!」
「っ!」
ズガガガガガガガガガガ!!!
五百人が同時に射撃を始めたため、もう本当に逃げ場は無かった。
レミリアとこいしの方を見ると、心配そうな顔でこちらを見ていた。まぁ、こいしに至っては別の意味で心配しているんだろうけど……
「スペルカード、心符「ハートバレッタ」」
私の周りは厚い防御壁が出現し、弾丸はその壁の中にめり込んで停止した。私の方に届く弾丸はゼロ。全てが壁で防がれていた。
「はーずれ」
「………」
私は余裕な態度を見せ、強力な力があることを誇示する。そして、私はもう一度スペルカードを取り出した。
「スペルカード、岩符「ブロックレイン」」
岩石が雨のように降り注ぎ、男達は全員その岩に潰されるが、死ぬことはない。多少の気絶はあるだろうが、死傷率はゼロパーセントである。
「さぁて、赤城。といったかな、あなた達の目的は本当に幻想郷の崩壊なの?「あのお方」とは誰のことさ?」
「………あなたは本当に恐ろしい。幼い体をしながら、ここまで強力だとは………残念ながら、これ以上の情報は伏せておきます。この力は予想外だったのでね」
「ま、待って!」
私が赤城を止める前に赤城は眩い雷光と共に姿を消した。私は軽く舌打ちをして、レミリアとこいしの元に戻る。
「お、驚きだわ……しんり…あなた……」
「しんりねぇ……ちょっと本気出しすぎじゃない?」
「そこまで出してないんだけどな……」
「……霊夢よりも絶対強いじゃない」
レミリアは未だ驚きを隠せていないようだ。
そんなレミリアを横に見ながら、私は次の場所へと移動し始める。
「しんりねぇ、こいつらって結局なんなの?」
「なんか、「ステナミア連合軍」って言ってたんだけど……」
「あっ」
「ん?」
ステナミア連合軍の名を出した瞬間、レミリアは驚きと恐怖の顔に染まった。
「どしたの?レミリア」
「ステナミア連合軍って………」
「レミリアお姉ちゃん?」
「い、いえ、ごめんなさい。何でもないわ。それよりもさとりやフラン達が心配ね」
「そう……だね、とりあえず、他のメンバーを探そう」
レミリアは一つ咳払いをして、一つ一つの部屋を虱潰しに探していく。
私は「あのお方」「ステナミア連合軍」。この二つのワードが頭の中で反芻させられていた。ステナミアというのはどこかで聞いたことがある。
「ステナミア……………ステナミア……………あっ」
私はようやく一つのもやもやが消えた。これが確信という訳では無いが、大体の予想がついた。しかし、あの子がそんな大所帯を作り上げることなど不可能だろう……あの子の父親が……かな?
「セリカナ……ちゃん……じゃないよね」
まさか、あんな幼い子が大きな軍隊を統率する力なんてあるわけが無い。「あのお方」がセリカナちゃんならば、それも違う。お嬢さまと呼ばれていたセリカナちゃんはどう見たってアレが素なんだから。
「……り…んり…………しんり!」
「っ!な、何?」
「大丈夫?顔色が悪いわよ?」
「大丈夫……早くさとり達を探そう」
私はステナミア連合軍のトップに、友人が隠れていると知った今、恐怖が唐突に襲いかかってきた。
それに、さとりやフランちゃん。どちらも地霊殿にいないとなると、本当に危ないかもしれない。早く見つけないと……
地霊殿を三人で歩いている間、私はずっと心臓の鼓動が激しくなっていた。
この連合軍の裏には、必ずセリカナちゃんと……その親族が隠れている。そう、確信していた。