ハートだよ!覚り三姉妹!   作:かくてる

35 / 42
遅れてすいませんっしたぁ!


真実の歯車、平行する事件

 永遠亭は完全に消火され、焼け跡だけが残っていた。幸いにも形が完全に崩れることはなく、再建は可能だそうだ。私達は永遠亭の外側の壁に寄りかかっていた。

 

「………」

「………」

 

 全員が黙る。しかし、気まずさなどなかった。それは、みんなが瑞乃の死を悔やんでいるから。私、こいし、レミリアの三人だけ。今のところ襲撃はなく、永琳さんも鈴仙さんも無事だったが意識が戻らないのでベッドに寝かせている。

 

「……ねぇ、しんりねぇ」

「…………ん?」

「……誰……なんだろうね?」

 

 こいしの言う「誰」というのは恐らくこの「ステナミア連合軍」に関してだろう。瑞乃の遺体からは何も証拠は掴めなかったため、鈴仙さんと永琳さんが覚めるのを待つしかなかった。

 

「分からない……」

 

 でも、私がそいつらを恨んでいることは確かだ。それだけは胸の奥に秘めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ………はぁ………」

 

 私は拘束された腕を解こうとするが、石のように硬いロープはビクリともしなかった。薄暗い部屋に金属の匂い、隣ですすり泣く声だけがここの印象だった。

 

「う、うう……お姉さまぁ……」

「ちょっと!これはどういうこと!?」

 

 バチンっ!と私は頬を平手で叩かれる。叩いた相手には私は少し見覚えがあった。

 

「だーめっ!しんりちゃんが見つかるまで、君にはここを離れて欲しくないんだよ」

「あなたまさか………セリカナ・クレセ・ステナミア……」

「うーん、私はこの名前が嫌いでね。長すぎて覚えにくいでしょ?「長門」って呼んでよ……」

 

 小悪魔的笑みが零れる。セリカナ……もとい長門は私に顔を近づけて、小さく囁いた。

 

「私達は古明地しんりと博麗の巫女が目的なの………だからじっとしてて?」

「う………あっ……」

 

 何か、私の中から抜かれるような感覚に陥り、まるで内蔵を全部抜かれたのかと言わんばかりの激痛が私を襲った。

 

「あ、ああああああああああ!!!」

「さ、さとりお姉ちゃん……?」

 

 隣で叫ぶ私を見てさらに涙が零れるフランさん。しかし私にはそんなことを考える余裕など無かったのだ。

 

「赤城、加賀」

「はい」

「この子達の監視をお願い。私はしんりちゃんを探してくるよ」

「………了解しました」

 

 すると、長門はここから立ち去った。私は激痛が収まり、顔面を顔につけ、痛みに耐えた。そしてある程度痛みが回復した後、周りを見た。

 

「さとりお姉ちゃん………大丈夫なの?」

「ええ、心配かけてごめんなさい……大丈夫です……」

「あらぁ?だめよ、私語は慎みなさい?」

 

 少し露出した女性。赤い衣服を纏っているので恐らくこちらが「赤城」なのだろう。

 近くまでより、赤城はそれだけ警告した。そして、その場でニコリと笑い、すぐに離れた。

 

「(赤城……加賀……長門……どこかで)」

 

 この三つの名前にはどこか聞き覚えがあったのだ。何かの本だろうか?姉さんが何かを話していた気がするのに………

 

「おやおや、しんり様のご姉妹ですか」

「あなたは……」

「私、セリシウス・クロミーと申します。セリカナお嬢様の執事でございます。以後お見知りおきを」

「……」

 

 返事をする余裕などない。フランさんですら、この二人に怯えている。狂気を操り、ありとあらゆるものを破壊することの出来るフランさんが。

 私は下を向き、ただ助けに来てくれるのを祈っていた。それが届けばいいのに……とただ願いながら。

 

「早く………助けに来て…………………………しんり姉さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「れ、鈴仙さん!」

 

 ベッド室に戻ると、鈴仙さんが目を覚ました。赤い双眸はまだ虚ろだが、意識はあるようだ。

 

「大丈夫?」

「れ……みりあ………さん?」

「そうよ、あなたが倒れた理由、覚えてる?」

 

 レミリアが心配そうに鈴仙さんの顔を覗く。鈴仙さんはレミリアを見た後、何かを思い出し、目を見開いた。

 

「瑞乃っ!」

 

 鈴仙さんが勢いよく立ち上がるのを見て、私は鈴仙さんを抱きしめた。それは、動こうとする鈴仙さんを止めようとしたのか、それとも自分が人肌恋しくて抱きついたのか、分からなかった。

 

「落ち着いて聞いて!鈴仙さん………瑞乃は……」

「やめて!何も言わないで!瑞乃はまだ死んでない!」

 

 現実逃避をする鈴仙さんに私は体を離し、思い切りビンタをした。快音が竹林に反響する。

 

「瑞乃はもういないの!死んじゃったんだよ!」

「っ!…………うぅ………」

 

 自分の心臓を抑え、泣きじゃくる鈴仙さん。私はその鈴仙さんの背中をゆっくりと摩っていた。

 

 五分後、落ち着いた鈴仙さんは一つ息をついて私を見据えた。

 

「迷惑かけてすいません。しんりさん」

「大丈夫ですよ」

 

 立ち上がりが早いな。と私は心の中で鈴仙さんに感心した。

 

「とりあえず、ココであったことを話してくれませんか?鈴仙さん」

「………ええ」

 

 険しい顔になった鈴仙さんの口から出たその言葉は私の心に大きなダメージを与えた。

 

「まず、瑞乃を殺し、永遠亭を燃やしたこの軍隊の最高軍司令官は……「長門」………幼い体をしていながらも、戦闘力は桁外れでした。長い黒髪が目立ち、身長はしんりさんよりも低めです」

 

 それを聞いた瞬間、私は膝をついた。そして自分の頭を抱える。

 

「嘘……セリカナちゃんが……最高軍司令官……?」

 

 第一軍隊司令官は地霊殿で出会った『赤城』。そして、ステナミア連合軍そのものを動かしている最高軍司令官が……セリカナ・クレセ・ステナミア。

 

「なら………確実に…鈴仙さん、セリカナちゃん以外に敵はいましたか?」

「いえ、彼女一人でした」

 

 鈴仙さんも瑞乃もセリカナちゃんにやられた。つまり、二人以上の力をセリカナちゃんは持っているということ、私はそれを知った途端に背筋が凍る。

 

「セリカナちゃんは……長門と名乗った……」

 

 長門。それは阿求さんの「真実の歯車」にて登場した「戦艦」という船。あちらの世界に存在したものだ。

 そして、赤城、加賀。この二つは「航空母艦」、戦闘機や爆撃機という飛行物を搭載する船だという。

 

「ってことは……外の世界から…………?こいし、レミリア、私は一度地霊殿に帰るよ。二人はここにいて」

「な、しんりねぇ、危険だよ!」

「そうね、私もそれはお勧めしないわよ」

 

 二人は私を止めた。しかし、私は地霊殿に帰ってやらなければいけない事がある。

 

「大丈夫、私は死なないよ」

 

 そう言って、私は永遠亭の地面を蹴った。勢いよく飛び、肝が冷えるほどのスピードで空を飛んだ。風が熱い。まぁ、これだけ家屋が燃えてたら、風にも影響するか。と、勝手に自己解釈して、すぐに地底内に入った。

 

「あれ、阿求さん?」

 

 入口に立っていたのは、小柄な人間、稗田阿求さんだった。私が声をかけると、こちらを振り向いた。

 

「あ、しんりさん……」

「どうしたんですか?」

「実は……」

 

 少しずつ顔が暗くなっていく阿求さん。私はその顔を見て唾を飲んだ。

 

「真実の歯車が……現実に出てきているんです……」

「え?」

「真実の歯車そのものの物語と並行してるんですよ」

 

「真実の歯車」は、一人の女性が彼氏の浮気相手を殺す物語、その女性は警察の目から避けるため、「横須賀」とい所の海軍基地に逃げ込む。そこで、女性はそこで自害する……という物語だったのだが、いまいちピンと来なかった。

 

「あっ!」

 

 私は少しだけ辻褄が合わさり、閃かせることが出来た。

 

「阿求さん、あなたはここにいては危険です。私と一緒に来てください」

「え?きゃっ!」

 

 阿求さんの手を握り、私は思い切り飛ぶ、飛べない阿求さんは可愛らしい声を出し、私にしがみついた。

 考えたくないが、セリカナちゃんの考えていることが少しだけわかった気がした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。