いや、これから書いていこうと思う。
ほんとに申し訳ない。こんなに月日が経つのが早いとは……
まぁ、シスコンの方も書いていきますので
阿求さんを抱えた私の体は少し重かった。
最高司令官のセリカナちゃん、基、「長門」。そしてその部下であるセリシウス、「加賀」。もう一人の女性、「赤城」。
全ては阿求さんが描いた外の世界での物語、「真実の歯車」で登場した戦艦、航空母艦。これは、ある戦いで無残にも海というところで沈没してしまったらしい。
「……なら、あの軍隊は……外から……でも、何が根本なんだ?」
「……」
阿求さんは黙って私の背中に乗っていた。
そもそも、このシナリオは「真実の歯車」と酷似している。
というより、ほぼ同じような、戦い、一つの街が軍隊によって陥没。
「………………っ!!!」
分かった。分かってしまった。私はその瞬間、阿求さんを突き飛ばした。
「きゃぁぁ!」
人間である阿求さんはそのまま重力に従って落ちる、飛ぶことなんて出来ない、はず。
それなのに、阿求さんは「黒い羽を生やして」飛んでいた。
「あっぶないですねぇ……」
「あんた……誰?」
「おやや?バレちゃった?」
私はふざけた態度をとる阿求さんの偽善者に向かって詠唱を始めた。
「岩符「ブロックレイン」!」
「手厚い挨拶だこと」
阿求さんの偽善者は降り注ぐ岩石を右手一本で張った結界で防いだ。
すると、"私の知ってる"阿求さんの姿はもうそこにはなく、「黒幕」の正体があった。
「稗田阿求っ……」
この異変の黒幕にして、「真実の歯車」の著者、稗田阿求だった。
「あら、気が付かれましたか?」
「それに、あんたは元々の阿求さんじゃなくて、何か取り憑いてるんだ」
「そこまで分かっちゃう?」
「気を操る能力を舐めないでよね」
最近、私が気づいたことだが気を操る能力は、割と何でもできた。心も読めるし、人の感情も操れる、行動も制限できるし、殺すことも出来る。しかし、私がそれをしないのは、その力が微弱だからだ。
心を読むのはあまりさとりと変化はないが、感情や行動の制限は力のない人間や妖精、下級妖怪にしか効果はない。ましてや、殺すことなんて出来ないのだ。
「中身は……怨霊か………」
無力な人間はどれだけの微弱な怨霊でも、取り憑かれてしまう。でも、今回の怨霊は違う。この強さは今までの比じゃない。
「あんたはセリカナちゃん達をどうやって操った?」
「簡単だよ?精神のコントロールはね。あんな可愛い少女に超強力な霊を流し込んだから、実力はある」
「………」
最低だ。何も知らないか弱い女の子に霊を流し込んで、あたかもセリカナちゃん自身が悪を働いているかのように見せて、幻想郷を崩壊させるつもりなのだ。
「あの軍隊は?」
「あいつらも同じ、外の世界の陸軍のヤツらに流し込んだんだ」
「霊が人間に入り込んでまでして、幻想郷を襲撃する理由は何?」
「………半分の目的は達成したんだよ」
意味有り気に怨霊は答えた。私はその答えに対して納得がいかず、首をかしげてしまう。
「どういうこと?」
「私達は「月の霊」。名も無き玉兎に私達は消されたんだ」
「名も無き玉兎って………まさか……」
「あぁ、セリカナが殺したあの兎さ」
「瑞乃がなにをしたっていうのさっ」
私の叫びに対し、怨霊は私を睨みつけた。それはまるで殺意むき出しの猛獣のような。そんな眼をしていた。
私が気づいた頃には阿求の手が私の首を絞めていた。
「あっ………がっ……」
「何をした?何も知らない覚り妖怪が知ったような口を聞かないで」
更に、力を強め、私は声も出せなくなってしまった。私が力強く腕を握っても阿求はびくともしない。
「あいつはっ……私たちを…宇宙へ放り投げたんだ。それも、1匹ずつ拷問をした後にね…」
「っ!?」
「そんなの、誰が許すの?あんただったら、笑って許せるの?」
「………」
何だ、この違和感は。
違う、何だか、これは違う気がする。
考えるよりも先に私は手が出ていた。
「嘘」
「っ!」
ガァァンっ!!と骨が当たる音がすると同時に阿求は吹っ飛んだ。私の膝蹴りが、頬に入ったのだ。
「な、なん、で……」
「さっき言ったでしょ、気を操る能力を舐めるなと」
「……」
「なるほどね。月面戦争か、怨霊は中立側だったのに、月側に攻撃されたわけだ」
阿求は諦めたように溜息をつき、先ほどの余裕を取り戻していた。
「そうよ、そんなの、怨霊への宣戦布告。でも、月面戦争ではダメージが大きすぎて反撃はできなかった。でも、今日まで戦力を整え、襲撃への作戦も考えて、襲撃したんだ」
「それで……人間に入り込んで身を隠した……」
「そういうこと」
「それでも、無関係な人を巻き込んでまですることなの?」
阿求に一歩近寄る。それを弾くように声を張り上げる阿求。
「仕方ないんだよ!月の奴らがここに来たなら、私はそれを殺そうとしたまで、だからセリカナに永遠亭を潰すように命令した。でも、軍を連れてきてしまったのは誤算だった、ここまでの被害はこっちも想像してないよ」
「………鈴仙さんと永琳さんは生きてる」
「っ!」
阿求の顔は絶望に染まったようなそんな顔をしていた。しかし、その顔を見れた私は安堵の息を漏らし、口を緩める。
「良かった。殺せなかった、つまり、セリカナちゃん自身、「殺すのをやめた」んだ」
「………人間がそんなこと……」
「出来る。セリカナちゃんの意識が残ってたんだ。怨霊の厚い壁で出来ている支配された意識からにじみ出た「本当」のセリカナちゃんの意思が現れたんだ」
「……どうやら、人間を甘く見ていたみたい。もちろん、あなたもね」
「そりゃどーも」
「なら、この体も必要ないわ。もっとも、あなたにバレた時点でだけどね。古明地しんり」
意味深な言葉を放った阿求に私は首をかしげた。しかし、説明する気は毛頭なかったらしく、急に阿求の意識が無くなった。
「なっ!?」
私は意識の消えた阿求が落ちるのを防ぐため、阿求に近寄り抱える。
「抜け出すのも簡単ね」
背後から聞こえる声はさっきの阿求の声とは全くの別物だった。阿求を抱えたまま、背後に振り返る。
そこにいたのは、黒いワンピースを身にまとい、常人よりも白くなった肌と銀色の髪。幽霊というのを醸し出していた。
「あんたが……この異変の黒幕の……」
「
「零羽………」
聞いたことはない。というより、幽霊らしい名前かと思いきや、可愛い名前があったみたいだ。
怨霊は人間や妖怪の怨念が死んだ後に具現化することだ。人間の名前があったって不思議ではないのだ。
「私が書き上げた「真実の歯車」。どうだったかしら?このシナリオ通りに進め、この後、セリカナ・クレセ・ステナミアには外の世界で自害してもらうつもりよ」
「ど、どうしてそこまで……」
「それが、私の見たい全てだから」
「…………納得出来ないね」
私は拳を握りしめ、唇を噛む。血の味が口の中でするが、そんなの関係ない。
瑞乃もこいつが手を加えたせいで死んだ。大切な友達、いや、家族とまで認識していた瑞乃を殺した。
鈴仙さんや永琳さんも傷ついた。
そして何より、幻想郷を傷つけた。
「罪は重いよ……零羽……」
私は怒りに身を任せ、強く零羽を睨みつけた。
そして、私の白いサードアイは白色がだんだんと濃くなり、黒く染まっていっていた。
まるで、サードアイ自身が人を殺すかのような殺意と共に。