司波家の長女は何をする?   作:孤独ボッチ

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 気付けば一年以上更新していないという暴挙。
 少しずつは書いていたんですけど…。
 覚えている人がいるか…?

 それでも付き合ってくださる方は、お願いします。

 


横浜騒乱編8

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 さて、お仕事を開始しないとね。

 私は達也と別れ、一人ゲリラという名のゴミを片付ける。そして、ゴミはあっという間に見付かった。ゲリラ戦とはいえ軍事行動を取っている訳だから、完全にランダムに動いている訳じゃない。敵の身になって考えれば、ある程度はね。

 私は、両手で握った刀を構えて急降下する。ゴミが五つに粗大ゴミ一つ。アームスーツという名の粗大ゴミの周りに、兵士という名のゴミが周辺警戒している。当然、急降下してきた私に気付き、粗大ゴミやゴミが銃を構えて発砲しようとする。

 私は獰猛な笑みを自分が浮かべているのを自覚する。

 銃弾のシャワーが浴びせられるけど、この程度の弾幕ならば切断を使用するまでもない。悉く刀で斬り落としつつ、高速で接敵する。まずは粗大ゴミをこの世から消す。紅い線から点が浮かび上がる。非常に楽しくなってきた。今頃になって止められないと察したアームスーツが腕を振り回すも、そんな巨体での大振りが当たる訳もないでしょうが。こちとら魔改造ムーバルスーツだよ?点を刀で一突きすると、搭乗員していたゴミごと粗大ゴミがこの世から消える。良きかな。その衝撃的な光景を見ても銃撃してくる努力は認めよう。そして、お掃除続行。舞うようにゴミの間を高速で飛び回り、紅い線をなぞるように斬る。まるで物みたいに破壊されてゴミが生ゴミと化して転がる。一丁あがり。

 私は次のゴミを探し…おっとっと。いかんいかん。るーしーさいもく、るーしーさいもく。あれ?違ったな。まあ、落ち着こうじゃないか。魔眼さんに影響され過ぎてる。クールダウンだ。これじゃ、格好つけたのが恥ずかしくなってしまう。

 沖縄の時みたいに、()()()()()なんて事は今はない。自己修復もキチンと仕上げてるし、今の私には正気を保つ為のアンカーが沢山いるからね。まあ、自己修復に関してはアレだけど…。

 深呼吸を一つして、改めて周囲を索敵。ネットは広大だわって感じだね。何故なら、紅い死の線が人間を浮かび上がらせてるから。人と物とじゃ、線の出来方が違うから分かり易い。あとは敵の判別だけど、これもある程度判別可能。敵と味方じゃ、お国が違うから同じ軍事行動でも異なる点はあるからね。お?会敵して戦ってる味方がいるな。応援に入ろう。結構いるし。

 私はそう判断すると、即座に飛行魔法を発動させ高速飛行する。

 紅い線が、そこら中に這い回っている街並みを、あっという間に飛んで行く。

 多脚戦車が二両と随伴している兵士が、ウチのダークヒーロー系ムーバルスーツを着た味方が交戦中だった。高性能なムーバルスーツでも、多脚戦車相手だと装甲がなかなか貫けない模様。それにしても、さっきのアームスーツといい、多脚戦車といいどうなってんの?原作のあのショボい直立戦車どこいったの?私の所為じゃないよね?タチコマ造ったからって、まさかそんな。まあ、そんなの後回しだよね。そんじゃまあ、行きますか。深景、行っきま~す!

 新手に気付いた敵の御一行様は、こちらにも銃弾のシャワーを浴びせてくるけど、その銃弾は不自然に床に転がった。多脚戦車の主砲までも同じだった。ちょっと主砲の弾が落ちた場所が宜しくなかったようで、敵の一人に直撃したけど敵だから良かろう。私は先程と同じに速度を緩めずに、敵の間を泳ぐように刀を振るう。ちょっとした足場を造り、空中でも鋭い踏み込みが使える。だから、斬り易い。紅い線をなぞるように斬る斬る斬る。私の通り過ぎた後には人であったものの残骸しか残らなかった。勿論多脚戦車もスクラップになっていた。高速で動く敵に砲塔なんて回して当たるかっていうの。

「白崎特尉。応援に参りました」

 残骸を背に味方に敬礼すると、味方がビクッと反応した。おい、今武器向けようとしたな?もしかしたら、この人達は沖縄にいたのかもしれない。偶に遭遇するけど、大抵恐怖が隠せてないんだよね。

 私は特にそれに反応する事なく、淡々と告げた。

「ゲリラ掃討任務を続行いたします」

 ビビってる奴等が再起動するのを待つのも面倒だった為、サッサと背を向けて飛び去る。

 

 プロの軍人相手にまで、心のケアなんて気にしていられない。こっちの方が必死だわ。

 

 

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 中条視点:

 

 私達は、出来る限り迅速に移動する事を心掛けた。ただでさえ、護衛の軍人さんや服部君達の負担が大きい。一刻も早くシェルターへ辿り着きたかった。

 コミカルな感じから少し不安のあったタチコマちゃん達も結論から言えば、物凄く活躍してくれて頼もしかった。でも、国防軍の人達の評価はイマイチみたいです。応援に来た変わったスーツを装着した軍人さん達は、すぐに変身ヒーローみたいな仮面で顔を隠してしまって表情は読み取れないけど、タチコマちゃん達にあまりいい感情を抱いていないのが、なんとなく分かった。高速弾を弾く装甲で盾になってくれるし、素早く敵を服部君達と連携して倒してくれるしで、本当に頼りになっているのに。市街地という事もあって周りには兵隊が隠れる場所が多くて、こっちは人数が多くて隠れられないから、丸見えの状態で警戒しつつ進まないといけない。タチコマちゃん達の索敵能力のお陰で大分楽が出来た。

 そして、地上からのシェルターへの入口が間近という時に敵の兵隊が現れてしまった。タチコマちゃん達より遥かに大きな戦車。随伴兵の射撃が始まり、タチコマちゃんが素早く私達の盾となって銃弾を弾き、軍人さん達が大型のライフルを構えて多脚戦車を狙う。

 多脚戦車の砲がこちらを機敏な動きで捉える。軍人さんは、そうはさせないとばかりに砲をライフルで狙おうとするけど、随伴兵がそれを邪魔してくる。すかさず服部君達が素早く多脚戦車に砲を撃たせまいと動いた。

 この場合は、どうすべき?援護?伏せる?邪魔になる訳にはいかないから、迷ってしまった。下手に物陰に隠れてゲリラに見付かって人質になったりしたら不味い。

 私の迷いなんて関係なく、事態は動く。

 桐原君の気合の籠った声と一撃、壬生さんの投剣が多脚戦車の砲を逸らす。

 でも、発砲は防げない。砲弾が発射される。建物に向かって。次の瞬間に砲弾が建物を破壊して、大きな瓦礫が壁のように私達の上に降り注いだ。

「皆さん!伏せて下さい!」

 廿楽先生が、両腕を高く翳したと思ったら瓦礫がアーチ状に停止する。ポリヒドラ・ハンドル。高度で分析力が求められる魔法。

「いいですよ!早く移動を!長くは持ちません!」

「皆さん!行きますよ!」

 私は先頭に立って進む。少しもたついた私の失敗を取り返す。落ち込んでいる暇はありません。

 だけど、後ろを窺った時に一部が遅れていた。

 安宿先生が誰かと揉めている。よく見れば、この前問題を起こした子・平河さんの妹だった。

 確か、見学に連れてきてたんでしたっけ。

 ああ、足が竦んでしまったようですね。無理もありません。私は、服部君に声を掛けて安宿先生の応援に向かおうとして、止まりました。安宿先生が強硬手段で抱えるつもりみたいですが、更にそこに手が伸びる。十三束君の手だ。

「何してるの!?立って!」

 安宿先生の手がそっと離される。それとは反対に平河さんは反射的に振り払おうとしてますけど、絶妙な力加減なのか痛がる様子もなく手を振り解かれる事もなかった。

「急いで!」

 平河さんが引っ張られるような格好で、こちらに追い付いてくる。

 いや、安宿先生。そんな羨ましそうに見てないで下さい。

 そして、私の向いた足の行き場がありません。

「中条!何をやってる!」

 服部君の声と共に、私の手が掴まれる。それは彼の手でした。なんと言うか…私、助けに行こうとしたんですが、逆に邪魔になっていたって…。少し悲しいです。

 瓦礫を次々と生徒が潜り抜けていく。だけど、最後に平河さん達が潜り抜けようとした時、廿楽先生の魔法の効果が弱まり、瓦礫が動き出した。

 咄嗟に動こうとしたけど、その前に青い影が走った。

『いいですよ!通って下さい!魔法使ってる人も限界ですよね?』

「ああ、済まないね。それじゃ、私も少しづつ」

 廿楽先生が冷汗塗れの顔で、辛うじて笑顔で答えた。滑り込むようには少し下がった瓦礫をタチコマちゃんが支える。

『流石に、これ、あんまり持たないんで早くお願いします』

 タチコマちゃんが悲壮感の全くない声でいうと、後ろから十三束君に手を引かれた平河さんが姿を現す。結構なスピードが出てましたね。

 廿楽先生が脱出を始めた。

「どうして、助けてくれたの?」

 恥ずかしさからか平河さんがそんな事をいった。

 だけど、口?を開いたのはタチコマちゃんが先でした。

『壊れたいの?でも、人間って完全に壊れたダメなんじゃありませんでしたっけ?僕達は構造解析されちゃうの別に嫌じゃありま…どうなんだろうな?』

「「……」」

 平河さんと十三束君がなんともいえない表情で黙り込んじゃいました。

「はっ!早くシェルターへ!」

 私は逸早く我に返って、生徒会長らしいことをいいました。

 まあ、結局は服部君に遅いっていわれちゃいましたけど。

 

 ええ、分かってます。アームスーツに対処してる人達に悪いってことは。すいません…。

 

 

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 真由美視点:

 

 私達も地下のシェルター入口へと到着した頃には、辺りの惨状は酷いものだった。多脚戦車の残骸と敵ゲリラの死体が酷い惨状で転がっていた。入口となる広場は、多脚戦車の攻撃により建物が半壊し瓦礫が散乱し、更に激しい戦闘があったのか入口は破壊され入れないようになっていた。護衛の軍人がいた筈だけど、辺りには見当たらない。一緒に避難したのか、それとも…。惨い遺体を見て吐き気を催すこともできずに呆然とする。

「多脚戦車まで持ち出しているなんて…」

 響子さんが敵戦力が予想外だった所為か、苦い表情で思わずといった感じで呟く。辺りを見る限り激しい戦闘があったようだし、気持ちは理解できる。それとこんな物を持ち込まれたことにも苦いものを感じる。

 そして、巨大な何かが広場に姿を現した。

「アームスーツ!?」

 人型の兵器が2基接近してくる。この損害を知り応援に駆け付けたことは、容易に想像できる。シェルターへ攻撃を仕掛けるだろうことも。そこに居合わせた私達に対しても。何せ、仲間の仇候補だもの。

「この!」

 千代田さんが我に返り怒りの籠った声で2基の人型兵器・アームスーツ?を睨み付け、魔法を遣おうとする。

 それに私達は慌てた。彼女は、九校戦のバスでのことがある。彼女の得意な魔法を遣うのではと危惧してしまった。流石にあれから成長しているから失礼だとは思うけど。

「花音!地雷源は!」

 五十里君も私達と同じ危惧をしたようで声を上げる。ここで地雷源なんて遣ったら、シェルターがどうなるか容易に想像できる。

「そんなの遣う訳ないでしょ!」

 やっぱり成長してるわね。でも、まだまだよ。

 彼女が魔法を行使する前に、私と深雪さんの魔法が発動し、アームスーツを氷漬けにした直後に私の弾丸が蜂の巣にした。

「真由美さんも深雪さんも流石ね。手助けもできなかったわ」

 響子さんは苦笑いでそういったけど、ある程度合わせたとはいえ、深雪さんの圧倒的な魔法のスピードを見せ付けられて私こそ苦笑いだったんだけど。

 深雪さんの方は微かに笑みを浮かべて、少し頭を下げて礼をいってた。様になるわねぇ。

「……シェルターへ行った先輩達は無事の様です。シェルターの内部も目立った損壊は見られません」

 吉田君が精霊魔法を駆使して、シェルターを探ったみたいね。取り敢えず、全員無事でよかったわ。

「吉田家の方がいうのですから、間違いないでしょうね。ウチから出した護衛は居ますか?」

 そう、小さい思考戦車が護衛するっていっていたわよね?

「いえ、少なくともシェルターにはいないですね」

「どこに行ったのかしら?」

「それは置いておいて、どうします?」

 思考戦車のことで頭を悩ませている響子さんを、千葉さんが思考を切るように鋭い声音の発言をする。でも、流石というべきか、響子さんは全く動じることなく千葉さんに視線を向ける。

「アームスーツまで出てきたとなれば、事態は急を要します。野毛山の陣内へ避難した方が良いでしょう」

「しかし、敵の攻撃目標になる恐れがあるのでは?」

 響子さんの言葉に、将来は国防軍入りを考えている摩利らしい疑問を口にした。でもね。

「摩利、今侵攻してきている敵は、戦闘員・非戦闘員なんて区別してないわ。寧ろ、軍と別行動をとる方が危険よ」

「では、七草先輩は野毛山に避難すべきと?」

 摩利に心酔している千代田さんが、少し不満そうにしているのを横目に五十里君が私の意志を確認してくる。

 それも悪くはない。私達だけなら。

「逃げ遅れた人達の為に、輸送ヘリを手配するわ」

 私は、入口の潰れたシェルターの入り口前で、途方に暮れている人達を見ていった。しかも、徐々にその数は増えていた。この人達を護りつつ野毛山へ入るのは、手が足りない。護り切ることができない。

 千代田さんがハッとしたように、視線を集まった人達へと向けて、恥じるように下を向いた。

「まずは残骸を片付けてヘリの発着場を確保しないと。摩利、みんなを連れて響子さんと行って」

「お前が一人で残るというのか?」

 一見冷静に反論してるけど、これは怒っているわね、摩利。でもね、十文字君程じゃないけど、私も十師族。務めは果たさないといけない。それに全員を無事に率いて避難させられるのは、摩利ほど適任はいない。

「これも十師族の義務よ。私達は十師族の名の下で、様々な便宜を享受してる。貴族みたいにね。だからこそ、こういう時には力を尽くさないとね」

 私は最後だけ摩利を宥めるように、口調を緩めていった。

 摩利は、私の決意とみんなを頼みたいという願いに気付き、黙り込んじゃったわね。

「それなら、僕も残らないといけませんね」

 五十里君が、ここで突然そんなことをいい出した。ああ、私の理論だと、そうなっちゃうわよね…。

「十師族程ではないにしろ、僕も百家として政府から便宜を受けている身ですから」

「私も百家なんだから当然、啓と一緒に残りますよ!」

 五十里君の言葉にすかさず千代田さんが乗る。

 いや、そうなっちゃうのは分かるけど、戦力を削れないでしょう?

「となると、一応千葉家の私も居残りってことね」

 千葉さんが面白そうに二人の言葉に乗っかる。頭が痛いわね。

「私も残ります。お姉様やお兄様が戦っておられるのに、一人逃げ出すことなどできません」

「殆どのダチが残るっていってるのに、俺だけ避難ってのは、どうにも格好がつかねぇし、残らせて貰いますよ」

「当然、私も残ります!絶対にです!」

 深雪さんの反論も許さないような声音に、ちょっと嫌な汗でちゃったわ。それに更に乗っかる形で西城君、光井さんまでもが残ることを表明する。

「会社のヘリを手配するように、私も父に連絡します」

 北山さんの断固たる言葉に、摩利が笑みを浮かべてリンちゃんを見る。

「私達だけ避難するという訳にはいかないな、これは」

「そうですね。真由美さんを一人で放り出すのも不安でしたし、丁度いいですね」

 ここまで何も意見をいわなかったリンちゃんが、微かな笑みを口元に浮かべていった。いや、普通に酷くない?

 私は内心を吐露するように重い溜息を吐いた。

「全く、みんな馬鹿ねぇ」

 言葉まで漏らしてしまった。十文字君だったら、ポーカーフェイスを保ったんだろうけど、私には無理。

 仕方がないから、私は響子さんを見る。

「お聞きの通りのことになりました。すいません。折角の厚意を…」

 私は頭を深く下げて謝罪した。

 響子さんの方は、面白がっているみたいで、残るっていったメンバーを意味深な視線を向けてる。その視線を私と深雪さん以外のメンバーが明後日の方へ視線を逸らして目を合わせようとしない。

「頼もしいご友人達ですね。それでは部下を護衛として残していきますので…」

「いや、要らんよ」

 響子さんが一転して真面目な顔で話し出した言葉を遮るように、後から現れた男性が割り込んでくる。

「和兄貴?」

 千葉さんが少し嫌そうな顔で声を上げる。どうも声を掛けてきた人の後にいる男性が千葉さんのお兄さんみたいね。

「源田刑事」

 響子さんが声を掛けてきた男性と知り合いみたいだけど、仲がいい訳じゃなさそうね。少し響子さんが警戒しているように感じた。

「軍は軍の仕事を、我々は我々の仕事をする。市民の安全を守るのは、我々警察の仕事ですよ。なんで、そっちは宜しく頼むぜ?」

「分かりました。では、ここはお任せ致します」

 響子さんは源田刑事?の言葉に素直に従い、部下を引き連れて去って行った。最後に私に申し訳なさそうな顔をしてたけど、刑事さんのいうことは尤もだから文句はない。それに残ると決めたのは私達なんだから。

 源田刑事の後にいた千葉さんのお兄さんは、去って行く響子さんを見てホゥっと見惚れていた。

「いやぁ、良い女だねぇ」

 千葉さんのお兄さんの思わずといった感じで漏れた言葉に、源田刑事が無言で拳骨を千葉さんのお兄さんの頭に落とした。結構、凄い音したわよ。痛そう。

 そして、千葉さんは、ざまあみろといわんばかりにニヤニヤと悶絶するお兄さんを眺めていた。

 

 結構、危険な状況なんだけど、緊迫感ないわね。

 

 

 

               4

 

 私は、ちょっと敵を探して無に帰して、味方にビビられるを繰り返しておりました。だって、天狗さんにそう命じられたしさ。うん、今のところ心の方は大丈夫?

 ビビられまくってる私は、どこかの部隊に随伴して転戦という訳にもいかないから、飛んで危険に陥ってたり、健気にも私に雑多な物理兵器だとか魔法とか飛ばしてくる敵さんを無に帰すしかない訳。

 うん?適当に飛んでたら、シェルターの入り口まで来てたみたいだね。だって、オタ達がいるもの。うちの軍とタチコマが頑張って、みんなをシェルターに押し込んだみたいだね。地下通路の入り口付近に陣取っていたテロリストもカンゾウ君達に制圧されて入口を他の避難者と一緒に入口を再度封印したみたいだし、こっちは大丈夫そうかな。となると友軍を優先しないとね。

 あの敵の多脚戦車を倒そうとしてるみたいだけど、苦労してるみたいだね。タチコマのチェーンガンのロックを解除してやればいいのに。上手く当たれば、それなりに効くよ?

 全く仕様がないなぁ。今助けに行くぞ!

 心の中でカーティスの人みたいに気合を入れると、急降下して多脚戦車に突っ込んで行く。

 多脚戦車の弱点。それは、真上に砲塔が向かない。機銃も同様。搭乗者が取り外して、どこぞの空賊の親玉みたいなことすれば話は別だけど。殆ど歩兵を始末をしている状態では、多脚戦車は私の攻撃を防ぐことはできない。

 紅い線をなぞるように斬ると、多脚戦車があっさりと切断される。搭乗者ごと。

 切断された多脚戦車が崩れると同時に、私は着地を決める。

「…援護、感謝する」

 オタ達を護っていた軍人の指揮官と思しき人物が、私から距離を取りつつ礼を述べる。礼をいう距離じゃないでしょ、それ。

 私は大人な対応で敬礼で応える。

『特尉!任務遂行しましたぁ~』

 タチコマ達がわらわらと寄って来る。機械の方が味方っぽいな?思わず眼から汗がでそうになるよ。嘘だけど。

 空からホバリング音が聞こえてくる。戦闘ヘリまででてるの?この国、武器持ち込み放題過ぎないかな?原作でも、ここまで持ち込まれてなかったよ?寧ろ私が引っ掻き回したせいでありませんように。

 私は溜息を吐くと、タチコマ達に視線を向ける。当然の如くに見える紅い線。落ち着こう。暫く深呼吸を繰り返す。

「タチコマ達は連れて行きますが、構いませんか?」

 私は精神を落ち着けて、指揮官に確認を取る。まあ、半ば貰ってくんで宜しくって感じだったけど。

「ああ、貴官が運用すればいい」

 はい、許可出ました。私は御座なりに敬礼してタチコマ達に向き直る。

「それじゃ、あのヘリ墜とそうか」

『了解しました!』

 タチコマ達がヤンヤと騒ぎ出す。君等壊れる可能性高いっていうのにテンション高いね。

「いい?常にワイヤーで移動し続けること!地上を走ってると空対地ミサイルにロックオンされるからね」

 トリガーハッピーの人か、世紀末な戦闘狂並みにテンション高く了解するタチコマ達。

 うん、まっいいか。私もいることだし。

 タチコマ達が一斉にワイヤーで蜘蛛のアメコミヒーローな動きで空中に飛び出して行く。ヘリと同様の高度まで達すると、ガトリングを射撃。貫通しないまでも装甲に凹みができる。どうせ、元に戻る形状記憶合金的なもんだろうけど、注意は引ける。これこそが私が求めていた彼等の仕事。

 私は飛行魔法で素早く接近を試みる。流石に気付かれてヘリのガトリングが火を噴く。だけど、小回りが利くのはこっち。ガトリングを掻い潜り、今度は私が囮を務める。ヘリは私とタチコマどちらを脅威と見るか。まあ、私の方か。派手に動き回り目を引く。ヘリが巧みにワイヤーアクションで攻撃するタチコマを牽制しつつ、私にガトリングの砲口を向けて射撃してくる。けど、そんな攻撃には当たらない。高速飛行で線の途中に浮かび上がる点を刀で穿つ。ヘリが消え、搭乗者が落下していく。搭乗者はパラシュートを持っていたみたいだけど、高度が足りないんじゃない?あっ!そんなこと心配する必要なかったか。タチコマにとどめ刺されてるよ。

 地上へと一旦降りた私は、同じく降りてきたタチコマ達を迎える。

「ご苦労様。なんかみんなタチコマ使いたがらないみたいだし、私と行動、かな?」

『『『『『『ほ~い』』』』』』

 タチコマ達が戦闘時と一転してユルい感じの返事に戻っている。いや、テンション違わない?これで終わり感出さないでくれる?

 それにオタ達もシェルターで安全確保が済んでるみたいだし、タチコマ連れて行っても問題なさそうだね。

 地下のシェルターを見ていた私の眼に、学校の知人達の赤い線が飛び込んでくる。少し切れ込みをいれたくなる。そんな誘惑に駆られる。思わず手が動きそうになる。

『あの~』

 だが、間の抜けた声が私の耳に飛び込んできたために、手が止まった。タチコマの一機がアームをフリフリして私に声を掛けてきたんだ。

『さっきのヘリなんですけど、僕らのチェーンガン使えばもう少し楽に勝てたんじゃないですか?』

「……」

 うん。忘れたわけじゃないよ。ちょっと悪乗りしてヘルシング的な弾頭が少し特殊なの搭載だったことだって覚えてる。説明以上。

 

 衝動は少し遠のいた。その隙にサッサと離れた方がいい。

 

 

 

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 将輝視点:

 

 ジョージ達がバスのタイヤのパンクを修理する間、敵を釘付けにする仕事は全うしている。だが、予想外が一つ。いや、予想されたことか…。

 それは、味方のこと。バスを守る為に戦う選択をしたのは、流石は尚武の三校と思ったが、実戦経験というと自分と奈津くらいしか経験者がいなかった。ジョージも訓練に参加しているから大丈夫だ。だが、ほかの生徒は実戦に耐えられなかった。嘔吐する人間が殆どで、戦闘不能者が続出した。確かにウチの爆裂や奈津の寸勁は、人間に使用すれば惨たらしいでは済まない死に様になる。これは予想しておくべきだった。

「一条!もう少しグロい方法じゃないやり方ないのか!」

 先輩の一人が、何を馬鹿なといいたくなる発言をしたが、俺は視線も向けなかった。戦場に集中するためだ。奈津に至っては返事すらしていない。指揮は俺の領分になるからだ。

「先輩。下がっていて下さい。バスの防御を頼みます」

 だからこそ、俺は敵だけでなく味方にも目配りする必要がある。俺が敵を屠る度に味方の戦意が低下していくのが分かった。ただ邪険に邪魔扱いするのは不味い。本音をいえば、そんな覚悟で戦場にしゃしゃり出ようとするなといいたいが、そんな真似をすれば決定的な戦意喪失に繋がりかねない。先輩達の顔を立ててやらなければならない。これ以上、邪魔されないために。

 

 俺は顔色一つ変えずに敵を粉砕していった。周りの視線を完全に無視して。

 

 

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 真由美視点:

 

「ざまぁ!」

 千葉さんが実のお兄さんに向かって嘲る。まあ、困った親族がいるっていうのには共感しないでもないけれども。

 流石に千葉さんのお兄さんがムッとしたようで、口喧嘩になっている。流石に状況を見てやってほしいのだけど。

「あの、それで寿和さんは何故ここに?」

 いつまでも状況が動かないのに焦れたのか、吉田君が果敢にも火中の栗を拾いにいった。

「勿論、愛する妹を助けるためさ!」

 ようやく本題に入ってくれた吉田君に千葉さんのお兄さんが件の愛する妹を無視して吉田君に満面の笑みで答えた。

「どのツラ下げてそんなセリフいってんのよ」

「こらこら、ツラなんて下品表現はよしなさい」

「はっ!今更なお言葉ね、お兄様?」

 千葉さんの逆鱗に触れた言葉だったのか、先程までとは違って底冷えするような冷たい声でいった。

 お兄さんが若干怯んだ顔をしたが、すぐに気を取り直して溜息を吐いた。

「助けに来たのは本当だ」

「女の尻を追い掛けて来たのも事実だけどな」

 お兄さんの言葉にすぐさま同僚の刑事さん?が、台無しにする言葉を発したものだから、千葉さんの目が更に冷気を帯びる。

 お兄さんが大きく咳払いして、同僚の刑事さんを睨む。

「仕方ないな。助けに来た証拠を見せてやろう」

 お兄さんは背負っていた二つの刀袋のうち一つを千葉さんに渡す。千葉さんはそれが何か既に分かっているようで、目を見開く。その目は驚きと喜びに満ちていた。

「分かったようだな?こんなこともあろうかとってやつだ」

「実際、ことが起こった時に慌てて本家に届けさせたんだけどな」

「源田さん!」

 色々と台無しにされて、我慢の限界だったのかお兄さんが噛み付く。

 それでも千葉さんは、そんな遣り取りを無視して刀袋を奪い取る。

 その刀袋は、見るからに千葉さん位の長さはあろうかという大太刀が収められているだろうもの。

「大蛇丸…よく持ってこれたわね」

「この緊急事態だぞ?山津波は、ウチで使えるのはお前だけだ。これはお前の刀だ。そうだろ?」

 感動に打ち震えている?っていう感じの千葉さん。千葉さんの言葉は、おうちの複雑さがよく分かるわね。

 微笑ましそうに千葉さんの様子を見守るお兄さん。

「お前は、やっぱり千葉の娘だよ。お前や修次がどう思おうが、親父が何を考えていようがな」

「今回はお礼をいっとくわ」

 千葉さんは、サッとお兄さんに背を向けて歩き出してしまう。照れ隠しね。

 お兄さんも苦笑いして、その背を見ていた。

 

 同僚の刑事さんだけは、一連の遣り取りに興味を示さなず、遠くの空を睨んでいた。

 

 

 

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 摩利視点:

 

「で?何か分かった?」

 アームスーツに搭乗していた兵士二人は無事だった。あれだけ派手に攻撃したにも関わらず、軽い凍傷くらいで済んでいる。真由美と深雪君の絶技故だろうが、味方ながら恐ろしい腕だ。

 ならば、せめて尋問くらいはと買って出たが、兵士は一言も口を開かない。香水も使ってみたが期待した効果は得られなかった。もう片方の兵士も源田刑事が尋問していたが、ダンマリを決め込んでいた。

「さっぱりだ。流石に何も話さないな。こんなことならもっと強い香水を準備して置いたんだが…」

「おいおい、お嬢さん。その用途は訊かないがね。我々に配慮して貰えると嬉しいね」

 私の危ないボヤキに、源田刑事が捕虜から目を離さないまま釘を刺してくる。

 真由美も少し目が泳いでいる。今回の関本の尋問の条件を絡めて慰めてくれようとしたんだろうが、源田刑事の言葉に口を噤んだんだろう。

 私としては、このまま拷問に移行したいが、この刑事は目こぼししそうにないな。

 私の危ない考えを察したのか、真由美が心配そうにこちらを見ている。分かってるさ。

「…少し頭を冷やしてくる」

 張り詰めているものを吐き出すように溜息を吐いてから、私は捕虜から離れた。捕虜は色々な方法で監視されているんだから、離れて大丈夫だろう。

 その場を離れようとして、私は足を止めることになった。

 源田刑事が突然三段警棒を伸ばして振り抜いたからだ。

「さっきから何やら飛び回ってると思ってたが、ようやくちょっかい出す気になったかい」

 私は地面に何かが落とされた煙を上げて消えたのを目撃した。何かの魔法、古式魔法の類か。それを叩き落としたのか、この男。

 源田刑事の言葉に応えるように、軍服姿の男がゆたっりとした足取りでやって来ると、不敵な笑みを浮かべた。

『ほぅ。俺の造り出した獣が見えるのか。姿を見せないタイプだったんだがな』

『ウチの剣の師匠は、勤勉でね。見えざるものを斬るってもんから邪剣みたいなもんの仕組みまで研究して、破れるように精進してるお人でな。精霊の類に近いか?』

 流暢な言語能力を披露する源田刑事に吃驚させられる。寿和さんも何をいっているかわかっていないようなのに。

『いい眼だ、といいたいところだが、違うな。解説はしてやらん。ただ死ね』

 その言葉を合図に軍服に分厚いコートを纏った男の影から黒い獣が次々と湧き出すように現れる。ゲリラ連中とは明らかに異なる。

「気を付けろ!見えない奴もいるぞ!」

 源田刑事の鋭い声が響く。次の瞬間には空中に青白い炎が上がり、何かの断末魔が辺りに響く。

「見えない方は任せて下さい!専門家の端くれですから」

 吉田が呪符を構えて柴田を庇うように前に出る。ならば、我々の動きは決まったな。

 真由美と深雪君の魔法が湧き出るように現れる獣を撃ち抜き、凍らせていく。だが、一向に減る気配はない。術者に焦りもない。

 寿和さんが、二人の魔法に目がいっている間に音もなく距離を詰めていた。術者が緩慢な動きで寿和さんを見た時には、既に間合いに入り込まれていた。気合一閃で寿和さんの刀・雷丸が閃光の様に振り下ろされる。

 術者は避けるそぶりも見せずに真っ二つになったが、術者が生み出した獣が止まらない。真っ二つになった身体から次々と獣が飛び出してくる。どうなってる!?術者が他にいるのか?そんな疑問が私の他にも抱いているのが分かる。

 真っ二つになった遺体が起き上がり身体が再生するように、一つに戻った。戻った術者は笑みさえ浮かべていた。

「どうなってやがる?」

 源田刑事の冷静な声が酷く響いた。

「この人…人じゃありません」

 柴田が震える声で、絞り出すように告げる。確かに、人間じゃないだろうな。だとすると、九校戦に引き続きパラサイトが現れたのか。いやに縁がある。有難くない縁だが。

『お前さん。バケモンになったのかい?』

『失礼なことをいうな。より高次元な存在へと進化したのだ。あんな連中と一緒にされたくないな』

『まあ、どっちでもいいがね』

 どちらも化物であることには変わりがないと、語外に源田刑事が匂わせたが、向こうは意にも介さない。

『では、そろそろ片付けるとしよう』

 再び影から獣達が溢れるように出てくる。倒した数もそれなりの筈だが全くもって減った様子がない。寧ろどんどん湧き出てくる。軍服の男が腕を振ると、一斉に獣が襲い掛かってくる。

 真由美や深雪君の魔法がすかさず繰り出されるが、先程と違い俊敏に避け、更に猫のように魔法の弾幕をすり抜けていく。西城が雄叫びと共に二人を護るように飛び出す。エリカも影のように西城と共に走る。

「この!」

 花音が地雷源を使うが、数匹の足止めをしたのみで、獣が流れる川のように地雷原を避けて襲い掛かる。

 西城が薄羽蜻蛉を展開する。エリカが教えたのか…。西城の粗削りだが、力強い斬撃が獣を斬り裂くが数が多い。西城の腕や足に獣が噛み付くも、西城は意にも介さずに剣を振るい、噛み付いた獣を振り解く。エリカが西城の陰から飛び出すように大蛇丸を振るう。見事な連携を披露した。

 だが、侵攻の勢いが一向に緩まない。刑事二人と西城・エリカそして私と前衛が豊富にも関わらず退けるどころか、ジリジリと後退を余儀なくされていた。

 そして、遂に五十里が捕まった。五十里は花音や真由美達距離を置いて攻撃していた後衛と前衛を繋ぐ中盤を支えていたが、激しい攻勢に前衛が抜かれだした。花音も五十里を護っていたが、対応の限界がきた。五十里の脇腹に狼のような姿の黒い獣の牙が食い込む。

「啓!」

 花音の悲鳴のような声と五十里の苦悶の声が響く。五十里へと完全に注意が逸れた。獣はそれを見逃さなかった。

「馬鹿花音!今は…」

 私は勿論、他の面々も助けが間に合わない。獣が花音に一斉に飛び掛かった。花音の顔に恐怖が浮かぶ。五十里を護れずに死ぬ恐怖に。

「お兄様!」

 深雪君の声がやけにハッキリと聞こえたと思ったら、目の前から獣が文字通り煙のように消えた。なんだこれは!?深雪君の視線の先を無意識に追ってしまう。そこには、黒い軽鎧を組み合わせたスーツを着用した人物が見覚えのあるデバイスを握り締めて浮いていた。

 

 まさか、達也君か。 

 

 

 

 

               8

 

 達也視点:

 

 俺は常に深雪と繋がっている。深雪の危機には早々に気付いていたが、流石に瞬間移動はできない。もどかしい気持ちを抑えつつ、攻撃を加えてくるゲリラを始末し全力で向かう。

 見えた。敵を確認。これは…厄介な。

「お兄様!」

 深雪の声と同時に、敵の分身体ともいうべきケダモノを片端から消滅させていく。全力で深雪に降り掛かる火の粉を払う。

 俺はゆっくりと降り立ち、深雪を護るついでに全員を庇う位置に立つ。精霊眼(エレメンタルサイト)で敵の正体は分かっている。俺でも殺せなくはないが、()()()()()()()。今目の前にいる敵を殺すには、獣を含めた術者を一度に殺さなければならない。そして、当然の如くに数体安全圏内に置いてある。ある意味、不死といえるかもしれない。切り札となる魔法を遣いさえすれば理論上殺せるが、アレには軍の許可がいる。それ以前に被害範囲が流石に許容範囲を大きく超える。軍も許可を出さないだろう。自前で使用する術がない訳ではないが、今すぐは無理だし繰り返しになるが被害が大き過ぎる。内心で歯噛みしていると、深雪から声が掛かった。

「お兄様。アレの正体は分かりますか?どれ程攻撃しても、効果がありません」

 正体は察せられる。実際にこの眼で見ることになるとは思わなかったが。

「我が国風にいえば、天狗ということになるだろうな」

「天狗だと?」

 俺の言葉に、刑事の一人が胡散臭いことを聞いたと言わんばかりの声を上げた。深雪の眼が鋭く光る。深雪をこれ以上不快にさせる訳にはいかない。今は味方なのだから、戦力を削るのは望ましくない。

「一般的には仏僧の堕落した姿とされているが、修験道とでも結び付いたのか我が国では、天狗は堕ちた仙人だといわれている。そして、仙術には禁呪法も幾つか存在していると聞いた。その末路がアレだ」

 それを教えてくれたのは、姉さんだ。風間大佐の異名を聞いた姉さんが、忍術使いなのに天狗とは、これ如何にといっていたのが印象的だった。

 実際見てみれば、ただの化物になっただけだな。俺もよく化物呼ばわりされるが、コレよりマシだろう。

『末路とは馬鹿にされたものだな』

「日本語が分かるなら、最初から喋れ。面倒だ」

 理解しているのに、分からないないフリをしていたようだ。 

『下賤な言葉など使わんよ。そろそろいいかな。摩醯首羅(マヘーシュバラ)。貴様を葬り、私こそが完成された存在であると証明してくれる』

 俺は返答しなかった。随分と鬱屈したものを抱えているようだが、俺には関係ない。やることをやるだけだ。返事の代わりにシルバーホーンを構える。

 姉さんには、そっと力を貸してくれるよう頼んだ。こちらが頼ってくれといった手前断腸の思いだが、被害を抑えるためには最善手だ。

 奴は待っていたように、影から獣が溢れ出し、こちらに牙を剥き走り出した。さながら黒い川だ。だが、俺の眼は、奴の攻撃を捕捉できる。姿を消せるタイプも混じっているようだが、問題ない。問題は、この的の数は本気で対処する必要があるという点だ。それでも足りていないが、俺に焦りの感情は今は浮かんでこない。護るべき深雪が傍にいる以上、手出しはさせない。それが例え外法使いの天狗であったとしてもだ。

 嫌らしい笑みを浮かべて獣を嗾けてくるが、俺は淡々と処理を実行する。深雪の援護もあり、どうにか凌ぎ切るしかない。そう、凌ぐだ。

 他の面々も援護に加わる。だが、勢いは衰えることがない。

 だが、その気力勝負は唐突に終わりを告げる。刃が銀光の光の尾を引いて獣を突き刺さったことで。

 

 最強にして最悪の切り札が到着した証だった。

 

 

 

 

               9

 

 私はタチコマ達を引き連れ、索敵をしていた。私は空からでタチコマはアメコミヒーローごっこをしながらって違いはあったけど。

 その時、非常に珍しく達也のSOSを感じた。

 よし、お姉ちゃんが今行くぞ。敵は全てぶっ殺して…いや、助けに行くよ!

 飛行魔法で高速飛行。

『ああ~!待ってください~』

 うん?何か聞こえたような?そして、何かを忘れたような?まあ、こういうのは思い出そうとすると思い出せないもの。次行ってみよう。

 そして、SOSの理由はすぐに判明した。

 おやおや、良い実験台がいるじゃありませんか。まだ試してなかったんだよ。仙人殺すの。まあ、あれは外法に手を出した紛い物みたいだけど、敵だし達也達に手を出す不届き者だし始末するのになんの躊躇いもない。

 手始めに、右手の刀を弟に手を出そうとしてるワンコロが視界に入った瞬間に投擲。紅い線上に浮かぶ点に吸い込まれるように突き刺さると消えた。

 敵さんがビックリしてるよ。そりゃそうだよね。あの紛い物の術式でも、獣全て一度に殺し尽くさないと死なないようにできてたのに、()()()()()()()()()()

「姉さん。済まない」

 達也の珍しいといっては悪いけど、申し訳なさそうな様子に私は達也の隣に行き、頭を軽く撫でてやる。

「勘弁してくれ」

 いきなり素で返すなや。紅い線斬りたくなるわ。

『貴様、何をした』

「交番行って聞いてごらんなさいな」

 私は、味方への挨拶を抜きにして、実験台へと答えを返した。地面に突き刺さった刀を回収して構える。

 何やら、後ろの人達がポカン状態だが、致し方ない。悪いけど、実験の方が今は優先だ。

「さて、実験に付き合って貰おうかな」

 実験台は不快気に顔を歪めたけど、何もいわなかった。無言で獣に指示を下す。私を殺せと。

 いや、しかしこの実験台、ネロの劣化版に見えるのは気のせいでしょうか?まあ、殺すけど。

 だけど、残念。全部見えてるんだよね。お前が、どこに自分の命たる獣を数体隠している場所も。お前と繋がってるんだから、一目瞭然だ。姿を隠していようが、存在する以上紅い線が教えてくれる。点が壊してくれる。

 私は二刀を手に襲い来る獣を斬り殺す。一斉に飛び掛かってくる獣達が雲霞の如く攻め寄せる。私は僅かにスペースをこじ開けて身体を滑り込ませ、獣の紅い線を縦横無尽に斬り裂き殺す。数が多いお陰で黒い塊で一つに見えてくる。どれも元は同じ命。増やそうが無意味どころか、こちらは削りたい放題。どこを斬ってもよし。ちょっと努力して刀を速く振る必要があるのが面倒だが、普段の素振りに比べれば大したものじゃない。無理矢理殺しまくってこじ開けた隙間に滑り込んでくると予想していた獣の顎が目の前に飛び込んでくるが、私は踏み込みと共に脚に力を籠めて蹴り上げる。爪先が点を抉る。獣が上に跳ね上がられると同時に消滅。思わず笑みが浮かぶ。脚を上げて踏み込みが遅れると判断したのか、獣が襲い掛かってくるのを蹴り上げた脚を引き戻すと同時に踏み込みとする。二刀を振るう。徐々に醜い獣の包囲が薄くなっていく。ダメだね。もっと強いの造らなくっちゃ。そんなに弱いといくらだって斬り殺せるよ。血の臭いすらしない。ただこの世から消えるのみ。一方的に殺戮していく。血が出ないのは、後ろの子達のメンタル的に有難い。漸く後ろから最初に討ち漏らした獣が襲い掛かるが、無駄だ。ノールックで刀を振るい、身体を足捌きで回転するように運ぶ。銀閃が籠の目の前後左右上に走り悉く沈黙。

 徐々に手持ちが減り甘くなった攻撃を余裕で避けつつ、刀を迷いなく速度を落とすことなく振るう。いや、速度は上がっていっている。力を使えば遣うほどに、鋭さも増していく。それに反比例するように、自己修復術式の効きが悪くなっている。自力での精神の踏ん張りも駆使して耐える。繋ぎ止めるアンカー頼り。大切な人達を殺人の快楽で忘れないようにする。

 まだ、どこか余裕を残している実験台の顔が気に入らない。死なないとまだ思ってる?そろそろ面倒なとこにいる奴を始末しとこうか。

 おんや?攻勢が緩んできたけど、どうしたのかな?とか思ったら、実験台がビビったように後退りした。顔には出さないようにしてもビビりは隠せなかったのね。まあ、こんな詰まんない禁呪に手を出すくらいだから、ビビりに決まってるけど。

『後退!?この私がか!?』 

 思わず笑ってしまった。だってさ、ネロの劣化版だと思ったら台詞も同じような感じのこといったんだよ?笑うでしょ。

 これは、例の台詞をいうチャンス到来ということでいいのでしょうか?これはいよいよテンション上がって参りましたよ。

 本当は、サッサと実験だけして終わらせようとしたけど、予定変更。君のお笑いセンスに免じて付き合って差し上げましょう。

 眼で命というパスを辿っていく。あとは千里眼でその獣を捕捉。実験台の保険に通じている紅い線に向けて刀を突き刺す。パスを断ち切り、切断の魔法で消える前に演出として殺す。安全な場所にいる獣がバラバラになるのを眺め、千里眼を切る。

『なんなんだ!?貴様は!』

 いやいや、そこは大物感保っておかないと。ネロを目指すんだ!無理か。これだから劣化版は。

 

 でも、これは一度いってみたかった台詞をいうチャンスくるんじゃない? 

 

 

 

 

 

               10

 

 大亜連合軍人視点:

 

 上層部に、自分の存在がいかに優れているか知らしめる。それこそが今回の侵攻作戦に参加した理由だった。無駄に時間の掛かる修行などしていたら、師のようにあっという間に爺になってしまう。より強力な存在へと至る道があるのだから、そうすべきだ。だというのに、上層部は私を認めなかった。いや、認める振りをした。体よく実験体として試験するつもりなのは明白だった。使えるようならば、正式に認めてもいいと。ふざけるな。これは私のように才がある者が辿り着く領域だ。凡俗が努力で辿り着くものではない。私はそれを、この戦場で証明しなければならない。

 ならないのだ。だというのに、なんなのだ、この光景は。私の傑作というべき命を別けた獣が成す術もなく殺されていく。殺される訳がないのだ。私の別けた命が一つでも残っていれば、再生する。そのように造り上げた。

 そんな非現実的な光景を見ている私の頭には、ある話が過っていた。摩醯首羅(マヘーシュバラ)以上に猛威を振るい大亜連合軍を殺したという化物についてだ。たった一人に大亜連合兵士・兵器が次々と斬り捨てられた。それを聞いた時、腕が立つのだろうが私の敵ではあるまいと思った。随分と大層な女神の名で呼ばれるその化け物も、自分に掛かれば他愛のないものだろうと。

 だが、それが目の前にいる、これがそうだとすれば?

 悍ましい音と共に私の目の前にいた筈の獣達が二つに分けれて地面に倒れ、死んでいく。無限の獣達が、不死の化け物達が為す術もなく殺されていく。私の命が削られていく。ただの剣腕ではない。それでは、私の不滅の命が削り取られる訳がない。なんなのだ、これは。しかも安全圏に置いていた獣まで、どういう訳か殺さてしまった。これで、私の命は、この目の前の怪物に晒されてしまった。そう感じた瞬間だった。

 

 ザリッ。

 

 何かの音が私の耳を打った。なんの音なのか暫くは分からなかった。だが、発生源は自分の足元であり、自分の足だった。

「後退!?この私がか!?」

 更に苛立つことに、目の前の存在がマスク越しに嘲笑するように笑ったのが感じられた。頭に血が上る。

『なんなんだ!?貴様は!』

 我ながらみっともない声が自分の口から洩れる。怒りに支配されているにも拘らず上擦った声。それだからこそか。

 奴はゆっくりとした足取りで近付いてくる。全く私を恐れる様子もなく。その眼はまるで実験動物を観察しているかのようだった。

 目の眩むほどの怒りが湧き上がってくる。

 

 殺す。

 

 私の全てを持って殺す。一斉に攻撃しても、どうせ斬られて命を削られる。一気に片を付けるのだ。圧倒的な力で潰すのだ。

 自分の身体が巨大に、かつ強力になっていくのが感じられる。万能感に満たされていく。どうしてもっと早くにこうしなかったのか。自分が獣に堕ちようと構いはしない。この怪物を殺せるならば。

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

 裂帛の気合と共に磨き抜いた体術と魔法は、獣に完全に堕ちようとしている私に味方した。獣の本能と人の技の融合。光の如き速さで奴の貧弱な身体を砕くべく、踏み込みから拳を流れるように力を開放する。

 奴の心臓を捉え、拳が貫く。手応えがまるでないが、そんなものだろう。何しろこの威力だ。当たれば小娘程度、風船を割るようなものだ。

 笑い声が思わず、漏れそうになった時、自分の身体が傾いだ。そして、そのまま踏ん張ることもできずに、無様に横に倒れた。脚が切断され、いつの間にか奴が剣を振り抜いた形で私の斜め後方に居たのだ。当然の如くに失った脚が再生することもない。

「何故ダ!?永遠ノ命を!私ハ形は違エド手にシた筈ダ!!何故、私ノ命が失ワれてイク!?」

 混乱の極みの私を嘲笑うように、ゆっくりと奴は振り返り、これ見よがしにゆっくりと剣を構え直した。

 そして、楽しくて仕方がないといった風に奴は口を開いた。

 

「お前が本当に永遠の命をてにしていようが、不死を獲得していようが関係ない。私が殺すのは、お前という存在そのものだ。存在しているなら神様だって殺してやる!」

 

 哄笑と共に狂気と殺気が叩き付けられる。

 獣と化そうとしている私の本能が恐怖の悲鳴を上げている。

 私の口からは自然と意味の分からない叫び声が迸る。残る脚に力を籠めて立ち上がり、拳を振り上げる。それは恐怖に駆られた行動に過ぎなかった。

 仮面越しでも奴が薄ら笑いを浮かべているのが、何故か確信できる。

 殺す。殺さねばならない。

 私の拳にまるで奴は反応しない。その油断が死を招く。私はそのまま拳を先程よりも早く繰り出す。奴が少し動くだけで躱す。貰った。

 私の拳が通過すると同時に腕から奴の横顔を食い破ろうと目に見えない獣が顔を出す。牙が奴の顔に食い込もうという時に私の獣が、なんの前触れもなくバラバラになった。腕の一部が崩れ落ちる。

 何が起こったのか分からない。だが、混乱することは許されない。が、僅かな隙を見逃す敵ではなかった。

 

 気付いた時には既に遅かった。奴の剣が胸にスルリと滑り込んできた。

 

 その瞬間、死を感じた。本来ならば、胸を刺されようが死ぬ筈のない私が。これは死だと。無常と呼ばれる死神を迎え入れた時が、このような心持ちなのだろうか?

「貴様が私の死か?」

 奴が仮面の奥でニヤリと嗤うのを感じた。

 身体からあれだけあった力が抜けていく。身体に罅が走る。

 死をあれだけ恐れていたのに、心は穏やかだった。

 最高神でさえ、勝利の舞踏を踊り狂うかの女神を止めるために、身を挺して大地を護るしかなかったという殺戮の女神。

 名付けた奴は上手いことをいうものだ。これは、誰に止められない。摩醯首羅(マヘーシュバラ)であったとしても、いや、だからこそか…。

 私は、その女神の名を口にする。

迦利(カーリー)…」

 

 身体が、意識が消え去るのを感じた。

 

 

 

 

               11

 

 いやぁ、最後の反応良かったよ。劣化版。最初からそれをやればよかったのにさ。

 思わず、笑い声が出ちゃうよ!

 うん?何やらドン引きされているような?周りの目が、どこかで見たことのあるような感じになってるけど。

 うん。現実逃避終了。

 まあ、結構自分の行動を思い返してみてもビビる要素しかないから、これは当然か。

「そんな眼で見ないでください」

 深雪が、私を庇うように立ち、結構結構オコな声を上げた。うんうん、いい子に育ったものよ。でも、いいんだよ。そこまで期待するのは酷だからさ。

「啓!しっかりして!」

 そこにキャノン先輩の悲痛の声が、深雪の言葉をぶった切る。

 そちらを見ると、おかっぱ君が血塗れになっていた。おお。おかっぱ君やられてしまうとは情けない。

深雪も流石に死にそうなおかっぱ君を放置して怒り続けることができずに、達也に縋るような視線を送る。

 私も達也の肩を叩いた。それだけで伝わる。達也が無言で頷いた。ほら、伝わった。達也が無言でシルバーホーンを構える。しかし、すぐさま再成を使う様子がない。深雪が怪訝な表情で達也を見守っている。私はその原因を自前の眼で探る。

「何する気!?」

 キャノン先輩がおかっぱ君にとどめを刺す気かと語気を荒げる。

 達也が私の方に視線を遣る。いいたいことは分かる。原因が私にも分かったから。でも、再成でイケるよね?私だと過激な手段しかなくなるんだよ。霊光波動拳のアレは今のおかっぱ君には耐えられんだろうし、もう一つも過激だよ?やるの?あっそう。じゃあやるよ。

 私は視線だけで達也と会話して、刀をおかっぱ君の傷に切っ先を向ける。

「ちょっと!!」

 キャノン先輩のリアクションは無視して、おかっぱ君に残留している蟲毒を()()。どうやらあの実験台は、蟲毒まで用意していたみたいで、おかっぱっ君はその餌食になったようだね。達也の再成なら、蟲毒が付く前のエイドスを上書きしちゃえばいいのにね。そしたら、面倒が減るのに。そして、キャノン先輩他大勢の悲鳴を無視して刀で刺し貫いた。

「啓!!いやぁぁーーー!!!」

 私は静かに刀を引き抜く。その不自然さに全員がさっきまで上げていた喚き声を忘れた。だって、血が出てないんだから当然だよね。

「蟲毒だけ殺しといた。あとは頼むよ」

「分かった。ありがとう、姉さん」

 達也は素早くこれ以上騒がれる前にシルバーホーンの引き金を引く。一瞬にしておかっぱ君が傷を負う前の状態に戻ったことに驚愕した。だから、私のステップ要らないよね。いや、意図は理解するよ?私も救う力になれるのを見せることで、私に対する恐れを和らげようとしてくれてたって。う~ん。逆効果じゃない?考えても仕方ないか。結論が出たところで、私は次に行く。周公瑾をぶっ殺すというお仕事が途中だ。

「お姉さま!」

 重要案件を済ませようと飛び立とうとした私を深雪が呼び止める。深雪の苦渋の声に、私は振り返った。とても辛そうな顔をしていた。私の手を煩わせたとでも思っているんでしょう。私は静かに頭を撫でてやった。私もドンマイの意味を籠めて優しくしないと。ちょっと震えてしまっているのは、ご愛敬ってことで?紅い線を傷付けないように撫でるって何気に気を遣うからさ。

 自己修復術式は直死の魔眼の副作用…?に効果が弱い。時間を掛ければ元通りになるとはいえ、そうなった記憶は残る訳だから精神的にもクルものがあるし。出来れば使いたくない手段だけど、必要とあれば使っていかないとね。何度もいうけど、私も成長しているから大丈夫。

 達也の魔法に驚いて、私から注意が逸れているうちに、サッサと退散しないと。

 達也より一足先に空中に飛び上がる。

『特尉!酷いですよ!置いてって!』

 いつの間にかタチコマ到着してたんだ。そういえば、置いて行ってたわ。今思い出した。

 私はタチコマ達に後で天然オイルを奢るからと詫びを入れ、飛行速度を上げた。

 

 速度を上げる寸前に何か聞こえた気がしたけど、急いでるからパス。

 

 

 

               12

 

 美月視点:

 

 会長…いえ、七草先輩が深景さんに何か声を掛けようと呼んだみたいだけど、聞こえなかったのか深景さんは行ってしまった。多脚戦車を連れて。

「柴田さん…大丈夫?」

 吉田君が心配して声を掛けてくれる。心配されても仕方がない。私の顔は真っ青だっただろうから。

 本来、友達にこんな感情を持つのは良くないというのは分かってても止められない。私はあの眼を観てしまった。正確にいえば眼に繋がる深淵を。どうして彼女はあんな恐ろしい力を使って戻ってこれるんだろう。正気と狂気を行ったり来たりしながら、均衡を保っているみたいだった。いっそ狂って殺人鬼になってしまった方が楽なんじゃないかとすら思ってしまう。私なら耐えられない。

 深雪さんは、達也さんは、私がそんなことを考えていることが分かったら怒るだろう。あんなになってまで、みんなの為に戦っているから。だからせめて、深景さんが戻った時は、いつも通りに接するように頑張ることくらい。正直自信は持てないけど。今は涙も流すことあ許されない。だって、泣きたいのは、そんなお姉さんを見送らなければならない二人だろうから。

 

 私は、湧き上がってくる感情を隠すためにできる限り俯いていた。

 

 

 

               13

 

 真夜視点:

 

 私は最高のショーにため息を漏らす。

 多脚戦車のカメラを利用しての観戦は私にとって最高のものだった。

 我ながら恍惚とした溜息を洩らしたものね。葉山さんの方へチラリと視線を向けると、彼にしては珍しいことにこちらの視線に気付くことなく、モニターを凝視していた。この様子では何が起きたか、彼でも確認できなかったのでしょう。無理もないですけど。だけど、異常事態が起きたことだけは分かる。だから、視線を逸らせない。理解できないことは恐ろしいですものね。

 私自身もう一度、この目であの子の力を確認できて満足。あの眼は四葉に、いや私が欲しい。目を抉り取って得られるなら、深雪さんや達也さんに恨まれようともやるでしょうね。でも、もう一度我が目で確認したけど、恐らくは私が得ることは叶わない。あれは、現代魔法やら古式魔法などという枠のものではない。習得も術式の複写も不可能でしょう。ならば、あの眼を後世に継がせることが重要ね。深景さんの夫はある意味深雪さん以上に慎重に選ばないと駄目。そして、その子を私が養育して私の駒にする。その力を私のために使うことが幸せだと思わせる。なんて素晴らしいんでしょう。今から楽しみだわ。

 思わず忍び笑いが漏れそうになるのを、手で抑える。

 迦利(カーリー)

 その異名で呼ばれる姪が愛おしい。

 

 そろそろ、まだ固まっている葉山さんを正気に戻さないと。

 

 

 

 

 




 天狗の設定は、とある作品からの引用でしたが、ソースが見つかりませんでしたね。
 某・永遠の五歳の番組で改めて、そんな情報見つからず焦りましたが、この世界はそういう設定ということでお願いします。

 次はカバネリか…。
 次話は…時間がどれだけ掛かろうとも書く所存。
 苦手な戦闘、何度書き直したことか…。

 次回もお付き合い頂ければ幸いです。


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