私がモテないのはどう考えても私が悪い   作:あるけみーあ

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第8話

決意も新たにしたわけだが、別にそれで急に何かが変わるわけでもない。

一日一日を大切に生きていこうとは思うが、急ぐ必要はないのだ。

智貴に土下座してから何日か経ち(正直ちょっとやりすぎた。反省はしている)、しばらく様子がおかしかった智貴も大分元に戻ってきた。

 

「あ、おはよ!」

「......おはよ」

 

こんな具合に普通に挨拶も返してくれる。(あの翌日は何故か心配されたり、その後も微妙に避けられてた。泣きたい)

結局勉強の質問をしにきてはくれなかったけど、案外ホントに分からないところがなかったのかもしれない。

学力だけは当時も私のほうが上だった気がするが、この弟は結構マメな性格なので、早目からやっていたのかもしれない。

学校生活のほうも今のところ順風満帆といって良いだろう。

あの一件から教えた娘達とそこそこ仲良くなり、その話を聞いた他のグループの子にも質問されて仲良くなる機会ができたりとすばらしい連鎖が起こっている。

我が校がそれなりの進学校であることと、中間テストが近づいていることが私に味方してくれたのだ。便利に使われてるだけだったとしても、今はそれで十分である。

更に!クラス内で「勉強できる奴」の地位をより強固なものとした私は、今や休み時間に一人で本を読んでいても何の違和感もないのだ。

 

「もこっち先生ヘルプ!!」

 

まぁこんな感じで、今日もホームルーム前に本を読んでいた私の元に、そんな子達の一人がノート片手にやってきた。

この「もこっち先生」という奇怪な呼び方は何故か一部の女子から勉強を見て欲しいときに使われるようになった。

奇遇にも我が人生最大最高の親友、マイラブリーエンジェルゆうちゃんが私につけてくれたあだ名がそのまま入ってるって事で実はちょっと気に入ってる。

勿論初めて聞いたときは「なにそれ!?」ってなったけどね。

というか私がともちゃんと呼ばれることは永久になさそうだ。何故だ。

 

「その呼び方......まぁいいけど。どうしたの?」

「一時間目のこの問題!私たぶん当たるんだけど分かんないの!しかもこの問題集解答ついてないし......」

 

力尽きたようにまだ来ていない前の人の席に座る。

 

「ちょっと見てみるね......あぁこれちょっと複雑だよね。でも慣れれば簡単だよ。まずは......」

 

範囲の変化する二次関数の問題だった。流石一応進学校、この時期にしてはかなり進んでいる。

私はルーズリーフを取り出して図を描きながらその子に解説していく。

こういう問題は場合分けして一つずつ丁寧に見ればそれほど難しくはない。その子も最後には順序さえ間違えなければ簡単に解けると分かったようだ。

 

「で、ここまで場合分けできたら後は簡単でしょ?」

「......お、おおお凄い!さすがもこっち先生!伊達に先生名乗ってないね!」

「いや、私が名乗ってるわけじゃないんだけど......」

「でもこんなに分かりやすいなんてホントに先生みたい......これで関数問題は完璧?」

 

地味に核心を突いた一言に一瞬ドキッとしつつ、やっぱり個人に教えるほうが簡単なんだなぁーとか関係ないことを私は思う。

授業をして、受けている生徒全員に教えるのはなかなか難しいのだ。

 

「うーん。これから三次関数とかもっと次数の高い関数になると色々面倒にはなるけど、基本的な考え方は一緒だよ。だから完璧、かな?」

そういって笑いかけると、なんかちょっとその女の子がキラキラした目でこっちを見ている。

「......うん。私も、もこっち先生に教えてもらえれば完璧かも。本当にありがとう!」

 

そう言って自分の席に戻っていってしまった。あぁ、もうちょっと他のことも話したかったのに。

うーん。何か最後ちょっと反応悪かったなぁ。偉そうにしすぎたかも......反省反省。

 

 

まぁそんな感じに、時にヘルプを求めてきた女の子に勉強を教えてそのまま談笑し、普段は本を読んで時間をつぶすという学校生活を送っている。

最近は読んでいる本もハードカバーの探偵小説だったりと、正直ちょっとヴィジュアル考えたりして我ながらイタいのだが、これがなかなか面白い。

数ページ読んでるうちにもうどっぷりである。

すっかり読書好き優等生キャラが定着し、こちらから無理に話しかける必要がなくなったのも喜ばしい。根はぐいぐいいくタイプじゃないから。

そんな風に日々が過ぎ、そろそろ中間テストの準備期間に差し掛かろうというとき、私の携帯電話がなった。

 

残念ながら何故かメルアド交換の流れにならず、まだこの携帯に入っている電話番号は限られている。

訛らない様にやっていた問題集を横に置き(ヤンデレ男子言葉攻めCDを聞いていたのはご愛嬌だ)、画面も見ずに電話に出ると

 

『あー、もこっち久しぶりー』

 

やわらかい、のんびりとした声が聞こえた。

こ、これは!

ゆうちゃん、マイラブリーエンジェルゆうちゃんじゃないか!!ゆうちゃん!!大好き!!

はっ、私はいったい何を!

受話器の向こうから『あれ?もこっちー』と呼ぶ声が聞こえる。早く出なければ!

 

「も、もしもしゆうちゃん!久しぶり!」

『うん。卒業式以来だねー。どう学校はー』

「う、うん、そこそこうまくやってるよ!」

 

でもゆうちゃんが辞めてっていうなら辞めるよ!なんてバカなことを考えながら即答する。

ゆうちゃんがそんなこと望むはずがないし、そんなこと言ったら怒られるだろうけど。

 

『そっかー。あのさー明日暇ー?』

「全然大丈夫だよ!」

 

ゆうちゃんのためなら大抵大丈夫になるよ!今回はホントに何もないけど。

 

『じゃあ明日遊ばない?』

「勿論いいよ!」

『じゃあ駅前のカフェで一時に』

「うん。分かった!」

 

じゃあねーもこっち、そう言って電話が切れる。私はきっと満面の笑みでベッドに倒れこんだ。

あぁ......ゆうちゃん。

優しくて思いやりがあって容姿も上の上。私の最高の友達......

未来でも何度私の心を救ってくれたか分からない。でもそのことを抜きにしても掛け値なしの良い娘だ。

漢字で書くと優、名は体を表すとはまさにこのこと。

そうか、よく考えると今なら高校生のゆうちゃんに会えるのか。あーゆうちゃん、早く会いたいなぁ。

 

明日よ早く来い。

結局その日は遠足前の小学生みたいに暫く眠ることができなかった。

 

 

 

 




三十路もこっちの優ちゃんへの好感度は天元突破で振り切れてる(百合ではないが)

コレだけのためにガールズラブの警告タグ入れるべきか悩む

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