あなたは普通の人だ。
正確には普通の人間だった。
血の医療を求め、ヤーナムへと赴き輸血を受けたあなたは
なんやかんやで獣を狩ったり、人を狩ったり上位者を狩ったり、とにかく目につくものを片っ端から殺していたら
月の魔物を殺して上位者となった。
今や普通に上位者の幼年期を迎えた。
しかしながらあなたの姿はいつも通りの人間のそれである。
何故ならばあなたは狩人だからだ、人も獣も上位者もすべからくあなたの獲物である。
狩りを全うせよ、森羅万象ことごとくの血を求めるのだ。
さぁ今日も張り切って冒涜聖杯ダンジョンに潜ろうとして腐った内臓やらカビやらを用意していると突然共鳴する小さな鐘が鳴り始めた。
何と、別世界の“女神アクア”なるものがあなたを召喚したいらしい。
あなたは女神という別次元の存在を感じ取ったので、喜んで召喚されてあげた。
狩人は仲間思いなのだ、まぁ助けた直後に殺試合もよくあることだが。
勿論、気に入らなかったらすぐに闇霊として入り直すつもりだ。
「こんにちは!あなたは残念なが…ってあなた生きてるじゃないですか!
…というか、何ですか…魔王なんかより遥かに禍々しい気配がします…」
事務机の向こうで女神が営業スマイルを引きつらせた。
女神、確かに人間としては容貌は優れているのだろうが星の娘に比べると何か物足りない。
所詮は啓蒙なき獣同然の人間の感性で”美しい”だろう。
それにしても敵はどこなのだ、早く殺させろとあなたは彼女に問いかける。
「いきなりアグレッシブな人ね…
まぁ説明しますけど」
ふむ、つまり彼女は女神で死んだ人間を天国か転生か異世界に送って魔王とやらと戦わせる役割を持っているらしい。
聞けば聞くほど”月の魔物”っぽいやり口だ、気に入らないな(やっぱ殺すか)
「いやいやいや!!初見でいきなり神殺しを実行しようとしないでくださいよ!」
初見で殺しあいをしないなんて…あなたは目の前の自称女神の頭のおかしさと常識の無さにドン引きした。
「おかしいのはあなたです!」
まぁ価値観は人それぞれだろう、腐臭がいいか冒涜がいいかという違いみたいなものだ。
あなたは女神に気にしなくてもいいぞと言った、あなたは寛大なのだ。
「はぁ…なんか納得いかないんですが…
それで、何故死んでもいない方がここに?」
貴方は
1:勿論、”お前を殺す”ためだ
2:特に理由はない、説明してくれ
「とてつもなく不吉な選択肢が見えたような気がしますので安全のため説明させてください」
ふむ、要するにこの女神は魔王が暴れてて人間が死にまくっているところに安全で平和な世界で死んだ人間を”ちーと”なる強力な武器やら能力を持たせて突っ込ませるというものらしい。
1回しか死ねない、しかも人を殺したこともない人間を魔王軍とやらにぶつける。
貴方の感想は、そんなのは狂っている。
うまく行くはずがないという真っ当なものだ。
狩人として大成するまでに4桁5桁死ぬのは当たり前だし、武器にも慣れていかねばならない。
血石の岩で強化し血晶もりもりの+10武器があっても初期ステ、コンティニュー1回、初見でヤーナムを全攻略しろとかなったら貴方も盛大にぶちぎれる事間違いなしだ。
やっぱ異世界の神とか頭おかしい、皆殺しにしよう(提案
貴方はその人達に持たせたのもこんな武器かと聞いた
「えっ、これは…な、何でしょう…女神の私が一目見ただけで怖気を振るうほど不吉な気配がするんですが…完全に呪いの武器ですよねこれ」
貴方が差し出したのは長年愛用しているノコギリ鉈だ。
凶悪な外見に違わず、+10強化の上で今まで人・獣・上位者を殺しまくった。
結果神聖な存在である女神からは吐き気を催すほどの暗黒のオーラや怨嗟の声が立ち上っているように見えるらしい。
ちなみに愛称は”ノコちゃん”だ。
無責任な神を斬ったらどうなるかな?ちなみに神(月の魔物)はバラバラになって死んだ。
「ごめんなさい!殺さないでください!私も仕事でやってるんです!」
女神とやらは土下座して命乞いしてきた。
まぁいいと貴方は思った、所詮自分とは縁もゆかりもない人間がどれだけ死のうが関係のない話だ。
「怖っ!この人の思考論理怖すぎ!」
貴方はとりあえず冒涜聖杯ダンジョンにも飽きてきたところなので、その魔王が暴れている異世界にとりあえず転送してくれと頼んだ。
魔王=殴れる=殺せる=なんか落とす
Majestic!
貴方の高い啓蒙が裏付ける完璧な論理によって魔王軍とやらを狩り尽くせば貴方の上位者としての存在は更に上にいく気がする。
それでも足りなかったら適当に獣や人を狩ればいいし
それでもうまくいかなかったら神々を皆殺しにして遺志を奪い取ろう。
「とてつもなく恐ろしい思考が流れた気がしますが、怖いので何も言いません」
気にしないでくれ。
「はぁ何でこんな人が…あっ!すいません!すいません!散弾銃向けないでください!」
貴方は女神に”ちーと”とやらをくれと請求した。
どうやらアイテムやカレル文字っぽいのがあるらしい。
「あーそれでしたらこちらになります」
武器に防具?
武器なら慣れたものがある、初見の獲物で戦えとかそれ死ぬわ。
防具?裸でなきゃ何でもいいだろ。
アイテムも自前のがある、ろくな物が無い。
舐めてんのか、じゃぁお前の遺志を寄越せ。
欲しいのは灯りだ、何と言っても狩人の夢に繋がらなければ話にならない。
大切な人形ちゃんを残して旅なんてそんな恐ろしいことはできない。
「えっ?でもそんな事…あ、出来るんですか…早く出てってくれって?」
何やら虚空に向かってブツブツ呟いている、危ない兆しだ獣になりかけているのか?
狩らなきゃ(使命感
女神によると狩人の夢はいわゆる貴方の意識と空間の合間にあるので異世界だろうが問答無用で繋がるらしい。
というかあの空間自体が今や貴方の一部らしい。
「では…え、名前は狩人?はぁもう何でもいいです。
それでは貴方に祝福があらん事を」
貴方は白い空間から転送された。
ちなみにわざと失敗したら地獄の底からでも這い出てすぐに殺しに戻るからなと警告しておいた。「本当にやりそうなのが怖い…」
貴方はやると言ったら殺るタイプの人間だ。
狩人が消えると女神アクアは机の上にドット突っ伏した
「つ…疲れた…あーやる気でねー
何よ、また来たの…」
この気疲れが直後にとんでもない自体を巻き起こすがそれは別の話(カズマ
光が消えると貴方はヤーナムの青ざめた空でも夢の月夜の中でも無い青空の下の赤レンガの街並みに立っていた。
ヤーナムとは違って、道端に死体が転がっているわけでも住民が獣になりつつあるわけでもなさそうだ。
貴方は装備一式を確認した、黒い狩人の装束・そして散弾銃にノコギリ鉈。
狩人そのままの装備はずっと貴方の愛用品だ。
単に変えるのが面倒だったのもあるが。
すると貴方のポケットに紙と硬貨があった、
『転生者はまず冒険者ギルドで登録』
どうやら”テンセイシャ”(貴方もそう扱われているらしい)は冒険者になるものらしい。
これはあれか、病院でまず一回試しに殺されろみたいなものか。
それにしても冒険者とは何だろうか?狩人のようなものか、あるいは処刑隊みたいなものか。
とりあえず何をするのかわからない貴方は大通りに出て歩き始めた。
ここは冒険者の街アクセル
という名前らしい、いわゆる冒険者になって日が浅い初心者が集まる街らしい。
ヤーナム市街地みたいなものだと貴方は理解した。
冒険者とはもっぱらモンスターを狩って生計を立てており、
指定モンスターや採取、捕獲、他にも緊急クエストなどがある。
彼らは人類の敵である獣(モンスター)に対処している。
そして獣の王をここでは魔王と呼ぶらしい。
獣の王…狩らなきゃ
そして狩人になるには冒険者ギルドに所属しなければならないらしい。
面倒だなとは思ったが、輸血に比べればずっと簡単でやりやすかろう。
貴方は大通りを進んで冒険者ギルドの建物の前にやってきた。
建物の看板にギルドの紋章が焼き付けてあったのですぐにわかる。
なるほど、狩人っぽい装備のニンゲンがたくさん居る。
だが獣になりかけて居るやつは残念ながらいない。
それに見た所随分とプレートアーマーやレザーアーマーなど重装備だが、貴方はあんな装備では獣の膂力の前では紙くず同然に切り裂かれてしまうと思った。
事実そうなのだろう、鎧も盾も無力なのが獣なのだから。
「いらっしゃいませ!お仕事の案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いているお席へお座りください」
貴方は案内の女性に登録をしにきたと伝えた。
カウンターで1000エリスを払えば登録できると聞かされた貴方はポケットの硬貨を払い登録してもらうことにした。
「少々お待ちください」
受付の女性が戻ってくると書類とカードを持ってきた。
貴方は説明を受けた。
カードは身分証明書のようなものでクエストを受注したり
レベル・スキル・職業・ステータスなどなどなどを確認できるらしい。
半ば聞き流した、啓蒙高い貴方にとって狩以外は重要では無い。
カードがある、狩れる。OK?
貴方はレベルアップについても説明を受けた、どうやら獣を殺すと経験値なるものが溜まってレベルアップやらをするらしい。
遺志、お人形ちゃん。OK?
そして書類を受け取って自分の名前、身長、体重、年齢、身体的特徴などを求められた。
貴方は適当に書いた。
「お名前は…シャスェール・ドゥ・ジェヴォーダン(ジェヴォーダンの狩人)ですね」
貴方は昔話から適当に名前をでっち上げた、本名は貴方にももうわからない。
流石に名前が狩人では格好がつかない。
「ではこちらの水晶に手をかざしてください」
貴方が手をかざすと水晶が輝いてカードに文字を写していく。
便利なものだ。
受付嬢がステータスを見ると目を見開いた
「すごい!全ステータスがすごいことになってますよ!
特に身体面でのステータスがすごい!
これなら近接戦闘系のほとんどの職業につけます」
他の冒険者に配慮して控えめに話してくれた。
貴方は以前の街では狩人をしていたこと、もっぱらカラスや野豚、野犬などの害獣を狩って生計を立てていた狩人だったと話した。
「ああ、なるほど。ふふっ、ベテランでいらしたんですね。
それならほら、ぴったりの職業がありますよ」
職業に狩人という欄があった。
成る程、確かに貴方にはこの職業以外は考えられないだろう。
それに嘘は言っていない、カラスも豚も犬もイかれた人喰いだったが。
貴方は狩人という職業を選んだ、慣れたものだ。
受付嬢は以上で登録が終了したと説明してくれた。
貴方はヤーナムの金貨こそ腐る程持って居るがエリスは持っていないので早速依頼を受けてお金を稼がなければならない。
「承りました、ジェヴォーダン様は狩人ということなのでこちらはいかがでしょうか?」
モンスターを狩るのが仕事らしい。
ジャイアントトードなるでかいカエルを三日で3匹狩ってきてくれという依頼だ。
三日以内に3匹以上倒せばよく、いくら狩っても構わないらしい。
更に狩った数によっては報酬が上乗せされる。
「ふふっ、無理はしなくて結構ですよ。野犬やイノシシとは訳が違いますから。
初心者の方はまずモンスターになれることが大切ですよ」
受付嬢は貴方が牧歌的な雰囲気で街で暴れる害獣を退治して居る風景を思い受けべている。
確かにその通りなので、訂正はしない。
成る程、獣とモンスターは違うらしい。
貴方は打撃が効きづらいと聞いたが斬撃系のノコギリなら問題はないと判断した。
貴方はこの依頼を受けると伝えた。
「参加人数はいかがいたします?」
貴方は一人だと伝えた。
すると周りのニンゲンが忠告してくれた
「あんた、初心者にソロは危険だぜ?
冒険者になって舞い上がってるのはわかるけどよ」
「そうそう、時間はあるから他のパーティーと行動したほうがいいわよ」周りの冒険者たちはソロは危険だと忠告してくれた。
成る程、ソロは確かに危険だろう。
才能はあるが、初日に無理なクエストを受けて死亡した冒険者の話は珍しくもない。
だが、貴方は獣狩りは慣れているし決して無理はしない。
忠告はありがたいが、飛び道具(ガトリング砲)もあるし危ないと思ったら逃げるからと丁寧に断った。
「ではジェヴォーダン様のソロクエストですね。
発注はしますが、決して無理をして死なないようにしてください」
貴方はカードを返してもらうとカエルの生息域に向かった。
新しい獣を狩れると期待している。
貴方はカエルの生息域の草原にやってきた。
成る程、カエルがあちこちで盛っている。
貴方は狩人らしくまずは拳銃を構えて撃った。
13mm対獣拳銃フォルトゥナ(幸運)
貴方の血を混ぜた特製の水銀弾だが、射程距離は短く貴方の特性から威力も低い。
10mほど先のカエルにズドォンという轟音と共に銃弾が発射されると瞬時に命中し体内に侵入
水銀の弾丸が内部で炸裂し大穴を開けるとカエルは即死した。
貴方はカエルの銃弾に対する弱さに驚いたが、いつまでも射撃武器だけに頼るわけにはいかないと轟音に対して寄ってきた他のカエルに向けて間を詰める。
右手に持ったノコギリ鉈を振るうとカエルは縦に一撃で両断されて生き絶える。
成る程、初心者向けだ。
一撃で死ぬとは群衆よりも耐久度が低い。
だが厄介なのはやはり数だろう、血の匂いに誘われて激昂したカエルがあちこちから顔を出す。
地面の中からポコポコと姿を現したので貴方は一旦後退し、連中が集まったタイミングで火炎瓶を投げつけた。
火炎瓶は目標のカエルに命中すると飛び散った油が引火し他のカエルもこんがりと焼き尽くす。
カエルだからか炎にはやはり弱いらしい。
炎を嫌ってカエルが分散したところを狙って貴方は発火ヤスリで炎を纏わせたノコギリを振るう。
カエルも炎を嫌うらしく舌での攻撃をあるいは焼き、あるいはステップで回避すると次々と焼きカエルが出来上がる。
貴方が火を機にする必要はない、貴方についた火はカエルの血で鎮火すればいい。
貴方は血に酔った、狩の快楽だ。
しかしやはりカエルはカエル、貴方は物足りなかったがとりあえずは満足した。
…気づけばすでに夜明けてあたりは朝日に包まれている。
あたりにはカエルの死体が山積みとなっており芳しい焼けた肉の匂いすらする。地面は血でぬかるんでいる…ヤーナムのように…
だが貴方は軽く酔ったが、カエルでは全く足りなかった。
やはり血は獣に限る。
飽きた貴方は街にカエルことにした。カエルだけに
「あら、お帰りなさいま……」
女性が入り口で貴方の姿を見て口を閉ざす。
今の貴方は返り血で上から下までくまなく血で彩られてる。
匂い立つな…
「お、おい!大丈夫なのかあんた!」
「ちょっと!怪我してるんじゃ…」
貴方は彼らにこれは返り血だから何の心配も無用だと伝えた。
「返り血って…落としなさいよ」
「そ、そうか。まぁ怪我がないのならいいけどさ」
貴方は服についた血を落としたいので宿泊施設がないか聞いた。
だがそのためにはまずは先立つ物が必要だと冒険者カードで倒したカエルの報酬を受け取らなければならない。
灯火が今の所、当たらない以上は現地に拠点が必要だ。
冒険者カードに表示されたモンスターの数が表示されると受付嬢は驚いて叫んだ。
「えー、ジェヴォーダン様の討伐数は…320…
さ!さんびゃぅ!?」
何と317も余計に狩ってしまったらしい。
凄まじい戦火に職員も居合わせた冒険者たちも騒然とする。
「さんって・・・嘘だろおい!?」
「偽造じゃねぇのか?」
「カードが偽造できるかよ、信じらんねぇ…ベテランハンターってのは嘘じゃなかったんだな」
皆が驚いているが、貴方は気にしない。
ベテラン狩人と言ったからにはベテランであることを証明するのは当然のことだ。
貴方は報酬を催促するが、あまりにも大金のため現金で用意するのは時間がかかるらしい。
ならばととりあえず手付として現金は3万エリスほどで良い。
残りの代金は銀行口座に入れておいてくれと頼んだ。
確かにそんなに大金を持ち歩くことはないだろうから受付嬢も了承してくれた。
「ハハッまじかよ。こりゃとんでもねぇルーキーが入ったもんだな」
「あんたがルーキーだって?嘘だろ!?え、前職が狩人?冒険者じゃない方の?それならまぁ納得かな…」
「よう!あんた、よかったら俺たちのパーティーにはいらねぇか?」
冒険者たちが口々に賞賛、あるいは勧誘する中
「あのー、すいません。ちょっといいですか?」
貴方は黒髪黒目の冴えない少年に声をかけられた。
柱の向こうに隠れた見覚えのあるような少女がいる…
「すみません、お金かしていただけないでしょうか…」
青い髪の女はどこかで見たような気がするが…?