ベルディアが撤退してから数日して、貴方はクエストに張り出されたデストロイヤーの進路調査のための偵察クエストというものを見つけた。
貴方はDestroyerなるものを知らない。
まさか英国海軍の駆逐艦が歩き回っているわけではあるまいし。
知らないことを聞くのは恥ではない、というわけでウィズに聞いてみた。
「ご存知ないんですか?機動要塞デストロイヤー。
古代に滅んだ魔法王国が作り上げた決戦兵器ですよ」
人間が作り上げた魔王軍ですら相手には出来ないほどの機動力と火力の超兵器。だがウィズによると制御すらできないことで魔王軍からはガン無視。
むしろ人間サイドに多大な被害を長年にわたってもたらし続けているという。
更にいえば作った魔法王国自体も機動兵器に滅ぼされている、馬鹿か。
だが同時に素晴らしい、貴方はかつてロンドン博覧会でも似たような浮遊城が大暴れした例を知っている。
あれほどの巨体を長年にわたって駆動させるなど英国海軍の戦艦の最新の蒸気タービンでも不可能だ。
貴方はぜひそんなものがあれば火薬庫の技術者に渡して何か変態的な発明をしてもらいたいと考えた。
しかしながらここにはもはや火薬庫の技術者はいない。
人間の纏う装甲蒸気鎧ならくそったれな上位者の輸血も不要で獣狩りができるだろう。
蒸気機関を取り付けた重装甲の歩兵だったがこれだけの大出力があればもっと大きくできるだろう。
貴方は10mくらいの巨大蒸気兵が大暴れするところを想像してみた。
炉心 (Core)と人間を装甲で覆うから…そうだな、Armored Coreという名前はどうだろう。
安直すぎるか。
しかしながら貴方はさしあたっては日銭を稼がなければならない。
発明は必要があるから生まれるが、魔王軍と日々死闘を繰り広げているはずの人類側で武器の需要がないのは不思議だ。
これもエリスとやらのご加護かもしれない。
あるいはなろう的御都合主義だろうか。
だが遅かれ早かれ人類は結局のところ戦争という原動力によって文明を進歩させるだろう。
貴方は暇を持て余すとそこらへんの紙に蒸気甲冑の設計図を書いてみた。
啓蒙99の貴方にとっては蒸気機関の設計は手慰みの一環に過ぎない。
もしかしたら貴方はヤーナムに来る前は技術者か発明家か何かのプロフェッショナルだったのかもしれない。
キャラメイク的にそんな感じがする
発明家というロマン成分の多い職業ならそんなに悪くないだろう。
実際には穀潰しの変人一歩手前だとしても世界を変えるかもしれない者というのはそう多くない。
そういえば貴方の家のほぼ居候のウィズの店にも商品が並んでいるがなかなか面白いものがあった。
確か紅魔族の郷で生産している商品だったとか、貴方は設計図を書くことはできたが材料も生産設備も職人もいない現状ではどうしようもない。
アクセルの街には刀鍛冶くらいはいるが、ずっと大規模な物が必要だ。
新たな青年期を迎えるためにも…青年期って何だっけ?
「それでしたら私が懇意にしている職人さんのところに送ってみてはいかがですか?
私もその人からずっと仕入れてるんですよ」
あのガラクタのことだろうか?
貴方はウィズに実用性皆無か街の冒険者の平均収支的に見合わない商品を仕入れるのは止めるように注意した。
「ぜっ、絶対売れますよぉ!見る人が見れば価値があるってすぐわかりますから!」
ならばと貴方はパイルハンマーを取り出した。
「何ですか、これ?」
貴方は武器だと説明した、ウィズに本当に商才があるのならあっという間に売れるはずだ。
「な!言いましたね!んもう、こうなったら意地でも売ってあげるんですから!」豊満な部分を強調して貴方のパイルバンカーを店の陳列棚に置く。
だが置く場所はなぜ爆発物の棚なのか。
貴方はウィズの魔道具店でお茶を飲むと再び狩に出かけた。
野外用のトイレは買っておいた、街に入るたびに血糊のついた武器を垂らして罰金を取られる羽目になるのは敵わない。
それにしても頭のおかしい職人だがこれは案外使える。
売れない欠点としては簡易トイレのくせに出て来る水の量が多すぎることと、音が大きすぎてモンスターを集めてしまうことくらいだ。
だが出て来る水の量が個人の用足しにはやたら多いとしても聖杯ダンジョンのクソ溜まりを流しきるにはまるで足りない。
音に至っては大砲をぶっ放す貴方がた狩人が今更という感じである。
もしもゆんゆんが一緒に聖杯に潜りたいと言い出したらこれをもっていくといいだろう。
きっと腐臭も少しはマシになる。
貴方はウィズの店を朝に出発した、そして夕方には見に帰って来るとも。
貴方はゆんゆんと共に出発した。
結局のところ、マンティコアはたった4体しか狩れなかった。
最近乱獲し過ぎたせいか数が少なくなってしまったのだろうか。
それにしてもこの世界ではかなりの強敵と言われるモンスターが数が少なくなるほど乱獲されるとは、一体どんな強い冒険者が乱獲したのだろうか。
この世界にも獲物にふさわしい獣がいるのかと思うと餌付く。
やはり匂い立つな。
「あ…あのですねぇ…」
ゆんゆんが何かを言い出しそうにしている、それにしても相変わらず露出度の高いその服装は何とかならないのか。
それともあまりのボッチぶりに犬のように盛った雄冒険者と事実関係を持って仲間になってもらおうというのか。
ゆんゆんは14歳だというが、アリアンナ並みに立派な体つきだ。
これなら娼婦としても立派にやっていけるだろう、貴方は保証した。
露出度が高いにしても、もっと気品のある格好はいくらでもあるだろうに。
これでは街娼だ。
とはいえ、そこまで露骨に言う事もあるまい。
せいぜいが後で使者ちゃんとの取引を進める程度である。
ちなみにオススメはマリアの狩衣装である、女の子だしな。
「き、聞きたいことがあるんです」
(狩人の技は)体で覚えてもらいたいのだがと伝えた。
「か、身体で覚えろだなんて…は、恥ずかしいので優しくしてください」
内臓攻撃が恥ずかしいとは、だが優しい内臓攻撃は貴方の専門外だ。
それは時計塔のマリアの領分である。
チャンスと思ったら遠慮容赦なく決めるのが貴方のやり方だ。
「い、いえほら。私日頃からお世話になってるのに下宿代すら払ってないし…
そ、それでですね。貴方に何かプレゼントをと思ってお人形ちゃんに貴方が欲しいものを聞いてみたんです」
貴方は特に何も求めてはいない。
だが確かに本当に欲するものは何か?と問われれば貴方には特にない。
だが観察力に優れた人形ちゃんなら確かに貴方が真に欲するものを言い当ててくれるかもしれない。
「わ、わかりました…」
するとゆんゆんは上着を脱ぎ、ブラウスのボタンを外して脱ぎ始めた。
貴方はなぜ彼女が脱ぎ始めるのか理解できない。
だがやはり仮衣装にはその服装は向かないことをようやく理解したのだろうか?「わ!私でよければいつでもどうぞ!
もう14で、ちゃんと赤ちゃん産めますから!」
理解できない返しが帰って来た、どうやら高まったのは啓蒙ではなく狂気らしい。
…
とりあえず貴方はゆんゆんに服を着るように伝えた。
顔を真っ赤にしてゆんゆんは服を着、涙まじりに話し始める。
「だって!だって、お人形ちゃんに聞いたんです。
ジェヴォーダンさんが何欲しがりそうかって。
そしたら『赤子を失い、そして赤子を求めてる』って
だから、私がウィズさんの代わりに赤ちゃん産んであげるしかないんです!
だって、ウィズさんアンデッドなんでしょ。子供産めないんですよ!」
そう言うと泣き始めてしまった。
確かにそうだが、それは上位者の話であって貴方ではない…
そしてなぜウィズなのか、と聞くと貴方とウィズがいい関係なのに結婚しないのはウィズがアンデッドであるために子供が欲しい貴方がウィズとの結婚を拒んでいるのだと考えたのだと言う。
聞けば聞くほど狂気が高まる話だ、ゆんゆんは実は目玉人形なみの発狂力の持ち主だったのだろうか。
貴方の深海の守りを貫通してくるとは末恐ろしい少女だ。
ボスとして登場したらフレームインした瞬間に並の冒険者を発狂死させてくるかもしれない。
というよりもいつのまに貴方とウィズの結婚話が持ち上がったのだろうか?
貴方はそんな気を発した気は全くない、ウィズはあくまでも友人の一人に過ぎない。
「ぐすん、だってギルドの人達がみんな噂してましたよ。
もういい関係の男女が朝昼晩と寝起きを共にしてたらもう後はゴールインまで一直線だって」
だがそれはゆんゆんの世話をするためだろう、彼女は見た目通り母性の強い人だから人形に入れ込んで自分をおろそかにするゆんゆんを見ていられなかったのだろう。
「え、それじゃぁ!ウィズさんとご結婚しても、人形ちゃんには会いに来てもいいですよね!?」
ぱあと顔を輝かし何事かを言い出した。
貴方は更に更に困惑した、唐突に『匂い立つなぁ』と言われながらガスコイン神父に殺された時もこれくらい動揺した。
世の中の狩人の半分はあそこで挫折するらしい、嘆かわしいことだ。
貴方はドッと疲れた、冒涜アメンドーズ狩だってもう少し疲れないだろう。
ところでマンティコアは最近乱獲し過ぎたせいか数が少なくなってしまったのだろうか。
聖杯なら素材を放り込むか、適当に簡易聖杯で検索すればいくらでもリスポーンするのに面倒なことだ。
貴方はそういう風に思考を切り替えて狂気を抑えた。
アクセルの街はもうすぐだ、ウィズは相変わらず働けば働くほど借金を増やすのだろう。
夕方前にウィズの魔道具店によるとウィズは貴方に
「売れましたよ!売れたんです!」
驚くことにパイルハンマーが売れたらしい、工事現場の親方が基礎工事の打ち込みや砕石にツルハシより便利だと買ったのだという。
貴方は確かにそういう工事現場の道具から作られたとは聞いたとはあるが
それは武器としてと言えるのだろうか?
やはりウィズの商才はどこか別の方向に向いているとしか言えない。
「さぁ、今日は商品も売れましたし!」
ウィズは店に閉店の看板をかけると帰り支度を始めた。
いつから貴方の家が彼女の帰る場所になったのだろうか、確かに世間ではこれを帰宅というのだろう。
ちなみに狩人様の覚えている、ロンドンで大暴れした浮遊城というのはスチームボーイの話
やっぱりというか、アーマードコア世界はブラッドボーン世界の未来だったという啓示を受け取った
よって蒸気機関で湯気を上げながら動く、パイルバンカー・ガトリング装備アーマードコアというロマンの塊を思いつくのは啓蒙高い系にとっては普通らしい
啓蒙とは結局何だったのか、熱そう