ヤーナムはあるわ、ホームズはいるわ、階差機関はあるわ、ネクロマンシーはあるわ
フィッシュ&チップスはあるわ バベッジおじさんが頑張ってるわ アサシン教団はあるわ
そのうち第一次世界大戦は始まるわ モンティ・パイソンは生まれるわと東宝世界の日本並みにカオス
ミコラーシュは変態であり、変態であるがゆえに恐らくは最も根源に近付いた魔術師でもある
つまり魔術を極めるとは変態を極めるということである
魔術師として上に行けばいくほど啓蒙と変態度が増す
魔術師=変態
お高くとまって、変態にならずに根源に近づこうという考えは甘えである。
アクア様はかなりいい加減な異世界転生神だが、ヤーナムの上位者に比べればかなりまし。
あいつらは人間を消耗品くらいにしか思ってないから やっぱ殺して正解だった
だがその点では元の世界に戻すという餌をぶら下げて魔王を討伐させようとする個々の神族も似たようなものだ。
もちろん貴方は魔王をわざわざ狩ろうなどとは考えていない。
だがもしも神々が貴方に煩く強要しようものなら、
まずお望み通り魔王城に討ち入って返す刀で天界を焼き滅ぼす所存だ。
魔族も悪魔も天使も神々も片っ端から狩り尽くし遺志を奪うのだ。
貴方こそが血塗れ極めしその手によって神を奪い汚した狩人なのだから。
この狂気と憎悪に満ちた不浄なる地上は人のもの、故に神々も魔族も唯一無二の原理に従うべきである。
すなわち奪うのならばそれは血と鉄火を以って贖うべし、例えそれが神であろうとも。
貴方の愛しい汚濁に手をかけんとするのならば、例え神や悪魔であろうと穢し陵辱の限りを尽くすまで。
エリス様「冗談ですよね(震え声」
貴方は常に本気だ、常にそうであったしこれからもそうだろう。
貴方は3億エリスの使い道を考えた。
考えた末に蒸気機関を完成させようという結論に達した。
啓蒙とは人それぞれであるが、つまりは蒸気であった。素晴らしい。
やはり鉄火ほどこの地上に相応しいものはないのだから。
貴方はクリエイトウォーターの魔法に感心した、理想的なのは花鳥風月という圧力を持った水の生成魔法だが複雑なので中々スキルポイントが取れなかった。
蒸気機関の欠点はどうしても水蒸気を発生させる為に大量の水を必要とすることで重くなること。だがこのチートな魔法があれば極限まで軽量化が可能だと考えた。
自動車ならばしょっちゅう水を補給せずに済むし軽くて済む。
例えば空を飛ぶことも重量の為に難しかったが、これなら可能になるだろう。
まことに、良い機械とは簡素な構造でありながら力強くなければならない。
魔術や神秘などという頼りないものではない、鋼鉄と蒸気こそが啓蒙なのだ。
我々は思考の次元がいまだに低すぎる、もっと啓蒙が必要だ。
やはりメンシス協会などという神秘と上位者頼りの連中が失敗したのも当然である。
そもそも上位者などインチキ錬金術師と同様のいかがわしい連中を崇めるのが間違っている。
貴方は3億エリスで狩人の工房に蒸気機関を据え付けることにした。
だが薪程度では全く足りない、貴方が必要とする冒涜アメンドーズを容易く殴り殺せる蒸気甲冑には英国海軍の新鋭戦艦に匹敵する熱を生み出す何かが必要だ。
旧主の番犬ならボイラーで飼っていれば良い暖房になったのだろうか。
あるいは未来では原子力を利用できるかもしれない。
貴方はウィズとゆんゆんというアークウィザードの同居人を二人も持っているにも関わらず本来は神秘が好きではない。
神秘で殴るより鉄塊にヤスリエンチャントして殴った方が早くて確実に殺せるのは常識。
なぜ世間の魔術師が魔法の杖は木製なのか、鋼鉄製の杖を振り回さないのか不思議で仕方ない。
後衛だからという理由で近接に備えないのは甘え。
というわけで、貴方はウィズの為に魔法の杖をアクセルの街の近郊に住む刀鍛冶に打ってもらった。
貴方にとってウィズはいつも身の回りを世話してくれる大切な人だ。
ゆえに特別なプレゼントが必要だ。
「え?プレゼント!?うふふ、やっぱり…え、いいですよ!それで?どんなのが…」
貴方はウィズに特製の杖を渡した、死者の王たるリッチーにふさわしい立派な杖だ。
それは杖と呼ぶにはあまりにも大き過ぎた
大きく 重く 分厚く そして大雑把過ぎた
それはまさに鉄塊だった
剣としても使える優れものだ。
振り回して使うのだ。
「ええ…」
ウィズの目から光が消えていく、光を宿さぬ昏い目は思索の海に深く潜る前触れだ。
その日、冒険者ギルドへの人生相談を振られたルナ嬢も目を昏くした。
Q:彼氏がプレゼントしてくれた物が名前だけ杖で、どう見ても鉄塊のような大剣なんですが
A:ええと…
昏い目は獣の蕩けた目の兆候だ。
人と獣の境目が曖昧になる獣狩りの夜は近い。
名前だけ杖の大剣をプレゼントとは変わった人間もいる者だ。
アクセルの街にも貴方以外に啓蒙が高い人間がいるのだろうか?
…
スケルトンやゾンビといったアンデッドは血が不味くて嗜めるものじゃない。
ウィズの甘い貴腐ワインのごとき血やゆんゆんの刺激的なシャンパンのような血こそ…
おっと、貴方は獣性が高まってしまったようだ。
黒い鴉のイメージで現れた貴方の獣性を押さえ込まなければ怒りと憎悪に飲み込まれるだろう。
『委ねろ…委ねろ…全てを委ねろ…』
この素晴らしく呪わしい汚物に満ちた世界では憎悪は重要だが、手綱を握るべきは貴方である。
獣性が高まると
…ふぅ、上位者でありながら人である貴方は獣そして狩人でもある。
矛盾しているようだが
人型のモンスターが貴方相手に大振りの攻撃をするのは自殺行為である。
もっとも小振りの攻撃でもパリィを失敗する気はないが。
百戦錬磨のガンパリィマンである貴方にとって内臓攻撃からの回復はもはやポーションがわりである。
あとはクエストといえば近場のダンジョンの中でいつもの通りあちこちの哀れなアンデッドを片っ端から鉄塊で殴って土に返すくらいだろうか。
聖杯ダンジョンでもそうだが、狭い場所に誘き寄せての幕末戦法は貴方の十八番である。
あとは高い場所に陣取って火炎瓶を投げまくったりガトリングでの掃射くらいだろうか。
一方で初心者殺しなるモンスターの討伐依頼を受けると貴方は必ず相手を血臭で誘き寄せてから仕掛け爆弾で脚を潰して、射程外からなぶり殺した。
貴方のダンジョンやヤーナムでの狩の経験が役にたつ、脚を潰してから相手の射程外から殴り殺す。あるいは地形を利用して、はたまた罠を仕掛けて。
幾星霜、修羅魔道の死線を潜り抜けてきた貴方の経験が狩を成功に導く。
人は弱く、怪物は強い。
それでも戦わねばならないのなら?
ありとあらゆる卑劣外道鬼畜な手段を使ってでも必ず勝たねばならないのだ。
大ぶりの攻撃を誘ってからの内臓攻撃だろうと、人質を取っての騙し討ちだろうと狩という結果が同じなら問題はない。
騎士道?武士道?何それ、匂い立つの?
貴方は狩と街の往復に飽きたのでアクセルの街をぶらぶらすることにした。
ダンジョンや森では腑をぶらぶらさせていたが、ここでは特に何もぶらぶらさせていない。
そのうち神々の誰かあたりが腑を媒介に顕現するかもしれないくらいぶらぶらしている。
アクセルの街の冒険者ギルドは今ではほぼ特殊清掃ギルドだ、ルナ嬢の目はますます昏くなりつつある。
実にいいことを言った。
そんな貴方がぶらぶらしていると匂い立つ店を見つけた。
?男性冒険者が二人、路地裏に続く通路の前で何かこそこそしている。
きっと隠しアイテムがあるに違いない。
貴方の瞳がアイテムは隅々までチェックせよと命ずる、死体は念のため殴ってから漁れとも。
「げっ…狩人さんかよ…あんたにはウィズさんとゆんゆんちゃんがいるだろ…
立派な物をお持ちの同居人が二人もいるんだからこの店に来る必要なんざないだろ…」
なんのことやらさっぱりわからない。
「何?知らないって…くそっ、俺だってなぁ…」
何を泣いているのだろうか?
「おい…はぁ、じゃぁ男として言うけどさこれは絶対に秘密だぜ?
特に女性陣には」
貴方はアクセルの街に何故かなり高レベルの男性冒険者がいまだに多いのかの謎を聞いた。
啓蒙が1アップした気がする。