このマジェスティックな狩人様に啓蒙を!   作:溶けない氷

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第21話

もしも狩人様がドリフターズの世界へ行ったら…

別に変わらない

薩人マシン・魔王・源氏スナイパーといった面子にクレイジーサイコパスが増えるだけだ

 

「命まではいらん、目と脊椎と内臓だけで我慢してやろう」

 

もちろん卑劣外道鬼畜なエグい戦法をむしろ喜んでとる

「とりあえず死体にすれば何か落とすだろ(毒メス投げながら」

 

ゆんゆんがウィズのお店に来るといつものように

店員さんが彼女をお迎えする。

「あら!いつも可愛いわね」

ウェヘヘへという笑い声と共にゆんゆんを迎えるのは狩人を慕う使者達だ。

言葉はわからずとも、可愛らしいものですね(人形ちゃん

ゆんゆんがプレゼントしたお揃いのリボンをつけてお洒落のつもりらしい。

本人達が気に入っているのなら,まぁ良いではないか。

この世界には養殖なる概念があり、自身で敵を倒さずパーティーメンバーに倒してもらっても、トドメさえさせば自分に経験値が入るらしい。

しかしそれで強くなれるかどうかは貴方は疑問だ。

成る程、確かに敵なら倒せるだろう。

だが本当の強敵、恐ろしい獣との遭遇戦では?

結局のところ、物を言うのはどれだけ絶望を焚べたかにかかっている。

助言者の助言。

何も分からずとも、ただ獣を狩ればいい。

それは真理である、ろくな経験もなしに”獣”に臨んでも”死ぬ”だけだ。

「それでですね、狩人さんはやっぱり凄いんですよ!

この前なんか魔王軍の幹部を簡単にやっつけちゃうし」

ゆんゆんは友達(使者)に友達(狂人)自慢をしている。

無論、使者達は貴方の長き一夜の冥府魔道についてはよく知っている。

たとえ別の夢の中だろうと、たかが一回死んだだけの新人不死者に遅れを取るなどとは悪夢にも見ない。

死んで強くなり、死んで勝つ。

それこそが狩人が狩人たる所以である。

であるならば、なればこそ。

一度しか死ねないこの世界の住人の命はとても重く尊い。

貴方自身はそれで良いと思った、命は一つしかないからこそ美しく尊い。

一山いくらの狩人のそれとは比べようもなく貴重なそれを無為にすることは許されないのだ。

 

「私もどうすれば狩人さんみたいになれるかな?」

ヤーナムへ行けば誰でも簡単よ。

これは冗談だが。

いうまでも無く、自身は気づいていないかもしれない。

ゆんゆんは素晴らしいマジックハンターになるだろう。

技量よりの杖とライト・オブ・セイバーの組み合わせは極めて物魔双方でバランスが取れた良い魔法戦士スタイルに仕上がっている。

ここから更に技量から神秘を強化してゆき、落葉装備のマリアの狩衣装を装備して行けば

”豊満なるマリア”を名乗ってもいいだろう。

物語は円となって繰り返されるのだろうか?

ところで季節はすっかり冬に突入した。

例のゆんゆんの”大親友”のめぐみんの属するパーティーは相変わらず貧乏生活から脱出できていなかった。

ギルドに聞いたところではなんでも雪の精討伐に出かけたらしいが?

「なぜ戦闘力皆無の雪の精にこれだけの賞金がかかっているかわかります?」

知らん、彷徨う悪夢みたいなもんだろう。

確かに弱いが、よくとんでもないところにいるので遠回しに死亡原因になったりする。

だが雪の精を討伐していると冬将軍が現れるとか…

冬で将軍というとちょっと違うが『嫉妬!?嫉妬なんですかぁぁぁぁぁ!?』

の金色三角の師匠のローゲリウスが思い浮かんだ。

彼は確かに強かった、しかし実はカインハーストの血舐めの方がうざかったのは内緒だ。

では雪精も倒していると突然血舐めになって襲いかかってくるのだろうか?

カインハーストのは普通に1匹でもベルディアより強いのでできれば相手にしたくはないのだが。

ちなみに3億エリスがかの将軍にかけられた報奨金らしい。

基本は強さで決まるが、一般人にはほぼ無害なためにこの値段だとか。

強さと被害度によって懸賞金は総合的に決定されるらしい。

では、もしも貴方が上位者としての力を思う存分ふるったらどれだけの報奨金がかけられるだろうか?

月の魔物の力をふるい、世界を赤い月の儀式によって深淵に飲み込み

世界そのものをヤーナムと化す。

軽く1000億エリスは降らないと思うのだがどうだろう。

だが今となってはわからない、もはや貴方の上位者としての力は封じたのだから。

そして再び血によって人となった貴方はまたも新たなる人の進化を望む。

そもそも啓蒙とは、血の穢れにより得るもの。

では穢れとは?それは人中に潜む虫であり連盟が見出すそれである。

虫とはそもそも何か、人中の淀みであり導きの光。

結局のところ、聖剣が見出した”導き”とは下等なカラスにすら宿る虫でしかなかった。

だが虫が人間性を導くのもまた事実である。

穢れとは人間性。

水清ければ不魚住とは言うが、穢れなき清浄さに命は宿らないのだ。

アンデッドとは人間性なき清浄さ無機質さゆえに命を宿さぬ。

では、ならばならば…

上位者とは結局のところ人でしかなかったのだ。

それは貴方自身が証明している。

狩るもの、狩られるもの、主催者すら人という滑稽な獣狩りの祭りへと成り果てる。

しかし人の形を捨てた物が人であろうか?

逆に人ならざる人の形をしたものはやはりひとではないのだろうか?

ウィレーム先生は教えてはくれなかったが、ここにウィズというポンコツリッチーでありながら人の形を捨てていない絶好の例がある。

「へ?私ですか?」

人形ちゃんが運んできてくれたスコーンと紅茶で午後ティー中の店主である。

働けば働くほど貧乏になるので今の所は店番だが、

遠くない将来には経営の実権を使者達に明け渡す羽目になりそうだ。

ちなみに使者達はどこからともなく聖剣や神秘の武器を持ってきたり、聖杯ダンジョン内にも出張するあたり明らかにウィズよりも有能だ。

「ひ…酷くないですか…確かに貴方の使い魔が優秀なのは認めますけど…」

貴方はお詫びだと言ってウィズに贈り物を差し出した。

ペンダントだ。

「え、?えぇエェ!?ぺ!?ペンダント!?ペンダントなんで?」

奇妙に声が裏返るが他意はないのだ、かの美しき獣エミーリアの持ち物であったが…

「た…大切な思い出の品って。いいんですかこんな高価そうなもの…」

前の杖は失敗だった、持ち主のステータスを確認しなかった貴方の失敗から反省してのこのプレゼントだ。

「うふふふ、いいですよ。許してあげます。

ほら、似合いますか?」

虫の宿らぬ器であるウィズに穢れの虫が石となったペンダントはよく似合う。

アンデッドゆえに穢れの虫の宿らぬウィズを人中の穢れで満たした時、彼女は貴方の赤子を宿すのだろうか?

貴方は興味津々だ。


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