貴方とウィズが贈り物をしている場面をゆんゆんはドアノブの鍵穴からのぞいていた。
無論、貴方は彼女の息遣いと匂いから感じ取っていた。
しかしながらそんなことを指摘するのは不躾という者だろう。
貴方の優しさの一端でもある。
(えぇー!い、今のプロポーズ!?プロポーズだよね!?)
彼女も思春期を迎えた女の子である、ゆえにこのような事情については興味津々。
ゆんゆんはウィズがアンデッドであることを知っている、ゆえに恐れているのが子供を成せないことだ。
だからこそ貴方とウィズの間の関係が進展しないのは子を成せないからだと考えている。
そんなことは貴方にとっては微々たることだが、この世界の人間の一般常識からすればおおごとである。
二人と一体はゆんゆんにとって非常に大切な親友とでもいうべき存在で、彼らのためならどんな苦境も甘んじる覚悟である。
かなり重い友情であろう。
ゆえにウィズの体面のためにも自分が代わりに貴方に孕ませてもらい代わりに産むという、
14としては非常にしっかりした覚悟がある。
はっきり言って、それは世間的にいうと2号さんとか妾とかそういう関係ではないだろうか。
非常に重い友情の押し売りすぎてつらい。
とはいえ、男が一家の長として家を継ぐ次世代を持たねばならぬという周囲からの視線は非常に重いし貴方の故郷の英国では当然にしてもはや義務である。
英国での女性の法的権利・立場は非常に女性不利となっている。
貴方は女性参政権に賛成するほど過激ではないとしても権利の平等という視点からは男性優位の社会に完全に賛成するほどガチガチの保守主義者でもない。
何と言っても大英帝国の女王は女性なのだから。
一夫一妻は理想でもあるが、ホモ・サピエンスは発情したボノボ・あるいはチンパンジーに近い。つまり生物学的には一夫一妻になるようにできていないのだが…
とはいえ、この世界では一夫多妻は夫に力があれば強い子孫を大勢残すという観点からかなり寛容だ。
これも魔王軍との戦争が長く続くおかげだろう、この恩恵を最も受けているのが王国貴族だろう。聞くところでは王族は強い男性・あるいは女性冒険者の血を受け入れることで個々の戦闘力を増し支配力の後ろ盾とする。
力こそ正義なのはどこでも変わらない真理である。
女王ヤーナム、時計塔のマリア様を見てもわかるようにカインハーストの王侯貴族の血を受け継ぐ者達も強者である。
どちらもこの世界の魔王より遥かに強かったりする。
強さは尊さでもあるのだ。
貴方は誰から見ても桁違いに強大な冒険者でもある、それこそこのベルゼルグ王国の王侯貴族が娘を嫁がせようと思うくらいには強い。
貴方とウィズの間に子供を期待するのは何も貴方達だけではないのだ。
ゆえに世間体というものがあるので、子供ができないと女性…
つまりウィズの方に厳しい目がいく。
そんな目にあってもらいたくないのでゆんゆんは自分が身代わりになるという選択肢を考え選んだのだ。
しかしそんな彼女達のある意味サイコパスな思考に水をかける者がいた。
ウィズはいまだにペンダントを身につけさすってニヤニヤした笑顔を浮かべている。
貴方は紅茶を嗜み、人形ちゃんに世話をしてもらっていると。
「ああ、狩人さま。貴方様は新しい愛を見つけられたのですね」
そう、愛である。
貴方は人形ちゃんを愛している、母親のように恋人のように娘のように・
「え?」
貴方の言葉にウィズは固まり、思考がフリーズする。
「はい、私も貴方様を愛しております。
それはとても自然なことでございましょう?」
ウィズは石化した。
貴方は正しく、そして幸運だ。
とはいえゆんゆんにとっては看過できない状況でもある。
(えええええぇえぇ!?浮気!?堂々浮気二股宣言!?)
ゆんゆんの目線からすれば最低であるが、同時に彼女は人形を深く深く深く愛してもいる。
ここには愛が多すぎるのか。
貴方は最後の4本目の3本目を人形に手渡した。
なぜか…古工房で手に入れたこれだけは使うことを躊躇った、愛ゆえにである。
「ああ、狩人様。なぜでしょう…これから…とても懐かしく、温かさを感じます。
おかしな話ですが、また会える気がするのです。
とても懐かしく、とても近しい人に…」
ああ人形よ、4本目の3本目によりて汝は遂に人の人ならざる母となるだろう。
人形が母に、まして生命を宿すはずもなく、ゆえにこれは得体の知れぬ者である。
貴方はマリアの宿した血の炎を重ねて3本目に託した、
まさに炎と血は生命の根源そのものであるがゆえに、彼女は最初の火に近き者であったのだろう。
そして貴方もまた狩人ゆえに遺志を継ぎ、炎を継義、そして今託したのである。
すると突然ゆんゆんがドアを開けて入ってきた!
「話は聞かせてもらいました!
わかりました…狩人さん!私…私…私!ウィズさんと人形ちゃんの分までも頑張って産みますから!」
ますます啓蒙をあげた貴方の弟子であった。
なんと、狩人は狩人を慕うのだろう。