このマジェスティックな狩人様に啓蒙を!   作:溶けない氷

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1885年ロンドンを襲撃したドラキュラ伯爵をヴァン・ヘルシング教授をリーダーとする”連盟”が撃退・封印する。
獣も吸血鬼も同じだ。


第23話

貴方は弟子であるゆんゆんと共にギルドにやってきた。

ギルド内は貴方が来るまではワイワイガヤガヤと賑やかだったが、

貴方が血と獣除けの香の慣れ親しんだヤーナムの香りを漂わせながら入って来ると空気が凍った。

「おい…目を合わせるな、死ぬぞ」

「ひっ!ああ、ジェ、ジェウォーダンさーん。よくいらっしゃいましたねー(棒」

これはどうしたことだろうか?

最近は獣を狩っては血を流させ、狩っては流しといった業務をこなしていただけなのに…

皆は貴方と目を合わせないようにしている。

なるほど、目と目があったらその瞬間に闘争が始まる狩人を恐れているのだ。

諸君らは皆、実に賢明で、正しくそして幸運だ。

そして賢明だったり、勇敢だったり、正しかったり幸運だったりとかそういう事が通じないのもヤーナムだ。

貴方はカズマ少年が酔った他の冒険者に絡まれているのを見た。

なんでも彼の立場が羨ましいらしい、最弱職でありながら上級職で美人のメンバーに囲まれて楽して冒険できていると思われているとか…

貴方は興味が湧いた、確かにあのヤーナムでも強力な狩人を助けに呼べたのなら強敵にも勝てるだろう。

だがホストが連携をへたって死ぬとか、青霊がヘマをして強化されたボスが残るとか闇霊が厄介な場所でホスト狩りをするとかそういうデメリットも多い。

そして貴方が召喚する者達はなぜか変態が多かった。

例えば全裸とか人形コスのおっさんとか、頭がカリフラワーでドレスとか冒涜的形状をしたものが圧倒的に多い。

とはいえ実力的には億戦練磨の地底人だ、これも羨ましいに入るのだろうか?

あの冒険者には今度、頭のおかしい狩人御用達の呪われた冒涜聖杯巡りに行かないかと誘ってみよう。

豚、死体巨人、旧主の番犬…きっと満足してくれるはずだ。

貴方はカズマ少年に絡んでいた冒険者ダストに近づいて話しかけた。

彼らは何やらもめているようだが…

「上級職の美人ばっかりに囲まれて、良い思いをしているだって? ふっざけんじゃねーぞおめぇ! この俺のどこが恵まれてんだよ!」

どうやらあの少年はパーティーメンバーの件で他の冒険者とトラブルになっているようだ。

美人…

ヤーナムにも美人はたくさんいた、が全員間違いなく何らかの問題を抱えている上に貴方を積極的に殺そうという姿勢の人々であった。

貴方はメンバー交換には興味がない、所詮狩人は狩人。

鐘の音で呼び出したり呼び出されて気まぐれに強力した次の瞬間には派閥の違いから殺しあうのもしょっちゅうの連中にメンバーなど。

 

「お前変わって欲しいっつったよな!? 

喜んで変わってやんよ! 

ほらほら!今すぐ変わってくれよ!

俺はもう、こいつらの面倒を見るのは金輪際御免なんだよ!! 」

少年は勢いのままメンバー交換を酔った冒険者にゴリ押しし、

爽やかな笑顔のままで新しいメンバーとともに次なる冒険へと旅立っていった…

かつて、貴方も彼のように清々しく血の医療に希望を持って

ヤーナムへと赴いた時があったのだろうか?

蒼ざめた血をなぜ貴方が求めたのか、今となってはわかるはずもない。

だが結果は、待っていたのは狂気と汚穢の世界でしかなかったのだが…

とはいえ慣れれば”たーのしー”ヘーキヘーキ

貴方は意気揚々と冬季のゴブリン退治へと出かけるぞと気勢をあげるチンピラ冒険者と頭のおかしい三人女子を見守った。

そして掲示板の初心者殺しの狩のクエストをかたっぱしから受注した。

チンピラ冒険者ご一行の彼らはまさに血酒のごとく啓蒙低く獣性高い、良い撒き餌だ。

 

もちろん違う。

貴方はこの即席パーティーが受けようとしている季節外れのゴブリン討伐に興味を持った。

ゴブリン、例の緑色の亜人でいわゆる人型をした雑魚である。

もっともヤーナムの群衆に比べれば可愛いものだが武装し殺意を持つ相手である以上は油断はしない。

しかし人型である限りはある程度の練習になる。

人を殺すというのはなかなか一般人にとっては難しい注文ゆえ、

まずは殺しやすい相手を殺してみて次に人を殺してみるのは悪い選択ではない。

貴方は冒険者組合の殺人練習システムに感心した、もっとも誰であろうと何の感慨もなく殺せる貴方にとっては不要無意味な代物だが。

 

聖杯が作りし最凶最悪のダンジョン。

一瞬でも油断すれば、死ぬ。

細心の注意を払っていても、やっぱり死ぬ。

たとえ貴方がカンストでも下手に突っ込めば犬ネズミのように死にまくることは間違いない。

というか犬ネズミは普通に強敵だった、小さくとも素早く石すら齧ってしまうネズミが大型犬サイズだったりするのだ。

並みの人間なぞひとたまりもない。

それを言い出したら人食いカエルが初心者向けというこのアクセルの街も大概魔境の気がしてきた。

そう考えれば冒険者とは狩人にもなりうる素質のあるものがゴロゴロいるということだ。

人食い豚が現れてもアクセルの街の冒険者ならきっと大丈夫だ、尻を取れば一瞬で倒せるのだからある意味ではカエルより容易い。

強敵凶悪トラップが満載の上に呪われた儀式によって敵が強化されたり、自らの体力を減らして挑戦できるのだ。

「え?あのおk…新生アクアパーティーに同行するんですか…」

受付のルナ嬢は貴方たちを狂人を見る目で見た。

 


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