このマジェスティックな狩人様に啓蒙を!   作:溶けない氷

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600ニトロエクスプレス改造弾を発射するこの短銃は反動が凄まじい。
こんな化け物銃を19世紀に考えるとか英国人の英国面は全開過ぎ。
青いランタンを使う、13mm対戦車拳銃のご同類。
カズマが使わせてもらったら肩が千切れかけた。
もっとも0距離から突きつけて撃ったとしても獣相手には牽制にしかならないが。


第24話

貴方は新生アクアパーティーを見送った。

彼らが初心者殺しに殺されれば仇を討つし、殺されなければ近くまで降りて来た初心者殺しを狩るまで。

それにしても心配なら彼らをカズマ少年も見送るくらいすればいいのに。

流石は鬼畜外道卑劣のカズマである。

貴方がアクセルの街でウィズの指示通りに買い物をしていると

新生パーティーを組んだカズマ少年の一行に出会った。

彼らは受注したクエストを事前に吟味し計画を立て、事前の準備のために買い物をしているところだという。

…正直、あまりにも普通で当然というべき冒険者の姿勢だ。

本当に鬼畜だろうか?

「いやぁ、これまではあの3馬鹿ときたら考えなしに受けてその場の勢いだけで攻略しようって脳筋思考だったもんで」

貴方はこれからカズマ少年が攻略するクエスト情報を見せて貰った。

敵の性質や味方の冒険者の特技や地形などを考えた上での事前攻略の案がノートに書いてある。

ここまできっちりと準備をするとはもしかして彼は勤勉なのだろうか?

貴方にしてもヤーナムの事前の情報があればあそこまで死ぬことはなかったろう。

もっとも、たとえあったとしてもカズマ少年より鬼畜さでは上の狂った狩人が放っておくはずもないが。

「あ、狩人さん。あのですね、ちょっとお願いがあるんですよ」

何だろうか、いやわかる。

カズマ少年は貴方に狩人のスキルを見せて貰って覚えたいという提案だった。

狩人のスキル…まぁいいだろう

貴方とカズマ少年は街中の空き地にやってきた、なるほどこうやって連盟の彼も新規を勧誘してきたのか。

藁人形を用意させ、左手に銃を構え装填する。

貴方はカズマ少年にいわゆる早撃ちの極意を教えることにした。

狙う必要もない、至近距離。

当たらないなら当たる距離で撃て、効かないなら効くまで近づけ。

狩人の狩では3m以内での接近戦がいつものことだ、外せば死ぬ。

「おお、やっぱかっけえなぁ。なんていうか古風で、三銃士みたいな感じで」

カズマ少年は銃に憧憬を抱くようだ。

それにしても彼は一体どんな場所で育ったというのだろうか、銃も剣もその歳になるまで全く訓練されていないなどまず考えられない。

貴方にしても”神秘”を扱えるが、かつての神代と違い威力も使い勝手も大幅に減じている。

太古、神代の時代には世界には呪術・奇跡・魔術があったというが現代では神秘は失われた。

ゆえにわざわざ神秘などとつけねば人はかつては当然の魔法すら使えなくなっている。

上位者の力ですら人の鉄火にはもはや敵わなくなりつつあるのだ。

神秘も魔法も純粋な暴力の力として追い求めるのならもはや鉄火よりも劣る代物だというのに、暴力としての魔術を追い求める魔術士など滑稽でしかない。

とはいえ、それはあくまでも元の世界であり未だに魔法が有効なこの奇妙な世界でなら魔術は良い戦術の一つでもある。

銃を撃つと凄まじい轟音とともに脆い藁人形は容易く砕け散り、近くで見ていた冒険者たちも顔を青くする。

「よっしゃ、これでスキルに…ってでない!?」

銃撃関連のスキルはどうやら冒険者カードには登録されていないらしい。

狙って引き金を引くだけの動作がスキルとも思えないので当たり前か。

ならばと貴方は銃をカズマ少年に差し出した。

「えっ?いいんですか?」

貴公もその年ならもう銃を覚えて当然だろう。

カズマ少年が格好をつけて西部劇のガンマンのように撃つと…当然のように衝撃で手首と肘と肩を骨折した。

のたうち回り、新しい冒険者仲間に治療を施してもらうカズマ少年を貴方は冷ややかな目で見ていた。

どうも銃はまだ早かったらしい、と。

結局カズマ少年のスキルポイントでは貴方の剣・銃・そして神秘のどれ一つとして覚えられなかった。

どれも取得のためのスキルポイントが圧倒的に足りなかったらしい…

ところが最後に駄目元で披露した秘儀だけが取得可能らしい。

秘儀 ”使者の贈り物”

悪夢に潜み、狩人を慕う使者たちの、怪しげな贈り物

使用者は黒い悪夢の霧に包まれ、直後使者の姿を得る

 

それは児戯幻想の類であり、大きな行動はその幻想を破ってしまう

ゆっくりと移動するくらいがせいぜいだろう

 

カズマ少年はなぜかそのスキルを取得した。

…正直使い道がない花鳥風月並みの宴会芸だと思うのだが?

「いや、これ結構使えますよ!

だってほら、待ち伏せや偵察時の隠密と組み合わせればいいんですから」

カズマ少年によるとこのスキルはもともと盗賊系の彼のスキルビルドを一層強化するらしい。

なるほど、隠れた場所からの奇襲やスティールで敵を殺そうというのか。

そう考えれば非常に有益だとも言える。

 

その後、新生パーティーとともに出発したカズマ少年は新しいメンバーとも意気投合し

泣いて謝ってきたチンピラ冒険者とのメンバー再変更を渋々承諾したという。

なんだかんだで面倒見の良い少年だと思った。

 

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