このマジェスティックな狩人様に啓蒙を!   作:溶けない氷

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聖なるピンを外し、3つ数えろ
それ以上でもそれ以下でもなくきっかり3つ数えるのだ
数えるのは3つ、4でも2でもいけない、5は以ての外である
3つまで正確に数えた時点で、手投げ弾を敵に放り投げなさい
目障りな敵がくたばるであろう、アーメン

武器の書 だいたい9章くらい 多分詩篇20だったか30 聖アッティラの聖なる手投げ弾について



第25話

冬はその寒さを増している。

そして紅魔の娘 ゆんゆんは相変わらずぼっちソロクエストを受注して帰ってきた。

だがクエストではともかく今の貴方の家で居候になっている彼女は人形の相手をする使命がある。

貴方は彼女を愛おしく思った、少なくとも使者たちと同じくらいには。

貴方は燃え盛る暖炉の火の前で童話を彼女に語って聞かせてあげるのだ。

将来、彼女が赤子を持った時には語り聞かせられるように。

そういえばあれからカズマ少年たちはどうしたのだろうか?

結局、カズマ少年とその少女達三人はパーティーを元に戻した。

いわゆる腐れ縁という者だろうか?

この寒空の下、凍え死んでいなければいいが。

冬に銀行口座に蓄えがないというのは致命的である。

この地方はヤーナムに比べれば暖かいが、それでもただの人間である彼らには応えるだろう。

貴方の装束は黒一色だ、連中は常に暗がりに潜み貴方も同様だからである。

この世界の基準ではハンターや戦士というよりは暗殺者や盗賊に近い、とはいえご同業の連中の卑劣さ外道さを考えればこの指摘も間違ってはいないのだが。

だがゆんゆんまでもが昏い夜の色に染まる必要はない、華麗なマリアの衣装が似合うだろう。

 

 

昔々、冬に少女がマッチを街頭で売っていました。

でも誰も見向きもしません。

窓には鉄格子、ドアは閂がかかり窓から獣避けの香が匂ってきます。

少女は寒さのあまり売り物のマッチで暖を取ろうとします。

一本すると、火の中に光景が見えます。

獣です、磔になった獣が焼かれる光景です。

なんて昏くて穢れていてそれでいて暖かそうなんでしょう。

でもマッチが消えると赤い火も消え、後には燃えかすの灰が残りました。

そうさね、いつか火は消え闇だけが残るだろう。

深淵に飲み込まれることを恐れた少女はまた火を求めてマッチを擦ります。

ふん哀れだな、まるで火に向かう蛾のような少女だ。

シュッ!

マッチが燃えるとまたも火の中に光景が見えます。

血と臓物にまみれた狩人の背中が見えます。

甘くてクラクラする血の匂いが漂ってきそうです。

少女はなんて匂い立つんだろうと思いました。

狩人が持つ鉈から漂う匂いに餌付きます。

少女は未だ闇を恐れていても、我ら食餌の時なのです。

少女がマッチをありったけ擦ると大きな火の中に少女を可愛がってくれた唯一の人であるおばあさんが見えます。

 

「お願い、わたしを連れてって! マッチが燃えつきたら、おばあちゃんも行ってしまう。 おばあちゃんも消えてしまう!」

すると炎の中に現れたおばあさんは無表情に少女を突き放します。

「だから奴らに呪いの声を…」

深淵へと落ちていった少女が何を見たのかはわかりません。

夜がふける頃、もうマッチ売りの少女はいませんでした。

からカラカラと鉄と地面が擦れる音が響くだけ。

そこには殺された狩人の鉈と銃を拾い上げ、今や血と炎に酔う獣狩りの狩人がいるのみです。

「おばあちゃん!どこもかしこも獣だらけなんだね!」

 

少女は火口にマッチで点火し、獣も人も等しく狩っていきます。

人は皆、獣。

今日もまたゴミのように見捨てられた者が獣となり、人に襲い掛かります。

だから少女もまた獣狩りなのです。

怪物と戦うものは自らも怪物とならぬよう心せよ。

汝が深淵を覗きこむとき、深淵もまた汝を覗き返しているのだから。

めでたしめでたし

 

貴方はゆんゆんに子供向けの童話を暖炉の前で読み聞かせてあげた。

安楽椅子に座った彼女は

だから貴方は彼女を労ってこう声をかけてあげるのだ。

「蒼ざめた血を求めよ、狩を全うするために」

それは貴方の原点でもあり、そしてゆんゆんが求めるものでもある。

その後、貴方は彼ら一行が幽霊屋敷の幽霊人形退治のクエストを受注したことに多いに興味を持った…

動く幽霊人形、だが人形は動くものだ。

常識であろうに。

貴方はこの幽霊人形騒動にぜひとも同行したいと依頼主の大家に詰め寄った。

「えぇ…あt…ご高名な狩人さまのお手を煩わせるほどではありませんよ。

それに屋敷を消し飛ばされても困りますので…」

なんということだろうか、貴方は目に見えるものを全て破壊し尽くす獣のような人間だという噂を建てられてしまっていた。

実に遺憾である。

もっとも幽霊が退治できるか?という大家の問いに対し貴方は自信を持ってYesと答えた。

そもそも幽霊などカインハーストの城では飽きるほど殺してきた。

たかが動く程度の人形などカインハーストの嘆きの侍女達に比べれば家の装飾に使えそうなほど可愛らしい。

むしろヤーナム基準では優良物件なのでは?

死人を殺すというのも奇妙な表現だがとにかくそういうものなので受け入れてほしい。

貴方は大家さんに呪われた大量虐殺事件のあった城の幽霊問題を全て解決したと伝えて、自信があると言った。

…なぜか大家は渋ったが…

「わ、わかりました。ですがこの件は既にカズマさんのパーティーに依頼していますから貴方はあくまでも見学ということですからね?

アークプリーストさんに浄化してもらうだけにしてくださいよ?」

大家はなぜか涙目だった。


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