このマジェスティックな狩人様に啓蒙を!   作:溶けない氷

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第5話

貴方が墓場近くの家を改装し、人形を手入れしている。

その人形へ込められた思いは偏執にも似ているが、貴方にとっては長年連れ添った大切なパートナーだ。

母でもあり、恋人でもあり、また同時に娘でもある。

「狩人様、再び長い獣狩りの夜が始まります」

獣、それは単純な形の問題ではない。

獣性を狩り克服する、これこそが今の貴方にとっての獣狩りだ。

穢らわしい虫を潰し…潰し…

潰し…

潰し…

潰し…

潰し…

潰し…

潰し…

潰し尽くす、それこそが狩り

 

『しってるかい?人は皆、獣なんだぜ』

 

偶然かあるいは獣へと成り果てたためか、啓蒙無きあの男は獣でありながら真理をついていた。

人が人である限り、獣を狩り尽くす事など出来ない。

貴方に課せられた獣狩りは貴方が幼年期を迎えてようやく真に始まる物でしかないのだ。

とはいえ、さしあたっては獣性を求めて獣を貴方は狩始めよう。

手始めに近場のドラゴンを狩った貴方は簡単に年収1000万エリスを達成できそうだったが

この獣同然の王が支配する国は1000万以上の年収があるものは5割以上を国に税金として納めよという啓蒙低い政策のために貴方はギルドでのクエストを一時中断し自宅の改装に精を出している。

墓場の近くに居を構える頭のおかしい狩人の噂はギルドでも評判だ。

この啓蒙低い異世界では狩人は弓矢や罠といった装備で戦うのが常識らしいが

啓蒙高い貴方は接近戦からのパリィで内臓攻撃でどこでも構わず腸をぶちまけるという常識的な狩り方をしている。

弓矢でどうやって内臓攻撃をするというのか、謎である。

だがシモンの例もあるので狩人が弓矢を使うのも稀にだがあるのかもしれない。

どうやらニホンジンの

狩人の夢のごとく美しい墓地に花がそよぐ場所にしたく思い

貴方が夜に手向けの百合を墓場に植えているとウィズがやってきた。

「こんばんは、また今夜もお願いします」

貴方は墓地の近くに居を構えたのはいいが、問題が発生した。

それが野良ゾンビだ、今の貴方ならゾンビ(Lv1)どころか8週目以降の再誕者(Lv800)でもノーダメージインスタント麺が出来るまでに狩れるので問題はないが拠点の近くに毎晩湧かれるのは面倒だ。

そして肝心なことに本気で狩ると折角の風情がある墓場そのものを木っ端微塵にして台無しにしてしまう。

そこでウィズに毎晩来てもらっては、報酬を支払って墓地のアンデッドの浄化を依頼している。

この家が安かった理由は毎晩のように隣接する土地でアンデッドが発生するからだという。

だがまだ日が完全に落ちきるまでは間があるので貴方はウィズにお茶を出した。

「わぁ、これ薔薇茶ですよね。いいんですか?報酬ならもらってるのにこんないいお茶まで出してもらって」

貴方は別に構わない、そもそも1000万以上を既に報酬として貰った以上経費として沢山使わないと税金として取られてしまう。

貴方は獲物から得た資金を溜め込む趣味はない、遺志はこまめにレベルアップに使わないと死んだ時のダメージが大きいのだ。

そこでお茶を嗜みながら貴方は掲示板に張り出されたすぐそこの墓地にゾンビメーカーが出没するので退治してほしいという依頼についてウィズに話した。

ウィズが毎晩浄化しているのだから出現するとは思えないのだが、何か心当たりはあるかと

ゾンビメーカーは死体に憑依する悪霊で、他の死体を手下として操ることができる。

難易度的には低く、初心者にも手頃な相手だ。

そんなゾンビメーカーが貴方の家のすぐそこの墓地に出現しているらしい。

「えっとですねぇ、それ私だと思います。

私が墓地に来ると魔力に反応して死体が狩ってに動き出してしまうんですけど

それが勘違いされてるんだと思うんです」

どうやら毎晩彼女に浄化を依頼したのがまずかったらしい。

もっとも、彼女はそれまでも無償でやっていたので結局勘違いされることは遅かれ早かれ避けられなかったろうが。

 

「本来ならプリーストさんがやるべき仕事なんですけど、

この街のプリーストさんってみんなお金にガメ…

お金がない人の墓場は浄化してくれなくって」

 

死者の魂を放置しておくことはノーライフキングとも言われるリッチのウィズにとっては出来ないことらしい。

貴方ならカインハースト城の亡霊たちのように問答無用で狩り尽くすだろう。

「ダメですからね?墓地の魂相手に貴方の武器で斬りかかっちゃ絶対にダメですからね」

ウィズによれば貴方の武器は魔王の加護すら問題にならないレベルの悍ましい加護がかかっているらしい。

まさに悍ましい魂抉りと呼ぶにふさわしい武器ぞろいである。

そういえば、あの依頼は貴方が夜に一撃熊を狩って朝に帰ってきた時には無くなっていた。

ルナ嬢によれば受注したのはサトーカズマという奇妙な名前の少年のパーティーらしい。

とはいえ、彼らにウィズを討伐できるとは思えないしされると困る。

ゾンビメーカーはウィズが退治したと適当にごまかして彼らには獲物を横取りして悪かったと

金をやって納得してもらおうと考えた。

 

夕刻

家の中で彼らが来るのをあなたは武器を手入れしながら、ウィズは料理をしながら待っていると

かづぅま少年とやらのパーティーが近づいて来るのをあなたは感じた。

「4人パーティーで3人が上級職ってかなりのエリートですよね」

あのダクネスとめぐみんもあのパーティーに加わったらしい。

 

 

「なになに?こんな墓場の近くに家を構えるとか何考えてんの?この住人は?

馬鹿なの?頭おかしいの?プークスクス」

 

 

「おい、駄女神…どう考えても馬小屋よりはマシだろ…それに住んでる人が聞いたら怒るぞ」

遠くでそっと行っているつもりらしいがまる聞こえである。

あなたとウィズが出て行くと自称女神とその一行が顔を青くした。

 

「あああああーーーーっ!!」

「おい、どうした駄女神…あ、ジェヴォーダンさん。え、もしかしてこの家ってあなたの家でした?」

 

そうであるが、驚いたのはそれだけではないようだ。

 

「リッチーよカズマ! リッチーがこんなとこに現れるとは不届きな! 成敗してやるっ!!」

女神アクアが走り出して戦闘態勢に入る。

「何言ってんだこの駄女神は…俺には親切な狩人さんとお前に怯えるお姉さんにしか見えないぞ」

 

「いい?アンタは知らなかったのかもしれないけど後ろのそいつはリッチーなの。汚らわしいアンデッドなの。。私が墓地ごと浄化してやるんだから」

 

女神アクアが息を巻いている。

しかし、ウィズには敵対する意識は無い。

神々という上位者とアンデッドという上位者が敵対関係にあるのは知っているが個人同士で敵対するのはやめてもらいたい。

ましてやここは貴方の家だし、ウィズには大切な役割がある。

それでもやるのかと貴方は聞いた。

「当然!アンデッドは存在そのものが罪なのよ!自然の摂理に反しているのよ!」

啓蒙低い答えが返ってきた。

貴方はどうしてもやる気なら自分が彼女の側につく、アンデッドのゾンビメーカーは自分が退治したということにするから獲物を横取りした賠償として金を払おう。

それでも納得できないなら相手をすると言った。

「おい!この駄女神!何わざわざ喧嘩売ってるんだ!

すみません…こいつ頭が致命的におかしくって…本気にしないでください」

 

「ちょ!アクア!あのマジキチ狩人相手になんて事言ってるんですか!

格上相手に喧嘩売るなんて正気ですか!?

私死にたく無いんですけどー!爆裂魔法を極めずに死ぬなんて嫌ですから!」

平坦な幼女と少年が必死に青い髪を止めようとしているが、見かけによらず力が強いのかすぐ振りはらわれる。

 

「私は構わないぞ!ああ、むしろあのドS狩人に一方的にやられて手篭めにされたいくらいなのだが!」

啓蒙が少し高い騎士は剣を構えてはぁはぁ言っている。

強敵に進んで立ち向かう姿勢は賞賛されるべきだが、逃げを知らないのでは炎に飛び込む蛾のようなものだ。

 

「ほーら2対2で決まりよ決まり!

というわけでーあの極悪アンデッドのリッチと頭のおかしい狩人を浄化してやるんだから!」

 

なるほど…貴公らも何かに呑まれたか…

まぁいい、そういう者達を始末するのも狩人の務めだ…

貴方は武器を構えて4人組との戦闘態勢に入った。

ガキンという音とともにノコギリ鉈が変形し肉も骨も削り切る武器が姿を表す。

それは鉈というにはあまりにも大きすぎた

大きく 分厚く 重く そして大雑把過ぎた

それは正に鉄塊だった。

『狩人の狩りを知るがいい』




次回予告
カズマの大冒険!
『野生の獣狩りの狩人が現れた!』
「あ、俺死んだ」

このすばモンスター大図鑑

『獣狩りの狩人』
ヤーナムで蒼ざめた血を手に入れた狩人
獣を狩り、人を狩り、遂には上位者さえ狩った。
人を超え、獣を超え、上位者さえ超え神に近しい者の幼年期へと至った。
まさに人類の迎えた新しい夜明けである。
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