西方大陸戦争の序盤が過ぎかかった頃の話。
シールドライガー乗りの少女が、レッドホーンを倒すだけの話です…

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ゾイド二次創作小説~ライガー・アタック!~

 

 

 

 

 

 

 

 

・彼女の戦争

 

 

 

 

 

 

 西方大陸戦争…と呼ばれる戦いが始まったのは、かれこれ一ヶ月半前の事だ。

 

 我がヘリック共和国の統治する惑星Zi中央大陸デルポイ。その西方に位置する西方大陸エウロペでは、先の戦争の中断とその混乱が収まってから、じわじわと暗黒大陸のガイロス帝国による軍事的影響力が増大していき、対する我が国も、西方大陸に対抗勢力を構築する事でその歯止めを掛けてきたのだ。

 

 そもそも何故ガイロスは西方大陸を狙ったか…理由は諸説あるが、我が国の中央大陸から、西方大陸を挟んでさらに北の暗黒大陸ニクシーを領土とする帝国である。去る事情で暗黒大陸→中央大陸の(逆もまた然り)直接での侵攻ルートが使えなくなった今、西方大陸を経由地…有り体にいえば踏み台にして、我が国ヘリックに飛び石で攻め込む準備なのだと言うのが、我々市民の一般常識だ。

 

 

 

 状況が変わったのはつい最近の事だ。

 先のヘリック=ガイロス間での戦争…大陸間戦争の宣戦布告をした元凶であり、戦後は沈黙を守り続けてきたガイロス皇帝が、九ヶ月前、死去した。

 

 これは、我が国にとって良いニュースとはならなかった。何故なら、そのガイロス皇帝よりも遙かに強硬派・武力派のプロイツェン摂政が、ガイロス皇帝の跡継ぎで、僅か八歳のルドルフ王子を完全に黙殺し、遂に新たな戦争を開戦させたのだから!

 

 

 

 

 つまる所、私がエウロペに居るのにはそういう理由がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

     * * *

 

 

 

 

 コクピットの中からの視界は、何処を見渡しても荒れ地や岩山の露出した砂漠でしかない。

 

 それが、このエウロペ東南部での日常だ。例え自分が今まで、重装甲ゾイドであるディバイソンやガンブラスターの装甲ハッチではない、シールドライガーの広く視野の確保された巨大なキャノピーの恩恵に預かってきたとしても、それが愚痴の種にしか成らない時だってあるのだ。

 

 

 

 巡航速度、七十五キロ。

 私の愛機の上限性能はこんな程度では無いが、西方大陸の果てしないサバンナで戦争をやる上で、過酷な環境でマシントラブルを起こさない程度に――かつ、いざ実戦本番で全開性能(フル・パフォーマンス)を出しても問題を出さない為には――作戦領域への行軍(アプローチ)はこの程度の出力で行う、というのが上と現場の整備班が折り合って見つけた数値らしい。

こんな荒れ地では、俗に言うジープや装軌車両ではここまでの早さは出せないが、しかし高速戦闘ゾイドの速度では無いのも確かな、そんな速度だ。

 

 

 

 機内温度、摂氏二十九度。

 どうも先日から、私の相棒たるシールドライガーは機嫌が悪いようだ……ゾイドは生き物だ。例え生物としての残物が脳と心臓のコンポジットと言えるゾイド・コアだけで、機体自体は鋼と複合金属のサイボーグになったとしても、やはり気分の問題というのが出てくる。

 だからこういう“ジョウダン”…エアコンの送風機能を止められたり、勝手に設定温度を上げられたり…をされるのだ。

 

 

 アレだな? こないだのパトロールとそれからの遭遇戦をイッパツヤった後、整備のヤツラにちゃんと隅々までメンテしてもらえなかったからだな? あの整備のあんちゃんイケメンだからなー私は興味無いが。

 

 

 まあそれはいいのだ。私は度量が広いつもりだ。スネた相棒の面倒だって見てやれるさ。相棒だからな。あ・い・ぼ・う。 な?

 

 

 だがな、それにも限度が有るのだ。

 ナニを言うのかといえば、ゾイドの意志や感情は、時として搭乗者であるパイロットへとフィードバックされる事がある…珍しくもない現象だ。

 

 

 

 

 そして、自慢じゃないが……私とこのシールドライガーとは、……相性が良すぎるのだ。変な意味じゃないぞ? 誤解はやめてくれ。女同士なんて見たくないだろう。頼む。相手年増だし、さ。

 

 

 

 

 だから何が言いたいのか、といえば、この相棒……シールドライガーの不機嫌な感情が、まさに今リアルタイムで私自身に流れ込んできている。それも、かなり鮮明に。

 

 まるで不協和音を絵の具にして、それから水に溶いてから、水面に息を吹いてマーブルにさせた様な……ともかく、なんとも形容がしがたいそれ。

 

 これがケッコウつらい。

 重くのし掛かる様なプレッシャーが頭や身体全身に強く来て、まるでこれは…風邪? 治り掛けのようでまだ治っていないあの中途半端さの、そんな感じなのだ。

 

 

 とにかくこれらが…私は、

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 不満でない筈がない。

 

 

 

 

 

 

「………、」

 

 

 

 

 スロットル・モードはlowーHiのHi…つまり増速。それを確認してから、私は、ため息の代わりにある行動に出た。

 

 

 操縦桿を握る両腕に、僅かながら力を込める。

 これだけで、敏感な操縦特性のシールドライガーは時速が五キロ程アップするのだ。

 

 

 そうすると、この相棒のボディ・カラーと同じ色の青空はもっと輝きを増した気がして、流れる雲と地上彼方の岩山群とのコントラストは、まるで世界から置いてけぼりになった様に“私達”の後ろへとスクロールの速度を早めた。

 

 

……シールドライガーは、まるで喜ぶ様に息吹を上げた。

 

 

 

 

 やれやれ、少しはご機嫌を取り戻してくれた様だ。

 

 

 

 

 だけども、後続の本隊から、これ以上の単独突出を慎む様に、との電文がたった今送られてきた。

 でも、彼らのことは今は無視する事とする。

 高速戦闘隊のシールドライガー乗りではない者にはわからまい。機嫌を損ねたシールドライガーに付ける薬と言えばコレなのだから…

 

 

 

――最も、私自身も、〈相棒〉の病気が移ってきたのかも知れないがね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……――――――――――――……

 

 

 

 

 今、私のシールドライガーの上空を、航空支援として随伴してきた戦闘型ダブルソーダが七回目のフライパスをした。

 

 大型戦闘ゾイド・シールドライガーの、オレンジ色に透過光を反射する光吸着グラスのキャノピーに、クワガタムシ型小型飛行ゾイドであるダブルソーダの機影が横切って……

 

 

 

 

 最後に、追い抜いた事でシールドライガーよりも先行する形となったそのダブルソーダから、発光信号で私へメッセージが送られてきた。

 

 

 

“目標は近い”という合図だ。

 

 

 

 

 

 

     * * *

 

 

 

 

 

 現在、我がヘリック共和国は、暴虐なガイロス帝国に対し、自由と正義の為の戦いを開始したばかりだ。

 

 だがしかし、我々ヘリック共和国軍は…現在、敗走状態に陥っている。

 

 

 理由は単純だ。敵の数が多すぎた。それだけ。

 

 

 しかし理屈が無くてこうなった訳では当然ない。

 現場の人間の一人として市民のみなさまに言い訳をさせていただくと……先の戦争が中断してから、我が国共和国は国家の再生・再建に全てのパワーを投入した。それから四十年余り経ったその結果、現在我が国は惑星Zi唯一の豊かさと繁栄を寧受するまでに至っているのは承知の通りだ。

 

 

 対するガイロス帝国は、悲惨だ。

 大陸間戦争を中断させるほどの“大異変”の結果、国土の二分の一が海に沈み再居住不可能となったニクシーの大地。

 戦争中断直後から、ガイロス国内は武力蜂起・飢餓・反乱の混乱に見舞われたのだ…これこそが戦後、我が国が軍事を重視しなかった理由だ。とてもじゃないが、こんなヤツラなら相手にもならない、と思いこんできたのだ。

 

 だから、偉大なる帝国の再建は歪なものとなって現れた。

 本来は民衆たるそれらを弾圧し押さえ込む為に軍備は膨れ上がり、人心を統一するために、世俗の夢と希望は“豊かな大地”を懇願する物となった…将来手に入れる物の皮算用という意味でね(これだけの事をほぼ独力で成し遂げたプロイツェンという奴が、私は心底恐ろしくて仕方がない!)

 

 

 そうして結果、今の戦争が有る訳だ。

 その膨大で暴力的なガイロスの軍事力がこちらに向けられた瞬間、我々共和国軍は負けるしかなかった…

 

 

 

 だが、市民のみなさん。決して我々共和国軍は怠けていた訳ではないのです。これだけは神に誓える!

 

 

 開戦序盤の混乱も、その一方で帝国軍の前進を大陸北東部で食い止める事には成功した。広大なミューズ森林地帯を舞台に、一進一退で血みどろのゲリラ戦を、大陸東端のロブ基地に本拠を置く共和国軍西方派遣軍の総軍が繰り広げているのです(ちょっと押されてるけどね)

 

 

 空軍は日夜、敵の強力なレドラー戦闘ゾイドによるインターセプトにも怯むことなく、今となっては型落ちのプテラス戦闘爆撃機による敵補給路への空爆を敢行しています。昼も夜も夜も昼も昼も夜も、朝だって夕方だって、たった今だってどこかでやってるハズ。

 

 

 

 私の所属する陸軍・高速戦闘隊も、この戦争の最前線で常に活躍してきました。

 

 

――その任務は、進出する敵の邀撃と退却する味方の脱出路の確保。

 

 

 ええ、短くも濃密な体験でございましたよ。

 戦争が始まった当初は任官三週間程度の新米でしか無かった私も、今となってはエースの仲間入りだ(もっともこれは高速戦闘隊の総員に言える事で、要するにしんがり役の貧乏役が巡り巡って来た結果にしか過ぎない…地球語で言うところの“どくそせん”という奴だ)

 

 以下はとある一日の例である。

 明朝スクランブルがあったと思えば、昼には撤退する遊軍の支援へと出撃。締めに夕方にはキャンプを放棄、夜は密林でゲリラ戦……ああもう、お陰で私のバストは(以下検閲)…コホン、

 

 

 

 

 あー、つまり、今日の任務もその延長な訳だ。

 

 陸軍の主力である強襲戦闘隊(所謂、機甲部隊という奴である)が主導して発起された今回の作戦。私は高速戦闘隊方からただ一人選抜されて、任務部隊に編入された……という事になっている。

 

 本当はどうかな? 

 

 だって、陸軍の中でも強襲戦闘隊と高速戦闘隊は犬猿の仲である。

 猫の手も借りたい程……ライオン(ライガー)とオオカミの手は借りている……のクソ忙しさである所の高速戦闘隊からは人員の余計なレンタルだなんて御免被るだろうし、万が一でも“ロスト”…撃破…による損失・消耗なんてあったら目も当てられない。機体と人員、両方の意味だ。

 

 

 だから、私が選ばれたのだろう。

 

 

 使い勝手がよくて使い潰しの利くヒヨッコの新人……うぅ、イヤな響きだ。

 ともあれ、私は人身御供に選ばれた。本意か不本意かは別としてね。

 

 

 

 もっと言うと、残念な事に強襲戦闘隊さんの方も、割合今回の作戦はやる気がない様であった。

 何故か、といえば、今回の任務部隊の主力となる小型戦闘ゾイド一個小隊、九機……これが、今時、最前線では見ない様な型落ちの旧式ゾイドばかりで編成がされていたからなのである!!

 

 今朝、格納庫で拝謁(とーぜんながらイヤミだ)した時はめんたまおっぴろげてしまったさ。

 

 

 ガリウスだよ!?、ガリウス!

  

 士官学校の時の練習機でさえ今時はゴドスなのにさ。

 

 

 

……そう、白状しよう。我々共和国軍は追いつめられていて、戦線は大陸の北東部で固定されてしまっているのが現状の筈だ。

でも、敵の支配領域下であるエウロペ東南部にまで進出・遠征をしてまでの今回の作戦。

そこまでの価値は有るだろうはずなのにこんな準備しか出来ていない状況で、もし失敗をしたら……

 

 

 

………、

 

 

 

 救援なんて見込めない! もう、作戦の遂行の是非所か生きて帰れるかも怪しい…こんなヒサンな環境、まさにブラック。

 だから今回ばかりはいっその事、これは兵士に対する暴力として命令不服従を敢行しようか…とも思ったが、

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

 

 出来なかった。

 だってさ、私が預かった十人の部隊員、これが弟と…双子だから私とも…同年代なんだもん。

 

 だから、もし私が戦わなかったら、の…作戦が失敗して、彼らが死ぬところなんかも想像したりなんかして、……それが耐えられなくて…顔合わせの時は、何とかがんばって顔には出さなかったつもりだけど、本当はどうだったのかな?

 

 

 

 

 

 

 その時、話も聞いた。

 

 みんな、“西の生まれ”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、私はこの作戦を成功させる。

 

 

 必ず生き残って、そして…――

 

 

 

 

 

 

 

“ドォン!”

      “ドムッ!!!”

 

 

 

 

「!」

 

 

 いけない!

 敵の分布を探索する為に先行していた上空のダブルソーダ105号へ、突然の対空砲火が開始された瞬間だった。

 

 

 

《少尉、助けてください、少尉!》

 

 

 

 今回、ダブルソーダ自体とそのドライバーは強襲戦闘隊・対ゾイド飛行隊の精鋭を借りてきた訳だが、タンデムの“前部席”…戦闘へリという奴はこうである…に座るガンナーは我が隊の最年少だ。

 

 安定した動きと機動で、ダブルソーダは対空砲火を潜り抜ける。

 

 だが、そのチェリーボーイの悲鳴と絶叫が、共和国軍の軍用通信チャンネル中に響きわたっていた。

 

 

 

 

――落ち着け伍長、チェリーの中じゃあお前が一番の階級だろうが!

 

 

 

 

 咄嗟に口汚く叫んでいた私だが、同時の瞬間には、乗機たるシールドライガーのスロットルを全開放していたのも確かだった。

 

 

 

 

 ライガー、走れ!

 

 

 

 

 操縦桿を大きく前に倒し、サブ・コントロールのスティックで機体挙動モードをDからCへ……マニューバ・タイプ変更、巡航の形態から中距離~近接格闘戦時用の最適状態へとコンバット・システムの変化をさせた。

 

 

 すると、今までの巡航形態では最小に押さえられていたコクピットへの振動が、もう“彼女”にとっては構うものでも無くなったらしい……たった今、地震のような微振動にコクピット内が揺れ始めた。

 これは、巡航時用の姿勢安定装置がオフにされた、という意味だ。加速をすればするほど、これはもっと激しくなる。

 

 

 与圧のされているコクピット・キャビンは、生命維持装置の作動によって、まるで悪魔の手で押しつぶしていくかの様に空気が徐々に濃密な物となっていく。

 

 

 シールドライガーは、喜びに吼えていた。

 

 だが、六点保持式のシートベルトで搭乗席に固定されている私の体は、あまり快適とは言い難い座席の、ビニール張りの堅いクッションにさらに“浅く”沈む事となった。まったく!

 

 

 

 もう何遍も繰り返して経験してきたこれらの感覚。

 いっとくが、私は余り好きなものではないからな? 逆に、この感覚が好きで好きでたまらないという奴も同僚でいるがね。

 

 

 

……ともあれ、戦争をやっている、という気分にはさせてくれる物であるのは確かだ。

 

 

 

 そうして時速は80を越え、93、105、120、148…ぐんぐん延びていく!

 

 

《少尉、少尉ぃ!!!》

 

 

 正直、私も焦っていたよ。

 現在地は、教えられていた敵の分布予測地点からまだまだ手前の場所だったからだ。

……偽装して待ち伏せをしていたらしい相手からの先制。

 もっと言えば、我が隊の主力である九機の小型ゾイドは未だ私とダブルソーダの後方をグスタフ輸送車で行進中で…うっかり私が先行しすぎたのだ。そして、ダブルソーダ一機の火力はたかが知れている。

 

 

 今どうにか出来るのは、私しかいなかった。

 

 

……だから、“私”は敵を狩る。

 

 

 

 レーダー探知モードを遠中距離から近距離探知へとセット。

 同時に目視で捜索…弾射軌道確認、発火点補足。

 さほど遠くではなかった。ビーム、実弾、レーザー……複数機からの統制射撃だろう。ちゃぁんと確認した。

 

 

 

 ふふっ

 

 

 

……ああ、いけない。こんな時、自分は何故か笑ってしまう癖がいつの間にか付いてしまった。全く、嫌な傾向だよ。

 

 

 さておき、相手の距離はそう離れていない。レーダーで炙り出しながら、もしかしたらそれより早く、このシールドライガーの爪と牙で八つ裂きにも出来るかも、ね。

 

 

 

 

「さて…ーー」

 

 

 

 

 その瞬間はすぐであった。

 加速中のシールドライガーがその岩場の傍を駆け抜けようとしたその時、相手達はこちらへも射撃を開始したのだ!

 

 

 

 遅い!

 

 

 

 未来予測射撃。      ・・・

 飛来してきた弾丸やビームは正確に岩場を打ち砕いたが、私とシールドライガーはその十歩先は早く走っていたのだから…

 

 当たるはずがなかった。そして同時に、相手達の機種も判明した。

 

 

 

「ゲルダー・タイプ二、ザットン・タイプ一、ゲーター・タイプ一…」

 

 

 

 そう、自分たちの隠れていた岩場が取り除かれた事で、相手の姿も暴露したのだ。…そして、どうやら私の機体がシールドライガーだとは知らなかったらしい。

 噴煙が晴れて私から相手達の機影が目視できた瞬間、同時にこちらを目撃しただろう彼らの…どうやら指揮機のディメトロドン型電子戦小型ゾイド・ゲーター一機のみが、目に見えて狼狽えたのが分かったからだ。

 

 

 

 ふふん? なるほど、他の機体はスリーパー…無人機か。

 

 

 

 レーダー盤上の反応光点だけでファイアを決めてしまうのも、相手のコマンダーがそれほど出来た士官では無い事の証明だ。

 

 

 

 ならば、話は早かった。

 

 

 

「ガンサイトスタンバイ、」

 

 

 

 そう命令すると、私の右目に装着されたモノクル型の戦闘情報ディスプレイに照準環円…レティクルが出現。

 

 兵装選択、腹部インパクトカノン。

 

 最後に、私は操縦桿の左右を前後づつに微動させて…走行するシールドライガーの機体姿勢を調整、機体下部に固定されたその火器の射線軸を照準してやる…まるでシューティング・ゲームの様だった。要領は戦闘機に於ける固定機銃〈バルカン〉のそれだ。そして、

 

 

 

「レディ、ガン!」

 

 

 

 

“DODODODOOOOOOOOOOOOMMMMMM!!!!!!”

 

 

 

 

 轟音と共に、三連装衝撃砲…インパクトカノンの一斉射が放たれた!

 衝撃砲なんて名前は良いが、要するに、ロケット噴射の推進で高速飛翔する高威力榴弾…ガンランチャーというやつである。

 

 高速機動中のゾイドからも安定して攻撃をする為に取られたこの機構、ぶっちゃけると命中率は大してよろしくない。私だって、普段は余り使いたくない武器の一つである。

 

 

 しかし、今は違った。相手達は完全に立ち止まっていたから、確実に一発は命中する見立てだった。そして何より、

 

 

 

“…ーーDOGOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!”

 

 

 

 大爆発!

 一種の障害物破壊除去用の装備武装である、この衝撃砲。

 このインパクトガンは威力規模が大きいのだ。

 

 これにより、相手のゲーターはたった一撃で木っ端微塵となった。

 

 

 

《しょ、少尉…》

 

 

 

 オムツ交換は手伝わんぞ、伍長?

 

 

 

 

《少尉殿!》《何があったのですか、少尉!?》《一体、何が…》

 

 

 

 今、後続の“本隊”…私の指揮下の、九機による小型戦闘ゾイドの部隊…の搭乗員から、状況を問う通信が立て続けに着信した。

 

 ここまでの状況、一分未満。

 

 機体を停止させた私は、彼らのその声を聞いて、苦笑いという奴の表情を確かにしている筈だろう。

 

 

 ふむ、

 

 

 残存した敵ゾイドの三機も、司令機を失った事で無線操縦〈リモート〉から自律行動〈スタンドアロン〉へとプログラムが作動したらしい。

 先程の爆風によって、ゾイドの戦闘操縦を司るコンバット・システムもフリーズした様で、こちらへ応射する事無く、怯える様に後退を始めていた。

 

 

 これはどうするのかって? こいつらは経験値になる。後でじっくり、後続のヒヨッコ達のエサにしてやろう……などとソロバンを弾いた私だった。

 

 

 まあ、ここまでならば良いだろう…だが、

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 崩落した岩場の残存部から、一体の飛行型コマンド・ゾイド…俗に言う小型ゾイドより遙かに小さな、歩兵用に開発されたそれ…が飛び立っていくのが見えた。

 

 

 恐らくは斥候だろう。この戦闘の一部始終を、じっと観察〈ウォッチング〉し続ける為の…だが、私はそいつを破壊するつもりはなかった。

 何故なら…こういう時のセオリーとして、例え斥候が破壊・撃破されたとしても、その時は、それが敵の脅威度を示すメッセージとなる物だからだ(私はそれをミューズでのゲリラ戦で学んだ)

 

 

 

 

 それから、そう、今回の任務は、私は、こんなゲーター如きを撃破する為にわざわざ派遣されてきたのではない。

 もっと大きな“獲物”がいるのだ…

 

 

 

 

 

 

 あわてるな、ヤッコさんとのパーティタイムだ。

 

 

 

 

 

 

 通信に向かってそう呟いた私の表情は、果たして弟に見せられるような善き笑顔だったろうか?

 

 

 

 

 

――そして、

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 遠く彼方からの飛来音。

 空中の大気を擦過する、空を切り裂いて飛んでくるその音の多数が、この私のライガーをめがけて収束する、その音が音響聴音のヘッドセットから聞こえた、

 直後――

 

 

 

 

 

“ドム!”

     “ドゥドゥドゥム!!!!!”

                    ”ヒュルルルルルルル……”

 

 

 

 そしてこの瞬間、この私のシールドライガーに対して、長遠距離からの砲迫射撃が開始されたのも同時だった。

 

 

 

 

 中々手の込んだ真似をしてくれる、よ!

 

 

 

 

 注釈すると、そう深くない私自身の今までの経験から、こうなることは予期済みだった。最初に遭遇したこの敵小隊が、只の足止め役であったろう事も…(元来、大型ゾイドはカモにされやすい物なのだ。強力なライガー・タイプなら尚更ね)

だから、私はシールドライガーのメインパワーを落とす事はせず、暖機を続けていた。

そのお陰で、今一瞬のこの制圧射撃は、即座に再起動したシールドライガーのマニューバによって全てを回避したのだ!

 

 

 

“ドォム、ドォン、”

           “ドム!”    

                    “バゴォォォオンンン!!”

 

 

 

 105号、発火点は探知したな?!

 

 

 

 そして、この瞬間こそを待っていたのだ。

 私の怒鳴り声は、この一月半で自分でも嫌になる位に大きくなってしまった。オルディオスの耳にさえよく効く筈さ!

 そして、これに対するチェリーの回答は、“11時方向、距離450にて確認”との事。

 

 

 

 なるほど、ブリーフィングで渡された敵の予測分布と確かに符号する。

 中々我が軍の情報部もアテになるじゃないか…開戦序盤の失態は永遠に忘れない所存だが。

 

 

 

 

“ドォンドォン!!!!!”

             “ドガグム!!!!!”

                      “ドカァァァン!!!”

 

 

 

 さあ、“誘い受け”という奴に見事に掛かってくれたヤッコさん方である。

 この攻撃火力、射程…予測するにイモムシ型ゾイド・モルガのキャノリー・タイプ(重砲型)からの攻撃と見た。

 シールドライガーに目を付けられたモルガの末路を知っているかい? 正直笑いが止まらなかったよ!

 

 

 シールドライガーのゾイド・コアが、獰猛な感情で私の戦意に答えてくれる。

 

 

 そして機体は、どんどん加速していくのだ。160、170、180…あぁ、病みつきになりそうだ!

 

 

 

《エスコートします!》

 

 

 

 ダブルソーダへの砲火も止むことはなかったが、しかしチェリーも持ち直してきた様である。

 上空のダブルソーダはさらに増速し、遂には私のシールドライガーを先導する形となった。最も、今この瞬間の私の恍惚にとっては邪魔でしかなかったが?

 

 

 

――データ共有、リンク回線で!

 

 

 

 ともあれ、私の命令によって、そのダブルソーダからの最新の索敵結果が、軍用通信の中で一番のデータ通信量を持つ回線で転送されてきたのが今だ。

 

 

 

 今回、ダブルソーダには外装式の中型対地レーダーを装備させてある。

 これも、シールドライガーによる高速一撃離脱を作戦の前提に、事前にセッティングをした物だ。全ては私の計算通り!

 そう思って私は(控えめな)胸を張り……

 

 

 

 

――――――――――………………!………――――――――――――

 

 

 

 

!?

 

 

ビームだった。それも強力な、大型ゾイドが装備するような威力規模のこれは……ーー

 

 

 

 

――――――――――――――………………!!!…――――――――――――――――

 

 

 

《ガッ!》

 

 

 

 チェリーの絶叫。

 このビームは、私ではなくダブルソーダを狙った物だった!?

 その結果は…

 

 

 

「チェリー!」

 

 

 

 ダブルソーダ105の右マグネッサーが脱落、

 機体を掠めたビームによって、着陸脚の何本かも一緒に持ってかれた後だった。

 

 

 

《じ、自分よりも… ! 敵陸上戦力確認、機数、複数!!!》

 

 

 

 こちらでも確認出来ている!

 たった今表示のされた、先程転送されたダブルソーダのデータ結果。これには、私の行く手を阻むかのように…高速で走行するシールドライガーの 進路上に、敵影の光点が多数出現していたのだ。

 つまり、

 

 

 

《少尉、何が起こっているのです!?》

 

 

 

 敵の防衛線だ。獲物はもう目の前、って事だよ、チェリー!

 

 

 

 

 

――――――――――――――………………!!!!…―――――――――――――

 

 

 

 

 

 二度目のビーム砲撃、今度は連射だ!

 そして同時に、敵部隊の機影…小型ゾイドクラス…が私の目視視界に出現していた。前衛だろう。エンゲージだとか、タリホーだとか、今はどうでも良い。

 

 要するに、仕掛けられる前に仕掛けた、という事だろう相手にとっては。

 だが、こちらとて退くつもりは毛頭無いのだ。

 

 

 一気にカタをつける必要があった。

 

 

 だから…

 

 

 

「…、」

 

 

 

 シールドライガーの、腹部両脇の兵装サイロを起動、展開。

 そして、そこに装備されている、片側で八連装であるミサイル発射器の全装置を活性化“アクティブ”した後、キャノピー上に投影されたミサイルの照準環円(レティクル)を、目視できている敵影の全てへ“塗りつぶす”様にしてセットする。

 

 すると、敵機の機体シルエットとデータバンクからの分析情報が統合されて、何処に命中すれば最大ダメージを与えられるかをシールドライガーの機上コンピューターが瞬時に判断。

 それから数パターンの攻撃方法……ミサイルの飛翔タイプ、目標への誘導方法、直撃か近接爆発か、半殺しかぶち殺しか……の中から、私が最適な判断を決定すれば、後はオート。

 最後にトリガーを引くだけだ。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 シュート!

 一斉に放たれた全十六発ものミサイルが、自身の推進力とシールドライガーの現在速度を乗算して一気に加速…あっという間に弾体はライガーを抜き去り、コクピットの中の私からは、キャノピー越しに、目標に向かって飛翔するミサイルのロケットノズルの燃焼光を見ることが出来た。

 

 その発光点が、一機に対して二発づつで…目標とする全てで六機の敵小型ゾイドの機影へと吸い込まれていくのを、私はほくそ笑む様な感情で観察していたのだ。

 

 そして…

 

 

 

 

“ドウ!”

    “ドウドッ!!”

          “ドム!” 

             “ドグワン!!!”

                    “バゴォム!!!!”

                        “ダァン!!!!”

 

 

 

 

 炸裂!

 

 十六発のうち、ファランクス迎撃されて到達前に破壊されたのが七発、不発弾一発、その他は全て命中…但し、防御されて有効弾にならなかったのが四発。

 

 

 シールドライガーのミサイルは、他の装備と同じように、高速で走行しながら発射し、敵の防御線に穴を開けて、強行突破して瓦解させる為の装備だ。

 

 

 まあ、この結果として、六機の敵小型ゾイドは四機にまで数を減らした。

 つまり…敵の前衛による防御線は、私にとっては無理なく突破出来るレベルとなった訳だ。

 

 

 

 

 

―――――――――――――………………!!!!!!…――――――――――――

 

 

 

 

 

 しかし、私とて余裕を続けられている時間はそうなかったらしい。

 

 三発目のビーム砲撃。

 そして、それに続く、残存敵機からの弾幕の開始。

 

 

 高速で走行するこの“私”に、光の槍が降り注ぐ!

 

 

 

 

 

 かわすぞ、ライガー!!

 

 

 

 

 

 さらに加速させた機体を回避運動…マニューバ…させながら、私は状況の分析という名の悪態吐きをひたすらに始めてもいた。

 

 

 

 敵部隊の総規模、                      ・・・

 今回、敵機の数がそれなりに多いのは、今回の作戦の目的の、その信憑性をさらに高める物とも言える。一兵士たる任務従事者としては光栄だよ。

 だが、そうだったとすれば、たかが一個増強小隊のゾイド部隊で攻略を図るべきでは無いだろうよ!

 

 

 

 長距離射撃、

 一機、高火力機がいるのは想定済みだが、しかしいつだって、作戦中に慢心できる様な図太さは私には無いのだ。

 

 

 

 

 それからそれから…

 ああもう、汗がうっとうしい!

 

 

 

 

 

 ライガー、もういたずらは辞めて!

 

 

 

 

 

 全く、このー、

 思わず叫んでいた私を誰が責められよう。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――………………!!!!!!…――――――――――――

 

 

 

 

 

 かわせるっ

 

 四発目のビーム…おそらく先程からのこれは、遠距離狙撃。

 事前の情報が正しければ、相手達にこの火力を使えるゾイドはたった一機しかいない。そして…

 

 

 

 

 チェリーは後退。避けまくって、当たらない事を優先しろ。私は吶喊する!

 

 

 

 

 そいつこそが、獲物だ。

 だとすれば、獲物の首を土産にするのが高速戦闘隊のシールドライガー乗りの誇りであろうが。

 

 

 

 

 

 ライガー、突っ込め!

 

 

 

 

 

 私は叫びながら、左右の操縦桿を大きく前へと倒していた。

 シールドライガーの咆哮が返事だ。

 

 偶然、目前へ迫っていたキャノリー・モルガを引き倒しながら、私たちは戦場の最奥へと、さらに進んだ。そして…

 

 

 

 あっ、

 

 

 いた! 目標のレッドホーンだ。

 

 

 情報通り、ステゴサウルス型大型ゾイド・レッドホーンタイプがオアシスの畔で擱座している。

 

 

 

 あれこそが目標なのだ。マシントラブルで本隊からはぐれた、ジェネラル・コマンダーの乗るレッドホーンこそが、遙々来た我々の最終目的なのだ!

 

 なのだが…

 

 

 

 

“ドウ!”

    “ドウドッ!!”

          “ドム!” 

             “ドグワン!!!”

                    “バゴォム!!!!”

                        “ダァン!!!!”

                    “ドォム、ドォン、”

              “ドム!”    

“バゴォォォオンンン!!”

 

 

 

 

 

 応射の弾幕は、さらに濃密な物へとなっていた。

 そもそもレッドホーン自体、単独で小型ゾイド五機分の火力を誇る強力なゾイドだ! 擱座中とはいえ、火器系統は生きていたのだ。そこに護衛の小型ゾイド三機と、先程の残存ゾイド四機からの火線も加わって……

 

 

 

 

 

“ドウ!”

    “ドウドッ!!”

          “ドム!” 

             “ドグワン!!!”

                    “バゴォム!!!!”

                        “ダァン!!!!”

                    “ドォム、ドォン、”

              “ドム!”    

“バゴォォォオンンン!!”

“ドォォン!!!!”

         “ドドドドドドドドド!!!!!”

                     “ドカァアァンム!!!”

 

 

 

 

 ああもう、近寄れない!

 

 

 

 

 

《少尉、援護に来ました!》《野郎ども、ヤっちまいなぁ!!!!!!》

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()》》》》》》

 

 

 

 さらに今、ずっと今まで後続で進んできた我が部隊の本隊が、遂に戦場に到着してしまった!

 

 ちょっとちょっと、ちゃんと段取り踏んで作戦考えてたんだからね!? あんた達チェリーのガリウスやグライドラーやエレファンダス如きじゃ、束になっても帝国軍の現行戦闘ゾイドには適わないの! 例え相手が自分たちと同クラスの、たった四機ぽっちだったとしても…あっ、でもスパイカーなら別だけど。

 

 つまりつまり、

 

 

 

 

 

“ドォォン!!!!”

         “ドドドドドドドドド!!!!!”

                     “ドカァアァンム!!!”

“ドウ!”

    “ドウドッ!!”

          “ドム!” 

             “ドグワン!!!”

                    “バゴォム!!!!”

                        “ダァン!!!!”

                    “ドォム、ドォン、”

              “ドム!”    

“バゴォォォオンンン!!”

“ドォォン!!!!”

         “ドドドドドドドドド!!!!!”

                     “ドカァアァンム!!!”

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()》》》》》》

 

 

 

 ほら、ね。いわんこっちゃない。

 

 やだもー、早くも我が隊は玉砕寸前だ。

 

 

 

 敵の親玉も倒せない。敵のザコにこっちのザコもやられそう。

 

 

 

 ああああ、一体私はどうすれば……

 

 

 

 

 

――――――――――――……………………―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 ん? 〈シールドライガーの意志〉が、もっと私にシンクロしろと求めてきている。

 

 

 もっと早く、もっと直情的に、もっと野蛮に、獰猛に、

 

 それは、私は……

 

 

「うるさい、不機嫌おばさん!」

 

 

 ピヒャァ! と、まるで子豚の鼻息みたいなゾイドコアのパルス音が返事だった。

 

 そうなのだ、こいつはこう言うと怒るのである。

 なんでもそうだが感情が、というか我が強くて、シールドライガーなのに、まるでゴジュラスだ。

 だからからかい甲斐もあるというのだが…

 

 

 

――フュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

 

 

直後のターボ装置の作動音。

ああしまった、やりすぎたか…と私は自分を呪った。

搭乗者とゾイドは一心同体。入る穴は一つだけ、ってね?

 

 

 

 

 

ドゴォォォオォオオオオオオオオオオオオオオオオォン!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 ぐあッ!!!

 

 い、今のは爆発ではないがその様な物だ。

 ゾイドコアとは別のシールドライガーの補助機関が作動し、爆発的な勢いで機体が加速したのだ。

 速度メーターに目配せしたら、一気に時速は最高速度の195キロを越えて210キロ台をマークしていた!

 

 もっとも、そのおかげで私はもうズタボロだった。

 六点保持のシートベルトのバックルが腹にめり込んで幼児語で言う所の“ぽんぽん”が痛いどころでは無かったし…チクショウ、犬歯で唇の縁を切っちまった。

“こいつ”ことシールドライガーだって、こんな荒技をしてしまったら、帰ったらオーバーホールは確実だし、そもそも自走で基地まで帰れるかも怪しい…全くオバンめ。大人げない。

 

 

 

 

 とにかく、この速度ならば、何とかなりそうだ。いや…なんとかする。

 

 

 

 

 

 高速戦闘隊の本領をみせてやる!

 

 

 

 

 

「あんた達、待ってなさい!」

 

 

 そう叫んだ私は、シールドライガーの機体を大きく旋回させてUターン…えっ、レッドホーンはどうしたのかって? 確かに、目前の彼も驚いて、吻部のバイトファング…要するに口をあんぐりと開けてしまっていた。

 

 でも、これでいいのだ。単に、あの世へ送る順番が最初から最後へと変わっただけに過ぎないから。

 

 

 

 

《しょ、少尉ー!》

 

 

 

 

 ああ、最初にガリウスの娘がベイルアウト…緊急脱出をした。

 部隊各機のデータを参照しても、中破以上が四機、小破以上がその他四機…とんでもない状態だ。

 

 けれど私のシールドライガーは、我が隊の主力と交戦中の敵部隊のただ中を、何も攻撃はせず、ただ突っ切って横断し、通過だけしてしまったのがたった今である。

 けれども…

 

 

 

《! しょ、少尉!!》

 

 

 

 さあこれからだ、シールドライガーには隠し道具があるからね。

 

 

 

「尾部ビームキャノン、スタンバイっ」

 

 

 

 シールドライガーの尾には、原型機・セイバータイガーなら背部砲塔に装備されているグレードの高威力ビームキャノンが設置されているのだ。

 

 そして、後方視界への照準は、火器管制装置が自動でやってくれる。

 私がする事といえば、ブザーが鳴ったらトリガーを引くだけ。簡単でしょ?

 

 

 

「ファイア!」

 

 

 

一射目、

最初のミサイルは頭部アーマーで防げてたらしいモルガを後ろからビームで蜂の巣! 引導を渡してやった。

 

 

二射目、

背面側のこちらへ旋回しようと腰のマグネッサーを始動させたその時に直撃を受けたイグアンの一機が大爆発と共に火球と化した。

 

 

三射目、

我が方のハイドッカーをのし掛かりで潰そうとしていたザットンを狙撃!

頭部コクピットポッドが蒸発して焼け飛んで、意志が無くなったゾイドはそのまま動きを静止した。

 

 

 

 

 そして最後に、もう一度旋回してUターン。

 今度はシールドライガー背部のAMD収納式ビーム砲を展開してやり、今度は、私の突然の奇襲で慌てふためく最後の一機の、その真っ正面から浴びせてやる!

 

 

 

 

 

“バゴォォォオンンン!!”

 

      “ドォォン!!!!”

 

            “ドドドドドドドドド!!!!!”

 

                     “ドカァアァンム!!!”

 

 

 

 

 

「やりぃ、」

 

 

 

 

 

 全機、撃破。

…“私”《シールドライガー》が一往復しただけで、敵の陣営はボロボロとなった。

 それが結果だ。

 

 

 

《しょ、少尉~…》《しょ、しょ、…うぇぇぇん》

 

 

 

 うんうん、こちらの人的損耗は無し。

 これでチェリー達の尻拭いは終わったし、私もメインディッシュと行く事にしよう。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――………………!!!!!!!!…――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 何発目だかの、レッドホーンからの砲撃!

 だが、私は怯んでいなかった。それどころか、興奮に全身が火照って…まるでこれから、初めてのデートに向かう気分だったのだから!

 

 

 

 

 

うぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 私は叫んでいた。ライガーも吼えていた。

 

 

 

 

 

 ライガー、もっと早く!

 

 

 

 

 

 その私の先鞭によって、ライガーの魂に火が着いた!

 

 

 

 

 

 次の瞬間、ライガーはさらに走っていた。だけど、私は操縦桿を操作していなかった。

 よく経験を積んだゾイドならば、搭乗者の思いのみで動かせたりもする…のだ。私も、ライガーの意志に任せる事にした。

 

 何故かって? 悔しいが、この相棒を信じて、間違いであった事など一度たりとも無かったのだから…

 

 

 

 

 

うぉぉお!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 再び、《私》は吼えていた。

 機体全身のサーボモーターが唸りを上げて、ライガーと私の戦意に答えてくれる!

 

 

 レッドホーンの赤い機影が、地平線の向こうから再び現れた。

 

 

 そのレッドホーンからのファランクス統制射撃が、私を狙って追いかけてくる。

 

 だけども、向かってくる弾丸は私たちの遙か後方へとかっとぶだけだったし、降りかかる弾雨がさらに濃くなってきても、それらが私たちを捉えられる事は最後まで無かった。

 

 

 相手のレッドホーンが発する耳障りな怯えた鳴き声が、そのままこの世での断末魔となるで有ろう事も、私はこの時断定していたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、最後のとっておきを見せてやる。

 

 

 

 

 

 シールドライガー頭部のディスペンサーを起動させ、エネルギー・シールドを発動。

 

 

 四肢先端のスマッシュ・クローにもエネルギーを荷電させて、フルチャージのモードとする。

 

 

 

 もう、これだけ。

 

 

 

 

 

“ドウ!”

    “ドウドッ!!”

          “ドム!” 

             “ドグワン!!!”

                    “バゴォム!!!!”

                        “ダァン!!!!”

                    “ドォム、ドォン、”

              “ドム!”    

“バゴォォォオンンン!!”

 

 

 

 

 

 最後、レッドホーンからの弾幕が、避ける事を止めた“私”へと直撃していった!

 けれど、傷一つ、揺れ一つだって私は感じなかった……このEシールドはシールドライガーの名前の由来となっている通り、敵の攻撃を弾いたり防ぐ事が出来るのだ。

 

 だから、ダメージゼロ。

 但し、出力エネルギーの関係で多用が出来ないのが泣き所だ。今日も、これ一回しか使えない。

 

 

 

 コンバットシステムが、《私たち》の軸線上のレッドホーンへ、レティクルの環円を被せた。

 だけども、もう私は何も操縦しなくていい。だって、今からのこれは、ライガーの望みなのだから!

 

 

 もっと加速して、もっと早くなって、もっと風になって、そして……ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

行っけぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レッドホーンの断末魔が、砂漠に響いた。

 

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 作戦が終わった後の私は、夕日に沈むサバンナを見ながら、こうして一日が無事に終わったことを心の中で祝っていた。

 

 

 

 

我が隊。

 

被害機数、三  中破、五  小破、二  行動不能、一、

 

 

されど、人的損耗無し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私のシールドライガーも、今はグスタフの荷台の上だ。

 

 間接部を酷使しすぎて、とてもじゃないが自走できる状態じゃなくなった。製造から四半世紀以上は経過している私のシールドライガーだから、この結果もやむなし、だった。

 

 

 

 

「………、」

 

 

 

 

 今回の作戦が、何故行われたのか……

 

 たった今撃破したレッドホーンには、ロブ基地へ侵攻する敵部隊の主力の、ガイロス帝国軍第十一装甲師団の高官が搭乗している……という情報が、我が軍にもたらされたからだ。

 

 

 果たしてその情報が本当の物だったのか、本当だったとして、今日の結果によって戦闘の趨勢は変わるのか、いやそもそも、何故この情報を知ることが出来たのだろうか、とか、疑問に思える事は多いのだが……

 

 

 

 

 

 

 

とにかく、“RTB”…これより、基地へ帰投する…だ。

 

 

 

 

 

 

     * * * 

 

 

 

 

 

 

 

Q:高速戦闘隊に配置されて不満な事は?

 

 

――朝、晩の牛乳が飲めなくなった事。

 

                        リンネ・イルミネッサ


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