伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。 作:烈火・抜刀
ここで白状すると作者はぶっちゃけ、最終的に八幡と誰をくっつけようかいまだ決めかねているので意見や推しヒロインがいたら感想やメッセージなどで意見くれると嬉しいです。
~~何時だって、由比ヶ浜結衣は比企谷八幡を想っている。~~
『いや~、やっぱり我が家が1番だわ~』
恐らくそれは、誰もが一度は口にしたことや聞いたことがあるフレーズだろう。
慣れぬ環境から解放され、自分の過ごす慣れ親しんだ空気を吸い込んだ時につい口に出てしまう。すなわち偽りなき本音だ。
そしてそんな安堵の言葉は不思議なことに、仕事としての出張などだけでなく自らで計画した旅行の後なんかでもしばしば口にされるものだ。
人は何故、安くない旅費を払い、貴重な休日と体力を浪費してまで旅をするのか?
それはきっと、敢えて違う土地に赴くことで自宅の尊さ、身近にある幸せを再認識する為と言っても過言ではないだろう。
……いや、過言かな? 多分過言だなこれ、うん。
文京区内マンション前 01:23 p.m.
「ハー! や~っと帰って来れたよ~~!」
昼前に東京駅に着いた俺達はそのまま適当な店で昼食を済ませた後、大学最寄りにある由比ヶ浜が借りてるマンションの前に来ていた。
「おう、取り敢えず碑文解読とかは明日にして今日はゆっくり休め」
俺はここまで運んでやっていた彼女の荷物を手渡し、ここから徒歩20分程のポレポレへと向かおうとするが、そんな俺を由比ヶ浜が引き留めた。
「えっ? ゆきのんが紹介してくれる病院にはいかないの?」
「……あー、いや、俺も俺で流石に疲れたから明日以降にする……ダルいし」
本当はもう行く気ないどころか聞かれるまで完全に忘れてたんだけど、取り敢えず誤魔化す。
目下の所、コイツに未確認と戦う事をどうやって許して貰うかが俺の最大の悩みの種だ。
一見強情では有るけど一度認めてくれさえすれば存外柔軟な雪ノ下とは逆に、実はかなりの頑固者だからなぁ。
「ヒッキー、何かホントに疲れてるっぽいね?」
「ん? おお、滅茶苦茶疲れてるぞ。……これから先のことを考えると特にな」
「そっか……。――ねえ、折角ここまで来たんだしちょっと部屋、寄ってかない? お、お茶位、出すよ……?」
と、先々の事を考え欝になる俺に、由比ヶ浜は何故か急に自室へのお誘いをする。
え? ちょっ、由比ヶ浜さん、貴方自分が何言ってるか分かってる!?
結婚前の娘さんがそんな不用意に男を部屋に連れ込むなんてはしたないですわよ!?
お父さん許しません!
ハチマン ハ コンラン シテイル!
ていうか何だろう。心なしかこいつの顔が艶っぽく見えてドキドキする!
何なの!? え、そういう事!? ヒッキーマジでわかんない!
こういう状況、選択肢を選ぶゲームでしかやったことないからわかんない!!
ここで重要なのは由比ヶ浜が『本当にただひと休みしたら』的な意味で招いているのか、それとも『流れで気にそういう展開もあり』という方向で誘っているのかだ。
由比ヶ浜の性格、俺と彼女の十年来の関係性を考えると――――ヤバい。どっちでもあり得そうだから全然分からねえ!
そもそも俺はコイツとそういう関係になりたいの?
いや、出来るものなら是非したいけど……って違うそうじゃない!
なんかこうそういう一時的な劣情じゃなくて、もっとこう……アレな意味でだ。
「えと……だ、大丈夫ヒッキー? 何だか汗凄いよ?」
「あ、ああ……何かちょっと、アレ……体調今ひとつっぽいから今日の所は帰るわ……」
脳内でさんざっぱら悩んだ挙句、俺は紳士的な決断(又の名を自己保身)を以て彼女のお誘いを断ることにした。……何だかちょっと、いや、激しく勿体ない気がしないでもないが。
「そっか……。ん、分かった。じゃあ私も今日はもうぐーたらしよっかな? じゃあねヒッキー! また明日研究室でね!」
「……おう、じゃあな」
そしてそんな俺の返事を聞いた由比ヶ浜はちょっと名残惜しそう(俺の自意識過剰か?)な表情を見せつつ手を振って見送る。
その姿は彼女に嘘を吐き、今夜中に長野へ蜻蛉返りしようと考えている俺の胸に突き刺さった。
――――悪いな、由比ヶ浜。
それが問題の先送りでしかないと自覚しつつ、俺は彼女に嘘をつくしかない自分の情けなさを戒めた。
◇◇◇
「ううううう~~~! 何で私あんな事言っちゃったんだろ……。ヒッキー絶対誤解してるよね?」
蛇に睨まれたガマガエルみたいに汗をだくだく流しながら帰ったヒッキーを見送った後、私は自室のベッドにダイブして1人悶々と先程の台詞を後悔していた。
研究室で一緒に徹夜(といっても大抵私は途中リタイアだけど)は経験してるとはいえ、一人暮らしの部屋に男子を呼ぶのが世間一般的にどういう事なのかは理解しているのに、不意に口にしてしまった誘いの言葉。
長野での気の休まらない日々での疲れが出たとか、あの得体の知れない怪物達の居ない場所に帰ってこれて安心したというのもあるんだろうけど……。
ついあんな言葉が出てしまった1番の理由は多分、“あんなことになってしまった”
例えそれが、今まで関係を壊す事になったとしても……。
彼が求める“本物”とは違う、互いの弱さを慰め合う依存の様な関係だとしても……。
遠くに行かないで欲しい。危険な事に関わらないで欲しい。
ただ、ずっと私の傍に居て欲しい。
きっと本当の私は決して彼やゆきのんが思っている様ないい娘なんかじゃない。
どこまでも自分勝手で、卑しくて、わがままなんだ。
でも、それでも、だとしても……。
私は彼に、
年中目が腐っててもいい。
何かやる度にいちいち屁理屈こねてもいい。
何時ものヒッキーのままで居て、お願いだから……戦うなんてらしくない事、しないで……。
好きな人がヒーローになるって、一般的な感性を持つ女性からすればキツい話ですよね実際。昭和ライダーは基本悲恋が多かったし……。
ガハマさんがクウガを受け入れられるようになるには、まだ少し時間がかかります。