伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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EPISODE01以来の登場となるいろはす回で~す。


EPISODE:14 忍び寄る闇には未だ気付かず、彼らはひと時の青春ラブコメに興ずる。<3>

~~相変わらず一色いろははあざと可愛い~~

 

文京区ポレポレ 02:09 p.m.

 

「う~っすただいま~」

 

「わっ! 今日帰ってきたんですか先輩? もう、戻るなら戻るって前もって連絡してくださいって何時も言ってるじゃないですか! 賄い食べます?」

 

「あー、いい。途中で適当に食ってきたから」

 

唐突の帰宅に文句を言いつつ、一色は俺が脱いだ上着を慣れた手つきでハンガーにかける。

 

「おう、おかえり跡取り。なんつーかもう、すっかり板についたやりとりだね~」

 

そしてテーブルに座ったまま賄いのカレーを食いつつそんな俺達を冷やかすおっさんは通称“おやっさん”。本名はまあ……うろ覚えなので割愛としとく。

 

一色の母方の叔父さんでこの店の店長だ。

 

基本的には気さくで陽気、年中腐った目をした居候の俺も実の息子の様に可愛がってくれるいい人なんだが、時々こうして俺と一色の事をからかい、隙あらば俺を店の跡取りにしようと画策してくるのが若干メンドクサイ。

 

今は丁度店のランチタイムが終わり、束の間の休憩時間。

2人は賄いで遅めの昼食を取りつつTVのワイドショーを眺めていた。

 

俺は自分のも含め3つコーヒーを用意し、2人の前に置いた。

 

「……俺の留守中、何か変わった事とかあった?」

 

それとなく奴ら(未確認生命体)絡みのニュースが報道されたか尋ねると一色は首を傾げ、『強いて言うなら……』と枕詞をつけて答えた。

 

「変わった事ですか? うーん、小町ちゃんが遊びに来たこと位ですかね? 小野寺くんと一緒に」

 

「そうか。まあ、アイツ偶には来るだろう。――――で、小野寺って誰?」

 

「いや、誰って小町ちゃんのカレシくんじゃないですか。小野寺雄一くん。」

 

「いや、知らん。小町に彼氏とかいないからマジで。そんな奴、この世に存在しないから」

 

「うわあ……二十代半ばでまだ拗らせてるんですかシスコン。ドン引きです」

 

一切の感情を殺した戦闘マシーンの様な表情とフラットな口調で断言する俺を一色が気持ち悪い者を見る様な目で見る。

 

「――ていうか何? まだ別れてなかったのアイツら?」

 

「しかも結局覚えてるし……」

 

小野寺雄一。

それは俺と、そして恐らく親父にとっても、この世で最も忌むべき男の名。

 

人形町にある老舗洋食店で修行中のコック志望で21歳の若造だ。

そして去年、偶々客として店に入った小町に色目を使って気に入られ、交際に至った。

 

小町曰く、母性本能を擽る笑顔が可愛い好青年。

俺曰く、ちゃらついた笑顔がムカつく女ったらしのクサれ野郎の事である。

 

「別れるも何もラブラブでしたよ2人とも? というか彼、今小町ちゃんの実家で先輩が昔使ってた部屋に住んでるって言ってましたけど、知らないんですか?」

 

「えっ、ちょっと何それ聞いてない。何? アイツ人の留守中に我が家に寄生とかシロアリかなんか? ていうか親父は娘にダニがついたのに何やってんだ!?」

 

あろう事か人の部屋に住み着いた奴を虫呼ばわりする俺に、一色は更に残酷な事実を伝える。

 

「あ、先輩のお父さん、何かもうすっかり懐柔されてるみたいですよ? 『実の息子と違って素直で可愛い。若い頃の俺そっくりだ』って言ってたそうです」

 

「何やってのチョロ過ぎんだろあのクソ親父!!? ていうか何? 気がつけば俺、比企谷家リストラされてない!?」

 

「何かもう、人の予想を斜め上の方向に裏切る所とか、流石先輩のお父さんですよね?」

 

ついでに言うとあのおっさんの若い頃は俺とそっくりで腐った目をしている。

 

ああ、しかし何という事だろう。

長野の奥地で古代から謎の化物達が復活するという前代未聞の大事件が発生してる一方で、比企谷八幡の身近でもとんでもない事になっていた。

 

「俺にはもう、帰る場所なんてないのか……」

 

いつの間にか実家をクソガキに奪われ、鉄血のオルフェンになっていた事実に打ちひしがれる。

 

俺の中の団長が『止まるんじゃねえぞ……』と囁いてるまである。

 

そんな俺の両肩に一色とおやっさんはそっと手を乗せた。

 

「ハハ、まあいいじゃないか八っちゃん。心配しなくても何時までもウチに居ていいからな? 何だったらここの家主になってもいいんだぞ?」

 

「そうですよ先輩、実の妹なんて結局最後は他の男に取られちゃうんですから潔く諦めましょう? どうしても年下を可愛がりたいならホラ! ここに甘やかし甲斐のある可愛い~後輩がいますよ!」

 

ああ~もう、つーかアンタら、何だよね。

人が絶望に打ちひしがれてるのに、メッチャ楽しそうだよね?

 

◇◇◇

 

「えっ! じゃあ先輩、またすぐ長野に戻っちゃうんですか!?」

 

「ああ、なんつーか……例の遺跡の発掘、俺達の研究室で引き継ぐことになってな。戻ってくるのが何時になるかも決まんないから取り敢えず必要な荷物を向こうに発送して、俺もバイクでスグに出発」

 

30分程絶望に苦しみ抜いた後『取り敢えず長野に行って全て忘れよう』と現実逃避方向で気持ちに折り合いを付けた俺は2階の自室に戻って荷造りを始めた。

 

戻って1時間も経たずまた出て行こうとするそんな俺に、一色は何かこう……日曜日に仕事に出かけるお父さんを見る様な目を向ける。

 

やめて、地味に心が痛いから!

 

「……ところで先輩。心なしか身体が大きくなった……というかゴツくなった気がするんですけど、気のせいでしょうか?」

 

「えっ……?」

 

と、しばし俺に対し恨みがましい視線を向けていた一色が、俺の変化に気付いて近づき、胸やら二の腕をベタベタ触る。

 

ちょっ、やめていろはす!

基本的に自意識高い系男子の童貞にはそういうスキンシップ、刺激強すぎるからぁ!

 

と、俺が内心悲鳴を上げてることも知らず彼女はたっぷり触った後、「やっぱり」と疑惑を確信に変えた。

 

「去年の夏プール行った時とかヒョロヒョロだったのに、ガッチガッチじゃないですか! アレですか? 一緒に行った私の友達が『いろはのカレシ細くて羨ましい(笑)』とか遠回しに小馬鹿にされた事気にして『一色に恥かかせらんねえな』とか頑張っちゃったんですか!?」

 

何故か目を爛々とさせながら素っ頓狂な推理をかます一色。

いや、あの時のことなんて全然気にしてないっつーか今まで忘れたんだけど?

そもそもカレシじゃねーし。

……まあ、そういう方向で勘違いしてくれるなら都合良いし、誤解させとこうか。

 

「いや、まあ……流石に運動不足かなとか思ってこっそりジム通いして結果にコミットしたから……ていうか、よく気付いたなお前?」

 

「そりゃ気付きますよ。――いつも見てますからね」

 

と、明らかに狙った様な感じでウィンクしながら答える一色。

 

あざとい! いとはすってば相変わらずあざとい!!

 

「けど私的にはありだと思いますよ細マッチョ! ゴツゴツテカテカしたガチムチなんか論外ですけど、こういう引き締まった身体、大抵の女の子は大好きですから!」

 

そう言って俺の胸筋をパンパン叩きながら満足そうに頷く。

お気に召したんなら何よりだけど、そろそろスキンシップは勘弁して欲しい。

 

「けどやっぱりちょっと色が白いのはアンバランスですね。そうだ、今年の夏は海にでも行ってこんがり焼きましょう! その身体で程よく小麦色に焼ければ完璧ですから!」

 

「えー、嫌だよ夏の海とか、暑いし人多いしリア充ウザいし……。そもそも夏までに帰ってこれるかもわからな――「行・き・ま・しょ・う・ね!」……はい」

 

強引に押し切られてしまった……。

どうやら彼女の中では今年の夏は俺と海に遊びに行くという予定は既に決定事項らしい。

 

どこがいいかな?

普通なら湘南なんだろうけど、千葉県民としてはやはり九十九里浜を推したい。

銚子もありかな? 魚美味いし。

 

まあ何にせよ、未来に対し『楽しい予定』を入れておくのは悪い事じゃないとは、思う。

 

これからキツい戦いに身を投じることにした俺は、奴らとの戦いで死んでしまうかもしれないし、そうならなくても、夏までに帰れないかもしれない。

 

それでもこうして『一色と海で遊ぶ』という約束という名の道標は、1つの希望になるかもしれないのだから……。

 

「あっ、それから先輩、帰ってくる時のお土産は野沢菜と笹かまとわさび漬けでいいですからね! それと美味しい地酒なんかあれば言うことなしです」

 

「………覚えてたらね」

 

と、俺が心の中で何だか良い感じにまとめてる間に一色はお土産の注文までしてきやがった。

 

――ていうかお前、土産のチョイスがおっさん入ってんぞ?

 

 




作者の独断と偏見ですけど、いろはすは合コンとか行った時は甘口のカクテルちびちび飲んでお酒弱いアピールしつつ、八幡やおやっさんと飲む時は辛口の日本酒ガバガバ余裕で飲んでそうなイメージ。

逆に八幡は行きたくない飲み会に顔出してるときはとりあえずビール飲むけど、実はカシス系とかカルーアミルクとか甘い系のカクテル好きそう。

折角なのでその内そういう話もやりたいです(笑)
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