伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。 作:烈火・抜刀
今やってるひと時の青春ラブコメシリーズは、次回をもって終了予定です。
シリアスな話をお待ちの方はもうしばしご信望を!
~~比企谷小町は太鼓判を押す~~
文京区 ポレポレ 03:15 p.m.
『あ~ハイハイ小町です。どったのお兄ちゃん?』
「……いや、どったのじゃないよ小町ちゃん、お兄ちゃんこの三日間、結構大変だったんだよ?」
一色に邪魔(?)されつつ荷造りを終えた俺は、スマホを手に愛する妹に電話を掛けていた。
――当初の予定としては実家に顔出すつもりだったけど、もし家を我が物顔で闊歩する件の
着信に出た小町はまるで感慨などないナチュラル過ぎる応答をする。
『あー、うん結衣さんや雪乃さんから聞いたよ-! 変なベルト巻いて変身して怪物と戦ったんだって? え、何? もしかしてもうこっちに戻ってきたの?』
「いや、まあそうなんだけどさお前……兄が陥った中々レア度の高いイベントに対してちょっと淡白過ぎやしませんかね……?」
『うーん、そりゃ聞いたり動画見た時は驚いたよ? でもさぁ、私だって何時までもお兄ちゃんの心配してらんないってかさ-、小町的にはそういう役回りもう、雪乃さんとか結衣さんに譲ってるんだよねー。あ、いろはさんもありかな?』
「えー、そんな寂しいこと言うなよ-。気なんか遣わず存分に兄の身を案じていいんだよ?」
おかしい。
別に心配されたい訳じゃないんだけど、それにしても妹の態度が素っ気ない。
男か? あれもそれもこれも全部小野寺雄一って奴の仕業なんかコンチキショウ……!
『うわぁもう相変わらず声からダメさが滲み出てるなぁこのゴミィちゃん……。甘えたかったらもっと近くに居る女の子に甘えなよ? ――大丈夫だよ。確かにお兄ちゃんは相変わらずどうしようもないし、ぶっちゃけ雪乃さんも結衣さんも微妙にめんどくさいトコあるけどさ……3人一緒なら、何時だって最後はうまくいってたじゃん』
「……ま、そうかもな」
気怠げに俺の相手をめんどがりつつ、最後は諭す様に、それでいて懐かしむ様に小町は口にする。
その脳裏にはきっと今の俺と同じ――あの高校時代の思い出が逆巻いているのだろう。
今思えばこいつは何時だって、あの高2の春から続く俺達の青春を見守ってくれていた気がする。
時に口を出し、時に(当時は鬱陶しいと思ったが)気を回して、面倒くさい俺達の時間を進めてくれていた。
そして、今、そんなこいつは――比企谷小町は太鼓判を押してくれたのだ。
俺と雪ノ下と由比ヶ浜、3人が一緒ならきっと何があっても大丈夫なのだと。
◇◇◇
~~
千葉県市川 03:39 p.m.
小町との電話を済ませバイクを荷に載せた俺は高速道路でそのまま長野へ……と、行きたい所だったが今現在、愛すべき故郷である千葉の道路を走っている。
奴らとの戦いで何時戻れるか分からない都合上、約束を守れなくなった相手に謝りに行く必要があったからだ。
(――ん? ありゃもしかして)
その途中で信号待ちをした横断歩道の前を、嘗て俺と小町が通っていた中学校の生徒達が通り過ぎたのだが、その中に見覚えのある青みがかった黒髪の
向こうも気付いたらしく、一瞬注視した後で俺を指さし声をあげた。
「あー! やっぱりはーちゃんだあ!」
◇◇◇
市川市内 ケーキ店 04:00 p.m.
川崎京華――俺の高二の時のクラスメイトで高校時代、まあそこそこ(?)付き合いのあった川……崎? うん、多分川崎。その川崎沙希の妹さん。
出会いは姉を通じてで、俺とは十歳以上離れた現在中学二年生。
本来なら接点など殆ど無い彼女だが、高校卒業後も実は存外、交流が続いていたりする。
いや、違うからね?
断じてロリとかペドとか、そういう嗜好の人じゃないからね? お願い信じて!
川崎を通じて当時保育園児だった彼女が春のプリキュア映画を観にいきたいとせがんでいるのを聞き、彼女をダシに俺も川崎姉妹と一緒に映画を観に行っただけだから!
俺はただプリキュアが好きなだけの、どこにでも居る健全な二十代男子だから!!
その後も、俺と彼女(と川崎)は、仕事が忙しい彼女らの両親の代わりに子供向けイベントに出かけたり、映画に行ったり、運動会の様子をビデオカメラで録画したりなどした。
もうっ、どこのお父さんって感じだよ。
まあ、結構楽しかったりするんだけどさ……。
「本当にいいの奢ってもらって? はーちゃんってまだ大学
「女子中学生が甘い物を前にして遠慮なんかすんな。どっちみち土産買う予定だったからついでだついで」
これから会う人達に持って行くお土産を買うついでにそこのイートインスペース。
チョコケーキを前に目を煌めかせながら遠慮する彼女に俺はコーヒーを啜りながら促す。
まあ確かに、服飾関係の専門学校を卒業し、一流のアパレルメーカーに入社した川崎に比べりゃ懐が貧しいのは事実だが……。
「けど姉ちゃんには内緒だぞ? 変に気を遣わせても悪いしな。はーちゃんとの秘密だ」
「えへへ、だからはーちゃん好き♡」
――ああ、ここ数日のささくれだった心が癒されて行く。
当時は姉みたいにエッジの効いたちょっと怖いタイプの美人さんにならないか心配したが、幸いにも出会った当時と変わらず天真爛漫に育ってくれて本当に良かったよ。
いいか一色よ? これこそが本物の年下キャラというものなんだぞ。
「けどけーちゃんももう来年は高校生かぁ。進学先はやっぱり総武高か?」
「うーん、まだ決めてないけど多分そうかなー? 友達も塾とか通い出した子多いから私も行かないとなーって感じなの。……あっ! 折角だからはーちゃんが家庭教師とかやってくれない? お姉ちゃんに頼んでバイト代弾んで貰うよ!」
いいこと思いついたとばかりに手を叩き、にぱっといい顔で提案する京華。可愛ええなぁ。
確かに中学生の家庭教師なんて勉強しかしてない大学院生にとってはおいしいバイトだし、既知の人間ならこちらとしても何かと気が楽ではある。
だがまあ、ちょっとタイミングが悪かった。
「……あー、スマン。実は今夜から大学の研究でしばらく長野に行くことなったんだ。何時戻れるか分からんから、ちょっと無理だわ」
「えー!」
提案を辞退された京華は落胆を隠そうともせず肩を落とす。
だが本人も半分思いつきの提案だったのは理解していた為、切り替えも早かった。
「じゃあ来年! 私が総武高受かったらいっぱいお祝いしてねはーちゃん!」
「おお、任せとけ。そん時は何でも言うこと聞いてやる」
「本当? えへへ♪」
ああ、もうホント可愛いなこの娘!
妹をどこぞの馬の骨に奪われ、実家で戦力外通告を受けた身としては本当に癒される!
無条件でお小遣いとかあげたくなるけど、そしたら『援助交際の現行犯で逮捕するわロリガヤくん』とか言って雪ノ下警部殿にまた手錠をかけられそう。
だからせめて頭を撫でるだけに留めた後、俺は店の前で彼女と別れた。
さて、土産も買ったし会いに行くとしましょうか。
本郷のおっさんと並ぶ俺のもう一人の恩師の元へ――。
当初は川崎紗季さんも出そうかとも思ったのですが20代半ばの社会人が平日の昼間に顔を合せるのも現実的ではないので妹さんに代役を頼みました(笑)
余談ですけど八幡のプリキュア好きを知ってるかどうかって原作読んでる組と読んでない組の判断材料になりますよね?
クウガを継承する資格には『心清らかな者』というのがありますが、例え目が腐っていても、日曜朝からプリキュアを見て泣ける彼の心は多分、清いんでしょう(笑)