伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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今回の話で今のシリーズはおしまい。
再びハードな闘いの日々が始まります。

この話までで出てきていないキャラもどんどん出てくる予定なのでお楽しみに!

尚、この場を借りて白状すると私ポストライダーは基本プリキュアを殆ど見ておらず、知識が付け焼刃なとこがあるのでおかしな点があればご指摘ください(懺悔)



EPISODE:16 忍び寄る闇には未だ気付かず、彼らはひと時の青春ラブコメに興ずる。<5>

 

~~何だかんだ言って、平塚静を幸せな日々を過ごしている。~~

 

千葉県市川市内 集合住宅 05:02 p.m.

 

長野へと向かう前に生まれ育った愛すべき千葉に戻った俺は女子中学生(JC)との放課後ティータイムを楽しんだ後、人妻の元を訪れていた。……いや、分かってると思うけど、いかがわしい意味じゃないよ??

 

やってきたのは東京と千葉の県境、江戸川沿いの集合住宅。

 

そこで俺は9階建て3LDKマンションの丁度真ん中、5階にある一室のチャイムを鳴らした。

 

『は~い! どちらささですかああ~?』

「おう、俺だよコータ、ヒキガヤだ。ケーキ買ってきてやったから開けてくれ」

 

ともすると甘い物で子供を騙す悪い大人みたいなフレーズだが、実際知り合いなので問題ない。

 

カチャリと鍵が解錠され、開く扉から元気いっぱいな4歳位の男の子が『ケーキ!』といってタックルする。――ふむ、またちょっと重みを増したな。

 

「おお、元気かコータぁ?」

「げんき! ヒキガヤは今日もダルダルだなー! あははは!」

 

俺は飛び込んできた元気いっぱいな少年をそのまま抱きかかえて持ち上げ、同じ目線で挨拶する。

 

一方、その脇ではちょっと人見知りの気がありそうな同じくらいのフワフワっとした感じの女の子が様子を伺っている。

 

「こ、こんにちはひっきー」

 

「おお、こんにちはカノ、そのリボンかわいいな? かーちゃんに買って貰ったか?」

 

「え、うん、えへへ……かわいい?」

 

「おう。超可愛いぞ」

 

真新しい感じのあるリボンを指摘する殊の外喜んで俺の足にひっついてくる。

腕白な兄ちゃんと比べちょっとギアが上がるのに時間が掛かるだけで基本こっちも人懐っこいんだよな。

 

この2人は最上(もがみ)幸太(こうた)華乃(かの)、俺のよく知る人物の子供である双子の兄妹だ。

 

そして玄関ではしゃぐ子供達に遅れ、俺の恩師はリビングから顔を出した。

 

「君は相変わらず子供に好かれるなー。で、今日はどうした? メシでもたかりに来たのかね貧乏学生?」

 

俺の高校時代の現国教師にして、奉仕部の顧問。

最上静――旧姓:平塚静先生だ。

 

◇◇◇

 

俺の在学中は残念美人街道まっしぐらだった先生が結婚の報告したのは、俺達が大学3年の6月だった。

 

そこら辺の男より男前な上、人への距離感が近く、実は依存度高めというメンドクサイ要素てんこ盛りなこのお方のハートを射止めたのはJR駅員を務める彼女の6歳年下のフワフワ系イケメン最上良太(もがみりょうた)さんだった。

 

5人兄弟の長男で、下からヤンキー、ナンパ師、力士、ダンサーなど個性のバーゲンセールみたいな弟の面倒を見てきた度量のデカさで、女傑の重すぎる愛を受け止めたとの事だ。

 

結婚式の招待状を頂いた俺達奉仕部三人(後、陽乃さんとか……)は彼女の披露宴に参加し、先生が豪快にぶん投げたブーケが俺の元に飛び込んで女子のひんしゅくを買ったのも、今では良い思い出だ。

 

「ケーキぃ! ねえママケーキどこ~!?」

「晩ご飯の後にしなさい」

 

リビングに招かれた俺は先生が淹れてくれたコーヒーを飲みながら俺は『研究でしばらく長野に行く』という旨を伝えた。

現在、彼女は教職を一時退いて子育てに専念しているが双子のチビが小学校に上がる頃には復帰するとのことらしい。……俺ならずっと専業主婦やるんだけどなぁ。

 

「成る程な。――フフ、しかし中々殊勝な心がけじゃないか。お世話になった恩師にわざわざ土産持参で挨拶にくるとは」

 

「いや、先生にだけならメールで全然良かったんすけど、双子とは今度一緒に映画観に行く約束してたんで、その詫びメインで」

 

「え、あ……そうか……」

 

卒業後も教え子に慕われまくる私、マジグレートティーチャー(死語)とか思ってたら落とされ肩を下ろす先生。相変わらずめんどくさいなこの人……。

 

「えええ~~! ヒキガヤ一緒にプリキュア行かないの!? 約束したのに!」

「プリキュアぁ……」

 

話を聞いていたコータが俺の袖を掴んで詰めより、普段は自己主張をしないカノももう片方の袖を掴んで哀しそうな顔をする。

 

俺も残念だよ……。

最近忙しくて今やってるキラキラプリキュアアラモードのクライマックス全然観れて無いんだけど、来月から始まるHUGっとプリキュアも面白そうなんだよなぁ……。

 

「ああホント、マジでスマン2人共。――けどどうしても行かなきゃいけないんだ。ごめんな」

 

コレばっかりは完全に俺の方に非があるので誠心誠意、頭を下げる。

というかいつもみたいに屁理屈こねて嫌われたくないし、変な悪影響とか与えて目の腐った子になったら目も当てられない。

 

比企谷八幡は、健全な児童の育成を推進します!

 

横で先生が『その誠意を大人にも向けられればなぁ……』と呆れてるが、気にしない。

 

「むーん、しょうがねえなぁ……ゆるす!」

「えーが、みたらいっぱいおはなしするね」

 

俺の誠意が伝わり気っぷ良く許してくれる双子。超可愛い……。

因みに性格もそうだが顔立ちなんかもコータは母親似で、カノは父親似だ。

 

まあ、子供って異性の親に似た方が幸せになるって言うし、先生似なら絶対男前なイケメンになるぞ。やったなコータ! 

 

一方、そんな俺の様子を眺めていた先生は、なんだか真面目な視線を俺に向ける。

 

「……ふむ、しばらく見ない間に何だか少し変わったな比企谷」

 

「えっ、そっすか?」

 

「ああ、何かとても大事な、絶対に譲れないものを見つけ、それに対し責任を負う事を決めた。そんな大人の目をしている。お前、さては――」

 

えっ、なに? 本郷のおっさんといい何なの? 教師って人種は皆エスパーなの??

 

ちょっと会話しただけで恐るべき直感力を見せる先生に戦慄する俺だったが、直後、彼女はにやけた表情で尋ねた。

 

「遂に童貞卒業したな!」

「ボッッフォ……!」

 

直後、黒色の飛沫が俺の口から飛び出した。

この人、幼稚園児の前でなんてこと言ってんの!?

 

「ママ、ドーテーってなに?」

「帰ってきたらパパに聞きなさい」

 

しかも旦那さんに全部ぶん投げちゃったよ!

子供に聞かれて気まずい質問ランキングベスト3に入るぞ性に関する質問って!?

 

「………や、そういうのはちょっとその……」

「なんだぁおい、いい歳こいて、しかもあんな美人が周りにいてまだ新品なのか? やれやれ」

 

顔を真っ赤にして視線を右に左に動かしまくる俺に先生は飲み屋の親父ばりのノリで絡んでくる。

 

独身時代は自分の地雷も踏む行為だからあまりこういうネタは降らなかったのに、自分が結婚して幸せになった途端この有様である。

 

もうまんま、大阪の世話焼きおばちゃんだなこの人。

 

「いいか比企谷? 相手のことを大事にするのはいい。即物的な感情に流されず、心の面での結びつきを大事にしたいというお前の在り方も、貴いとは思う。だがそれだけでもダメだ。自分の気持ちをちゃんと態度や言葉に表し、時には多少強引にでも気持ちをぶつけることをしなければ、相手だって不安になるぞ? ――敢えて言おう。結婚は素晴らしい。お前も速く誰かとくっついて子供こさえろ!」

 

「………何かもう、自分が勝ち組(既婚者)になった途端、超絶上から目線っすよね……」

 

割と良い事を言ってるのは分かるし、俺のことを気遣ってくれてるのも充分伝わるんだが、なんだかなぁ……。

 

しかし結婚に子供、か……。

 

ぶっちゃけた話、俺は子供が結構好きだ。

自分の子とか出来たら超絶猫っかわいがりする可能性が高い。

特に娘だったらヤバいレベルだと思う。

 

しかし果たして、今の俺に子供が出来るんだろうか? 

出来たとしてその子は果たして、何も影響がないのだろうか?

 

由比ヶ浜を助けたい一心でベルトを身に付けた事も、今朝方あの教会で雪ノ下にぶつけた想いも嘘じゃない。覚悟は既に出来ている。

 

しかしそれとは別に、今更ながら俺という男は、『普通の人間ではなくなった』事に恐怖を覚えた。

 

例えばこの先、最愛の誰かと唯一無二の関係になって結ばれたとして、俺はその女性に、人として当たり前の幸せを与えてあげられるのか……?

 

ギュ……

 

突発的に訪れた漠然とした不安に意識を持って行かれていた俺を、カノが袖を掴み呼び戻した。

 

「はやくこっちに帰ってきてね? ひっきー」

 

俺同様ちょくちょく遊びに来る由比ヶ浜直伝の愛称でその名を呼び、帰還を願ってくれた。

まいったな……また約束が1個、増えてしまった。

 

その小さな手が、幼い願いが、俺に力を与えてくれた。

 

そうだ。例え俺自身の未来に先生が説く明るい未来がなくても、奴らの手からこの暖かい家族を守る事が出来るというなら……今は、それだけでいい。

 

残ったコーヒーを一気に飲み干した俺はそのまま席を立ち、失礼することにした。

 

「んじゃ、失礼します先生。――あんま良太さんを困らせちゃダメっすよ?」

「フン、私の旦那はそんな狭量じゃないさ。――お前もしっかりやってこい。比企谷」

 

お互い、ニヤっと笑いながら軽く激励を交わし合い、俺は部屋を後にした。

 

さて、予定より大分遅れてしまったが、長野に戻るとしましょうか。

 

 




流石にアラフォーの平塚先生を独身のままにしておくのはあんまりかと思い、幸福な家庭を築いてもらいました。

そして多分、彼女は自分が結婚した途端調子こくちょっとウザい奥様になるだろうなと考えました。

でもそんなウザさも含め、なんやかんや教え子に慕われてる的な。

この作品の目下の悩みは、平塚先生や川崎姉妹はじめ、どの位の人物に八幡がクウガであることを明かすかだったりします。

現状、いろはすとルミルミにはバラすEPISODEを考えてるのですが。

これからもお楽しみに!

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