伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。 作:烈火・抜刀
多分次送れるのは土曜になると思います。
これにてTVクウガ3話分の話がようやくおしまい。
バイク――それはこの世で最も非合理的でありながら、男のロマンの詰まった孤高のマシン。
我が道を行くボッチたる俺の為にある乗り物と言えるだろう。
……言えるかな? うん、多分言える気がする。そう信じたい。
車のように多くの人や荷物を運搬できず、それでいて自転車のようにエコでもなければ健康にも良い訳でもない。実用性という点で言えばこれほど不便な乗り物もそうはないだろう。
夏はクソ暑く、冬は死ぬほど寒い。無論、値段も決してバカにならない。
純粋な走行性で言っても安定感や最高スピードでは乗用車に敵わず、車に対する優位性と言えば加速力位だ。まあそのお陰で信号の多い都会の公道では最速という呼び声もあるらしいが(笑)
では何故こんな非合理な乗り物が21世紀になって久しい現代に於いても衰退することなく生き延びているかと言えば、それはひとえに“カッコイイから”に尽きるだろう。
かくいう俺もそんなバイクのカッコ良さに魅せられた1人だったが、そこには中々凄絶なエピソードがあったりする。
あれは今から約5年半前の
俺は予てから憧れていたバイク免許の取得に焦がれつつ、その上でなくてはならない軍資金不足に頭を抱えていたのだ。
そう、ぶっちゃけ免許の取得は学生にとってはどぎついレベルで金が掛かるのだ。
家庭によっては教習所のお金は親が出したりしてくれるのだが、生憎とIS学園並に女尊男卑の傾向の強い比企谷家に於いてはその様な厚遇は期待すべくもなく、車の免許については予てから貯め込んでいたお年玉と、一色の家庭教師のバイトなどで何とか賄え、大学一年の秋に取得できた。
しかしバイクも一緒に取るとなると流石に懐が厳しく、(バイトをする以外で)唯一残された手段は教習所に通わず運転試験上で一発合格を狙うしかないのだが、実際それは不可能に近い。
やはり諦めるしかないか、そう思った俺にあの人が声を掛けた。
『なんだ比企谷、君もバイクに興味があるのか?』
外見的に熊ぐらいなら殴り殺せそうなことでお馴染みの我が大学の名物教授・本郷先生。
若い頃は大学院で研究に励みながらオートレースの大会で数多くの優勝をかっ攫ったこのおっさんは、バイクを興味を持っていた俺に、地獄への片道切符を渡したのだ。
『どうした比企谷! この程度のコースを走破できなくて、国家資格が取れると思うか!!』
――知り合いが保有しているコースがあるからそこで技術を叩き込んでやろう。
愚かにもおっさんの誘いを受けてしまった俺はそれから1ヶ月――貴重な大学の夏期休講期間の半分以上、モトクロスコースがある山奥に事実上閉じ込められ彼の超熱血指導を受ける羽目になったのだ。
あの強烈な一ヶ月間を今思い出すだけ身体の震えが止まらない。
朝から晩まで何百周と走らされ、あの厳つい豪傑と寝食を共にする日々……。
最終的にバイクで火の輪くぐりが出来る域に達したからね。
試験? 余裕で受かったわ!
ともかくそんな訳でただ乗り回すだけなら絶対に必要ないテクニックを取得した俺は現在、おやっさんから譲り受けた古いオフロードバイク(HONDA製の250cc)に跨がり、長野へと向かおうとしていたのだが、そこで全く予期せぬ事態に遭遇した。
文京区内 茗荷谷駅付近 05:45 p.m.
「わあああああああああ!!」
諸々の用事を全て済ませ、改めて長野に向かおうとした俺は、若い男の悲鳴と何かが倒れる音をヘルメット越しに聞き、そちらの方向へハンドルを切った。
当初は事故か何かかと思った。
しかしソコには横転したバイクの横で血を流しながら必死に逃げようとするチャラい感じに兄ちゃんと、――彼に向かってじわじわと歩み寄る女怪人の姿があった。
「マジかよ……っ!!」
どこをどう見ても疑う余地のない、奴らの仲間――新たな未確認生命体だ。
何故東京に?
という疑問に一瞬気を取られる思考がフリーズしかけるも、とにかく今は青年を助けねばと俺はバイク前輪を浮かべるウィリー走行で女の未確認に向かって突撃し、前輪を奴に向かってたたきつけた。――この先の人生でまず役に立たないと思っていた本郷先生直伝のテクニックが役に立った瞬間である。
「グッ……」
不意打ちであった事も幸いし僅かに後ずさる女の未確認。俺はすかさず尻餅を衝いた青年に向かって『早く逃げろ!』と叫びつつ、アクセルをふかして奴を挑発する。
唐突に襲い掛ってきた俺に対する敵意を滲ませる未確認、そうだそれでいい。
青年が逃げ去ったタイミングと同時に俺は彼と正反対の方向にアクセルを回し、『やり返したけりゃついて来い!!』という態度で挑発。
すると奴は思惑通り、こちらの方を追いかけてきた。
――て、ちょっ、速い速い!!
元々適当な人気の無いところまで引きつけて戦うつもりだったが、女未確認はバイクで逃げる俺をアッサリと追い抜き、その前で待ち構える。
「ギラガサ ビゲサセルド ゴログバジョ。リント!(今更逃げられると思うなよ。リント!)」
いやー、もうなんつーか化物かどうかとは別ベクトルで超怖ぇえ!
見た目の印象なんかもそうだが、全体的に女豹って感じがするんだよなコイツ。
……何か、三浦優美子を思い出す。
俺の様な基本気の強い女が苦手なピュア(小心者の童貞)な男には刺激が強い相手だが、そうも言ってられない。
幸い、待ち伏せされた其処は人気の無い路地裏で、周囲には誰もいない。
バイクから降りた俺は牽制代わりに被っていたメットを投げつけた後、腹部に手をかざし、中心のクリスタルが紅く輝くベルトを出現させる。
「っ!」
その現象を目の当たりにした女未確認が目を見開く中、俺は明け方サンマルコ教会でやった時と同じ古代の戦士と同じ構えを取って意識を高め、その意思を口にした。
「変……身!」
ベルトが燃え上がる様な音を響かせながら、俺の姿は、戦士クウガへの変化……否、変身を完了させた。
「クウガ!」
その姿を確認し、驚愕の声を挙げる未確認を前に構え相手の出方を窺う。
先程のバイクをあっさり追い越した動きを見るに、3号の様に跳び回る訳じゃなさそうだが素早そうな奴だ。一瞬でも目を離せば不意打ちを食らう恐れがある。
一方、向こうは向こうで俺と一定の距離を保ち、隙を窺っている様に思えた。
恐らく自分の脚力を最大限に活かせる間合いでから一気にアタックを仕掛けるつもりだろう。
そうなると俺が取るべき選択は、敢えて隙を見せて誘い込み、カウンターを喰らわす所謂『後の先を取る』戦法だろう。
などと漫画などでこさえた知識で戦闘巧者を気取っちゃいるが、実際脳内イメージ頼みなんだよなぁ……。
最近流行の異世界転生主人公みたいに『近接格闘スキル取得』みたいなお手軽さで技術が欲しい。
「……っ!」
「……フン」
互いの狙いを理解しつつ、絶妙な距離を保ちながら睨み合う俺と女未確認。
そんな緊張感に満ちた空間に、けたたましいパトカーのサイレンが響き渡る。
「おいおい、まさか……」
「こちら桜井、通報のあった未確認生命体第5号を茗荷谷付近で発見! 更に第4号もいます!」
『二匹だあ!? 了解、こっちもスグ行く!!』
そして程なく現れた数台のパトカーが俺と未確認を包囲する様に停車。
中から数人のスーツ姿の男性と、十数人の制服警官が現れ、瞬く間に包囲網を形成した。
マズいぞこれおい、何かどんどん集まってきてるし!
「フン!」
警察官らの登場に動じた俺は更にそこで未確認……第5号? から目を離すという痛烈なミスを犯し、間合いを詰めた奴から痛烈な膝蹴りと拳打を受ける。
「だっ!? クソ!」
己の失態に苛立ちつつ、奴の先制攻撃に拳を以て返礼。
仕方なく常に目端に拳銃を構える警官達を捉えながら奴との戦いを再開する。
しかしそうしてる間にパトカーは更に増え、遂に現場指揮官? と思しき中年の(やたら声の良い)坊主頭の刑事現れた所で、警官達の目付きが一気に変わる。
――準備は整った。これからお前らを殺すぞ。という意思に満ちた視線だ。
「あの2匹か……桜井! 栗林! 俺と一緒に第4号を狙え! 残りは第5号だ!!」
『はいっ!!』
クソ! 人を殺す段取りを手早く整えやがって、日本警察手際良過ぎんぞ!
どうする!?
この体の身体能力なら逃げられんこともないし、ぶっちゃけ撃たれても大丈夫な気はするが、それでも銃弾なんて好き好んで喰らいたくない。勿論反撃なんて論外だ。
かといって第5号を放置していく訳にもいかんし、どうする!?
「撃てぇええ!!」
逡巡する俺を余所に、美声の坊主刑事の号令の元、夜の町にけたたましい無数の銃声音が響くのであった。
という訳で捜査本部の主力メンバー杉田さん桜井さん登場回です。
原作では一条さん(本作のゆきのんポジ)が超人過ぎましたがこの2人も相当な名刑事ですよね。優秀というより大人としてカッコいい。
特に杉田さん役の人は声優もやってるのでやたら声がセクシーで印象的でしたw
八幡のバイクテクニックに対する設定はやや強引かとも思いますが本郷のおっさんの所為で準プロ級、元ネタは「夏休み父に遊びに連れてけといったら親の職場である陸上自衛隊のガチもんの軍事訓練させられ、あほみたいに体力のついた某ライトノベルの主人公」があったりします(笑)
アレを乗りこなすならクウガの身体能力以外にも相応のテクニックが必要ですからw
次回もお楽しみに!