伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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今回より遂にあのマシンが登場するEPISODEがスタート!(この話で出るとは言っていない)

前の話はラブコメパートも含めながくなりましたが今回は割とスピーディに進みます!



EPISODE:20 戦士クウガは鋼の愛馬と巡り会い、女豹を追跡する。<1>

 

ダンダンダンダン――――!!

 

すっかり日の沈んだ文京区の路地裏で響き渡る銃声。

飛来する無数の弾丸の雨が俺と未確認生命体第5号に降り注いだ。

 

おおおっ、案の定平気っぽいけど思ったよりチクチクする!

一般的な感覚としては節分の日に子供から投げつけられる大豆位の痛みはある。

 

我慢できなかないが勘弁してくれ!

 

「ジャスロバァ!!(やるのかぁ!!)」

 

一方、俺と同じく銃火に晒された第5号もやはり明確な致命傷は受けていないものの、不快感はあったらしく警官達に向かって『やんのかぁゴルァ!?』という態度で歩もうとする。

 

やっぱお前ヤンキーだろ!?

 

「くっ!」

 

そうはさせるかと俺は第5号を羽交い締めにし、力任せに引っ張ってこの場から諸共の離脱を試みる。

 

当然、標的の2匹が一箇所に集中したことで放たれる銃雨の量は一気に倍となったが、んな事気にしてる場合じゃない。

 

とにかく今は、コイツを引き剥がす!!

 

◇◇◇

 

長野県警 07:12 p.m.

 

「第4号が東京で射殺された!?」

 

バラのタトゥの女の攻撃を受け2時間近く意識を失っていた私は亀山君からの着信で目覚め、『奴らが東京に現れた』という一方を受け急ぎ長野の本部に帰還。

 

連絡をくれた彼から聞かされたのは、想像するだけで心臓が停止してしまいそうな恐ろしい報告だった。

 

「え、ええ、板橋署にいる知り合いの話だとそういう情報が入ってきていると……」

「ん? ちょっと待て! 俺んトコに来たメールには2匹とも両方とも逃がしたってあるぞ?」

「本当ですかっ!?」

 

意識が遠くなりかけた私だったが直後に海老沢さんが言った言葉に引き戻され、彼が開いているメールを確認。

どちらが正しい報告か解らない以上、楽観的な方だけを信じるのは警察官失格だが、その一報は私に若干の冷静さを取り戻させた。

 

その後、本部長から通達された正式な報告として第4号()と第5号が共に逃走した事、及び一連の未確認生命体関連の事件が正式に広域指定され、合同捜査本部設置に先駆けて、私に明日、警視庁へ向かう様にと言う通達が出された。

 

◇◇◇

 

文京区 飯田橋 08:33 p.m.

 

『それじゃあ本当に怪我はないのね!?』

 

「ああ、ちょっとチクチクしただけで全然平気だから安心しろ。……それより悪かったな、結局第5号を逃がしちまった……」

 

何度となく無事を確認する雪ノ下に繰り返し平気だと応えつつ、俺は彼女に一連の戦闘の報告をする。

 

あの後、銃火の中で抵抗する激しく第5号を抑えるのに難儀していた俺だったが、弾丸の1発が偶然奴の左目に命中した事で事態が一変した。

 

奴は激しい痛みに苦しみながらもその強靱な脚力を駆使した逃走。

 

俺もその後を追いかける形で包囲網から離脱することには成功するも、奴のスピードには追いつけず取り逃がしてしまった。

 

その後、変身を解除してから現場にしれっと戻ってバイクを回収し、彼女に連絡を入れた。

 

『謝るのは私の方よ。……本当にごめんなさい。全てを懸けて貴方を支えると言った矢先にこんな……』

「や、そもそも奴らが|東京(コッチ)に出てくるなんて予想外だし、化物が2匹暴れてりゃ警察もああいう反応をするだろ。……何度も言うが俺は平気だから安心しろ。――で、これからどうする?」

 

どうフォローしたところで結局自分を責めるんだろうなぁと察しつつ、話題を今後の段取りに移行させる。

自責の念から逃れる最も合理的な手段は、そんなこと考える暇も無くなるくらい働く事だ。

 

これぞ勤勉で名の知れた日本人の社畜イズム!

 

『――さっきまで行った会議で私も朝一番で東京(そっち)に行く辞令が下ったわ。詳しい話は合流した時にしましょう。それと第5号に関してだけど、推定時速270kmで逃走されてとてもじゃないけど追跡できないみたい……』

 

「270って……F1マシンかアイツは?」

 

人間サイズの大きさでそんなスピードを出されては入り組んだ都内では絶対に追いつけないだろう。変身した俺も多分相当人間離れした速さで走れるのだろうが、流石に追い切れない。

 

『第5号のスピードに対抗する手段については私に心当たりがあるから任せて。貴方は明日の合流まで休んでいて、東京に着いたらまた連絡するわ』

 

「ん、分かった」

 

雪ノ下との通話を切った俺は未だ耳に残る銃声の音を思い返しながら月を眺め、彼女には敢えて話さなかった問題に想いを馳せる。

 

……今晩、どこで泊まろうかな?

今更店に戻るの、超恥ずかしい……。

 

◇◇◇

 

城南大学考古学研究室 08:14 a.m.

 

「ふぁああ~~~眠い……」

 

昨日部屋に戻ってゆっくりお風呂に浸かった後は半日以上惰眠を貪った筈なのに、未だ疲れが抜けきれない。

今の私、大丈夫かなぁ、目、腐ってないかな-。

お揃いの小物とか持つのは割と好きだけど、流石に目付きのペアルックは嫌だなー。

 

「って、ヒッキー!?」

 

私は目を擦りながら研究室の戸を開けると、そこではヒッキーが椅子にもたれ掛かり眠っていた。机の上の少し型の古いPCはスリープ状態になっており、その横には冷めた飲みかけのMAXコーヒーもあった。

 

もしかしてまた夜からここで解読でもしていたのだろうか?

あんな事あったばっかなのに……。

 

「スー、スー……」

 

静かに寝息を立てながら熟睡するヒッキー。

 

普段は腐った目の印象が強すぎてあんまり意識することはないけど、目を瞑ったその顔立ちはやっぱり整っていて見てると正直、ドキドキする……。

 

以前いろはちゃんが『先輩って気絶してれば結構イケメンですよねぇ』と微妙な褒め方していたのを思い出しつい苦笑する。

 

彼のこの顔を知っている事、それを気軽に見る事ができる位置にいることは私の密かな自慢だ。

 

――本当の所、今ここで寝顔を見るまでひょっとして彼が私に内緒でゆきのんの所へ……じゃない! ミカクニン、だっけ? あの怪物達と戦いに行っちゃったんじゃないかって不安だったけど、良かった……。

 

「んん…………んぁ、由比ヶ浜? 早ぇな、ってもう朝か」

「うん、おはよヒッキー、また徹夜してたの?」

 

そうやってしばらく眺めていたら彼の瞼が開き、いつもの見慣れたヒッキーに戻った。

うーん、やっぱり見慣れた(腐った)目の方が落ち着く私はちょっとおかしいのかな?

イケメン状態だとドキドキし過ぎて困るんだよなぁ。

 

「あ、それより昨日の内に新しい文字解読できたぞ? コレな」

「へー、えっと……“戦士”? ……なんかこの文字、変身したヒッキーの顔に似てない?」

 

ドギマギする私の気持ちなど気付きもせずヒッキーはPCの画面を着けて解読結果を表示。

 

ヒッキーって普段は擦れたことばっか言う癖に、こういう研究とかになると凝り性で意外と子供っぽい態度を見せたりする。……まあ、そういう所、ちょっと可愛いと思うけど……。

 

「ああ、やっぱそう思う? つーかこの文字だけ他と明らかに字の系統が違う気がすんだよな。文字っていうよりマークっぽいって感じで……ひょっとしたらクウガ()個人を指す言葉なのかな?」

 

「っ! ヒッキーはヒッキーでしょ!? 戦士でもないしクウガなんて名前じゃないし……!」

「えっ、や、まあ……そだね。悪かった……」

「……わ、私こそごめん……」

 

彼の何気ない言葉を聞いた瞬間、思わず声を荒げてしまった。

数秒の沈黙の末、申し訳なさそうに俯く彼に私も謝り返す。

 

こんな風にカッとなるなんて自分でもビックリした……。

 

気まずい空気になってしまった研究室。そこへ新たに入ってくる人間がいた。

 

「チョリ~ッス! 研究室のムードメーカーとべっちこと戸部翔、インフルを乗り越えて戻ってきたヨ~~~ウェイ!」

 

「げっ……」

「とべっち……」

 

現れたのは私とヒッキーの高校時代からのクラスメイトで同じ考古学研究室に在籍する戸部翔くん。

 

必要以上に賑やか……ていうかノリがちょっとウザい時がある彼の入ってきた事でヒッキーは露骨に面倒臭そうな顔をするけど、お陰で空気が一変して私的には助かった。ありがとうとべっち。今コーヒー淹れたあげるね!

 

「何だよもう元気になっちゃったのかよ……。後3ヶ月位寝てりゃ良かったのに」

「いやいやお気遣い嬉しいけどマジそういうワケにもいかないっしょヒキタニく~ん? なんせ俺だけ未だに修士号取れてないし、早いとこ論文仕上げないと、いやー焦るわー、秀才のヒキタニくんに抜かれるならともかく、結衣にまで追い越されるとかホントヤバイわ~」

 

あっ、何か微妙に失礼なこと言ってる。コーヒーは自分の分だけにしよ。

 

「ああ、それより聞いた2人共!? さっきSNSで見たら何かこの近くで変な化物が暴れ回ってるんだってさ! 朝からパトカーとかも出まくってるらしいベ!」

 

しかし空気が変わって安心した矢先、そのとべっちがもたらしたニュースがまた状況を一変させた。本人は噂半分で語っていた話にヒッキーは飛びつき、さっきまでの気怠そうな様子が嘘の様な表情で迫ったのだ。

 

「っ!! 具体的にどの辺だ戸部!?」

「ウェ!? えと……神田の方、だったかな?」

「神田だな? よし!」

 

「ヒッキー!?」

 

場所を聞くや否や私の呼び止める声に耳も貸さず、彼は飛び出してしまった。

 

どうして?

どうしてヒッキーは……八幡は、私だけの傍に居てくれないの?

 

彼が飛び出していった開けっ放しの扉を眺め、私の胸の中で漠然とした。けどどうしようもなく大きな不安が渦巻いていた。

 




本作のガハマさんは別にヤンデレってわけではありませんが、原作の桜子さんと比べ、八幡に対し自身の好意をしっかり自覚している点と、彼女に比べ精神年齢は若干幼いのでEPISODE02の第0号ビデオやグムン襲来がトラウマ過ぎて色々まいっちゃってる状態です。

そして待たせたねみんな!
俺ガイル屈指の人気者とべっちが出てきたよ!(爆)

本作の彼は八幡や由比ヶ浜と同様大学院生ですが、留年したりレポートが評価されなかったりで未だ修士号取れてません。

海老名さんとは? 勿論フラれました(笑)

次回もお楽しみに!

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