伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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EPISODE:21 戦士クウガは鋼の愛馬と巡り会い、女豹を追跡する。<2>

私がゴオマを引き連れてトウキョウ(リントの集まる地)に到着した時、予想外の事態が起きていた。

 

召集した内に1人“ズ・メビオ・ダ”が“ゲゲル”に先駆けて、リントを狩り始めていたのだ。

その右目はこの時代のリントが使う矢によって射貫かれ、潰れていた。

 

「メビオッ!!」

「ザラセ! ボンベ ン セギ ゾ グスザベザ!(黙れ! この目の礼をするだけだ!)」

 

“ズ”の集団の長である“ザイン”の制止にも耳を貸さず、自慢の脚力で走り去ってしまった。

 

「ザイン、ゲズレギギソ《ザイン、説明しろ》」

「バルバ!」

 

今更ながらに私の到着に気付いたザインが驚き交じりに経緯を語り始めた。

事の発端は昨晩、私の召集に応じた“ズ”の連中が集合した場で起こった出来事だ。

 

鉄の馬に跨がった無知なリントが愚かにもメビオに絡み、我々“グロンギ”の誇りであるガバギ(タトゥ)に触れたとの事だ。

 

それに激昂したメビオは即座に愚かなリントの1人を始末し、鋼の馬で逃げた残りを追跡。

 

しかしそこにクウガが現れ、更に紺色の服を着込み矢を携えたリント共まで現れ、その矢に右目を射貫かれた。らしい――

 

成程。ゴオマとグムン(そこの愚か者共)の様に勝手にゲゲルを始めたのではなく、誇りを踏みにじったリントへの報復というなら、それ自体咎めるものではないだろう。

 

だがそれはあくまで“ここまで”の話だ。

“これ以上”は容認できない。

 

奴は、3人目の造反者となったのだ。

 

「ゲゲル ゾ ザジレスゾ…(ゲームを始めるぞ……)」

 

メビオは敢えて野放し、私は残ったズの連中を束ねその場を後にした。

 

◇◇◇

 

東京駅八重洲口 09:07 p.m.

 

「比企谷くんが未確認を!?」

『そうなの! とべっちから話を聞いたら怖い顔して飛び出して……』

 

東京へ向かう途中の電車の中で未確認生命体第5号が行動を再開した報せを聞いた私は更に東京駅を到着直後、由比ヶ浜さんからの連絡を受けた。

 

全く、何てタイミングが悪い……。

私は迎えに来てくれた警視庁のパトカーの後部座席に乗り込みながら彼女との通話を続けた。

 

「とにかく事情は分かったわ。後は私に任せて」

『うん、――お願いゆきのん、ヒッキーを……ヒッキーを止めて!!』

「…………ええ、私に任せて」

 

本当に心から彼のみを案じ、また私の事を信じて頼んでくれる由比ヶ浜さんの悲痛な懇願が私の胸を抉る。

 

――本当に、本当にごめんなさい。

 

私は、私達は、それでも――戦わなくちゃ、いけないの……!

 

◇◇◇

 

「クソッ、なんて速さだよ……! こっちは免停覚悟の最高速度でつっ走ってんだぞ!?」

 

戸部の情報とSNSの書き込み、そしてやたらあちこちから聞こえるパトカーのサイレンを頼りに第5号の後ろ姿を捉えた俺はバイクのアクセルを目一杯まわし追いつこうとするが、奴はそんな俺やパトカーの追跡を嘲笑うかの様に疾走する。

 

そして見失ったかと思えば散発的に警官達の前で足を止め、立ち向かう彼らを片っ端から手に掛け、追撃者が集まってきたらまた逃走、というゲリラ戦法の様な殺戮を行い続けていた。

 

全く、これじゃどっちがどっちを追いかけてるんだが分かったモンじゃない。

 

警官隊も万全の数を整えて包囲できればまだ反撃の余地くらいあるのだろうけど、何せ相手は人間と同じ大きさ時速200km超で駆け回るライオンとトラとチーターを組み合わせた様な健脚の持ち主……ってなんだその猫100%合成獣(キメラ)? 雪ノ下がメッチャ喜びそう!

 

車では階段等の障害を走破しきれず、俺の様に走破性の高いバイクは単純な速さの差で逃げられてしまう。

 

『そこのバイク、今すぐ停まりなさい! 何kmオーバーしてると思ってんだ!』

 

そして、パトカーに混じって化物相手に追いかけっこを続ければ当然の様にしょっぴかれるのが法治国家日本なのである。

 

非常時なのに真面目だね!

 

「…………チッ」

 

ここで警察と揉め事起こしても仕方が無いと、俺は渋々バイクを停めお沙汰を待っているとガチャリ、とごく最近聞いた覚えのある音と冷たい金属の触感が手首に伝わる。

 

要するに、手錠を掛けられてしまった。

 

「この目付きの悪い見るからに犯罪者臭のする男は私が署まで引っ張ります。皆さんは引き続き第5号の追跡をよろしくお願いします」

 

「雪ノ下警部……ハッ、了解しました」

 

堂の入った立ち振る舞いで年上であろう男達に指示を出してこの場にいた警官を全員を引き離し雪ノ下警部殿は俺に微笑みかけた。

 

「貴方の犯罪者面が役に立ったわね。さ、詳しい話は道すがらするから早く車に乗って」

「ああ、うん。そだね……けどその前に、手錠(コレ)外してくんない?」

 

この有能な警部殿、存外遊び心に溢れていらっしゃるんだよなぁ……。

 

◇◇◇

 

「奴らが人間に変身した?」

「…………ええ」

 

第5号に対抗できる手段とやらを取りに行く車中。

俺は雪ノ下が昨日、額にバラのタトゥを持つ女と接触した経緯を話してくれた。……つーかこいつも大概無茶するよなぁ。

 

そこで彼女は、昨日の戦いで逃げた第3号とその女が人間の姿と怪人の姿を使い分けているのを目撃した。――まるで、俺の変身と同じ様に。

 

「……ほーん、そっかー」

「何よその腹の立つリアクション……かなり衝撃的な話をしてるつもりなんだけど?」

 

俺の適当な相槌に対し、視線をきちんと前を見ながら気持ち運転を悪くする事で苛立ちを表現する雪ノ下。

コイツ、機嫌が運転に出るタイプだな……。

 

「いや、確かに衝撃的ではあるけど、連中が何か喋ってたのは何度も聞いてるし、俺等に近い知性は持ってるのは分かってたからな……」

 

今のところ『クウガ』って俺に対する名詞以外は何言ってるか分からんけど、奴らは確かに“言葉”を発し、ある程度の思考を以て殺戮を行っていた。

 

そして、初めて赤いクウガに変身して第1号に致命傷を与えた折、奴が俺に対し向けた怨嗟の言葉は、今も耳にこびりついている。

 

「……じゃあ、貴方は奴らが元は同じ人間かもしれないと分かった上で戦うと決めたの? 昨日、私と約束した時から」

「……まあ、な」

 

キッパリと断言する俺に対し、雪ノ下の声には戸惑いと迷いの色が見え隠れした。

恐らく昨晩俺が撃たれた一件も含め、一度決めた覚悟にまた迷いが生じているのだろう。

 

俺に人に近い知的生命体を殺させる事に対する迷い。

俺が人に撃たれ、1つ間違えば殺されるかもしれないという恐れ。

 

――でもな、雪ノ下?

お前が俺の身を案じてくれる様に、俺にだって守りたい奴らがいるんだよ。

 

「――昨日、長野に戻る前にさ、一色と今年の夏、海に行く約束をした。来年受験のけーちゃ……川崎の妹に高校受かったらお祝いする約束をした。平塚先生んとこのチビ共と、一緒に映画行けない埋め合わせをするって約束したんだ……」

 

「……気のせいかしら、さっきから年下の女の子のデートする約束ばかりじゃない?」

 

雪ノ下の運転がまた荒っぽくなった。

 

「いや、違うから。今ちょっと真面目なこと言おうとしてるから聞いて落ち着いた運転をしよう! ――俺が言いたいのはな、皆これから先の未来をすっげー楽しみにしてるって事なんだよ。毎日毎日、生きてりゃ多かれ少なかれ存在する大変な事やしんどい事を乗り越えて、笑顔で。――けど奴らがこの先も人を殺し続けりゃ、そんなささやかな幸せさえ、無くなっちまう」

 

これは俺の素人考えだが、恐らく東京のど真ん中でこれだけの騒ぎになった以上、警察も連中の存在を隠し通すことは出来ないだろう。

 

奴らの存在が公になり、今後も東京で暴れるとなれば、大半の人間が日々『ある日突然、化物に殺されるかもしれない』という理不尽の極致の様な不安を抱えながら生きなければならない。

 

誰も彼もが明るい未来に思いを馳せられず、俺のように腐った目をして日々を過ごすかもしれない。

 

――そんなのは、御免だ。

 

腐った目をして戦う(生きる)のは、唯一人()だけでいい。

恐れるだけの歴史なんて、俺が(ゼロ)に巻き戻してやる。

 

「だから貴方だけが犠牲になるというの? これから戦い続ければ、奴らに殺されるかもしれないし、警察に撃ち殺されるかもしれない。――例え死ななくても、何時か、奴らと同じ存在になってしまうかも、しれないのよ?」

 

そんな俺の決意は、彼女にとって自己犠牲と解釈された様で、その表情にはやるせない感情が滲み出ていた。

 

確かに、彼女の言う事は至極尤もだ。

正直な話、化物に殺されるのも人間に射殺されるのも絶対嫌だし、自分自身が化物になるのはもっと嫌だ。

戦って戦って、戦い抜いたその先に、身も心も擦り切れて、今の俺じゃいられなくなるかもしれない。

 

――それでも、それでもな……俺は守りたいんだよ。

 

孤高(ボッチ)を気取って無意味にカッコつけて、カーストだなんだと人を勝手に分別してわかり合えない変わらないと斜に構えていた捻くれ者に、沢山の繋がりを――“本物”をくれた人達を、そいつらが暮らすこの世界を、だから――

 

「大丈夫だ。約束したろ? なるべくお前らを悲しませない方向で頑張るって。意外かもしれんが、俺は虚言も妄言もほざくが、約束は守る男なんだぞ。だから信じろ、雪ノ下……雪乃」

 

「っ!! ……このタイミングで」

 

唐突の名前呼びに動揺した雪ノ下……いや、雪乃がハンドルを切り危うく反対車線に突っ込みそうになる。

っぶねー超怖ぇええ! お前気持ちが運転に出過ぎだろ!?

 

「ど、動揺し過ぎだろ今更……何年来の付き合いだよ」

「だから余計に、なんじゃない。貴方も私も、そういう切り替えのタイミングが分からないし、わざとらしいって感じる性分だったし……一生、苗字で呼び合うことになるかと思ってたわ」

「や、なんかごめんね? ……やっぱ、元に戻す?」

「…………雪乃でいいわ」

 

ふぇええ……恥ずかしいよぉおお!

何このこそばゆい空気! 俺らもう25だぞ?

いい歳こいて何甘酸っぱい空気醸し出してんの!?

顔が熱くて、死んじゃうよぉおお~~!

 

「…………」

「…………」

 

それから目的地に着くまでのおよそ5分間、俺達は真っ赤になった顔のほてりが収まるまで無言で過ごした。

 

そして着いたのは、千代田区霞が関にある警視庁の地下駐車場だ。

 

何とか平静を取り戻した俺は車から降り、雪乃に案内された。

 

「……貴方を信じるわ……八幡。着いてきて、第5号を倒すわよ」

 

そう言って踵を返す彼女の背中は相変わらず美しく、そして頼もしかった。

 

 




ここに来て「名前呼び」は我ながらちょっとベタな演出かとも思ったのですがインスピレーションに任せてやってしまいました……。

20代半ばにして呼び方1つでドギマギするとかこの作品は八幡たちはどんだけピュアなんやねんって話ですね(笑)

それととっくに気づいてる人もたすうでしょうが今回の八幡の

>腐った目をして戦う(生きる)のは、唯一人()だけでいい。
>恐れるだけの歴史なんて、俺が(ゼロ)に巻き戻してやる。

というセリフは主題歌の2番『恐れるだけの歴史を0に巻き戻す英雄は、唯一人でいい』という歌詞から取りました。

リアルタイム時はただカッコいいフレーズだと思ってましたけど後々明らかになるクウガの在り様を考えると、切なさも感じますよね。

次回こそ遂にあのマシンが登場します!!
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