伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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お待たせいたしました!

遂に! ようやく!
あのスーパーマシンが登場します!

ある意味この話から、八幡=クウガは『仮面ライダー』となります!



EPISODE:22 戦士クウガは鋼の愛馬と巡り会い、女豹を追跡する。<3>

雪乃に警視庁の地下まで連れてこられた俺は、【特殊兵装保管庫】と記された倉庫に案内された。

 

倉庫と言ってもその内装は金属の壁や床で構成されており、どこかSFっぽい雰囲気があった。

はえー、男の子としては何かちょっとワクワクするモンがあるぞ。

 

「こっちよ」

 

雪乃はそんな施設の最奥で区分けされた別スペースの扉を開ける。

 

――そこには、銀色のボディに黒いラインが走る1台のオフロードバイクが置かれていた。

 

「次世代型白バイ【トライチェイサー2020A】の試作機よ。普及型にはコストの都合上切り捨てた性能がこれには全て搭載されている。ガソリン不要ながらハイパワーな無公害アレグロエンジンが生み出す最高時速は330km」

 

「330!? ……って、コレ右のハンドルグリップとメーターが付いてないぞ?」

 

バイクを愛するいちライダーとして軽い感動に浸りつつ、肝心なアクセルグリップの不在に首を傾げる俺。

 

「慌てないで」

 

すると雪乃はどこからか取り出したジェラルミンケースを開け、そこから柄がグリップ状の金属警棒を取り出して右ハンドルに装填。

 

そして端末をスッキリとしたメーター部分から出た端子に接続させ液晶画面に表示された数字列に【0808+ENTER】と打ち込む。

すると車体前部のどこか目のように見える2つのライトに青い光りが灯り、駆動音がうなりを上げる。

 

「マシンの起動と各種機能の操作はこの端末で行うの。機能の内容に関しては説明アプリも入ってるから後で目を通しておいて」

 

うおおっ! 何だこのサイバー感!?

カッケェ……超あがるわ~!

長らく燻っていた中二魂に火が付きそうなデザインとギミックが、俺の心を滾らせて止まない。

 

しかし――

 

「いいのか? コイツで5号を追いかければお前が第4号()に手を貸してるって警察中に知れ渡るぞ? その、お前のキャリアとか……」

 

「問題ないし興味もないわ。成すべき事に成せない栄達になんてね。――私は警察としての力で貴方を支える。だから貴方は、その力で皆を守って」

 

俺の心配など知ったことかと一蹴し、(おとこ)前な笑みを浮かべる警部殿。

ゆきのんさんマジカッケェッス……。

 

だが、彼女がこれまで積んできた努力とキャリアは、口で言うほど容易く捨てられるものではない。その言葉には多分に強がりを含んで居るであろう。

 

「――――おう」

 

しかしそれでも俺は敢えてそれを指摘せず、胸にしまって頷いた。

与えられたTRCS2020(バイク)に跨がって腹部に手をかざし、ベルトが出現。

 

「変……身!」

 

3度目になるポーズを取って、赤い戦士(クウガ)に姿を変身。

 

一方、雪乃は倉庫のシャッターを開けた後、バイクのコンソールパネル(端末)をタップ操作してナビゲーションシステムを立ち上げる。

 

「各警察車両に備え付けられたGPSと、都内全域に設置された監視カメラの情報を精査して第5号のおおよその現在地をリアルタイムで表示するわ。私も後からスグに追いかける」

 

「分かった。――行ってくる!」

 

シャッターが開き視界に広がる青空の下、アクセルを解き放つ。

強化された黒と紅の皮膚が、風を裂く。

コンソールの表示されたスピードメータは、あっという間に200kmオーバーを表示した。

 

って、うおおおお何っだこの加速!?

普通のバイクと同じ感覚で乗り回したらあっという間に振り落とされるぞ!??

デタラメに強化された体じゃなきゃ、とてもじゃないが操作できん!

 

雪乃は開発コストがどうとか言ってたけど、こんなん量産したって乗りこなせる人間そうはいない。これ設計した奴、絶対頭のネジ1,2本外れてるだろ!?

 

しかし今は、その常識外れの性能が頼もしい、

俺は一気に行動を駆け抜け、ナビが点滅する(第5号が暴れる場所)にあっという間に駆けつける。

 

そこでは交戦していた十数人の警察官達が主に顔を傷付けられて倒れている中、第5号は1人の坊主頭の刑事を押し倒して2本の指でその眼球を抉り出そうとしていた。

 

「ゴラゲ ン レロ ゲグデデ ジャス!!(お前の目も抉ってやる!!)」

「やめろおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

絶望的な状況に絶叫する刑事。

俺は重心を移動させてウィリー走行をしながら両者の間に割って入り、急停止の反動で浮かび上がった後輪をターンさせて、第5号()に叩き着け、吹き飛ばした。

 

降車した俺は真っ先に襲われていた坊主頭の刑事の元へかけより、その安否を確認。

よく見るとそれは昨日、俺と第5号の戦いに駆けつけた警官達を指示していたやたら声の良いおっさんだった。

 

「……っぁあああ!」

「大丈夫っすか!?」

「…………へ?」

 

流石に今しがたまで目を抉られそうになっていたイケボ刑事(デカ)(仮称)は動揺しているが、幸い目立った外傷は見られない。

 

「クウガ! ……チィ!」

 

俺の乱入に対し忌々しげに舌打ちをしながら、第5号は再び逃走を開始した。

どうやら今はクウガ()との決着より自分の片目を奪った警察官への報復が優先らしい。

 

「逃がすかよ……!」

 

俺は再びトライチェイサーに跨がり、奴が逃げた公道へとハンドルを切る。

バイク特有の加速力と300kmオーバーという破格の最高時速は、瞬く間に奴の背中を捉え、グングンとその距離を詰めていく。

 

「っ! バンザ ゴボ グザ バ!?(何だその馬は!?)」

 

今まで一度駆け出せば自分を追い切れる者などいなかったのであろう第5号が驚き慌てる。

 

――古代の人々が未来(俺達)に託してくれたベルト。

――最先端技術の粋を結集して作られたスーパーバイク。

――それを俺に託してくれた雪乃の信頼。

――コイツを扱いきる技術を叩き込んでくれた本郷教授の教え。

 

俺という特別でも何でもない凡人に集約された幾つもの力が1つになり、終わりのない殺戮を繰り返す化物を追い詰めている。

 

俺は自分が人間かどうかも怪しい存在に成り果てた事実を敢えて棚上げし、こう強く思った。

 

――“人間”を舐めなんじゃねえぞ殺戮者(バケモノ)共……!!

 

 




本作のトライチェイサー2000あらため2020は基本的な外観は原作と同じですが、コンソールパネルの部分がタッチパネル方式になっており、ナビゲーションシステムなど18年前のモデルに比してIT方面に強化された仕様になっております。

また微妙に時速がアップしていますね。

因みに起動の際に打ち込むパスワードは八幡の誕生日からとりましたw

尚、セットしたスマホ型端末(名称:チェイスフォン)は取り外した状態でもそのまま超高性能スマホとして使用可能で、八幡と雪乃が予備含め1つずつ携行。
状況に合わせてゆきのんが運転することも可能となっています。

ええ、販促商品です(爆)


次回でいよいよ、物語序盤に決着がつきます!!

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