伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。 作:烈火・抜刀
お待たせしてしまいましたが本日より新章
《第2章 覚醒する力、超変身発動編》
がスタートでーす!
これからもお楽しみにw
EPISODE:24 やはり青春ラブコメには誤解とすれ違いは不可欠である。<1>
城南大学考古学研究室 17:14 p.m.
「帰った?」
「うん、30分位前かな? ヒキタニくんが出てった後スグに雪ノ下さんに電話したと思ったらしばらくスマホで何か見てたらしいんだけど、さっき急に『帰る』ってさ。ありゃ~相当怒ってるっぽいよ? ヒキタニくん何したのよ?」
第5号を倒した俺は雪乃から貰った
その後店で昼を食べた後、警視庁が預かってくれた自分のバイクを回収(雪乃が上手いこと処理してくれた)し、大分遅れて大学に戻ってきた。
……由比ヶ浜に今後も奴らと戦い続けることを正式に話し、わかってもらう為に。
しかしどうやら遅すぎたらしく、俺は恐らくあいつが発憤するきっかけになったであろう画像がアップされたSNSをスマホで開いた。
そこには数時間前、奴を追いかける中でトライチェイサーに跨がる俺の姿が撮影されていた。
いや~、スグに情報が拡散される現代社会、怖いわホント。
……どの道、第5号がああも白昼堂々暴れ回った以上、奴らの存在は遠からず公式に発表されるだろうが、その前に由比ヶ浜にだけはしっかり事情を話さなければと思っていた。
しかし直接話すより先に、この様な形で俺の意思が知ったアイツの心象は、ハッキリ言って最悪だろう。
長い付き合いの俺や雪乃に蚊帳の外に置いて枯れた疎外感、嘘を吐かれ続けたという事実。
そのどれもが言い訳無用な俺達の……否、俺の落ち度だ。
普段なら鬱陶しいとしか感じない戸部の諫言が正論に聞こえるまであり、罪悪感と後悔が心臓を貫く。
その後、何度か発信と『話がしたい』という旨をメールしたが、
◇◇◇
1月23日
文京区ポレポレ 09:32 a.m.
「ホンット、お久しぶりですね~雪ノ下先輩♡
「ごめんなさいね、急な話だったのよ。一色さんは今、この店で?」
「ええ、寒~い親父ギャグばかり言う叔父さんと中々働かない居候のお尻を叩きながら楽しく働いてます! 雪ノ下先輩もこれからちょくちょくお店に来てお金下ろして言ってくださいね♪ サービスしますから♡」
「ええ……けどその言い回しはどうかと思うわよ?」
まるでいかがわしいお店の様なフレーズを口にする一色さんに呆れながら、私はマスターが淹れてくれたコーヒーを口にする。
この店に来るのは実に2年ぶり、大学時代は由比ヶ浜さん達とよく来たけど、相変わらずいい腕をしている。というか以前よりまた一段と美味しくなった気がする。
これでマスターが寡黙で多少なりとも風格があれば映画のワンシーンだって彩れるだろうが、生憎と現実はそこまで良く出来ていなかった。
「いや~しかしあのゆきのんちゃんが今や警視庁の刑事さんか~! カッコイイねぇ、やっぱこう、悪党相手にバキューンバキューン! っとかドンパチするの?」
「いやいや何言ってるんですか叔父さん、そんなのひと昔前のドラマの中だけですよ。雪ノ下先輩はこう、水曜9時にドラマに出てくるみたいな超ハイスペックな頭脳で事件を解決する頭脳派ですよね」
「あ~そっちも似合いそうだよなぁ~。……僕とした事がつい、なんつって☆」
「うわっ、叔父さんそれ右京さんの物真似? クオリティ低っ!」
似せる気など微塵も感じさせない水●豊の物真似で姪を呆れさせる陽気なマスター。
決して悪い人ではない。寧ろ善人なのは間違いないのだろうが、このノリだけは正直、学生時代から苦手だった。
「いや~でも美人の女刑事って言ったら野上冴子路線もありだよねぇおじさん的には。知ってる? シティーハンターってジャンプの黄金期にやってた漫画」
「いや、それ峰不二子と肩並べる稀代の悪女じゃねえか……」
一色さんに引かれても一貫して喋り続けるマスターが古い漫画の話を切り出す。
いよいよどう反応していいか困る私だったが、そこへようやく
「んだよ。八っちゃんだって野上冴子もふぅ~じこちゃんも大好きな癖によぉ」
「いや、確かに好きだけど、雪乃……下とじゃ全然キャラ違うからね? 第一、あの人らとそいつじゃ決定的に足りないものが1つあるだろ?」
「………………あ~、確かに……」
降りてきて早々、マスターと漫画の話で盛り上がる八幡。
この男、一色さんの顔を見た途端私の名前じゃなく苗字に言い直した……小心者め。
それと会話の内容はまるで理解出来ないが、気のせいだろうか、2人の視線が私の胸元に集まって……酷く腹立たしい気持ちになる。
「うっわ、先輩も叔父さんも最っ低……。セクハラで訴えるなら証言しますからね雪ノ下先輩!」
「え、ええ……それはまた今度。それより八ま……比企谷くん、行くわよ」
「おう……、んじゃおやっさん、一色、ちょっと行ってくるわ」
そう言って彼と共に店を出た私は、店の裏手にある駐車場へと移動。
――そこで、黒かったヘッドカウルが金色に、ラインを赤く塗装され、昨日に比べ著しく派手なカラーリングになった
おまけに車体側部とヘッドカウルの中心には、新たに解読されたという戦士の意味を持つ古代文字――クウガのパーソナルマークまで描かれていた。
「あっ、ヤベッ……!」
「…………八幡?」
露骨にしまったという顔をする彼に私は鋭い視線を向け、無言で説明を要求。
すると彼は『やっ、違うからね? これには意味があってだね』と見苦しい態度を見せつつ、コンソールパネルから外した
「
「いや、普段この色にして変身した時はさっきの色に変えれば一般人にバイク見られてもバレ難くなるだろ? だから片方の色は意図的に派手にしたわけで……」
――成程、確かにTRCSの車体はかなり特徴的なシルエットをしている。
しかも第4号がこれを乗り回している姿は既に衆知の事実だ。
そこから正体が露見するのを避ける為、印象がガラリと変わる塗装をした。
勝手にやったのはどうかと思うけど、納得はできる理由だった。
「……ハァ、だったらせめてメールでもいいから一言私に許可を取りなさい。曲がりなりにも警察の試作車なんだから」
「……悪い」
呆れ果てる気持ちにはなりながらも許す私に対し彼は必要以上にしおらしい態度を見せる。
高校時代から『俺は悪くない。全部社会が悪い』というしょうもない口癖を持っていた彼にしては実に珍しい表情だ。
「……何かあった?」
「いや、由比ヶ浜の事でちょっと……結局メールも電話も返事がなくて……」
「……そう、私もよ」
彼に理由を尋ねた事で、自身でも意図的に考えない様にしていた彼女に関する問題を思い出し、憂鬱な気分になった。
昨日は第5号撃破後も事件の事後処理に追われ結局夜まで連絡が出来ず、電話を掛けてもメールを送ってもまるで返事がない。
彼女が私と彼に対し相当の憤りを抱えていることは、最早疑いの余地はないだろう。
「………………ハァ」
「えっ、ちょっ、何お前まで凹んでんの? 悪いのはどう考えたって俺だけだろ?」
「私も昨日、由比浜さんに貴方を止めてって言われた約束を反故したわ。結果的に第5号を倒す助力までしたんだから同罪よ……」
思わず吐いてしまった大きな溜息に今度は八幡の方が私を心配する。
まさか彼と同じ罪悪感を抱く日が来るとは夢にも思わなかった。
後ろ暗さを孕んだ連帯感が余計に心苦しい。
「……お前、ほんっと由比ヶ浜のこと大好きだよな?」
そんな私の顔をジッと見て、八幡は呆れ気味に苦笑しながら言う。
私はフッ、と笑みを浮かべ何を今更とばかりに返す。
「――ええ、否定はしないわ」
「うっわ、
見事にカウンターを決められ頬を染めて視線を逸らす彼を見ると若干気持ちが晴れやかになる。
そう、私にとって由比ヶ浜結衣という女性は多分この先彼女以上の人には出会えないと断言できる特別な存在。
――まあ、ギリギリ同格の
これから彼と用事を済ませ、午後に待ち受ける“後始末”を終えたら改めて彼女に会いに行こう。どれほど頭を下げたって構わない。何を責められても甘んじて受けよう。
彼女が許してくれるなら、また元の関係に戻れるなら、私は惜しむものなど何もないのだから。
◇◇◇
「こんにちは~」
「あっ、結衣先輩いらっしゃいで~す♪ 珍しいですねこんな時間に来るなんて?」
先輩と雪ノ下先輩が一緒に出掛けて少し経った頃、いつもは昼か夕方にご飯を食べに来てくれる結衣先輩がお店に来た。
なんだか所在なさげな様子でキョロキョロと見慣れた筈の店内を見回す様子から、私は彼女が店に来た目的を察した。
「先輩なら出掛けましたよ。詳しくは聞いてませんけど何か雪ノ下先輩と病院に行くとか言ってました。誰かのお見舞いですかね?」
「えっ! あ、いやそうなんだ……へぇ、病院……」
相変わらずリアクション可愛い人だなぁ。
けど先輩と雪ノ下先輩が一緒に出て、結衣先輩が話すら知らないって珍しいかも。
お客さんも全然いないこともあって、私の中の野次馬根性に火が付いた。
「先輩達と何かあったんですか?」
「えっ!? 別に! 全然何にもないよ!? まあ、ただちょっと……喧嘩中、かな? ハァ」
作り笑顔で溜息を吐く結衣先輩。
普通ここまでベタベタなリアクションだと『ていうか、聞いてもらえるの待ってたよね?』と疑いたくなるものだけど、この人の場合、素でやってるのがなんかズルいんだよなぁ。
しかし喧嘩中というのはまた……けどそう言えば昨日大学から戻ってきた先輩もエラくショボくれた感じで『やーがてー、星が降るー』とか何か聞いてると不安になる歌を口ずさんでたから結構凹んでたのかな?
あの人の場合、基本的に年がら年中生気が薄いからイマイチ分からない。
いずれにせよ、先輩も結衣先輩も(そして多分、雪ノ下先輩も)、皆が皆落ち込んで仲直りしたいと思っているのなら手っ取り早い手段は1つだ。
「そんなに気になるなら今から結衣先輩も病院に行っちゃったらどうですか?」
「え、…………今から?」
「はい、今からです♡」
お互いにお互いを思いやる気持ちが強い癖に、肝心な所で臆病だったりする。
有り体に言って『めんどくさい先輩達』に対し、私はちょっとばかり強引な(それでいて自分の首を絞める?)助言を囁く。
結衣先輩はしばしその場で考え込み、そして程なく『うん、行こう!』と力強く決意して店を出た。……ハァ、こういうの塩を送るって言うのかな?
まあでも、やっぱりあの3人にはいつもみたいにあってほしいというのも私の偽らざる本音だった。折角雪ノ下先輩が帰ってきたんだし。
世の中は『未確認なんたら』とか変な怪物が出たとか騒ぎになってるけど、そんな事とかは全然関係なく、私も含めまた皆で、楽しく――。
「…………」
私がそんな健気で可愛い、理想的な後輩の様な心配りをしている一方、叔父さんは(極めて珍しく)何か思い詰めた様な表情で黙っていた。
「どうかしたの叔父さん?」
「……いや、若い男女が午前中から一緒に病院行くって普通に考えると、“アレ”なんじゃないかなーって……そんなとこに結衣ちゃんけしかけて……大丈夫かー?」
歯切れの悪い物言いの叔父さん。
普段はアホな事ばかり言ってるから話は大体3割聞き流してるけど、ちょっと吟味している。
・旧知の仲である20代の男女が、平日の午前中からわざわざ待ち合わせし、病院に行く。
・男女にとって共通の、それも極めて親しい女子は、その事を知らない。
・(スマホで調べた所)、行き先の病院には、産婦人科がある。
以上の情報から導き出される結論は――|SYU【修】・|RA【羅】・|BA【場】。
――って、いやいやいやいや! それはない!!
だってあの先輩ですよ!?
女子が近寄れば取り敢えず警戒し、優しくされればもれなくキョドる!
あんな童貞の中の童貞、余程物好きな変わり者じゃなきゃまず好きにならない捻くれボッチな小心者がそんな……ああでも雪ノ下先輩も相当な変わり者だ!
しかもよく思い出してみれば二人とも何かお互いを名前呼びしかけてたし、えっ、そういう事!?
しかもそんな状況に何か色々思い詰めた結衣先輩って……アレ? もしかして先輩、結構ヤバイ? 大丈夫だよね!? 万が一背後からブスリってなっても!?
――ていうか、えっ、アレ? もしかして私、怒るとこここ?
余りにも衝撃的過ぎて感情が追いつかないというか……デキ婚して雪ノ下先輩の尻に敷かれつつ、子供おんぶしてる先輩と一緒にこのお店で働くとかのも悪くないかなーって思う自分もいる。
やがて甲斐性の無い先輩は雪ノ下先輩に三行半を突きつけられ、子供の育児に追われながらも身近に居る
「いろは? ちょっ、大丈夫かおい!? 何か遠い目してるぞ!?」
「やーがてー、星が降る~星が降~る~」
「何か虚ろな目で歌い出しちゃったし! 戻って来―い!!」
本作は来月公開の《劇場版仮面ライダーアマゾンズ》を応援しています(笑)
アマゾンズネタ知らない人はごめんなさい(汗)
次回はあのイケメンが登場します!