伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。 作:烈火・抜刀
元々ドラマパートに比重が多いクウガに加え、心理描写も多い俺ガイルをベースにしているのである程度テンポが遅いのはしゃーないのですがもどかしいです(苦笑)
じっくり書いていきたい気持ちはあるのだけど、早くドラゴンフォームだしたいなー。
関東医大病院 00:12 p.m.
「悪かったわ……」
「いや、俺も何か……すまん」
葉山のとこで身体を診て貰い、ついでに懸念についても――雪乃の前で――聞いた俺は未だ消えない羞恥心に駆られながらも何とかまともに会話できるまでに回復した。
いや、まあ、そうは言ってもまだ死ぬ程恥ずかしいんだけどね?
『現段階では問題ないと思うよ? ベルトから伸びた神経はあくまで肉体組織を強化するだけであって、変身していない時の君の遺伝子そのものはいたって普通だ』
しかし一方で、不安要素に関して最良の結果を早めに聞けた、というのは僥倖と言えるだろう。
子供以前に未だそういう相手もいない童貞野郎の俺だが、やはりこの辺の問題に不安を抱えていたらとてもじゃないが女性と付き合う気すら起きないのは明らかだ。
……ちょっと自意識過剰かな?
この間『アマゾンズseason.2』を一気観したから変な影響受けたのかもしれん……。
「けどその……意外ではあるわね。貴方にそこまでしっかりした結婚願望があったなんて」
「おいおい、俺は高校生の頃から常に言ってたろ? 将来の夢は専業主夫一択だって」
「寝言は永眠してから言いなさい」
「いや言えないからね永遠の眠りについてからじゃ。…………まあその辺の本気度はさておき、結婚願望っつーか、子育て願望はあるかもしれん」
平塚先生んトコのチビ達とかけーちゃんと接してると心が安らぐというか、和むんだよなぁ。
何なら保育士でも目指せば良かったって気もするが多分ダメ。
保護者からすりゃこんな腐った目の若造になんて絶対子供預けたくないだろう……。
「そ、それはあれかしら? 所謂1つの『野球チームが作れる位』という奴……?」
「いや、そんなにいちゃ養うのも大変だろ? けどまあ一人っ子ってのも寂しい思いさせそうだし、最低2人、出来たら3人は……って、どうかしたか?」
「あっ……いえ、何でも、ないわ……3人、ね……」
俺が比企谷家幸せ家族計画について語る横で、気がつけば雪乃は顔をその白い肌を真っ赤にして俯いており、ふと周囲の視線に目を向ければ、待合の患者さん(おばさん率高め)達はニヤニヤと生暖かい目を向けていた。
――あっ、これやらかした。完全にそういう仲って誤解されてんじゃん。
うぉおおおおおお! またしてもやっちまったぁああああああああ!!
「わ、悪い…………何か、その……すまん」
「あ、貴方が謝ることではないでしょう……? き、聞いたのは私なのだし……」
TPOも弁えず振られた話題に食いついてしまった事を心の底から後悔する俺と雪ノ下。
いや、そもそもどこでどういう時にする話題なのかなんて知らんけど……。
「ヒキオっ!!!」
俺と雪ノ下が再び訪れた気まずい空気に押し黙っていると、そこへどこか聞き覚えのある怒声をあげた若いナースが凄まじい剣幕で迫ってきた。
切り揃えられたミドルショートの黒髪と化粧っ気のなさで認識が遅れたが、その鋭さの伴った声と我の強い眼差しがマッチした見栄えする顔立ち、何より俺のことを“ヒキオ”などという珍妙な呼び方をする人間は1人しかいない。
高校時代からの由比ヶ浜の友人――三浦優美子はそのまま一気に距離を詰め、再会の挨拶代わりとばかりに胸倉を掴んできた。
「どういう事よアンタ!! 結衣のこと何年も焦らしてたと思ったら雪ノ下さんとコソコソ口の堅い隼人に診てもらって……ふざけんじゃないわよ!!」
えっ、ちょっ、コイツは何を言って……ってそういう事かい!!
平日の真っ昼間に若い男女が知り合いのいる病院に来て内密に検査して貰い、挙句待合室で子供の話……。
うん、そりゃ誤解するなってのも無理があるよな。本当に誤解なんだけど!
――まあちょっと聞いた奥さん? 二股よ二股! ――あんな綺麗な子がいるのに他の娘ともなんてねぇ……。 ――でもよく見ると目が凄い腐っているし納得かも……。 ――ゴミね。 ――クズね。 ――去勢でもされればいいのに。
同時に先程までおばさま方から向けられていた生暖かい眼差しが急速に冷えていくのを感じた。
ちょっ、待って奥様方! 誤解です! ここにいるのは二股どころか未だ清らかな身体を貫いた童貞なんです!! だからお願い! 信じてぇええ!! 俺童貞ぇええええええ!!
「―――ヒッキー…………?」
そんな窮地に追い込まれる俺に、神サマは更に追い打ちをかけてきやがった……。
悲しさと憤りを滲ませた表情の由比ヶ浜が、待合室に現れたのだ。
その目元にはうっすらと、積もり積もった感情を現す涙が溜まっている。
なんつータイミングだ!!
「ゆ、由比ヶ浜さん……その……これは……」
かなり込み入った、というか混沌とした状況で現れた彼女を前に咄嗟に何か言おうとする雪乃だが、彼女もまた様々な思いが混濁してうまく言葉が出ない。それは俺も同じだった。
するとそんな俺達に対し、由比ヶ浜は眼に溜めた涙を零しながら、先に言葉を口にした。
「…………………………嘘つき」
「「っ!」」
たった一言の極めてシンプルな批難。
しかしそれは、万の罵声に匹敵する衝撃を俺と雪乃に与えた。
「ヒ~キ~オ~~~~! 歯ぁ食いしばれっ!!」
そしてそれは三浦の誤解を更に深くし、蓄えられた怒りの起爆剤となった。
ベルトの影響で強化された動体視力が飛来する拳の軌道を捉え、俺への直撃コースであると告げるが、躱せば彼女の拳は壁に激突するので甘んじて受ける。
いや~、友達の為に本気で怒れるとか、相変わらず三浦っていい奴だな~などと考えつつ……。
◇◇◇
その後、騒ぎを聞きつけて来てくれた葉山の取りなしで俺達は空いていた診察室に案内され、そこ三浦に事情をひとしきり説明を行った。
「えー……つまりこういう事? 雪ノ下さん今朝ニュースに出てたミカクニンなんたらとかいう化物の事件を担当する刑事で、ヒキオはそいつらと戦う良いミカクニン。隼人に身体を診て貰いに来たのはヒキオの方で、結衣が怒ってんのは、止めるのを聞かずにヒキオが戦って、雪ノ下さんはその手伝いをしたから……で、OK?」
「まあ、概ねそんな感じだ。ホレ、俺の鼻もこの通りだ」
鼻っ柱を思い切りぶん殴られて吹き出た血を止める為に詰めたティッシュを抜きながら回復力の速さを見せる。
いや~、体重の乗ったいいパンチだったよ。俺も今後の参考にしよう。
「ふーん、まあ隼人が言うなら信じるけどさ。アンタがねぇ……あっ、一応謝っとくわ、殴ってごめんね」
うわぁ、何かもののついでって感じでスゲー適当に謝られたよ。
まあ、実際俺も怒ってないっていうか、寧ろちょっと好感度上がった位なんだけど。何なら『由比ヶ浜の為にガチギレできる三浦さんマジカッケェ』というリスペクトまである。
しかし三浦の方はこれでいいとして問題は由比ヶ浜の方だ。
ここまで終始黙っていた彼女は葉山や俺の説明がひと段落するとスマホを取り出し、アップされたフォト――トライチェイサーに乗った俺の姿を映し出し雪乃に提示した。
「病院の駐車場にも色違いの同じのがあった。ヒッキーがいつも乗ってるのと違う奴だよね? これって……」
「…………ええ、私が彼に提供した新型白バイの試作車よ。第5号を倒す為に手配したの、……貴方から連絡を受けた後にね」
「……やっぱ、そうなんだ」
後ろめたさから俯く雪乃に対し、由比ヶ浜は批難を込めた視線で睨み付ける。
その顔には強い憤りの色が覗えた。
「由比ヶ浜、聞いてくれ、アレは――「八幡、いいわ。私が話す」」
咄嗟に口を開いて身を乗り出そうとする俺を、雪乃が制する。
そこにはもうこれ以上、由比ヶ浜に対し不誠実をしたくないという強い気持ちがあった。
「八幡……?」
一方、自分が批難しようとしていた雪乃を庇われたのが原因か、或いはここで俺達の互いの呼び方に変化が起きた事に思うところがあったのか、由比ヶ浜は更に表情を険しくさせた。
誰かを庇うという行為は得てして、別の誰かの行いを否定することにも繋がる。
咄嗟のこととは言え、俺の軽率な口出しは由比ヶ浜を一層追い詰めてしまったのだ。
「………………どうして? ゆきのんだって言ってたじゃん! ヒッキーには関係ない事だって! なのにどうしてこんな事になっちゃったの!? ヒッキーもヒッキーだよ! 何でいつもそうやって自分だけで辛いこと背負おうとするの? そういうの嫌だって昔も言ったよね!? もうしないって言ってくれたよね!? ……あたし、嫌だよ……ヒッキーが、あんな奴らと戦うなんて……そんなヒッキーを何も出来ずにただ待つなんて……」
そしてとうとう、積もり積もった思いは吐き出されてしまった。
いつも気難しい俺達をその優しさで包み込み受け容れてくれた彼女が、そうする事で溜まっていたモノをぶちまける様に、涙を流しながら、俺達の行動を否定し、懇願した。
ああ、胸が苦しい。
結局俺は、俺達は、由比ヶ浜の優しさに甘えていたのだ。
「「…………」」
「……帰る」
そんな彼女の懇願を受け容れられず、かといって明白に否定する事も出来ず押し黙る俺と雪乃。
由比ヶ浜はそんな俺達の顔から目を背けてバッグを肩にかけて立ち上がり、診察室を去ってしまった。『送ってく』とすら言う事も出来ない己の不甲斐なさが、腹立たしかった。
「――――あー隼人? あたし今日はもう上がりだから結衣と一緒して上手くなだめとくわ」
「そうか……うん、頼むよ優美子」
彼女が立ち去り重苦しい空気に包まれた場で声を挙げたのは三浦だった。
誤解を恐れない言い方とすれば、この場に於いて“部外者”である彼女はだからこそ動ける己の立ち位置を理解し、由比ヶ浜に寄り沿う役を買って出てくれたのだ。
「……悪いわね三浦さん」
「は? つーか謝る相手が違うっしょ雪ノ下さん。てかあたし、ぶっちゃけ基本結衣の味方だから。こそこそあの子に隠し事したあんたとヒキオには超ムカついてる口だから」
一方、由比ヶ浜や葉山への気遣いとは対称的に三浦の俺と雪乃に対しては辛辣だった。
しかしそれは正しく由比ヶ浜の気持ちを慮ったからであり、彼女に対する友情の大きさの証左でもあった。
有り体に言って、俺の中の彼女の評価はストップ高状態。
色々怖すぎて恋愛対象として見ることは出来んが、人としては超好ましい。
それは雪乃も同様だったらしい。
「…………ありがとう。貴方が由比ヶ浜さんの友達で良かったわ」
「フン、あたしは逆に超不満だけどね。――アンタが結衣の1番の親友なんて……しっかりしてよマジで」
高校時代揉めた時はさんざっぱら言い負かして泣かせた三浦の苦言を甘んじて受けた上で、そこに秘められた自分の親友に対する労りに感謝を示す雪乃。
一方、三浦は三浦でそんな雪乃に対し、認めた上で叱咤を送るとか、何か少年漫画のライバルキャラ同士みたいな熱いやり取りを交わす。何かちょっとカッコイイな、この女子達。
「ヒキオ!」
「ぬぉ! な、何だよ……?」
などと2人の関係に軽い感動を覚えていたら唐突に名を呼ばれビビる。
つーかやっぱ怖いよこの人、傍から見てる分にはカッコイイんだけどなぁ……。
そんな内心ビビってる俺に三浦は顔を近付け、ドスの聞いた声でこう囁いた。
「何が何でもあの
「――――わ、分かってる……」
誰よりも情が厚い故の恫喝。
なまじ顔立ちが整っているが故にその睨み付ける表情はとても迫力があり、ハッキリ言って昨日倒した第5号よりおっかなかった……。
はい、という訳でナースになった三浦さん登場回でした。
この物語の俺ガイルメンバーは原作から8年たっているので当然用紙にも変化があるわけですが中でも彼女は髪を黒く染めて短くしなど人一倍印象が変わってます。
看護師にしたのは、何となく面倒見の良い性格が合っているなーというのと葉山と一緒にいたい気持ちの表れだったりしますw
俺ガイルメンバーの就職先をあれこれ考えるのは結構難しい反面楽しいですねw
次回もお楽しみに!