伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。 作:烈火・抜刀
これがクウガだと思って諦めてください(苦笑)
とりあえず新しいヒロインを投入することでごまかそうと思います。
……汚い大人のやり口です(笑)
関東医大病院駐車場 00:43 p.m.
「それじゃあ、私は捜査本部に戻るけど、貴方はどうするの?」
「あー、取り敢えず大学戻って解読進めとく。やっぱ普通の医学だけじゃよう分からん部分があるみたいだし、
途中で三浦に顔面ぶん殴られたり由比ヶ浜が来たり女性患者から二股したゴミクズ野郎扱いされたものの、俺と雪乃は病院を後にし、駐車場で今後の予定について話し合った。
「………………手伝ってくれるかしら、勝手な行動した私達のこと」
「分らん。けど、取り敢えず待って、謝って……ちゃんと話す。そんだけだろ」
後ろめたさから気落ちする雪乃に、俺は忌憚のない自分の気持ちを述べる。
例え
こんな事で縁を切れる程、俺にとって由比ヶ浜結衣という女性は小さくないのだ。
そしてそれは無論、雪乃にとっても同様だ。
「……そうね。私も昨日の件が片付いたら改めて話をするわ」
「おう、じゃあまた奴らに何か動きがあったら連絡くれ」
「ええ、そっちも何か気になる解読があったらよろしくね」
そういって俺達は病院を後にした。
◇◇◇
中央区『洋食AGITΩ』 01:23 p.m.
「うん、すっごい美味しい。結衣、いい店知ってるじゃん」
「あはは、うん、実は小町ちゃんの彼氏が働いてるお店でね。偶に食べに来るんだ」
「えっマジ? ヒキオの妹ちゃんの!?」
ヒッキーとゆきのんの制止を振り切って病院を飛び出した私は追いかけてきた優美子に『久々だし一緒にご飯いこ』って誘われて人形町にある洋食屋さん――小町ちゃんの彼氏である小野寺くんが働いているお店でお昼を食べていた。
ポレポレ同様、店の大きさこそそれ程でもないが、店長が店の裏庭で育てた野菜を使った独創的な料理が売りの料理はとても美味しく、常連さんに愛され続ける古き良き町の洋食屋さんだ。
「そんでさー、そのおっさんがフラフラしてホンット困るのよ」
「へー」
私の事を気遣って敢えてヒッキー達の事は話題に出さず、仕事の愚痴とか隼人くんの話なんかをしてくれる優美子。
言葉遣いなんかは相変わらずぶっきらぼうだけど優しくて、だから私も段々、気持ちが軽くなってきた。
「……ありがとね優美子」
「えっ、別にただ普通にご飯一緒しただけでしょ? てか私もいい店教えて貰って寧ろこっちがお礼言いたい位だし。フフ、今度隼人と来よっと」
「あはは、ここはディナーも美味しいから夜来ても良いと思うよ。それよりデートするって事は隼人くんとはいい感じなの?」
「うーん……微妙、かな? いや、普通の友達よりは近い所にいんのかなーとは思うけど、なんてーか……変な位置で関係が固まっちゃったみたいな……まあ、今が居心地良過ぎるってものあんのかな?」
「あはは、…………それ、分かるかも」
現状への不満とも、隼人くんに対する惚気とも取れる優美子の言葉に私は思わず苦笑しながら同意した。
何時だって何だって『変わる』事には痛みが伴う。
だけど
それでも、立ち止まった世界は夢の中みたいに甘くて優しくて、思わず微睡み続けていたくなる。……思えば私は、ずっとそうやってしがみ続けていた。
「……ホントはね、分かってるんだ。ヒッキーが戦わなきゃいけない事も、ゆきのんがその事を受け容れたのも、そうしなきゃ沢山の人達が死んじゃうからだっていうのも。そんな状況を前にして何もしないなんて2人には出来るわけない事も」
本人達は絶対に否定するだろうけど、高校時代からあの2人は――少なくとも私にとって――紛れもないヒーローだった。
口では厳しい事、意地の悪い事ばかり言うけど、それは全部相手のことを思ってるからで。
やると決めたら自分の事を二の次にして、結果的に苦い思いをする事になっても困っている人に救いの手を差し伸べられてしまう強くてカッコイイ男の子と女の子。
だけど私は、そんな2人に憧れてただ後ろをついていくだけの『普通の女の子』でしかなかった。
奉仕部の活動に私なりに真摯に打ち込んできた気持ちに嘘はない。
だけど2人と比べると、そこには好奇心とか、達成感とか、2人と一緒に居たいとか、そういう利己的な部分があったのも本当なんだ。
大学選びや進路選択だってそうだ。
私は、少しでもヒッキーと一緒に居たくて、とっくに終わった高校生活の続きをしたくて、必死に昔にしがみついてる。
「だけど……やっぱり辛いんだ。顔も知らない誰かの為にヒッキーやゆきのんが死んじゃうかもしれない事をするのが。そんな2人をただ見てるだけしか出来ないのも辛いんだ……。そんなんじゃダメって、分かってるのに」
「いや、ダメなんてこと全然無いでしょ? それって要するに結衣がヒキオや雪ノ下さんのこと大好きってことじゃん」
そんな風に自分を卑下するすあたしに対し、優美子は慰める風でも、叱咤する風でもなく、当然の事の様に肯定して、思わず顔が赤くなる様なことを言う。
「ふぇっ!? 違っ、大好きって……!」
「いや、そこは今更恥ずかしがる事じゃないっしょ? つーかあんた達ってほんっとメンドクサイよね? 3人ともお互いのこと好き過ぎる癖に、お互いが一番大事にしてる自分の事は結構適当に扱ってんだもん。そんなチグハグなことしてりゃそりゃ偶には喧嘩もするって」
「うぅ……何か話の方向が変わってない?」
明け透けない優美子の言葉に私は顔がドンドン熱くなってくるのを自覚する。
ていうかお互い好き過ぎるって……好き過ぎるって!!
「てかさ、結衣がダメならあたしだってダメな事になるからあんま自分の事ディスらないでよ? ぶっちゃけあたし、隼人と一緒に居たくてこの仕事に就いたんだし。――まあ、今はそういうの抜きにやりがいは感じてるけどさ、結衣だって別に今居る大学院、嫌いじゃないんでしょ?」
「えっ、……うん、考古学とか今は結構好き、かな?」
「じゃあ別にいいじゃん。始まりがなんだってそこが悪くないなら、あたしは胸張って言えるよ? 一番好きな男の近くに居たくて看護師になりましたって」
あたふたする私とは対称的に胸を張って『隼人くんが好き』と言い切る優美子はどこまでもカッコイイというかちょっと……男前に思えた。何かゴメン。
こういう真っ直ぐさはそれこそヒッキーやゆきのんとはまた違った魅力だと思う。
――本当に私の周りには、カッコイイ人達ばかりだ。
「だからさ、もっと胸張りなよ結衣も。誰かと一緒にいたいって気持ちが間違ってるなんて絶対ないんだし、2人に危険な目に遭ってほしくないって言うのも、普通の事じゃん」
「けど……このままじゃあたし、一緒に居られない。……ホントはね、怖いだけなんだ。未確認生命体の事が……思い出しただけで震えが止まらなくなる」
「結衣……?」
優美子に打ち明けることで、あたしは初めて自分の心の内を自覚した。
何でこんなに不安なのか。何でこんなにも人の為に戦おうとする2人のことを受け容れられないのか。
――それは、自分がその場所に行く勇気がないからなんだ。
3日前、ゆきのんに見せられたビデオに出てきた“未確認生命体第零号”が、夏目教授達を惨殺する映像が、目に付いた人間を次々と手にかける第1号の姿が、今も頭から離れないんだ。
私自身や家族や友達が殺されるかもしれない恐怖は勿論、何時かあの第零号とヒッキーが戦わなくちゃならない瞬間を想像するだけで、怖くて怖くたまらないんだ……。
ヒッキー達と一緒に居続けるには、これからも間接的であれ
そして危険な戦いに身を投じる2人が無事に帰ってくるのをただ待つことしか出来ない。
それが怖くて、嫌で嫌でたまらなくて……だから2人に八つ当たりしたんだ。
おいてかないでってその場に座り込んで駄々をこねる子供みたいに……。
「……やっぱりあたし、最低だ」
「結衣……」
本心に気付いた先にあったのは、自己嫌悪だった。
カッコイイ人達に囲まれる中で、そうなれない自分が、嫌で仕方なかった……。
◇◇◇
城南大学 01:34 p.m.
「あー、めんどくさかった~」
雪乃と別れた後、俺は一旦ポレポレに飯を食いに戻ったのだが、そこでまたひと苦労があった。
何をどう超解釈したのか、三浦と同じ様に勘違いした2人の誤解を解くという新たなミッションが待ち受けていたのだ。
虚ろな目で不安になる歌を口ずさむ一色を正気に戻し、『少し手様だけどウチでいいなら家族3人暮らしていいからな? ふふ、おじいちゃんって呼ばれるのかぁ』と懐の深すぎる事を言うおやっさんに『知り合いの見舞いに行っただけ』とそれっぽいことを言って誤魔化す。
ていうかどんだけ俺に店を継がせたいんだあの人は?
「八幡」
という訳で予定より大分遅れてキャンパスに来た訳だが、そんな俺を見知った顔が呼び止めた。
「おお、お前らも午後の講義かルミルミ?」
「ルミルミ言うな。今日はもうないからこれからバイト行くとこ」
振り返った先に居たのはうちの大学に通う2人の女子生徒。
その内1人は彼女が小学生の頃から交流を持つ(ここだけ切り取るとすっごい不審!)鶴見留美。出会った当初は片間であった長い黒髪はミドルショートにし、当時からあった大人びた雰囲気にはどこか柔らかさも加わり、男女問わず好感を覚える知的美人と言った感じに成長した。
小六の頃から変わらず5歳も年上の俺の名を呼び捨てにするところは相変わらずだが……。
「わああ! 先輩バイク変えたんですか!? 超カッコイイですね! 写メとってもいいですか?」
「え、ああうん、どうぞ」
「茜、はしゃぎ過ぎ……」
一方、そんな落ち着いた印象を持つ留美とは正反対にキャピキャピハイテンションなのは彼女の高校時代からの親友である
『親友の知り合い』程度の関係でしかない俺にもフランクに話しかけ、承諾するより先にスマホでパシャパシャとインスタ映えしそう(?)なトライチェイサーを撮影する、ちょっとアホっぽい……が、まあ人懐っこいちょっと由比ヶ浜に近い気質の女子だ。
「えへへゴメンってルミルミぃ♪」
「ルミルミ言うなってば、レポート手伝ってあげないよ?」
「ええ~それは勘弁! この後シャルモンでケーキセット奢るから許して~」
「いや……そこまでしなくていいけど」
「えっ、ホント? ありがと大好き♡ ……ところでさっきムッとしたの『私の八幡先輩にベタベタしないで!』的なジェラシー入ってる」
「やっぱり奢ってもらおうかな」
「うわーん! 虎の尻尾踏んだ~!」
留美は以前、性格も趣味も正反対で何で何年も仲良く出来てるのか不思議と言っていたが、その妙にテンポの良いやり取りを傍から見れば、2人が親友であるという事はよく分かる。
存外、数年数十年の付き合いになる本物の友人って奴は、同じ趣味嗜好を持つものより寧ろこういう『自分にないものを持った同士』の方がなりやすいものなのかもしれない。
――いや、語れるほど友達いた経験無いからよう知らんけど……。
じゃれつく赤坂を少しうっとうしがりながらも口元はちょっと緩めてる留美。
その光景は俺の中で雪乃と由比ヶ浜の姿と重なり、今の彼女達の状況に対する心苦しさを思い返した。
「……どうかした?」
「いや、ちょっとボーッとしてただけだ。最近色々と忙しくてな」
「ふーん、大変なんだ院生も?」
「まあ、それなりにな。そういうお前らだって来年にはもう就活始めるんだろ? 今の内しっかり遊んどいた方がいいぞ。もしくは合コンで有望そうな男ゲットしとくとかな」
「そこは『しっかり勉強しとけ』じゃないの?」
「勉強ってのは人に言われてやるもんじゃねえんだぞ後輩よ」
「何その部分的に正論?」
人生の先輩として為になるアドバイス(笑)をする俺に対し呆れたといった顔をする留美と、そんな俺達のやり取りをニコニコ……いや、ニヤニヤ? しながら眺める赤坂。
何だか変に勘ぐられてる気がしないでもないが……いや、流石にそれは自意識過剰だろう。
綺麗になったとは思うが、やはり俺にとって鶴見留美は、いつまで経っても小学生の頃の
ちょっと不器用で生意気なルミルミでしかない。
けーちゃんや平塚先生んとこの華乃と同カテゴリーだ。
そしてそれはきっと留美にとっても同じで、俺はあくまで『なんとなく似た者の匂いがするボッチの先輩』でしかないんだろう。
――まあ、尤も気付けばお互い、ボッチとは呼べない環境に身を置いてるんだけどな。
別に孤独な生き方を否定する気は無いし、偶に1人で過ごしたい時があるのは今もだけど……一方でこんな風に明け透けのない話が出来る友達が出来た留美を見て、良かったと思う自分も居た。
今になって思う。食べ物の栄養と同じで何事も“それだけ”じゃダメなのだ。
常に他人と意見を迎合し、誰かと一緒じゃ無きゃ何も出来ない奴になってはいけない。
しかしだからといって孤独こそ至高なんて虚しい陶酔に浸り、他者との乖離を是としても何も始まらない。
1人でもやれるし、1人じゃなくてもやれる。
孤独も同調も、両方出来て初めて人は一丁前になれるんだろう。
「それじゃ先輩、私達はこれで失礼しますね。今度私達のバイト先にも来てくださいね! 留美のウェイトレス姿が見れますから♪」
「ちょっ、茜……」
「おう、まあその内な。……気を付けて行けよ。最近変なの多いから」
そう言って俺は2人と別れ、研究室へと向かうのだった。
という訳で皆さんお待ちかね、女子大生ルミルミの登場です。
因みに友達の女の子・赤坂茜茜はベースキャラのいない完全なオリキャラです。
昔は色々あったルミルミも今は心許せる友達が出来てそれなりに楽しいキャンパスライフを送っていることを表したくて出しました。
彼女らがメインになる話も考えているのでお楽しみに!