伝説を塗り替える英雄は唯一人(ボッチ)でいい。   作:烈火・抜刀

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皆さん大変おまたせしました!(結構頻繁に更新してるのにこんな言い方不思議w)

本編再開、そして遂に久方ぶりのバトル回です!




EPISODE:29 龍の力は発動し、戦士クウガは蒼天を翔ける。<1>

城南大学考古学研究室 02:54 p.m.

 

「またこのパターンの文か……クウガの事を示してるんだろうが」

 

研究室に戻って碑文の解読を再開した俺は、一先ず解読できた『戦士』の文字が含まれた一文――即ちクウガに関する記述の解読を開始。

 

その中で、特定の法則を持った4つの文を確認した。

 

――邪悪なる者あらば●●●、××の如く、△△△する戦士あり――

 

という形で構成された文。

 

クウガに秘められた何かしらの力を記しているのか、或いは警告文なのか……?

 

しかし仕方ないとはいえ、自分で自分の取扱説明書を解読しなければならない変身ヒーローとか、何かシュールだなよぁ……。

 

などと嘆いていても仕方ないので取り敢えずこの4つの文面について調べ始める。

――――予定だったのだが、いざ解読に取りかかろうとした矢先、トライフォンの着信が鳴り響いた。

 

無論、発信者は雪乃だ。

 

「――――俺だ」

『未確認生命体第6号が現れたわ。場所は杉並区阿佐谷、現在警察官と交戦中よ』

 

焦燥に駆られながらも努めて冷静に情報を伝える雪乃に『分かった』と手短に答えて通話を切り、俺は大学の駐輪場に停めていたトライチェイサーを起動させ阿佐谷に向かって発進。

 

経路上、他の車両が見られないトンネルがあったので丁度いいと思い、中で車体色変更(マトリクス)機能を起動させ平時の黒一色の“ブラックヘッド”から金色のフロントカウルに赤と銀のボディ、戦士のエンブレムが浮かび当った“ゴールドヘッド”へと変化させる。

 

続いて右手だけを腹部の添えてベルトを出現させ、右手を前方のかざし、横一文字に空を切る。

 

「変……身っ!」

 

ベルトの中心であるクリスタルパーツが紅く輝き、独特の起動音の様なものがうなりを上げ、全身に変化を促す。

 

俺の身体は派手な車体に似つかわしい、真っ黒な皮膚に真っ赤な装甲と瞳、金の装飾と角を生やした異形の戦士――クウガへと姿を変えた。

 

◇◇◇

 

杉並区 阿佐ヶ谷 

 

よく言えば順調に、悪く言えばあっさり退屈に進んだズ・バヅー・バのゲゲル(ゲーム)に変化が起きたのは、彼らにとってキリが良い27人目の狩りを終えた直後だった。

 

不審な連続転落死の報を受け平時より警らを強化していた制服警官がその犯行現場を目撃し、応戦を始めたのだ。

 

「う……おおおおおおおおっ!」

 

初めて遭遇する未知の怪物を前に、義務づけられた射撃訓練以外で初めてホルスターから抜いた拳銃を発砲する二十代半ばの制服警官。

 

怯えた表情を露わにしながら背を向けることもせず奇妙な形状に進化した“矢”を放つ、古代(かつて)の祖先達からは考えられない勇ましさに興味を持ったバヅーは敢えてそれらを受けてみる。

 

結果としてそれらはささやかな痛みを与えるだけの物足りないものだったが、『牙を剝くリント』の姿勢には好ましさを覚えた。

 

だから、その好意の証として――次の獲物に認定した。

 

「フン」

「あぁああぐっ!」

 

地面の跳躍力で軽く警官と距離を詰めたバヅーはその右手首を“砕いてしまわないように軽く”握りしめる。

 

そうして奇妙な弓(拳銃)を手放させた所で力任せに身体を押さえ、自身諸共近くのビルの屋上へと跳躍。

 

「ジャガバ(じゃあな)」

 

短い挨拶を述べると同時に力を加えて警官を地面へと落下させる。

 

「うわあああああああああああっ!」

 

他の獲物と違わず聞き心地の良い悲鳴を上げる警官。しかしバヅーの耳には直後に聞こえる筈の肉の破裂音も、骨が砕ける音も届かない。

 

そして高見から眺めると美しい“血だまりの華”が咲く筈だったそこには、鋼の馬に跨がった懐かしい顔が、突き落とした獲物を抱きかかえていたのだ。

 

――来たか!

 

「ジガギスシザバ クウガ(久し振りだなクウガ)。ギョグギ ン ジャンママ、ズ・バヅー・バ ザ(脅威のジャンパー、ズ・バヅー・バだ)」

嘗て自分達の楽しい遊戯に無粋な横槍を入れたリントの持つ唯一の牙。

忌まわしくもあり、だからこそ容易いゲゲルを盛り上げる歓迎すべき障害――戦士クウガの出現に、バヅーは親しい旧友に挨拶でもするかの様に、自己紹介をした。

 

◇◇◇

 

――は? ズバズバ? 何言ってんだコイツ??

 

何とか間に合った警官を降ろしつつ牽制に視線を向けた俺に対し、バッタに似た未確認生命体第6号は、語りかけてくる。

 

その何だか妙に透かした態度――人間味じみたものは妙に不快感を感じさせ、違和感と不快感を覚える。

 

しかし一方で、これまで見た3体はいずれも飢えた獣の様な剥き出しの殺意を放ち、『人間殺す!』みたいな雰囲気だったのに対し、どこか余裕めいたものを見せるのも不可解だ。

 

身の程知らずのバカ……ってオチじゃないなら余程自分の力に自信があるという事になる。

 

――まあ、こちとら戦士就任まだ4日目で敵が腕自慢だろうがそうじゃが、いっぱいいっぱい。油断できないって点はなんも変わらないんだけどな。

 

身構える俺に対し6号は親指で『場所を変えるぞ』とジャスチャーし、先だって移動。

相手の術中に飛び込むのは嫌だったがかといって無視も出来ず、俺はバイクから降りて10階建てのマンションへと飛び込む。

 

四方が囲まれた正方形状の踊り場に突入すると第6号()は屋上で腕を組んで仁王立ちし、まるで『今の立ち位置が俺とお前の関係だ』と言わんばかりにまさしく見下ろす。

 

うん、そのなんだ。

表情なんて分からない化物面になっても馬鹿にしてる感じとかそういうのって感覚的に伝わる者があるよね?

 

幼稚園児の頃から何となくクラスで見下されるポジションにいた真性ボッチ舐めんなよ虫ケラがあっ!!

 

何かもう、未確認とかそういうの以前に俺の中でアイツはムカつくタイプに認定された。

 

「フッ――」

 

「ぐわっ!」

 

そんな俺の敵意を感じ取ったのか、6号は最上階から軽やかに降下すると共に右脚を突き出し跳び蹴りを放つ。生来の脚力に重力も加わったその一撃は重く、俺は一撃でダウン。

 

更に奴は続けて俺を蹴った反動を利用して再び跳躍して跳び蹴り第2弾を繰り出す。

 

どんだけキックが好きなんだよこのバッタ男は!?

 

既に仰向けに倒れていた俺は2度目の衝撃に激しい痛みを覚えながら意地で奴の右脚を捕らえ、床に叩き着ける。

 

そして再び飛び跳ねられる前に決着(ケリ)をつけようと、クウガが真価を発揮出来るインファイトを仕掛ける。

 

「――っらああ!!」

「ッグ……フン、ジャスバ(やるな)」

 

数発の殴り合いの中で感じたのは意外な勝機だった。

初手から2回も強烈な蹴りを食らわされた時はどうなることかと思ったが、どうやら瞬発力とは裏腹に、単純な力比べではクウガ(こちら)の方が数段らしい。

 

「―――――フッ!」

「あっ、――逃がすか!」

 

しかし互いの得手不得手、優位な戦術に関しては向こうも当然の様に理解し、第6号は再び

屋上へと跳躍。

 

俺も咄嗟に後を追って跳び上がるも屋上までは至らず5階の手すりに何とか手が引っかかる始末。奴がざっと30m近く跳べるのに対し、こっちは多分……14、5m位だろうか?

 

人間基準で言えば充分桁外れなのだがそれでも決定的に、高さが足りない!

 

「ハハッ!」

 

それでも手すりをよじ登って再跳躍しようとする俺に、またひと跳びで先回りした第6号は張り手を叩き込み、地面に落下させる。

 

変身してても5階からの落下は結構痛いぞ……!

 

「ゾン デギゾ バ クウガ(その程度かクウガ)?」

 

期待外れも甚だしいとばかりに俺に謎の言葉を送る第6号。

 

「だったら――――!」

 

俺は普通に階段を駆け上がろうとするがまた先回りした奴に蹴り飛ばされ『振り出しに戻る』よろしく踊り場に叩き落とされる。

 

その後も第6号は高所から跳び蹴りをしては安全圏の屋上に逃げるというヒット&アウェイ戦法を繰り返し、着実に俺にダメージを蓄積させていった。

 

完璧に地の利を獲られた。

危惧はしてたがまんまと術中に嵌まってしまった感じだ。

 

「ハァ、ハァ……クソ!」

「ムン。ギギバゲン、“ギソ”ゾ バゲダサゾグザ(いい加減、“色”を変えたらどうだ)?」

 

度重なる跳び蹴りで疲労し膝を衝く俺に対し、第6号はまたも煽る様に何かを尋ねてくる。

するとそんな高見から見下ろす奴の肩を一発の銃弾が掠めた。

 

「八幡!」

 

撃ったのはライフルを携えて俺の近くまで突入した雪乃だ。

踊り場で膝を衝く俺と屋上で見下ろす6号という構図から大凡の戦況を理解した彼女はライフルを構え、奴に向かって再び発砲。

 

「……っ!」

 

流石の腕前で今度は奴の胸のど真ん中に弾丸をぶち込んで見せた。

 

「奴ら用に支給された高性能ライフルだったんだけど効果は薄いわね……立てる?」

 

「あ、ああ……いや、十分だ。何しろ俺の方は全然アイツに攻撃当てられないんだからな」

 

一方的に嬲られていた状況で奴に一発かましてくれただけ個人的には随分と溜飲が下がったというものだ。

 

しかし攻撃が届きこそすれ致命打にならない雪乃の銃弾と、ダメージは与えられても届かない俺の拳。どちらも奴に対する決定打にはなり得ない。

 

――――どうすればいい?

 

「フン、ガギギ ン ジャヅジョシ ギダギ ジャ ゾ グヅバ(さっきの奴より痛い矢を撃つな)? ギギビダダ(気に入った)!」

 

一方、安全圏と踏んだ場所で攻撃を受けた第6号は最悪な事に雪乃に興味を示し降下してきた。

 

「雪乃、下が「ジャラザ(邪魔だ)」うあっ!」

「八幡!?」

 

俺は咄嗟に前に出て庇おうとするも奴の素早い身のこなしをやはり捕らえきれず蹴りを受けてダウンしてしまう。

 

そして、そんな俺の名を呼ぶ雪乃に接近してライフルを取り上げつつ、彼女の顔をしげしげと眺めた。

 

「ゴラゲ、ゴンバ ン クウガ バ(お前、クウガの女か)? ザッダサ チョグゾ ギギ、ヅビガゲ(だったら丁度いい、付き合え)」

 

「なっ……!」

 

まるでナンパでもするかの様な気安い口調で語りかける第6号はそのまま強引に雪乃を抱き寄せ、先程の警官等の時と同様に共に跳躍した。

 

――――まずい!!

 

言葉の意味が分からなくても直感で理解した。

奴はアイツを――雪乃を使って俺を挑発する気だ。

 

それも先程の阻まれた事を考えると恐らくこの場を離脱して、俺がキャッチできない場所でアイツを突き落とすつもりだ……!

 

――――――ドクン!

 

やめろ…………!

やめろ……!!

やめろっ!!!

 

その薄汚い手でそいつに触るんじゃねえ!!

そいつを俺から、奪うんじゃねええ!!!

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

嘗て無い強い情動に突き動かされながら咆哮し、奴の後を追うように跳び上がる。

 

――届くかどうか何て関係あるか! ()()()()()()!!

 

刹那、ベルトから今まで聞いた事の無い起動音が響き、俺は――クウガは、それまでと比べものにならない程に高く、()んだ!

 

雪乃(そいつ)を返せえええええっ!」

「「っ!!」」

 

鬼気迫る勢いで俺は第6号に追いつき、力尽くに雪乃を奪い返しながら、屋上へと着地する。

 

「怪我はないか!?」

「はちまん……なの?」

 

かなり強引な手段をとってしまった俺はまず雪乃の安否を確認するが、彼女は何故か鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな顔で尋ね返す。何だ?

 

「貴方……その身体……」

「えっ……身体がって……おおっ!?」

 

最初は6号に拉致されかけたショックに寄る者かと思ったがしどろもどろに指さされ、そこでようやく自分の身に起きた変化に気がついた。

 

「――――青くなってる!?」

 

胸部と腕部の装甲からベルトのクリスタルパーツ、及び複眼や両手足の首に埋め込まれた小さな珠に至るまで、燃え上がる炎の様な赤色だった部分が全て青く染まっていた。

 

いや、単純に色が変わっただけじゃない。

膨れあがった筋肉が硬化したかのような胸部装甲は極限まで薄くなり、心なしか腕周りや足回りが若干細くなった気がする。

 

未成熟を現す角以外、基本的には色違いでしかなかった白から赤と違う。

 

俺はこの時、初めて“変身を超えた変身”を行ったのだ……!!

 




話の流れはほぼTV版クウガ第5話と同じですがドラゴンフォーム覚醒の経緯をちょっとオリジナルテイストにしました。

ベタだなぁとは思うけど攫われたヒロインを取り戻す為に新たな力を開放するヒーローってのもいいかなとw

そしてゴオマ、バルバに続きバヅーからも気に入られたゆきのんはもう『グロンギキラー』を名乗ってもいいかもしれませんね(笑)

彼らからの呼び名も

・白い首筋の女
・リントの女戦士

に続き

・クウガの女

が追加されました。
これ当人が言葉の意味を理解したらどんな顔するか作者的にちょっと見たいですw

次回もお楽しみに!

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